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第二章
第27話 アクアドーム
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___話は10年後に戻り、車内。イバラはヒマレに10年前の出来事を一通り説明していた。
「そして、事故起こして眠った後、起きたら家のベッドにいたんだ。僕もアグも、うちの王宮の医務室のベッドにね」
「ってことは、お父さん達、助けに来てくれたのね」
ヒマレは、ハッピーエンドの映画の結末を聞くかのような表情をしている。
「うん。 でもね、後日こっぴどく叱られたよ。僕もアグも、それぞれの父親にね。それから、車のタイヤを今みたいな水タイヤに変えられて、子どもの血法能力と運転技術じゃ乗れないようにされたのさ」
「そりゃそうよね、親は心配だもの。えってか、水タイヤって何。気になりすぎる」
「あぁそっか、タイヤはまだ見てなかったね。降りた時に見てみてね。それでね、その時僕は父さんにこう言われたんだ……。情けない、年上なのに助けられて。お前が弱いからだ。もっと強くなって、今度はお前がアグネロを守ってやれ。ってね」
「へぇー、なるほど」
イバラとヒマレが話し始めて30分、アグネロは全く起きない。
「それでとりあえず、いつかまたあの花火が見えたらすぐに助けに行ってやる!って思ったんだよ。それから、10年……やっと借りが返せたかな」
「まあよくもそんな、いつ起こるか分からない事に、10年も神経尖らせていられたわね。凄いと思う」
ヒマレは、イバラはやっぱり、しっかり者で決して癖のある変な奴ではなかったと感じ、疑ってしまった事を後悔した。
「まあ神経尖らせすぎてただの花火大会に何度も行ったけどね。てかえっ!僕って凄い?その言葉、愛だよね?」
「ちゃうわい!」
ヒマレは後悔した事を後悔した。
「ヒマレちゃん、質問いいかい」
「なに?」
「ヒマレちゃんは、ロイヤルブラッドって言ってたけど、何の属性?」
イバラは、一番気になっていた事をヒマレに尋ねた。
「んー、私もアグネロに会うまでは自分がロイヤルだなんて知らなかった。私の属性?能力?治癒みたいだよ」
「治癒!?それは驚いた。治癒は魔法で練れないことも無いけど、治癒魔法を使うとその術者は命を削るらしいんだ、だから治癒魔法使いは他の魔法使いに比べてかなり少ないと言われているのさ」
予想外な答えに、イバラは心底驚いた。
「でも、どうしてこの力が血法だとアグネロは分かったんだろ。アグネロの怪我に触れた時に、初めて治癒の力が作動したの」
「まあ単純に考えて、そんな特別な力は魔法か血法しかないし、治癒は魔法ではほぼ有り得ないから血法だということでしょう。特に、自分の力に気付けなかったのなら、沢山努力して身につける魔法ではなく、潜在的な血法だと結びつけたんだね」
「なるほどー」
ヒマレは胸のどこかに引っかがっていた、アグネロが何故自分の力をロイヤルと断定させたのかという疑問が、ハラリと消え去りスッキリした。
「この車に乗っているのが、3人ともロイヤルだなんて、なんだか変な感じだね。僕らも見た目は普通の若者なのにね」
「そうね、まぁまだ私は自分の力をコントロールできないけどね」
そう言って、ヒマレは舌をペロっとだした。可愛い。
「よーし、そろそろだよ。今日は夜だから暗くてあまり分からないけどね」
「え、どれどれ!」
10年前の話に出てきた、アクアドームを見たくて仕方ないヒマレは身を乗り出し、前方を眺めた。そして遠くの方に見つけたそれは、とてつもないインパクトであった。まるでおもちゃのアクアドームをそのまま大きくしたような見た目で、海の中に煌めく街があるようで、車はどんどん水の壁へと近づいて行く。
「わー、とても綺麗ね。幻想的ー!」
キラキラに煌めく水郷街を見て、ヒマレの瞳もキラキラに光輝いていた。
「さて、今からスピード出すから、しっかり掴まっててね」
