65 / 137
64話 ハセとセイヨウ
しおりを挟む
セイヨウは部屋に戻ってきてハセさんをすぐに発見し、はっと息を飲んだ。
そして何を言おうとしたのか少し息を吸ったあと、その言葉はかき消されてしまった。
「あ、ハセさん戻っておられたのですね」
それはシュレイが発した言葉だった。
別にシュレイが悪いわけでは全然ないのだが、少しセイヨウが可愛そうな気もする。
「私も今戻ったところですよ。それで、そこのお方は?」
ハセさんナイスアプローチ!さすが生徒会役員。こういうところを見逃さない。
「あ、彼はセイヨウていってですね、新しく生徒会に入ることになった……」
いや、セイヨウ完全に自己紹介のタイミング失ったじゃんか。シュレイさんも悪気があったわけじゃないんだろうけどさ。
セイヨウこっちに向かってきた。意気消沈みたいな雰囲気出さないでくれ。
「セイヨウさん、よろしくおねがいしますね」
その言葉を聞いてセイヨウは急ブレーキをかける。
スピードはさほど出ていないはずなのだが、結構よろけたように感じた。
「あ、よろしくおねがいします」
言えてはいるんだけれどもなんというか抑揚がない。
おそらく緊張しているのだろう、色んな意味で。
その後小さな声で「やった!」とセイヨウが言ったのを僕は聞き逃さなかった。
すでにあからさまバレバレで割とだいぶ察しはついていたのだが、セイヨウはハセさんに一目惚れしていた。
実は……。みたいに言わなくても隠せてないからね?
そんな僕の思いもつゆしらず、セイヨウはウキウキな感じで生徒会の部屋を後にした。
「なんでこの学校に一年もいたのにあんな綺麗な人を見逃してたんだろ」
そりゃあなた、学科も違うし学年も違うからむしろ出会える確率のほうが少ないでしょうよ。
「それにしても、ぎこちなかったね……」
「え、うそ!?メッチャなめらかだったと思うんだけど」
この人無自覚ですか。
ビデオなんかに撮っておいて後から見せたら自覚するのかな。
「それで、セイヨウは恋とかするの初めてなの?」
「いや別に。今までもそれなりに付き合ったりしてたけどこっちから好きになったのは初めてかもしれない」
仮にも下流貴族。そこそこモテるんだねぇ。
むしろあんなにういういしい行動を取られると少し疑ってしまうのだが……。
「シュンは好きな人とかいるの?」
あれ、これ何気に反撃されてない?好きな人。
いるとそんなに簡単に言ってしまって良いのか分からない。
好きの定義とは?ライクオアラブ?
「い、いるんじゃないかな」
セイヨウは「ふーん」とつまらなさそうな顔で言う。
なぬ、お主いま僕のことを下に見たか?
「こちとら真剣に悩み中なんだよー!」
「冗談半分で聞いてすみませんでしたー!」
とやりとりをして、馬鹿らしくなって笑う。
これが友達なのか、とシュンは嬉しくなったのであった。
そして何を言おうとしたのか少し息を吸ったあと、その言葉はかき消されてしまった。
「あ、ハセさん戻っておられたのですね」
それはシュレイが発した言葉だった。
別にシュレイが悪いわけでは全然ないのだが、少しセイヨウが可愛そうな気もする。
「私も今戻ったところですよ。それで、そこのお方は?」
ハセさんナイスアプローチ!さすが生徒会役員。こういうところを見逃さない。
「あ、彼はセイヨウていってですね、新しく生徒会に入ることになった……」
いや、セイヨウ完全に自己紹介のタイミング失ったじゃんか。シュレイさんも悪気があったわけじゃないんだろうけどさ。
セイヨウこっちに向かってきた。意気消沈みたいな雰囲気出さないでくれ。
「セイヨウさん、よろしくおねがいしますね」
その言葉を聞いてセイヨウは急ブレーキをかける。
スピードはさほど出ていないはずなのだが、結構よろけたように感じた。
「あ、よろしくおねがいします」
言えてはいるんだけれどもなんというか抑揚がない。
おそらく緊張しているのだろう、色んな意味で。
その後小さな声で「やった!」とセイヨウが言ったのを僕は聞き逃さなかった。
すでにあからさまバレバレで割とだいぶ察しはついていたのだが、セイヨウはハセさんに一目惚れしていた。
実は……。みたいに言わなくても隠せてないからね?
そんな僕の思いもつゆしらず、セイヨウはウキウキな感じで生徒会の部屋を後にした。
「なんでこの学校に一年もいたのにあんな綺麗な人を見逃してたんだろ」
そりゃあなた、学科も違うし学年も違うからむしろ出会える確率のほうが少ないでしょうよ。
「それにしても、ぎこちなかったね……」
「え、うそ!?メッチャなめらかだったと思うんだけど」
この人無自覚ですか。
ビデオなんかに撮っておいて後から見せたら自覚するのかな。
「それで、セイヨウは恋とかするの初めてなの?」
「いや別に。今までもそれなりに付き合ったりしてたけどこっちから好きになったのは初めてかもしれない」
仮にも下流貴族。そこそこモテるんだねぇ。
むしろあんなにういういしい行動を取られると少し疑ってしまうのだが……。
「シュンは好きな人とかいるの?」
あれ、これ何気に反撃されてない?好きな人。
いるとそんなに簡単に言ってしまって良いのか分からない。
好きの定義とは?ライクオアラブ?
「い、いるんじゃないかな」
セイヨウは「ふーん」とつまらなさそうな顔で言う。
なぬ、お主いま僕のことを下に見たか?
「こちとら真剣に悩み中なんだよー!」
「冗談半分で聞いてすみませんでしたー!」
とやりとりをして、馬鹿らしくなって笑う。
これが友達なのか、とシュンは嬉しくなったのであった。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる