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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない 

♪最後の凌辱②

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 私を見下ろすバルドゥールは、金色の瞳に酷薄の笑みを浮かべて口を開いた。

「今すぐ誰の元にも行かないと誓え」

 厚顔無恥なその物言いに、一瞬、呆気にとられてしまった。

 戯言も大概にして欲しい。誰が誓うものか。これぐらい何ともない。そう伝える為に、全然余裕だというふうに鼻で笑ってみせる。

 しかし次の瞬間、バルドゥールの眉がぴくりと撥ねた。………やり過ぎた。ぞう思ったけれど、今更引き返すわけにはいかない。私は彼に向かって、更に笑みを深くした。
 
「なら、これならどうだ?」

 いきなり彼のものが引き抜かれたと思ったら、強引に身体を掴まれうつ伏せにさせられる。

 自由になった私は、這うようにバルドゥールの元から逃げようとしたけれど、あっけなく腰を引かれ、すぐに引き戻される。

 そして無理矢理腰を持ち上げられ、犬のような姿勢を取らされたと思った途端、彼のものが再びねじ込まれた。

 今まで刺激されたことのない場所に、彼の太く猛々しいものが容赦なく私の中を抉る。

 もうこれ以上進めないのに、それでもその奥を求め、何度も何度も突き上げてくる。それは苦痛という言葉では足りない程の辛さ。でも、シーツに顔を押し付けて、私は絶対に声を出すことはしない。

「こうまでして声一つあげないのか。強情な奴だ」

 忌ま忌ましそうに舌打ちをすると、バルドゥールは更に腰を激しく打ち付けた。

 しかも彼の動きに合わせて、私の身体をも揺さぶるので、突き上げられる衝撃は息か止まりそうな程だった。

「ひぃっ.........いや.........やめて」

 限界まで彼のものを押し込まれて、圧迫感と激しさに、ただただシーツを握りしめて、耐えることしかできない。

 こんな動物の交尾のような体位を強いられ、ぐりぐりと最奥を圧迫され鈍痛で涙が滲む。

「始めは苦しいが、すぐに慣れる」

 いけしゃあしゃあと、はったりをかましてくれる。

 こんな辛さ一生慣れるわけがない。初めてとはまた違う痛みに耐え切れず、シーツを握り締めていた手に力が籠る。そうすれば、包帯から血が滲み出し、再び傷が開いたことを知る。

 それで良い。今の苦しみを誤魔化せるなら、傷の痛みの方がまだマシだ。けれど───。

「手を握りしめるな」

 血の滲んでいる方の手首を掴まれ、反対の太い腕は私の脇に回される。そしてふわりと浮いたと思ったら、視界がくるりと変り背面にバルドゥールを感じた。

 次いで膝裏に手が添えられたと思ったら、ぐいっと抗えない力で大きく足を開かれる。そして、後ろから彼に抱えられたまま、大きく足を開かさて、ずんずんと突き上げられる。

 もっとも憎い相手に、こんな体位を強制させられ、私はもう限界だった。

「………お願い、やめて」
「辛いのか?」

 こくりと頷けば、バルドゥールは低く笑った。

 けれど、やめる素振りは一切ない。しかもあろうことか、彼は私と繋がっている部分に指を這わせると、そのまま私に指を見せつけた。

「辛いわけがない。ここはもう俺を受け入れている」

 彼の指はてらりと光っていた。それが何なのか、言葉にしなくても分かる。彼の指にまとわりつく透明な粘度のある液体は、私の中心から溢れたもの。

 かっと頬が熱くなる。

 こんな禍々しいものなんて、見たくない。思わず顔を背けた私の顎を、バルドゥールは掬い取る。

「お前は気付いていないだけだ。すでに俺を受け入れ始めていることに。力を抜け。そして俺を感じろ。そうすれば楽になれる」

 耳たぶを舐め上げ、バルドゥールはくつくつと喉を鳴らしながら、私にそう囁いた。

 違う、そんなんじゃない。私は弾かれたように激しく頭を振った。

 何度もそうされれば、自分の意志とは関係なく身体は彼を受け入れるべく潤いが生じる。でも、それは快楽の為ではない。ただの摩擦から身を護る行為でしかない。.........そう、思いたい。

 そんな私の考えを読んだかのように、彼が指先に付着した私の秘所から溢れたものを、これ見よがしに舐め上げる。

「こっちの方が甘いな」

 吐息交じりに耳元でそう囁かれ、身体が羞恥で熱くなる。

「………お願い。そんなことしないで」
「恥ずかしいのか?」

 やめて欲しい一心で素直に頷けば、バルドゥールは私の腰を勢い良く持ち上げ、ぱっと手を離した。

「…………や、やぁ」

 真っすぐに落とされれば、自分の体重も加わり、バルドゥールのものを深く咥え込んでしまう。

 びくりと身体が奮え、自分の意思とは関係なく、情けない程、弱々しい声が漏れてしまう。そして痛みの奥に何かが見え隠れしていることに気付く。でも、そちらに意識を向けてはいけないと本能が告げている。

 だから激しく頭を振って、後ろ手でバルドゥールを押しのけ彼の元から離れようとする。

「まだ認めたくないのか?なら、こうすれば良くわかる」

 バルドゥールが体位を変え、私に、覆いかぶさる。そして彼のものが私の中に一突きで奥まで割って入る。そうすれば、ぬぷりと生暖かいものが溢れて、太股を濡らす。

 先程よりも潤いが増した自分のそこに、嫌悪感が湧きあがる。

「どうだ?痛みはないだろう?」

 バルドゥールの残酷な問い掛けに、唇を噛む。

 痛くはないなどと、頷けるわけがない。けれど、痛いなどと言ってもそれは嘘でしかない。何も答えたくない。これ以上、掻きまわさないで欲しい。

 血が滲むほど唇を噛み締めた私に、バルドゥールは、ぎりぎりまで引き抜いて、再び、ずんっと私の奥を突き上げる。

「…………っん」

 呆気なく声を漏らした私に、バルドゥールは支配者だけが浮かべることができる笑みを浮かべた。

 早く終わって欲しい。唇を噛み締めて目を閉じ、それだけを祈る。

 そして、揺さぶられるだけの意識の中、彼が低い呻き声を出し、生暖かいものが断続的に吐き出され私の中を満たしていく。

 次いで、あれ程激しく突き上げていた彼のものが静かに引き抜かれれば、どろりと彼の欲望の証が太腿にまとわりつく。
 
 それを目にしたくなくて、シーツに顔を押し付けて、バルドゥールがこの部屋から出ていくのをひたすら待つ。

「翼を奪われても、空を求めるのか」

 衣擦れの音と共に、意味の分からない言葉をバルドゥールは呟いた。

 けれど、私に向かっての言葉ではなかったのだろう。うつ伏せになった私の傍から、足音が遠のき、扉が閉じられた。

 ほっと安堵の息を漏らすけれど、今日は泣いたりなんかしない。

 だってルークの言葉が本当なら、これが最後の凌辱のはずだ。もう二度とこんな思いはしなくて済む。

 私はことの最中に、悔しくもバルドゥールに、もうやめてと懇願してしまったけれど、彼の元に留まるなどとは言っていないから。
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