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26日目①
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.。*゚+.*.。 26日目 ゚+..。*゚+
「ミリア嬢、確認だが、君の父上は軍人上がりだったな」
「ええ、そうよ。そして眉間から頬にかけて傷があるわ。ちなみにその傷をつけた敵兵を、素手で殴り殺したとか、闇に葬ったとか」
「そ、そうか。か、確認だが、君の父上は少々短気だったな」
「ええ、でも少々ではなく、かなりよ。それに神経質で厳格。ルールを守る事に固執している部分があって、ルール違反をする人がどうしても許せないらしいわ。ついでに言うと、そのルールっていうのが、父上が決めたルールだから厄介なの」
「…………なるほど。確認を重ねて悪いが、君の父上は、貴族社会についてどう思っている?」
「くだらない、この一言ね」
「…………そうか。愚問だが、私が生きて帰れる確率を聞いても良いか?」
「そうね、神のみぞ知る、って感じかしら」
「……………………………………」
言葉を失くして遠くを見つめるレオナード。そしてそんな彼を見つめる私。
東屋で向かい合う私達の取る動作は同じかもしれないけれど、きっと考えていることは全く別の事だろう。
レオナードはノリと勢いで言ってしまったことを今になって、絶対に後悔しているはず。そして私は、一体全体、なんでこんな流れになってしまったのだろうと、根本的なことを考えている。
そう、これは遡ること、昨日の話───。
諸般の事情で、婚約破棄というか、契約を破棄するよう迫った私だったけれど、結局レオナードは頷くことはなかった。
そしてあろうことか、こんなことまで言いだしてしまったのだ。
『自分が、父上とサシで話をつけてくる』と。
正直、耳を疑った。いや、もっと正直に言うと、そんなことを口にするレオナードの精神状態を疑ったというか、かなり心配した。
そしてなんとか思い留まって貰おうと、あの手この手を使ったけれど、どうあってもレオナードの意志は硬かった。
しかもレオナードは、父上とどんな話をするのかすら教えてくれない始末。ただ、『大丈夫、心配することはない』と『どんなことがあっても、君の未来を守る』の2点を繰り返すのみ。
…………その言葉は素直に嬉しかった。でも、大丈夫な要素はこれっぽちもないし、心配する要素しかない。ついでに言うと、私の未来は自分でなんとかすると決めているので守らなくても、ごにょごにょ…………と思ってしまっている。
でも強い決心をしてしまったレオナードには、私の言葉は届かない。何ていうか暖簾に腕押し?牛の耳に念仏?そんな感じ。
「レオナード、今なら引き返せるわよ」
いつまで経っても最果ての彼方を見つめる彼に向かい、私は【もう良いんだよ】的な微笑を浮かべ、そう囁く。
けれど、そう言われた側のレオナードは露骨に顔を顰めた。
「言っている意味がわからない」
「…………あのね、私、あなたが屍になれば良いって思ったことは何度もあるけれど、本当に死ねばいいなんて願ったことは一度もないわ」
「…………ああ、そうか。だから私は今でも生きていられるのか」
妙なところで納得するレオナードに、私も彼と同じように顔を顰めてしまう。
「あのねえ、レオナード。そんなことを関心するくらいなら────」
「とにかく行ってくる」
そう言ってレオナードはこの話を無理矢理終わらすように、おもむろに席を立った。
そして立ち上がったまま、小首を傾げ、世間話をするような口調で問うてきた。
「君はどうする?ミリア嬢。ここでゆっくり過ごしても良いし、以前のように、君の為に馬車を用意するから買い物を楽しんできても良い。ああ、そうだ。今日はデリックが屋敷にいるから…………ダーツの的にして戯れても良いぞ?」
最後の提案はかなり惹かれるものだった。────思わず頷きかけた私だったけれど、静かに首を横に振った。
「素敵な提案をありがとう。でも、デリックさんをダーツの的にしても、今の私だったら、急所を狙ってしまうから、一回で終わってしまうわ。だから、もう少しここに居させて。お茶とお菓子をいただきながら考えるわ」
にこりと笑ってそう言えば、レオナードもちょっと口の端を持ち上げて頷いた。
「では、本当に行ってくる。…………ミリア嬢、明日も会ってくれるか?」
「ええ、もちろんよ、レオナード。…………あなたがこの世にいてくれるなら、ね?」
まるで戦地に赴くような表情をするレオナードは、もう覚悟を決めてしまったのだろう。なら私は黙って見送るしかない。
