11 / 45
寄り道の章
イケメンに八つ当たりしてみました②
しおりを挟む
さて私はどうしたらいいのだろうか。
すぐに戻ると言って去ってしまったこの屋敷の主を待つけれど、なかなか戻ってこない。小脇に抱えた本の束し視線を落とし、私は小さくため息をつく。
いっそもう待たずに部屋に戻ってしまおうか。お詫びも兼ねて渡したいものがあると彼は言っていたけれど、これ以上私に近づかないのが、何よりのお詫びということを是非とも気付いて欲しい。
けれど、それをシュウトきちんと理解させることは至難の業だ。ついさっきあれ程はっきりと伝えたけれど、彼は身勝手な言い分をのたまって、何が悪いと開き直っていた。正直言って手に負えない。
……まぁいいや。やっぱり部屋に戻って読書を再会しよう。そう思って、襖に手をかけた途端、視界の隅でシュウトが小走りにこちらに戻って来るのが見えた。心の中で思いっきり舌打ちをしてしまう、本当にタイミング悪い。
いやいやながらも、振り返ってシュウトと身体ごと向き合う。シュウトは背が高く、縁側に立つ私よりも、地面に立っているシュウトをのほうがまだ高い。
「待たせたな。瑠璃殿」
「……そうですね」
そんなことないです、と言うのが正解なのだろう。けれど、私は敢えて素直な気持ちを口にしてみる。
案の定、シュウトは苦笑いを浮かべた、ようだ。見上げるのが気が引けて、私は真っすぐ首を動かさずにいる。だから、シュウトの表情を確認していない、けれど彼が布を手にしているのが見える。これがお詫びの品なのだろうか。
予感的中、シュウトは、ふわりと手に持っていた布を私に被せた。一瞬、視界を覆ったそれは、とても鮮やかな緋色の衣だった。
「これ、私に……?」
「ああ。夜着のままでは、目のやり場に困るからな。他の衣も、急ぎ仕立てているが、ひとまず、この衣で我慢してくれ」
そう言うとシュウトは少し後ろに下がり、満足そうに頷いた。
私が日本から着ていた服は破れていたし、怪我のせいで袖には落ちない染みができてしまった。ということで、私は夜着と呼ばれている寝巻きで過ごしている。
まぁ、浴衣だと思えば別に気にならなかったけど、コキヒ国では恥ずかしい格好になるのだろう。どうやら私は、ずっと見苦しい恰好をしていたことになる。
「良く似合うな」
シュウトの嬉しそうな声につられ、私も衣を少し持ち上げてみる。
それは、肌触りの良い上質な絹の衣だった。緋色の生地の中に牡丹と蝶の刺繍がされていて、その隙間を細かい唐草の模様が染められている。
コキヒ国の知識が少ない私だってわかる。これは、超高級品だ。
「……綺麗な衣ね、でも……」
そう言ってみたものの、私の口調は浮かないものだった。
だって気付いてしまったのだ。これは私以外の誰かに渡すための衣だったのだろう。こんな短期間で用意できる代物ではない。
「でも、どうしたのだ?」
シュウトの表情も、みるみるうちに曇っていく。
「これは、本当に渡したい人にあげてください。私には過ぎるものです」
そう言って、私は丁寧に衣を脱いでシュウトに付き返した。けれど、シュウトはそれを受け取ってはくれない。代わりにとんでもないことを口にした。
「なら、捨てるぞ」
「え!?」
斬り捨てるような鋭いシュウトの言葉に、私は驚いて声を上げてしまった。
「これは瑠璃殿の為にあるものだ。そなたが要らないというならば、これは捨てるしかない。瑠璃殿以外の者に袖を通させるのは、不愉快だ」
眉をしかめてひどく不快な顔をするシュウトに、私はかける言葉がみつからない。
「何か好きな柄はあるか?他に欲しいものがあったら、何でも言ってくれ」
ぐいっと顔を近づけてくるショウトに思わず仰け反ってしまう。
