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14日目③
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綻んだ口元を隠すように片手で顔を覆ったレオナードに、私は一歩踏み込んで更に同意を求めた。
「私が嫌って言った理由わかってくれた!?私、あなたの使用人を侮辱したつもりはないのよっ」
レオナードの顔を覗き込んでそう言えば、彼はちょっと身を引きながらも、きちんと頷いてくれた。というわけで、私は畳みかけるように、勢いはそのままで言葉を重ねた。
「ということだから、余所行きモードでのダンスはできないわ。諦めて」
「そう言われても、私としては納得できない」
「もうっ」
ここは流れで、是と首を縦に振って欲しかった。思わず子供のように、頬を膨らませ、ぷいっと横を向いてしまう。
そんな中、レオナードはぽつりと呟いた。
「白桃のプティング」
「は?」
脈絡もない名詞に戸惑いを覚えて、レオナードを伺い見る。けれど、眼前の彼は表情を変えないまま、再び唇を動かした。
「ベリーのチーズケーキにワッフルサンド」
「へ?」
「オムレットにキャラメルブリュレ、ロールケーキ、カヌレ、モンブラン、マシュマロ、ジェラート、フィナンシェ、フォンダンショコラ、マカロン、ウエハース、クリームホーン、サラバン、サントノーレ………────」
「ちょっと待った」
流れるように紡ぐレオナード言葉を遮って、私はおずおずと問いかけた。
「………………レオナード、一体、あなた何を召喚させる気なの?」
そう、もうこれは何かの魔術を詠唱しているようにしか聞こえない。あ、もしかして、レオナードは私に暗示をかけようとしているのだろうか。
奇行と呼んでもおかしくない彼の行動に思わず狼狽えて一歩身を引いたその時、レオナードは表情を和らげてこう言った。
「スウィーツさ」
「スウィーツ?」
オウム返しに問うた私に、彼は表情を艶やかなものに変えた。
「今日は夜会の前日だから、決起大会という意味も込めて、今述べた全てのスウィーツを用意させてもらった」
「何ですって!?」
叫んだ瞬間、くらりと目眩を覚えてしまう。召喚魔法だと思ったそれが、未知なるスウィーツだったなんて、誰が想像できようか。
そして私はまだ見ぬそれらに思いを馳せ、じゅるりと涎が出てしまう。
そんな私にレオナードは表情を改め、ぴしりと人差し指を立てた。
「ただし、これを口にする為には」
「わかっているわ、レオナード。私次第ということなのね」
レオナードの言葉に被せるようにそう言えば、彼は是とも、否とも、口にすることはしない。
ただ、優雅に片足を一歩後ろに引いて、片手を自身の胸に添えた。そして、お見合いの際に見せた笑みを浮かべこう言った。
「美しいミリア嬢、私と一曲踊ってもらえますか?」
そう言って、私より遥かに大きな手を伸ばした。その手はいつの間にか手袋がはめられていた。
なるほど。そういうことなら、受けて立とう。
「嬉しいわ、レオナード」
そして私も、滅多に見せない余所行きの笑みを浮かべて、彼の手に自分の手を重ねた。
それを合図に私達は、ボールルームの中央に立つ。レオナードは自然な流れで私の腰に手を回す。互いにい視線を絡み合わせ、私達はぴったりと息を合わせて、ステップを踏み始めた。
さて、本気の私のダンスの結果についてだけれど────大量のスウィーツをさすがに全部は食べきれず、お土産にしてもらった。と言えば、伝わるだろうか。
「私が嫌って言った理由わかってくれた!?私、あなたの使用人を侮辱したつもりはないのよっ」
レオナードの顔を覗き込んでそう言えば、彼はちょっと身を引きながらも、きちんと頷いてくれた。というわけで、私は畳みかけるように、勢いはそのままで言葉を重ねた。
「ということだから、余所行きモードでのダンスはできないわ。諦めて」
「そう言われても、私としては納得できない」
「もうっ」
ここは流れで、是と首を縦に振って欲しかった。思わず子供のように、頬を膨らませ、ぷいっと横を向いてしまう。
そんな中、レオナードはぽつりと呟いた。
「白桃のプティング」
「は?」
脈絡もない名詞に戸惑いを覚えて、レオナードを伺い見る。けれど、眼前の彼は表情を変えないまま、再び唇を動かした。
「ベリーのチーズケーキにワッフルサンド」
「へ?」
「オムレットにキャラメルブリュレ、ロールケーキ、カヌレ、モンブラン、マシュマロ、ジェラート、フィナンシェ、フォンダンショコラ、マカロン、ウエハース、クリームホーン、サラバン、サントノーレ………────」
「ちょっと待った」
流れるように紡ぐレオナード言葉を遮って、私はおずおずと問いかけた。
「………………レオナード、一体、あなた何を召喚させる気なの?」
そう、もうこれは何かの魔術を詠唱しているようにしか聞こえない。あ、もしかして、レオナードは私に暗示をかけようとしているのだろうか。
奇行と呼んでもおかしくない彼の行動に思わず狼狽えて一歩身を引いたその時、レオナードは表情を和らげてこう言った。
「スウィーツさ」
「スウィーツ?」
オウム返しに問うた私に、彼は表情を艶やかなものに変えた。
「今日は夜会の前日だから、決起大会という意味も込めて、今述べた全てのスウィーツを用意させてもらった」
「何ですって!?」
叫んだ瞬間、くらりと目眩を覚えてしまう。召喚魔法だと思ったそれが、未知なるスウィーツだったなんて、誰が想像できようか。
そして私はまだ見ぬそれらに思いを馳せ、じゅるりと涎が出てしまう。
そんな私にレオナードは表情を改め、ぴしりと人差し指を立てた。
「ただし、これを口にする為には」
「わかっているわ、レオナード。私次第ということなのね」
レオナードの言葉に被せるようにそう言えば、彼は是とも、否とも、口にすることはしない。
ただ、優雅に片足を一歩後ろに引いて、片手を自身の胸に添えた。そして、お見合いの際に見せた笑みを浮かべこう言った。
「美しいミリア嬢、私と一曲踊ってもらえますか?」
そう言って、私より遥かに大きな手を伸ばした。その手はいつの間にか手袋がはめられていた。
なるほど。そういうことなら、受けて立とう。
「嬉しいわ、レオナード」
そして私も、滅多に見せない余所行きの笑みを浮かべて、彼の手に自分の手を重ねた。
それを合図に私達は、ボールルームの中央に立つ。レオナードは自然な流れで私の腰に手を回す。互いにい視線を絡み合わせ、私達はぴったりと息を合わせて、ステップを踏み始めた。
さて、本気の私のダンスの結果についてだけれど────大量のスウィーツをさすがに全部は食べきれず、お土産にしてもらった。と言えば、伝わるだろうか。
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