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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない
王様の願い事②
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私を拒絶した王様は、すぐに視線を横に向け、何か目配せをしている。
誰に?何の?そんなことを思ったけれど、すぐに軍服を着た一人の青年が美しい装飾がされた飾り箱を手にして、こちらに近づいて来た。よく見れば、アシュレイさんと同じ限りなく黒に近い紺色の軍服を着ている。そして、その青年は恭しく膝を付いて王様にそれを掲げた。
「これは私からのささやかな贈り物です。どうぞ受け取ってください」
そう言って軍服の青年から飾り箱を受け取った王様は、蓋を開けると私に差し出した。
顔を固定したまま、視線だけを下に落とす。そうすればそこには、息を呑む程に美しいブローチが納められていた。中央の薄紅色の透明な宝石には花のような紋章と、天使の羽のような彫刻がされていた。
花の名前は知らない。けれど、この部屋の扉にも、ここへ至る間の廊下にも何度もこの花を象った彫刻や刺繍は目にしてきた。だから、この花はこの国の紋章なのだろう。そして天使の羽のようなものは、時空の監視者達の腕に刻まれているもの。そして気付く。王様の願い事が何なのかを。
王様は私に国民ではなく客人という立場を受け入れて、このブローチを受け取れと言っているのだ。
嫌だなぁという感情が胸に湧き上がる。要求も宝石も撥ね付けて、私はこの国で地に足付けて生きていきたいと訴えたい。けれど、そうしてはいけないと止める冷静な自分もいる。
わかっている。これはクズ野郎を黙らせる最善の方法なのだ。
だって今、クズ野郎は私を睨んでいる。それはそれは悪鬼の表情で。絶対に受け取るな。何が何でも受け取るな。いやいっそ、天変地異でも起こって、この場がおじゃんになればいい。そんな感情を隠そうともせずに。いや、きっと隠そうとしても、隠しきれていないのだろう。それ程、彼にとって、これは望ましくない状況なのだ。
そう。ただの私ではいけないのだ。異世界の人間を、何者にも手が出せないような、地位のある人間にしないとけないのだ。
そしてそれができるのは、今は私しかいない。だから、私は個人的な、しかも幼稚な感情だけで動いてはいけない。そんなことをしてしまえば、取り返しのつかないことになってしまう。最善の策を選ばなければならないのだ。
………けれど、どうしたってそれを選ぶのは辛い。少しずつ積み上げてきたこの世界での自分の立ち位置が、あっという間に崩れ去ってしまうような気がしてならない。
そんな気持ちから、宝石をじっと見つめることしかできない。けれど、微動だにしない私に業を煮やしたのか、王様は少し前かがみになって口を開いた。
「アカリ、あなたは既に沢山の剣と盾をお持ちのようですが、これが一番強力です」
「え?」
思わず声を上げた私に、しーっと王様は黙るよう窘める。
王様のその言葉も、僅かな仕草にも感情があった。伝えきれないもどかしさと、焦りがその声音に乗っていた。そして、王様は自然に私の名を呼んだ。既に前から知っているかのように、自然に口から零れたのだ。
誰が私の名を教えたのだろう。私の名を知っているのは数えるほどの人間だ。そして、思い当たるのは、あの人しかいない。
「大丈夫、心配しないで」
今度は王様の吐息のような声が耳朶に届いた。温かみのある声だった。
おずおずと視線を上げれば、力強く王様は頷く。大丈夫、もう一度そう紡ぐかのように。そしてその声に背を押された私は、王様の願い事を叶えることを選んだ。
「………………ありがとうございます。受け取ります」
国賓らしく凛とした態度を取りたいけれど、声も、指先が震えてしまうのは致し方ない。けれど、私が飾り箱を手にした瞬間、王様は箱の中身を取り出してしまった。
そして身をかがめて、ブローチを私の胸へと付ける。
「本当は肌身離さず身に着けてほしかったから、そういうデザインのものを贈りたかったんだよ。でもね、後ろの時空の監視者に却下されてしまった。それに今だって君に触れた途端、すごい顔をしているよ。……………まったく、困った人だね」
器用にブローチを扱いながら、小声でそんなことを言う王様は、誰とは口にしない。でも、私は既に察しているので、思わず苦笑を浮かべてしまう。きっと心配性のあの人のこと、ブローチの針が私の皮膚に刺さるのではないかと、はらはらしているのだろう。まったく、それくらいで死んだりなんかしないのに。困った人だ。
そう、本当に困った人だ。