そう思って、軽いジョークを交えて返事をしたけれど、レオナードはとても変な顔をしてしまった。
「ミリア嬢、確認だが、君の父上は軍人上がりだったな」
「ええ、そうよ。そして眉間から頬にかけて傷があるわ。ちなみにその傷をつけた敵兵を、素手で殴り殺したとか、闇に葬ったとか」
「そ、そうか。か、確認だが、君の父上は少々短気だったな」
「ええ、でも少々ではなく、かなりよ。それに神経質で厳格。ルールを守る事に固執している部分があって、ルール違反をする人がどうしても許せないらしいわ。ついでに言うと、そのルールっていうのが、父上が決めたルールだから厄介なの」
「…………なるほど。確認を重ねて悪いが、君の父上は、貴族社会についてどう思っている?」
「くだらない、この一言ね」
「…………そうか。愚問だが、私が生きて帰れる確率を聞いても良いか?」
「そうね、神のみぞ知る、って感じかしら」
「……………………………………」
言葉を失くして遠くを見つめるレオナード。そしてそんな彼を見つめる私。
東屋で向かい合う私達の取る動作は同じかもしれないけれど、きっと考えていることは全く別の事だろう。
レオナードはノリと勢いで言ってしまったことを今になって、絶対に後悔しているはず。そして私は、一体全体、なんでこんな流れになってしまったのだろうと、根本的なことを考えている。
そう、これは遡ること、昨日の話───。
諸般の事情で、婚約破棄というか、契約を破棄するよう迫った私だったけれど、結局レオナードは頷くことはなかった。
そしてあろうことか、こんなことまで言いだしてしまったのだ。
『自分が、父上とサシで話をつけてくる』と。
正直、耳を疑った。いや、もっと正直に言うと、そんなことを口にするレオナードの精神状態を疑ったというか、かなり心配した。
そしてなんとか思い留まって貰おうと、あの手この手を使ったけれど、どうあってもレオナードの意志は硬かった。
しかもレオナードは、父上とどんな話をするのかすら教えてくれない始末。ただ、『大丈夫、心配することはない』と『どんなことがあっても、君の未来を守る』の2点を繰り返すのみ。
…………その言葉は素直に嬉しかった。でも、大丈夫な要素はこれっぽちもないし、心配する要素しかない。ついでに言うと、私の未来は自分でなんとかすると決めているので守らなくても、ごにょごにょ…………と思ってしまっている。
でも強い決心をしてしまったレオナードには、私の言葉は届かない。何ていうか暖簾に腕押し?牛の耳に念仏?そんな感じ。
「レオナード、今なら引き返せるわよ」
いつまで経っても最果ての彼方を見つめる彼に向かい、私は【もう良いんだよ】的な微笑を浮かべ、そう囁く。
けれど、そう言われた側のレオナードは露骨に顔を顰めた。
「言っている意味がわからない」
「…………あのね、私、あなたが屍になれば良いって思ったことは何度もあるけれど、本当に死ねばいいなんて願ったことは一度もないわ」
「…………ああ、そうか。だから私は今でも生きていられるのか」
妙なところで納得するレオナードに、私も彼と同じように顔を顰めてしまう。
「あのねえ、レオナード。そんなことを関心するくらいなら────」
「とにかく行ってくる」
そう言ってレオナードはこの話を無理矢理終わらすように、おもむろに席を立った。
そして立ち上がったまま、小首を傾げ、世間話をするような口調で問うてきた。
「君はどうする?ミリア嬢。ここでゆっくり過ごしても良いし、以前のように、君の為に馬車を用意するから買い物を楽しんできても良い。ああ、そうだ。今日はデリックが屋敷にいるから…………ダーツの的にして戯れても良いぞ?」
最後の提案はかなり惹かれるものだった。────思わず頷きかけた私だったけれど、静かに首を横に振った。
「素敵な提案をありがとう。でも、デリックさんをダーツの的にしても、今の私だったら、急所を狙ってしまうから、一回で終わってしまうわ。だから、もう少しここに居させて。お茶とお菓子をいただきながら考えるわ」
にこりと笑ってそう言えば、レオナードもちょっと口の端を持ち上げて頷いた。
「では、本当に行ってくる。…………ミリア嬢、明日も会ってくれるか?」
「ええ、もちろんよ、レオナード。…………あなたがこの世にいてくれるなら、ね?」
まるで戦地に赴くような表情をするレオナードは、もう覚悟を決めてしまったのだろう。なら私は黙って見送るしかない。
そう思って、軽いジョークを交えて返事をしたけれど、レオナードはとても変な顔をしてしまった。
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