露骨にムッとしたシュウトに、無言のままでいるのは更に良くないと判断する。けれど、私はこの場に添う言葉が見つからない。なぜらなその質問の前に、聞きたいことがあるからだ。なぜ、私にこんなに良くしてくれるのだろう、と。
本を読んで、多少はこの国のことを覚えた。
この世界は、まだ小競り合いが続いていて、民は苦しい生活を強いられている。皆、生きていくのが精一杯で他人に構う余裕なんてない。
まして、素性のわからない人間を介抱し、高価な物を与える余裕などないはずだ。
なのにシュウトは私に、替えの衣を用意しようとしてくれているし、ナギは、おいしいご飯を作ってくれ、気前よく本を貸し与えてくれる。
二人とも、ちゃんとわかってるのだろうか。そんなことをしてもらっても、私は何も返せないということを。
「…どうして?」
気付いたら、疑問に思っていたことを口にしていた。
「ん?」
漠然とした質問に、意味が分からないのだろう、シュウトは首を傾げる。
「どうしてシュウトは、私にこんなに良くしてくれるの?」
今度は、シュウトの目を見つめて問いかけた。
わかりやすく、それ相応の対価を求めてくれるなら、私はそれを受け入れることも、拒む事ができる。もしくは、シュウトが富豪の者だったら、また話は違う。物の価値は人によって違うから。
でも、この屋敷は広いけれど、シュウトとナギの身なりはとても質素なものだ、どう考えても裕福な生活をしているとは思えない。
そんなことをつらつら考えていられる程、間が空いているのにシュウトからは返事が貰えない。
肝心の本人はなぜか片手で顔を覆って、何か呻いている。良く観れば、首筋はほんのり朱を差している。そんなに難しい質問をしてしまったのだろうか。
溜まりかねて首を傾げた私に、やっとシュウトは口を開いた。
「……好きだから」
「─────……………………………………………はぁ?」
さんざん待たされた挙句、想像の斜め上を行くシュウトの回答にに、私は随分間の抜けた返事をしてしまった。
そして思った。さすがに口には出せないけど───この人、本当は馬鹿なんじゃないのだろうか、と。
シュウトの屋敷に居候してまだそんなに経ってないけどハッキリ言って、私はこの人のことを苦手と思っている。なのに、当の本人は私を好きだと言っている。
恐ろしいほどの食い違いだ。
風神さんのおかげでこの世界でも会話での意思疎通ができていると思っていたけど、私とシュウトは気付かないうちに違うことを話していたのだろうか。全く意味がわからない。
それとも、現代にいた時に、チョットだけ聞いたことがある───いわゆる、シュウトは虐げられたり、意地悪をされたりするのが快感に思ってしまう人なのだろうか。
他人の趣味嗜好について、とやかく言うつもりはないけれど、私には門外漢だ。ただそう誤解されるようなことをしてきた自負は多少ある。さて、どうすればいいのだろう。
ちらりと、シュウトに視線を移すと、彼は未だに、決まりが悪そうにしながらもほんのりと顔が赤い。ひどく照れくさそうだ。
あれだけ強引かつ破廉恥な言動を繰り返してきたのに、今更、好きだと言っただけでここまでモジモジする意味がわからない。
「瑠璃殿、何か言ってくれないか」
縁側に上がって私に一歩踏み込むシュウトに、思わず2歩後ずさりする。彼の踏み込みは大きくて、そして迷いがない。2歩では、まだ近すぎる距離なので、もう一歩後ずさりしたら、シュウトは、あからさまに溜息をついて口をひらいた。
「あの時、あの桜の木の下で出会った。偶然かもしれないけれど、私は運命だと思っている。瑠璃殿は、そう思わないのか?」
シュウトの少し苛々した口調に、私は思わず半目になる。たちの悪い冗談だ。私は運命なんて信じていない。
それに、運命という言葉ほど胸糞悪いものはない。
