上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

３１話 言語学の学科試験

　席に座って始業を待っているうちに汗は段々とひいてきていた。

「シュンくん、大丈夫？息も荒かったけど……」

　隣の席の子ことフレイドが話しかけてきた。

「ああ、ちょっと魔法学科の人に追いかけられてね。走って逃げてきた」

　フレイドがなにか納得したように頷く。
　おそらく言語学科の人は被害にあっていることも多いのかもしれない。

「それは災難だったね……。そういえば、試験の順位一位だったね」

　なにか言葉を返そうと思ったらチャイムが鳴ってしまった。僕は軽くグッドポーズをするだけになってしまった。


　セイナ先生は今日の学科試験について少し話すと、今度は統一試験の話をしはじめた。

「みなさん頑張りましたね。惜しくも順位に載らない人もいましたが、今回は私のクラスから一位の人が出てとても嬉しいです！皆さん誰だか知ってると思いますが全員拍手！」

　僕も拍手をした。何人かの視線は確実にこちらに向いていたが、一人だけ立たされて照れくさそうに拍手を受けるのはあまり得意ではなかったのでむしろ好都合だった。

「というわけでですね、皆さんも引き続き点数をとって後悔がない試験になるようにしましょう。それでは学科試験始めますね」

　この切り替わりの速さであった。他の先生の授業を受けたことがないのでなんとも言えないが、人見知りの生徒が多いからなのかあまり一人を目立たせないし、ある意味でサバサバしているような気がする。
　まあ、それよりも学科試験に集中しなければ。カタカナ語は集中しないとすぐ頭がこんがらがるぞ。

　カタカナ語で躓くことはなく、文章を読み取ってしっかりと問題を解いていく。いつもと変わらずに。
　カリカリとペンが動く音だけが聞こえてくる。試験は何事もなく過ぎていった。

　試験も終わり、僕はグッと背伸びをした。本日の予定はこれだけだったのだが、またしてもセイナ先生に呼ばれる。

「どうしましたか？」

「いやー、統一試験でいい成績をおさめたものには努力賞があるっていうので、学年一位はいい成績でしょ？」

　多分一番良いんですよね、それって。

「だから、今度の式典に出てもらうことになるんだけど、今回は学長室にお呼ばれがかかったの」

　またすごいところにお呼ばれがかかりましたね……。

「詳しいことは学長先生からお話を伺えると思うし、私も着いていくことになったから大丈夫よ」

「学長先生って、どういうお方なんですか？」

　質問が悪かっただろうか。セイナ先生は少し考えるような素振りを見せる。

「あの……」

「私も、学長先生には会ったことがないの。上流貴族のお方だから」

　上流貴族……。僕はつばを飲んだ。