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62話 悪い人?

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「僕が悪い人だったらユナはどうする?」

 ベッドにユナを押し倒して僕はそういった。

 正直に言えば自分でもなぜこんな事をしたんだろうと思う。初めての経験に戸惑ってもいる。

「……でも、シュンくんが悪い人だったらこんなに大人しくないとおもう……」

 わけがわからない。異性不純交友なんだから、少しは抵抗したら……。

「はぁ、僕がそんなこと出来るわけないじゃん。フルヤさんにバレたら追い出されちゃうよ」

 僕は掴んでいたユナの腕を離して再び座る。少しして、ユナも僕の隣に座った。

「それはそうかもだけど……。私はシュンくんが悪い人だって考えられない。だって、私のことを何度も助けてくれたんだもん」

 ユナはそう言うと僕の方を向く。無垢で綺麗な瞳が僕を見つめている。

「なんかもう、僕がバカみたいじゃないか。でも、嬉しいよ」

 真っ直ぐな視線は僕の気持ちすらも読み取れるみたいだ。そんな彼女に「悪い人だって考えられない」なんて言われたらもう何も言い返せないよ。

「なんか、もう大丈夫みたいだね。私は、少し……」

「なんか言った?」

「ううん、なんでもないよ」

 ユナはそう言って微笑んだ。その微笑みを見て、僕の中のわだかまりが溶けたような気がした。

ーーーーーーーーーー

 シュンくんの部屋から物音が聞こえる。

 いつの間にシュンくんが帰ってきてたのだろうか?
 私はドアを開けてシュンくんの部屋に入っていった。

 なんだろう、元気がなさそうというか、何かつらいことがあったように見える。

「シュンくん、もう帰ってきてたんだね」

「ユナ……」

 その声は、小さく、でもはっきりと私に問いかけられているような気がした。
 私はシュンくんに近づいていく。

「大丈夫?調子が悪いみたいだけど……」

 私はそう言いながらシュンくんの隣に座った。その瞬間に、私は、腕をとられる。

「僕が悪い人だったらユナはどうする?」

 そう言って私は押し倒された。中途半端に覆いかぶさるシュンくんを見て、私は何も起こらないことを察した。

「……でも、シュンくんが悪い人だったらこんなに大人しくないとおもう……」

 私の口から出たのは正直な本音である。たとえ、シュンくんにだったら……。

「はぁ、僕がそんなこと出来るわけないじゃん。フルヤさんにバレたら追い出されちゃうよ」

 と言ってシュンくんは私の腕をはなす。腕からぬくもりが無くなって少しさみしい。
 私はシュンくんの隣に座ると、さらに話してみる。

「それはそうかもだけど……。私はシュンくんが悪い人だって考えられない。だって、私のことを何度も助けてくれたんだもん」

 無意識に私の視線はシュンくんの顔へと移る。深く、落ち着いた瞳。悪い人なはずがない。

「なんかもう、僕がバカみたいじゃないか。でも、嬉しいよ」

 彼の中ではもう悩みは解決していたようだった。私はそれを見てちょっとさみしくなる。

「なんか、もう大丈夫みたいだね。私は、少し残念かな」

 心の準備はできていたのだから、受け入れようとも思っていた。

「なんか言った?」

「ううん、なんでもないよ」

 私は微笑んだ。きっとシュンくんは私を大切に思ってくれているのだろうな、って。
 彼が私に微笑み返しているのを見て、私はそう思ったのであった。
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