すぐに戻ると言って去ってしまったこの屋敷の主を待つけれど、なかなか戻ってこない。小脇に抱えた本の束し視線を落とし、私は小さくため息をつく。
いっそもう待たずに部屋に戻ってしまおうか。お詫びも兼ねて渡したいものがあると彼は言っていたけれど、これ以上私に近づかないのが、何よりのお詫びということを是非とも気付いて欲しい。
けれど、それをシュウトきちんと理解させることは至難の業だ。ついさっきあれ程はっきりと伝えたけれど、彼は身勝手な言い分をのたまって、何が悪いと開き直っていた。正直言って手に負えない。
……まぁいいや。やっぱり部屋に戻って読書を再会しよう。そう思って、襖に手をかけた途端、視界の隅でシュウトが小走りにこちらに戻って来るのが見えた。心の中で思いっきり舌打ちをしてしまう、本当にタイミング悪い。
いやいやながらも、振り返ってシュウトと身体ごと向き合う。シュウトは背が高く、縁側に立つ私よりも、地面に立っているシュウトをのほうがまだ高い。
「待たせたな。瑠璃殿」
「……そうですね」
そんなことないです、と言うのが正解なのだろう。けれど、私は敢えて素直な気持ちを口にしてみる。
案の定、シュウトは苦笑いを浮かべた、ようだ。見上げるのが気が引けて、私は真っすぐ首を動かさずにいる。だから、シュウトの表情を確認していない、けれど彼が布を手にしているのが見える。これがお詫びの品なのだろうか。
予感的中、シュウトは、ふわりと手に持っていた布を私に被せた。一瞬、視界を覆ったそれは、とても鮮やかな緋色の衣だった。
「これ、私に……?」
「ああ。夜着のままでは、目のやり場に困るからな。他の衣も、急ぎ仕立てているが、ひとまず、この衣で我慢してくれ」
そう言うとシュウトは少し後ろに下がり、満足そうに頷いた。
私が日本から着ていた服は破れていたし、怪我のせいで袖には落ちない染みができてしまった。ということで、私は夜着と呼ばれている寝巻きで過ごしている。
まぁ、浴衣だと思えば別に気にならなかったけど、コキヒ国では恥ずかしい格好になるのだろう。どうやら私は、ずっと見苦しい恰好をしていたことになる。
「良く似合うな」
シュウトの嬉しそうな声につられ、私も衣を少し持ち上げてみる。
それは、肌触りの良い上質な絹の衣だった。緋色の生地の中に牡丹と蝶の刺繍がされていて、その隙間を細かい唐草の模様が染められている。
コキヒ国の知識が少ない私だってわかる。これは、超高級品だ。
「……綺麗な衣ね、でも……」
そう言ってみたものの、私の口調は浮かないものだった。
だって気付いてしまったのだ。これは私以外の誰かに渡すための衣だったのだろう。こんな短期間で用意できる代物ではない。
「でも、どうしたのだ?」
シュウトの表情も、みるみるうちに曇っていく。
「これは、本当に渡したい人にあげてください。私には過ぎるものです」
そう言って、私は丁寧に衣を脱いでシュウトに付き返した。けれど、シュウトはそれを受け取ってはくれない。代わりにとんでもないことを口にした。
「なら、捨てるぞ」
「え!?」
斬り捨てるような鋭いシュウトの言葉に、私は驚いて声を上げてしまった。
「これは瑠璃殿の為にあるものだ。そなたが要らないというならば、これは捨てるしかない。瑠璃殿以外の者に袖を通させるのは、不愉快だ」
眉をしかめてひどく不快な顔をするシュウトに、私はかける言葉がみつからない。
「何か好きな柄はあるか?他に欲しいものがあったら、何でも言ってくれ」
ぐいっと顔を近づけてくるショウトに思わず仰け反ってしまう。
露骨にムッとしたシュウトに、無言のままでいるのは更に良くないと判断する。けれど、私はこの場に添う言葉が見つからない。なぜらなその質問の前に、聞きたいことがあるからだ。なぜ、私にこんなに良くしてくれるのだろう、と。
