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34話 学園祭の準備をするそうです

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 この世界には毎年「セリーナ感謝祭」と呼ばれる二週間ほどの休暇が存在する。

 セリーナとは自然と農耕の神様らしく、その神様に豊作の感謝と来年の豊作を祈ってそのことをセリーナ感謝祭というらしい。僕がもとにいた世界ではイースターがそれに一番近いだろうか。
 そして、その前の週にはこの学校で学園祭がやる。一年に一度のことだけあってみんな気合が入っている……のが好ましかった。

「学園祭ですが、こういう出し物をやりたいなっていう意見はありますか?」

 そう、このクラスは行事に対してあまり積極的ではない!最近は話し声も聞こえるようになってきたとはいえ、まだまだ挙手して発表というところまではいっていないのだ。
 ちなみに僕はそもそも何も思いつかないです。根本的にはこのクラスの人々と何ら変わりないのだ。異世界人だろうが上流貴族落ちであろうが。

 そんな中、ただ一人手を挙げる勇者がいた。
 セイヨウである。みんながセイヨウの手を見ている。セイナ先生も含め。

「書店をやってみたいです。せっかく言語学科なのだから言語に関わる出し物をしてみたいので」

 流石だな、と感心してしまう。貴族の言うことは説得力があるよな。

「そこで、シュンくんが指揮をとって書店を開くのがいいと思います」

「は?」

「え?」

 いやいやいや、セイヨウくんそこでなぜ驚くのかね。僕はそんな指揮をとれるほどのリーダーシップはない。そもそも、言い出しっぺの法則なのだからセイヨウが指揮をとるべきじゃないのか。
 と、言えたら苦労しないんですよね。こういうところはとても気弱ですので。

「それはいいね、シュンくんの家は司書らしいし!」

 ここに来てそれが裏目に出るとは。このままでは、セイヨウが「シュン、ちょっとお邪魔してもいいかな?」なんて言い出しかねない。そしたらかなりマズい気がする……。
 クラスの中ではもう書店を開くことがほぼ決定のムードになっていたが、更にここで挙手をした英雄がいた。

 こともあろうに、ユナだった。

「実は私も、父親が書店を開いているのですが……」

 普段はあまり話さない子がこういう風に話すと大抵の場合ありがたがられる。
 そして、このクラスには運良くひねくれた人はいなかった。みんな無口だが、優しい人達だったから。

「それじゃあ、このクラスの出し物は書店でいいですね」

 一気にまとまって一気に決まってしまった。僕が口を挟む暇すら与えてくれなかった。
 こうなったら指揮は頑張るとしましょう。それと、

「セイヨウ!君がリーダーだ」

 人をまとめるのはセイヨウが適任だろう。
 そうして、学園祭の出し物「書店」の準備が始まったのだった。
 なにげにシュンもワクワクしていたりするのであるが。
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