バルドゥールは、何でもかんでも先回りして心配ばかりしている。今回のことだってそうだ。曖昧にしていたのは、きっと私が客人と扱われることに対して、落ち込んだり悲しんだりすると思って口にしなかったのだろう。
………もしかして、包み隠さず説明をしたら、私が嫌だとごねると思ったのだろうか。ただ、もし仮にそう思ったとしても、あんな憂えた顔をするくらいなら、ちゃんと教えてくれれば良かったのに。これもまた、帰ったら聞いてもらう。
また一つ、彼と話したいことができた。
帰宅後の約束がまた一つ形となって、私はこんな場所なのに口元が綻んでしまう。
けれど、それはある意味、絶好のタイミングだった。
「喜んでいただけて幸いです。異世界のお嬢さん、これからあなたにとって、この滞在が幸多いものであることを祈っています」
再び無機質な声音に戻った王様は、そうはっきりと口にした。まるで、ここにいる全員に宣言するかのように。
そして背後にいる時空の監視者達が静かに立ち上がったのが気配で伝わった。そろそろ辞する頃合いなのだろう。
バルドゥールは、誰に向けても頭を下げる必要はないと言ったけど、やはりこのまま背を向けるのは違うような気がして、小さく頭を下げる。そうすれば王様は、ほんの少しだけ口元を綻ばせながら口を開いた。
「さぁ、下がりなさい」
再び王様は私だけに伝わる声音でそう囁いた。と同時に、すぐ背後にいたバルドゥールが、私の背に手を当て出口のほうへと誘う。けれど、その瞬間、王様はバルドゥールに何かを耳打ちした。
退室した私達は、再び長い廊下を歩き、衛兵から預けていた剣を受け取る。けれど、そのまま帰路に着くことはせず、目に付いた部屋へと足を踏み入れた。
「アカリ、悪いが少し席を外す。お前はルーク達と一緒に戻っていてくれ」
扉を閉めた途端、バルドゥールにそんなことを言われ、私は不安に駆られてしまう。
「バルドゥールさん、あの…………私、何か失敗をしてしまいましたか?」
「いいや、違う」
あっさりと私の言葉を否定したバルドゥールは、面倒この上ない表情を作りながらこう言った。
「ちょっとした野暮用だ」
「野望用?」
オウム返しに問うた私に、バルドゥールは微かに笑って頷いた。けれど、すぐ表情を一変させ、私のすぐ後ろにいる時空の監視者達に声を掛けた。
「お前たち、アカリに余計なことを吹き込むなよ。それから余計なことをするな。ただ任務として、アカリの警護だけをしていろ。くれぐれも、余計なことを吹き込むな」
あ、同じことを二回言った。
しかも、2回目の余計なことと言った瞬間、間違いなく上官の視線はルークを向いていた。もちろん、ルークは素直に頷いた。けれど───。
「……………親父かよ」
ぼそっと誰かがつぶやいた途端、空気が凍りついた。そして、ここにいた時空の監視者たちは青ざめた。
「今、何か言ったか?」
ぞっとするほど低い声でそう問うた上官に、部下たちは一斉に首を横に振った。
まったくこうなることはわかっているのだから、そんなことを言わなければ良いのに。と、思ったけれど、もちろん口には出さない。ちなみに不機嫌な上官を窘める気も、青ざめる部下たちを擁護する気もない。人畜無害という立ち位置でいるのが一番良い。
そんな気持ちで視線をあらぬ方向へ泳がす私だったけれど、朱色の髪の上官は表情を一変させ、私の名を呼んだ。
「アカリ、心配しなくても、すぐに戻る。……………帰りに、ルークの屋敷の寄ろう。会いたいのだろう?もう一人の異世界の女性に」
「はいっ」
願ってもいない提案に間髪入れずに頷いた私に、バルドゥールは大きな手を伸ばして私の髪を撫でる。そしてそのまま後頭部に手を移動させると、私を胸に抱え込んだ。
「もちろん、話も聞く。が、その前に髪の香油を落とさないといけないから、風呂にも入らなければならないな」
「っ!?」
言葉にならない悲鳴を上げて、後退りをしようとした私を、バルドゥールは反対の手まで伸ばして押しとどめる。
「アカリ、逃げるな。────………今から楽しみだ。待ちきれない」
「………かっ、髪を洗うだけですよっ」
最後の悪あがきでそう言った私に、バルドゥールは頷くことはせず、ただ小さく笑い声をあげただけだった。
柔らかくバルドゥールの腕に抱かれながら、私はふと気づく。
これまでバルドゥールと約束したことは3つだけだったことを。
一つめは、もし、彼を殴るときは素手ではなく、そこら辺のものを使うこと。
二つめは、もし、彼を刺すときは、ルークの短剣ではなく、彼の短剣を使うこと。
三つめは、異世界に馴染まない自分の体を、大切にすること。
何か月も共に過ごして、約束したのはたったこれだけのこと。けれど、今日、私はそれと同じ数だけバルドゥールと約束をした。