本を読んで、多少はこの国のことを覚えた。
この世界は、まだ小競り合いが続いていて、民は苦しい生活を強いられている。皆、生きていくのが精一杯で他人に構う余裕なんてない。
まして、素性のわからない人間を介抱し、高価な物を与える余裕などないはずだ。
なのにシュウトは私に、替えの衣を用意しようとしてくれているし、ナギは、おいしいご飯を作ってくれ、気前よく本を貸し与えてくれる。
二人とも、ちゃんとわかってるのだろうか。そんなことをしてもらっても、私は何も返せないということを。
「…どうして?」
気付いたら、疑問に思っていたことを口にしていた。
「ん?」
漠然とした質問に、意味が分からないのだろう、シュウトは首を傾げる。
「どうしてシュウトは、私にこんなに良くしてくれるの?」
今度は、シュウトの目を見つめて問いかけた。
わかりやすく、それ相応の対価を求めてくれるなら、私はそれを受け入れることも、拒む事ができる。もしくは、シュウトが富豪の者だったら、また話は違う。物の価値は人によって違うから。
でも、この屋敷は広いけれど、シュウトとナギの身なりはとても質素なものだ、どう考えても裕福な生活をしているとは思えない。
そんなことをつらつら考えていられる程、間が空いているのにシュウトからは返事が貰えない。
肝心の本人はなぜか片手で顔を覆って、何か呻いている。良く観れば、首筋はほんのり朱を差している。そんなに難しい質問をしてしまったのだろうか。
溜まりかねて首を傾げた私に、やっとシュウトは口を開いた。
「……好きだから」
「─────……………………………………………はぁ?」
さんざん待たされた挙句、想像の斜め上を行くシュウトの回答にに、私は随分間の抜けた返事をしてしまった。
そして思った。さすがに口には出せないけど───この人、本当は馬鹿なんじゃないのだろうか、と。
シュウトの屋敷に居候してまだそんなに経ってないけどハッキリ言って、私はこの人のことを苦手と思っている。なのに、当の本人は私を好きだと言っている。
恐ろしいほどの食い違いだ。
風神さんのおかげでこの世界でも会話での意思疎通ができていると思っていたけど、私とシュウトは気付かないうちに違うことを話していたのだろうか。全く意味がわからない。
それとも、現代にいた時に、チョットだけ聞いたことがある───いわゆる、シュウトは虐げられたり、意地悪をされたりするのが快感に思ってしまう人なのだろうか。
他人の趣味嗜好について、とやかく言うつもりはないけれど、私には門外漢だ。ただそう誤解されるようなことをしてきた自負は多少ある。さて、どうすればいいのだろう。
ちらりと、シュウトに視線を移すと、彼は未だに、決まりが悪そうにしながらもほんのりと顔が赤い。ひどく照れくさそうだ。
あれだけ強引かつ破廉恥な言動を繰り返してきたのに、今更、好きだと言っただけでここまでモジモジする意味がわからない。
「瑠璃殿、何か言ってくれないか」
縁側に上がって私に一歩踏み込むシュウトに、思わず2歩後ずさりする。彼の踏み込みは大きくて、そして迷いがない。2歩では、まだ近すぎる距離なので、もう一歩後ずさりしたら、シュウトは、あからさまに溜息をついて口をひらいた。
「あの時、あの桜の木の下で出会った。偶然かもしれないけれど、私は運命だと思っている。瑠璃殿は、そう思わないのか?」
シュウトの少し苛々した口調に、私は思わず半目になる。たちの悪い冗談だ。私は運命なんて信じていない。
それに、運命という言葉ほど胸糞悪いものはない。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる