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93話 貴族転移

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「わざわざそれだけを言いに来たんですか?ハルカさん?」

 これだけのためにこんな面倒な所に来る人もそうそういないだろう。
 そもそも、なぜハルカさんがここにいても誰も驚かないのか、はもうスルーでいいだろう。

「もちろん、他にも色々な理由はあるけれど……。一番重要なのはおそらくシュンくんね」

 重要?
 あと少しで間違った道に踏み込もうとしていた僕を冷静にしてくれたのはありがたかった。
 でも、重要だったではなく、である。
 おそらく、まだ話すことがあるのだろう。

「私、ハルカさん、トリオスさんそして、シュンさん。この四人だけが知るべきだと思います。他言は厳禁です」

 レイシェルがはっきりと言いきる。
 どうやらかなり重要な話なのだろう。


 僕たちはトリオスの家のテーブルをかこんで座っている。
 ここなら誰かに聞かれることもないだろうし、アトラト家から一番近かった。
 トリオスに仕えていたメイドや執事たちは一日の休暇をもらっているためこの家には僕たち四人以外は居ないはずだ。

「それじゃあ、本題に入らせてもらうぞ」

 ハルカさんが話を始めていく。
 僕たちはそれを黙って聞いていた。

__________シュンくんが狙われている理由、って分かるかしら。

 ただの怒りではないだろうか?
 シェイドはユナをなんとかして仲良くなろうとした所に、僕が邪魔をしてしまったから。

__________その前に、ユナはなぜシェイドに好かれていたか分かる?

 ただの一目惚れ……ではないのだろう。

__________この世界には「神聖魔法」と呼ばれる魔法があるわ。神聖魔法は星魔法と同じように物を「変えることができる」能力なの。
 ただ、星魔法は正直に言って感情のままの魔法が出てきてしまう。
 つまり、強い怒りや憎しみに対してはそのまま物を「破壊」してしまうわ。
 でも、神聖魔法は違う。

 感情を大まかに六つに分ける。それからさっきシュンくんに教えたように一度プラスの感情に変えてから魔法を使うものなのよ。
 だから、物を「保つ」ことができる能力なの。

 それを欲しがったのがシェイドなのよ。
 彼が欲しがったのはユナじゃない。神聖魔法なの。

 ただ、彼にも……いや、私達全員が意図していない出来事が起きたのよ。

 ユナが強い「愛情」の力を持っていたこと。
 そしてそれが、シュンくんに向けられていたこと。

 神聖魔法最大の「愛情」の力はものすごい力だったと思うわよ。
 星魔法最大の「絶望」の力をかき消してしまうくらいには。

「そのものすごい力をもしシェイドが手に入れていたら間違いなくこの国の王はシェイドになっていたでしょうね。でも、その力は、シュンくんに向けられたの」
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