「え…スピード?トンネルが見当たらないけど、トンネルって確か1つしかなかったわよね?」
「トンネル?それなら、この反対側だよ?それじゃ、いくよ」
「まさか」
「そう! その、ま・さ・か」
イバラはアクセルペダルをベタ踏みし、車はスピード全開で走り出す。そして、水の壁へと迷うことなく一直線。
「うぎゃー! ぶつかるー! 死ぬー!」
泣き叫ぶヒマレの横では、スヤスヤとお眠りするアグネロ。彼に耳は無いのか。
ヒマレの叫びなんてお構いなく、車は壁へと猛スピードのまま突っ込んでいき、ゴボゴボゴボ……とうねりを鳴らしながら、水の壁の中へと侵入した。そして、車は通常の速度に戻り、水の壁の中を平然と走っていた。
「あれ、生きてる……なに、どーゆーことよ」
一瞬だけ死を覚悟したヒマレは、水中で車が普通に走行している現実が受け入れられないでいた。
「あっはっはっは! ヒマレちゃん叫びすぎ」
イバラは、ヒマレの必死の形相が可笑しくてたまらなかった。
「どうなってるのこれ! 流されるか潰れるかするかと思ったわよ!」
ヒマレは怒っている。そう、とても怒っている。
「ごめんごめん。これは僕の力だよ。車の表面に、微量の水をコーティングしてあるんだ。だから周りから、どんな水圧で押されようが、水流が来ようが、全て跳ね返して無効化したのさ」
「次元が違うわね、ロイヤルブラッドってのは」
「ヒマレちゃんもでしょ」
瞳孔が開きっぱなしで話すヒマレに対して、爽やかに微笑むイバラであった。それでも、アグネロは起きない。
そして、更に数秒走ったところで壁を抜け、水郷街の中へと出てきたのであった。ヒマレの目線の先には、とても綺麗な世界が広がっていた。まず、目に飛び込んで来たのは、やはり王宮。街の真ん中にそびえ立ち、今走っているところは砂浜のようである。
「とても、綺麗な街ね」
「そうかい?ありがとう。そんなに褒めてくれるなんて、やっぱり」
「愛じゃないし、そのくだり飽きた」
ヒマレの一言が、イバラの胸にグサリと突き刺さった。そして、車は砂浜を抜けるとお洒落な住宅街へと入っていった。
「そして、事故起こして眠った後、起きたら家のベッドにいたんだ。僕もアグも、うちの王宮の医務室のベッドにね」
「ってことは、お父さん達、助けに来てくれたのね」
ヒマレは、ハッピーエンドの映画の結末を聞くかのような表情をしている。
「うん。 でもね、後日こっぴどく叱られたよ。僕もアグも、それぞれの父親にね。それから、車のタイヤを今みたいな水タイヤに変えられて、子どもの血法能力と運転技術じゃ乗れないようにされたのさ」
「そりゃそうよね、親は心配だもの。えってか、水タイヤって何。気になりすぎる」
「あぁそっか、タイヤはまだ見てなかったね。降りた時に見てみてね。それでね、その時僕は父さんにこう言われたんだ……。情けない、年上なのに助けられて。お前が弱いからだ。もっと強くなって、今度はお前がアグネロを守ってやれ。ってね」
「へぇー、なるほど」
イバラとヒマレが話し始めて30分、アグネロは全く起きない。
「それでとりあえず、いつかまたあの花火が見えたらすぐに助けに行ってやる!って思ったんだよ。それから、10年……やっと借りが返せたかな」
「まあよくもそんな、いつ起こるか分からない事に、10年も神経尖らせていられたわね。凄いと思う」
ヒマレは、イバラはやっぱり、しっかり者で決して癖のある変な奴ではなかったと感じ、疑ってしまった事を後悔した。
「まあ神経尖らせすぎてただの花火大会に何度も行ったけどね。てかえっ!僕って凄い?その言葉、愛だよね?」
「ちゃうわい!」
ヒマレは後悔した事を後悔した。
「ヒマレちゃん、質問いいかい」
「なに?」
「ヒマレちゃんは、ロイヤルブラッドって言ってたけど、何の属性?」
イバラは、一番気になっていた事をヒマレに尋ねた。
「んー、私もアグネロに会うまでは自分がロイヤルだなんて知らなかった。私の属性?能力?治癒みたいだよ」
