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16話 チート魔力が使えない

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 本当に魔法が使えないのか?

 という疑問に当然ながら僕はイエスを答える。魔法が使えないので上流貴族の家から出てきたんだ。
 どれだけ頑張っても初級の魔法はおろか子供でも出せる魔法の薄いもやみたいなものすら出なかった。
 今となっては期待すらしていないが。

「でも、確かに君には魔力が眠っているというか、殻に覆われているような気がするんだ」

 一体全体なぜそんな事がわかるのか。でも、一応相手は魔法の経験がある。おそらくレベルはだいぶ高いと思う。それに、こんな真剣な顔で嘘を言われたら生徒会としての大問題だと思いますよ。

「つまり、僕はその殻を破ればいいんですか?」

「いや、あくまで殻というのは比喩的かつ抽象的な表現だ。もしかしたら何かしらの鍵があったりもしくはいきなりそれが消えて普通に魔法が使えるようになることも十分にありえる」

 つまるところ彼にもわからない、ということだろう。少なくともこういう事例に対しては知識が乏しすぎるのではないだろうか。

「ただ、一つだけ言えることは無理に殻を破ろうとしないほうがいいということだ。その魔法量はとんでもなく膨大だ。正直有り得るのかというレベルで」

 それはおそらく僕らの世界でいうチートというやつなのだろう。でもまあ、使えなければ意味がないような気がするけど。

「あまり考えすぎないほうがいいな。下手に触っているよりも放置して時を待つ方が正しいような気がするからな。一魔法使いのアドバイスとしては」

 正直いって僕もそう思う。今は言語チート(?)だけで十分である。ゆっくりとこの魔法の事を知っていくほうがいいのではないだろうかと。

「分かりました。わざわざありがとうございます」

「いいや、構わないさ。三年間じっくりと勉強に励んでくれ。おそらく私は修業資格を取るためにも後三年はいるだろうから」

 相談があればいつでも来い、ということだろう。生徒会長は結構頼もしいものだ。

「ありがとうございました。失礼しました」

 僕がそう言うとクレミアがドアを開いてくれた。そういえばこの話はクレミアも聞いていたのか。まあ同じ言語学科ではあるし別に良いんだけれども。
 僕とクレミアがドアから出ていって、クレミアがドアをゆっくりと締める。そしてほっとため息をついた。

「いやー、生徒会長から呼び出された時はどうなったかと思ったよ。他人事のはずなんだけどね」

「僕もすごい緊張しましたよ、なんというか見透かされている感じというか……」

「上流貴族でも緊張ってするんだね。でも生徒会長はああ見えて優しいからさ」

 むしろ君も緊張していたのか生徒会書記。まあ、大問題って言われてまた学校を追い出されるのかと思ったら魔法保有してるよしかもチートレベルだよっていうのはとりあえず今は安心したが。

「はぁ、生徒会長は妹大好きだもんな」

 ……もしかしてこれって、愚痴だったりします?
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