話を聞いてもらうこと。リンさんに会いに行くこと。………お、お風呂に一緒に入ること。
けれど、その約束はどれも果たされないまま、私は生死を彷徨うことになる。
誰に?何の?そんなことを思ったけれど、すぐに軍服を着た一人の青年が美しい装飾がされた飾り箱を手にして、こちらに近づいて来た。よく見れば、アシュレイさんと同じ限りなく黒に近い紺色の軍服を着ている。そして、その青年は恭しく膝を付いて王様にそれを掲げた。
「これは私からのささやかな贈り物です。どうぞ受け取ってください」
そう言って軍服の青年から飾り箱を受け取った王様は、蓋を開けると私に差し出した。
顔を固定したまま、視線だけを下に落とす。そうすればそこには、息を呑む程に美しいブローチが納められていた。中央の薄紅色の透明な宝石には花のような紋章と、天使の羽のような彫刻がされていた。
花の名前は知らない。けれど、この部屋の扉にも、ここへ至る間の廊下にも何度もこの花を象った彫刻や刺繍は目にしてきた。だから、この花はこの国の紋章なのだろう。そして天使の羽のようなものは、時空の監視者達の腕に刻まれているもの。そして気付く。王様の願い事が何なのかを。
王様は私に国民ではなく客人という立場を受け入れて、このブローチを受け取れと言っているのだ。
嫌だなぁという感情が胸に湧き上がる。要求も宝石も撥ね付けて、私はこの国で地に足付けて生きていきたいと訴えたい。けれど、そうしてはいけないと止める冷静な自分もいる。
わかっている。これはクズ野郎を黙らせる最善の方法なのだ。
だって今、クズ野郎は私を睨んでいる。それはそれは悪鬼の表情で。絶対に受け取るな。何が何でも受け取るな。いやいっそ、天変地異でも起こって、この場がおじゃんになればいい。そんな感情を隠そうともせずに。いや、きっと隠そうとしても、隠しきれていないのだろう。それ程、彼にとって、これは望ましくない状況なのだ。
そう。ただの私ではいけないのだ。異世界の人間を、何者にも手が出せないような、地位のある人間にしないとけないのだ。
そしてそれができるのは、今は私しかいない。だから、私は個人的な、しかも幼稚な感情だけで動いてはいけない。そんなことをしてしまえば、取り返しのつかないことになってしまう。最善の策を選ばなければならないのだ。
………けれど、どうしたってそれを選ぶのは辛い。少しずつ積み上げてきたこの世界での自分の立ち位置が、あっという間に崩れ去ってしまうような気がしてならない。
そんな気持ちから、宝石をじっと見つめることしかできない。けれど、微動だにしない私に業を煮やしたのか、王様は少し前かがみになって口を開いた。
「アカリ、あなたは既に沢山の剣と盾をお持ちのようですが、これが一番強力です」
「え?」
思わず声を上げた私に、しーっと王様は黙るよう窘める。
王様のその言葉も、僅かな仕草にも感情があった。伝えきれないもどかしさと、焦りがその声音に乗っていた。そして、王様は自然に私の名を呼んだ。既に前から知っているかのように、自然に口から零れたのだ。
誰が私の名を教えたのだろう。私の名を知っているのは数えるほどの人間だ。そして、思い当たるのは、あの人しかいない。
「大丈夫、心配しないで」
今度は王様の吐息のような声が耳朶に届いた。温かみのある声だった。
おずおずと視線を上げれば、力強く王様は頷く。大丈夫、もう一度そう紡ぐかのように。そしてその声に背を押された私は、王様の願い事を叶えることを選んだ。
「………………ありがとうございます。受け取ります」
国賓らしく凛とした態度を取りたいけれど、声も、指先が震えてしまうのは致し方ない。けれど、私が飾り箱を手にした瞬間、王様は箱の中身を取り出してしまった。
そして身をかがめて、ブローチを私の胸へと付ける。
「本当は肌身離さず身に着けてほしかったから、そういうデザインのものを贈りたかったんだよ。でもね、後ろの時空の監視者に却下されてしまった。それに今だって君に触れた途端、すごい顔をしているよ。……………まったく、困った人だね」
器用にブローチを扱いながら、小声でそんなことを言う王様は、誰とは口にしない。でも、私は既に察しているので、思わず苦笑を浮かべてしまう。きっと心配性のあの人のこと、ブローチの針が私の皮膚に刺さるのではないかと、はらはらしているのだろう。まったく、それくらいで死んだりなんかしないのに。困った人だ。
そう、本当に困った人だ。
バルドゥールは、何でもかんでも先回りして心配ばかりしている。今回のことだってそうだ。曖昧にしていたのは、きっと私が客人と扱われることに対して、落ち込んだり悲しんだりすると思って口にしなかったのだろう。