「治癒!?それは驚いた。治癒は魔法で練れないことも無いけど、治癒魔法を使うとその術者は命を削るらしいんだ、だから治癒魔法使いは他の魔法使いに比べてかなり少ないと言われているのさ」
予想外な答えに、イバラは心底驚いた。
「でも、どうしてこの力が血法だとアグネロは分かったんだろ。アグネロの怪我に触れた時に、初めて治癒の力が作動したの」
「まあ単純に考えて、そんな特別な力は魔法か血法しかないし、治癒は魔法ではほぼ有り得ないから血法だということでしょう。特に、自分の力に気付けなかったのなら、沢山努力して身につける魔法ではなく、潜在的な血法だと結びつけたんだね」
「なるほどー」
ヒマレは胸のどこかに引っかがっていた、アグネロが何故自分の力をロイヤルと断定させたのかという疑問が、ハラリと消え去りスッキリした。
「この車に乗っているのが、3人ともロイヤルだなんて、なんだか変な感じだね。僕らも見た目は普通の若者なのにね」
「そうね、まぁまだ私は自分の力をコントロールできないけどね」
そう言って、ヒマレは舌をペロっとだした。可愛い。
「よーし、そろそろだよ。今日は夜だから暗くてあまり分からないけどね」
「え、どれどれ!」
10年前の話に出てきた、アクアドームを見たくて仕方ないヒマレは身を乗り出し、前方を眺めた。そして遠くの方に見つけたそれは、とてつもないインパクトであった。まるでおもちゃのアクアドームをそのまま大きくしたような見た目で、海の中に煌めく街があるようで、車はどんどん水の壁へと近づいて行く。
「わー、とても綺麗ね。幻想的ー!」
キラキラに煌めく水郷街を見て、ヒマレの瞳もキラキラに光輝いていた。
「さて、今からスピード出すから、しっかり掴まっててね」
「え…スピード?トンネルが見当たらないけど、トンネルって確か1つしかなかったわよね?」
「トンネル?それなら、この反対側だよ?それじゃ、いくよ」
「まさか」
「そう! その、ま・さ・か」
イバラはアクセルペダルをベタ踏みし、車はスピード全開で走り出す。そして、水の壁へと迷うことなく一直線。
「うぎゃー! ぶつかるー! 死ぬー!」
泣き叫ぶヒマレの横では、スヤスヤとお眠りするアグネロ。彼に耳は無いのか。
ヒマレの叫びなんてお構いなく、車は壁へと猛スピードのまま突っ込んでいき、ゴボゴボゴボ……とうねりを鳴らしながら、水の壁の中へと侵入した。そして、車は通常の速度に戻り、水の壁の中を平然と走っていた。
「あれ、生きてる……なに、どーゆーことよ」
一瞬だけ死を覚悟したヒマレは、水中で車が普通に走行している現実が受け入れられないでいた。
「あっはっはっは! ヒマレちゃん叫びすぎ」
イバラは、ヒマレの必死の形相が可笑しくてたまらなかった。
「どうなってるのこれ! 流されるか潰れるかするかと思ったわよ!」
ヒマレは怒っている。そう、とても怒っている。
「ごめんごめん。これは僕の力だよ。車の表面に、微量の水をコーティングしてあるんだ。だから周りから、どんな水圧で押されようが、水流が来ようが、全て跳ね返して無効化したのさ」
「次元が違うわね、ロイヤルブラッドってのは」
「ヒマレちゃんもでしょ」
瞳孔が開きっぱなしで話すヒマレに対して、爽やかに微笑むイバラであった。それでも、アグネロは起きない。
そして、更に数秒走ったところで壁を抜け、水郷街の中へと出てきたのであった。ヒマレの目線の先には、とても綺麗な世界が広がっていた。まず、目に飛び込んで来たのは、やはり王宮。街の真ん中にそびえ立ち、今走っているところは砂浜のようである。
「とても、綺麗な街ね」
「そうかい?ありがとう。そんなに褒めてくれるなんて、やっぱり」
「愛じゃないし、そのくだり飽きた」
ヒマレの一言が、イバラの胸にグサリと突き刺さった。そして、車は砂浜を抜けるとお洒落な住宅街へと入っていった。
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