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4日目①
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.。*゚+.*.。 4日目 ゚+..。*゚+
「聞いてくれ、ミリア嬢。彼女にもう会いに来るなと言われてしまった」
「それは残念だったわね。あ、これ食べないなら貰って良い?」
「.........傷心の俺のケーキをねだる君の神経を疑うよ。ほら、どうぞ」
「ありがとう。ま、好き嫌いは誰にだってあるし、選ぶ権利だって、身分に関係なくあるものよ」
「随分失礼なことを言ってくれるな、君」
「あら、ケーキのお話よ?」
「………………………」
声高々に【やればできる子発言】をしたのは良いけれど、光の速さで撃沈してしまったレオナードはぐぅっと言葉に詰まった。
そんな彼を横目に、私は彼のケーキもしっかりと頬張る。うん、今日もシェフのスウィーツは絶品だ。見た目はシンプルなチーズケーキだけれど、濃厚なチーズとレモンのさわやかな酸味が絶妙で、フォークを持つ手が止まらない。いやもう、ほんとに止まらない。
「……ミリア嬢、お食事中に申し訳ないが………」
「なあに?」
こちらが引くほど下手に出てきたレオナードを無下にするのは、さすがに良心が咎めるので、フォークを手にしたまま返事をする。
「彼女は私のことが嫌いなのだろうか………」
「…………………………」
知るか、そんなこと。
なんてことは口には出せないし、この質問にそれ以外の答えが見つからず、私は口の中に残っているチーズケーキをごくりと飲み込んだ。そして、お茶も一口飲む。あ、今日はオレンジティーなんだ。美味しい。じゃなくって………。
「えっと私、お二人の馴れ初めも、彼女さんのことも何一つ知らないので、質問には答えられないわ」
至極真っ当な返事をすれば、レオナードははっと我に返った。
「すまない。確かにそうだったな。君とは何だか何十年も一緒にいるような気がして、すっかり彼女のことを説明したつもりでいた」
「何十年って、私、まだ生まれて17年しか経っていないんですけど。前世からのお知り合い的なノリで言われても、私、あなたとそんな長い付き合いをした記憶もなければ、そんな長い付き合いをしたいとも思っていないわ」
これまた至極真っ当なことを口にすれば、なぜかレオナードはジト目で私を睨みつけた。
「本当に、君は息をするように毒を吐くな。わかっている、君と前世からの知り合いだなんて、こちらがお断りだ。少々大げさに言っただけじゃないか。言葉のまま取らないでくれたまえ」
ふんっと鼻を鳴らしたレオナードに、イラっとする。そもそも、クソつまらない質問をしたのは、彼からだ。それを丁寧に返せば、なぜか苦情を言われてしまった。まったくもって腑に落ちない。
「ねえ、レオナードさま」
「なんだ、謝罪なら聞くぞ」
「いいえ、謝罪なんて微塵も口にする気はありませんわ。それよりお外に出て、少々頭を冷やしたらいかかですか?」
そう言って顎で外を示せば、レオナードはさっと顔色が変わった。
ちなみに今日の天気は雷雨だ。そんな中、私は今日も今日とて彼の屋敷に足を運んでいる。貴族の感覚なら今日は天災ってことで、お休みでもアリじゃね?と思いつつこうして今日も彼と会っているのだ。本当に我ながら律儀なことだ。
だがしかし、レオナードの苦情を甘んじて受け止める程、私はお人よしではない。
幸いにして今日は豪雨なので、噴水にダイブして頭を冷やしてもらう必要はない。ちょっと外に出れは、あっという間にずぶ濡れになるだろう。そして、謝罪をするのはどっちなのかをしっかり考えれば良い。けれど───。
「ミリア嬢、私の失言だった。申し訳なかった」
と、レオナードは平身低頭で許しを乞うてきた。………………どうやら、お貴族様は、濡れることが、ことのほかお嫌であるらしい。また私はどうでも良いことを一つ学んでしまった。
「聞いてくれ、ミリア嬢。彼女にもう会いに来るなと言われてしまった」
「それは残念だったわね。あ、これ食べないなら貰って良い?」
「.........傷心の俺のケーキをねだる君の神経を疑うよ。ほら、どうぞ」
「ありがとう。ま、好き嫌いは誰にだってあるし、選ぶ権利だって、身分に関係なくあるものよ」
「随分失礼なことを言ってくれるな、君」
「あら、ケーキのお話よ?」
「………………………」
声高々に【やればできる子発言】をしたのは良いけれど、光の速さで撃沈してしまったレオナードはぐぅっと言葉に詰まった。
そんな彼を横目に、私は彼のケーキもしっかりと頬張る。うん、今日もシェフのスウィーツは絶品だ。見た目はシンプルなチーズケーキだけれど、濃厚なチーズとレモンのさわやかな酸味が絶妙で、フォークを持つ手が止まらない。いやもう、ほんとに止まらない。
「……ミリア嬢、お食事中に申し訳ないが………」
「なあに?」
こちらが引くほど下手に出てきたレオナードを無下にするのは、さすがに良心が咎めるので、フォークを手にしたまま返事をする。
「彼女は私のことが嫌いなのだろうか………」
「…………………………」
知るか、そんなこと。
なんてことは口には出せないし、この質問にそれ以外の答えが見つからず、私は口の中に残っているチーズケーキをごくりと飲み込んだ。そして、お茶も一口飲む。あ、今日はオレンジティーなんだ。美味しい。じゃなくって………。
「えっと私、お二人の馴れ初めも、彼女さんのことも何一つ知らないので、質問には答えられないわ」
至極真っ当な返事をすれば、レオナードははっと我に返った。
「すまない。確かにそうだったな。君とは何だか何十年も一緒にいるような気がして、すっかり彼女のことを説明したつもりでいた」
「何十年って、私、まだ生まれて17年しか経っていないんですけど。前世からのお知り合い的なノリで言われても、私、あなたとそんな長い付き合いをした記憶もなければ、そんな長い付き合いをしたいとも思っていないわ」
これまた至極真っ当なことを口にすれば、なぜかレオナードはジト目で私を睨みつけた。
「本当に、君は息をするように毒を吐くな。わかっている、君と前世からの知り合いだなんて、こちらがお断りだ。少々大げさに言っただけじゃないか。言葉のまま取らないでくれたまえ」
ふんっと鼻を鳴らしたレオナードに、イラっとする。そもそも、クソつまらない質問をしたのは、彼からだ。それを丁寧に返せば、なぜか苦情を言われてしまった。まったくもって腑に落ちない。
「ねえ、レオナードさま」
「なんだ、謝罪なら聞くぞ」
「いいえ、謝罪なんて微塵も口にする気はありませんわ。それよりお外に出て、少々頭を冷やしたらいかかですか?」
そう言って顎で外を示せば、レオナードはさっと顔色が変わった。
ちなみに今日の天気は雷雨だ。そんな中、私は今日も今日とて彼の屋敷に足を運んでいる。貴族の感覚なら今日は天災ってことで、お休みでもアリじゃね?と思いつつこうして今日も彼と会っているのだ。本当に我ながら律儀なことだ。
だがしかし、レオナードの苦情を甘んじて受け止める程、私はお人よしではない。
幸いにして今日は豪雨なので、噴水にダイブして頭を冷やしてもらう必要はない。ちょっと外に出れは、あっという間にずぶ濡れになるだろう。そして、謝罪をするのはどっちなのかをしっかり考えれば良い。けれど───。
「ミリア嬢、私の失言だった。申し訳なかった」
と、レオナードは平身低頭で許しを乞うてきた。………………どうやら、お貴族様は、濡れることが、ことのほかお嫌であるらしい。また私はどうでも良いことを一つ学んでしまった。
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