………もしかして、包み隠さず説明をしたら、私が嫌だとごねると思ったのだろうか。ただ、もし仮にそう思ったとしても、あんな憂えた顔をするくらいなら、ちゃんと教えてくれれば良かったのに。これもまた、帰ったら聞いてもらう。
また一つ、彼と話したいことができた。
帰宅後の約束がまた一つ形となって、私はこんな場所なのに口元が綻んでしまう。
けれど、それはある意味、絶好のタイミングだった。
「喜んでいただけて幸いです。異世界のお嬢さん、これからあなたにとって、この滞在が幸多いものであることを祈っています」
再び無機質な声音に戻った王様は、そうはっきりと口にした。まるで、ここにいる全員に宣言するかのように。
そして背後にいる時空の監視者達が静かに立ち上がったのが気配で伝わった。そろそろ辞する頃合いなのだろう。
バルドゥールは、誰に向けても頭を下げる必要はないと言ったけど、やはりこのまま背を向けるのは違うような気がして、小さく頭を下げる。そうすれば王様は、ほんの少しだけ口元を綻ばせながら口を開いた。
「さぁ、下がりなさい」
再び王様は私だけに伝わる声音でそう囁いた。と同時に、すぐ背後にいたバルドゥールが、私の背に手を当て出口のほうへと誘う。けれど、その瞬間、王様はバルドゥールに何かを耳打ちした。
退室した私達は、再び長い廊下を歩き、衛兵から預けていた剣を受け取る。けれど、そのまま帰路に着くことはせず、目に付いた部屋へと足を踏み入れた。
「アカリ、悪いが少し席を外す。お前はルーク達と一緒に戻っていてくれ」
扉を閉めた途端、バルドゥールにそんなことを言われ、私は不安に駆られてしまう。
「バルドゥールさん、あの…………私、何か失敗をしてしまいましたか?」
「いいや、違う」
あっさりと私の言葉を否定したバルドゥールは、面倒この上ない表情を作りながらこう言った。
「ちょっとした野暮用だ」
「野望用?」
オウム返しに問うた私に、バルドゥールは微かに笑って頷いた。けれど、すぐ表情を一変させ、私のすぐ後ろにいる時空の監視者達に声を掛けた。
「お前たち、アカリに余計なことを吹き込むなよ。それから余計なことをするな。ただ任務として、アカリの警護だけをしていろ。くれぐれも、余計なことを吹き込むな」
あ、同じことを二回言った。
しかも、2回目の余計なことと言った瞬間、間違いなく上官の視線はルークを向いていた。もちろん、ルークは素直に頷いた。けれど───。
「……………親父かよ」
ぼそっと誰かがつぶやいた途端、空気が凍りついた。そして、ここにいた時空の監視者たちは青ざめた。
「今、何か言ったか?」
ぞっとするほど低い声でそう問うた上官に、部下たちは一斉に首を横に振った。
まったくこうなることはわかっているのだから、そんなことを言わなければ良いのに。と、思ったけれど、もちろん口には出さない。ちなみに不機嫌な上官を窘める気も、青ざめる部下たちを擁護する気もない。人畜無害という立ち位置でいるのが一番良い。
そんな気持ちで視線をあらぬ方向へ泳がす私だったけれど、朱色の髪の上官は表情を一変させ、私の名を呼んだ。
「アカリ、心配しなくても、すぐに戻る。……………帰りに、ルークの屋敷の寄ろう。会いたいのだろう?もう一人の異世界の女性に」
「はいっ」
願ってもいない提案に間髪入れずに頷いた私に、バルドゥールは大きな手を伸ばして私の髪を撫でる。そしてそのまま後頭部に手を移動させると、私を胸に抱え込んだ。
「もちろん、話も聞く。が、その前に髪の香油を落とさないといけないから、風呂にも入らなければならないな」
「っ!?」
言葉にならない悲鳴を上げて、後退りをしようとした私を、バルドゥールは反対の手まで伸ばして押しとどめる。
「アカリ、逃げるな。────………今から楽しみだ。待ちきれない」
「………かっ、髪を洗うだけですよっ」
最後の悪あがきでそう言った私に、バルドゥールは頷くことはせず、ただ小さく笑い声をあげただけだった。
柔らかくバルドゥールの腕に抱かれながら、私はふと気づく。
これまでバルドゥールと約束したことは3つだけだったことを。
一つめは、もし、彼を殴るときは素手ではなく、そこら辺のものを使うこと。
二つめは、もし、彼を刺すときは、ルークの短剣ではなく、彼の短剣を使うこと。
三つめは、異世界に馴染まない自分の体を、大切にすること。
何か月も共に過ごして、約束したのはたったこれだけのこと。けれど、今日、私はそれと同じ数だけバルドゥールと約束をした。
話を聞いてもらうこと。リンさんに会いに行くこと。………お、お風呂に一緒に入ること。
けれど、その約束はどれも果たされないまま、私は生死を彷徨うことになる。
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