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74話 生徒会と下流貴族

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 セイさんが養子だったという事を打ち明けてくれたため、少し親近感がわいたような気がした。
 別に養子だったわけではないのだが、実の親に見放され妹を守ろうとするその姿が日本での僕に重なっているみたいだ。

「色々大変だったんですね」

「まあ、今は下流貴族の家で暮らしているわけだから文句は言えないわけだけどさ。だからこそ頑張らなきゃって思うんだよ」

 そりゃそうだ。
 いくら養子とはいえ親からの期待だってあるはずなのだ。
 セイさんの言葉にはそれに対して真正面から当たっていこうとする力強さが感じられる。

「アトラト学園に来たのも生徒会に立候補したのも修業コースに行ったのも。いつか親を継げる人になりたいからやってることなんだ」

「セイさんの親って何をされてるんですか?」

「魔法学士だよ。貴重な魔術の再現とか魔法科学の最先端にいる人なんだ」

 予想通りすごい人である。
 下流貴族であることにも納得だ。

「下流貴族ってそういう人ばかりなんですか?」

「まあ、大抵がそうなんじゃないかな。稀に上流貴族落ちの人とか居るけど、基本的にはそれぞれの分野のプロフェッショナルみたいな人かな」

 どんな分野で活躍しているか、などあげだしたらきりがないのだが、基本的に名の知れた人物でないと下流貴族になれないらしい。
 世襲制である上流貴族とは違い、下流貴族は完全に能力制なのである。

「まあ、アトラト学園には下流貴族が結構な数いるけれどもそういう人たちが競い合って磨かれて行くんだろうね」

 俗にいう切磋琢磨というやつである。
 競い合いは学業だけにはとどまらない。
 魔法能力、運動ができるか、カリスマ性、アイデアなど様々な視点でのアプローチがある。

「だからこそ生徒会には下流貴族が多く存在する。ハセさんも確か下流貴族だったはずだ」

 僕が推薦したセイヨウも下流貴族だし、生徒会には確かに下流貴族が多い。

「まあ、貴族じゃない人も下流貴族より成長するし、将来の下流貴族候補も数多く居るだろうな」

「クレミアさんはどうだったんですか?やっぱり下流貴族なんですか?」

「いや、クレミアは一般人だと思う。今年のシュレイって人も一般人だし言語学科からはあまり下流貴族は居ないな」

 セイさんに密かに思いを伝えたがっていたような気がしたので聞いてみたが、タイミングは少なそうだな……。

「とはいえ、俺が生徒会長をやっていたときもそうなんだが、一般人は下流貴族に対しての事をあまり良くは思っていない。新しい制度ではあるからなにか思う部分があるのかもしれない」

 どうやら五十年前ほどに下流貴族の制度が出来たようなのだが、古くからの格式を持つ家は貴族は上流貴族のみ、と思っている家も多いらしく、そこらへんの溝がまだ残っているらしいのだ。

「ハセさんがうまくそれをしのげるかどうかが心配ではあるかな……」

 セイさんが腕を組みながら言ったのだった。
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