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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない
♪どこの世界も同じ②
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二つの人影は最初はゆっくりと近づいて来た。
でも、まるで生きながら地中に埋められたような苦しさに耐え切れず、倒れ込んだ私に気付いた途端、ものすごい早さでこちらに向かってくる。
「────!?」
男の一人が何かを叫んでいる。でも私は、それを言葉として拾うことはできなかった。
肘を付いて起き上がることすらできない。ぜいぜいと肺に届かない無駄な呼吸をしながら、すぐ傍に来た男達を仰ぎ見ることしかできない。
青空を背にして私を見下ろすその一人は、燃えるような朱色の髪に金色の瞳を持っていた。
そして、私の身体全てが影で覆われる程の厳つい体躯。目つきは良くいえば鋭く、悪くいえば鋭利な刃物のようだった。
もう一人は栗色の髪に水色の瞳。私を見下ろす彼は心配そうに眉を下げ、憂わしげな表情を浮かべている。
そして二人とも軍人の制服のような揃いの白い詰襟の服装だった。ただ朱色の髪の男の方が、地位が上なのだろう。袖口や襟元には濃紺の刺繍がしていて、少し動くたびに肩の装飾がしゃらりと音を立てる。
「──────?」
朱色の髪の男が再び首を傾げ、私に問いかける。それも私には言葉として認識できず、見上げることしかできない。
そんな虚ろな目で見つめていた私に、突然、朱色の髪の男は膝を付いたかと思えば、両腕を伸ばして私を抱え込んだ。
そして次の瞬間、顎を掴み強引に唇を合わせた。しかも、それだけならまだしも、瀕死の私の口内に舌をねじ込んできたのだ。
「─────っ」
異物が口の中に入る気持ち悪い感触と、執拗に動き回る舌の動きに鳥肌が立つ。
私を抱えこむ逞しい腕から逃れようと、彼の胸に手を押し当てて必死にもがくけれど、朱色の髪の男は更に力を籠める。
そして、淡々とした口調でこう言った。
「これで、息はできるだろう?」
そう言われてやっと気づいた。自分が呼吸をできていることに。でも、それは満足なものではない。辛うじて意識を繋ぎ止めることができる程度の微量なもの。
けれど、頭上から響く彼らの声だけは鮮明に聞こえてくる。
「間に合うか?」
「さあ、どうでしょう。もし仮に間に合っても、ぎりぎりでしょうね」
「………やってみるしかない。俺が行く」
「オッケー、先輩。じゃ、僕はアシストですね」
「余分なことはするな。お前は、周辺警護でもしておけ」
「はーい。了解でーす」
的を得ない話に、何の話をしているのだろうと、純粋な疑問を持つ。
でも、ぼんやりと耳にしていたそれが、どんな内容で、この後、私の身に降りかかる悪夢がどんなものなんて、その時は気付かなかった。
何をするのだろう。そんなことをぼんやり考えている私とは反対に、すぐに朱色の髪の男は私の足の間に入り込む。そしてスカートの裾に手を這わした。
そして、ごつごつとした大きな手が私の太股に触れた瞬間、この後、自分の身に起こることが容易に想像がついた。
「嫌っ。触らないでっ」
この男は瀕死の私を犯そうとしているのだ。なんて最低なことをするんだ。
叫びながら、身体を捩って逃げようとするけれど、彼は片腕で私を抱え込み、まったく動じることがない。そして下着を引き抜かれたと思った途端、体の中心に激痛が走った。
「っ痛」
あまりの痛みに耐えきれず悲鳴を上げれば、朱色の髪の男は弾かれたように動きを止めた。
「嘘だろ?」
朱髪の男は驚きの声を上げた。そしてすぐ片手で顔を覆ってしまい、こちらからでは、彼の表情はわからない。
「………参った。指だけで痛いとは、お前、生娘か?」
指の隙間から、そう唸るように問いかけてくる男に、私は僅かな期待を抱いてしまう。
もしかして処女なら、良心の呵責で見逃して貰えるかもしれない。そんな希望を持って、私は一縷の望みを賭け頷いた。
けれど、その望みはあっけなく打ち砕かれてしまった。
「ルーク戻ってこいっ」
朱色の髪の男が首を捻って叫べば、遠くから、えーっという不満げな声が聞こえる。けれど、足音は確実にこちらに近づいて来る。
「こいつ生娘だ」
「あちゃー。じゃ、僕が押さえておきますから。先輩ー、お願いしますっ」
栗色の髪の男が私の頭上に回り込む気配を感じた。そして身を堅くする私の顔を覗き込み、苦笑を浮かべた。
「すぐ終わるから、ちょっと我慢しててね」
そう言って私の両腕を押さえつけた。まるで聞き分けの無い子供をあやしているような素振りと口調に、本気で殺意が湧く。
言葉無く睨む私に、栗色の髪の男は水色の瞳を不憫な色に変え、こう言った。
「どうあっても、君は逃げられないよ。さ、諦めて、大人しくして。無駄に暴れない方が君の為でもあるんだから」
寝言は寝て言え。誰が諦めるものかと、更に身を捩り足をばたつかせた……つもりだったけれど、大の男に二人がかりで抑え込まれた私は、僅かに身動ぐことが精一杯だった。
そんな中、再び朱色の髪の男が口を開いた。
「おい、アレ持っているか?」
「潤滑油ですか?ええ、ありますよ。使いますか?」
「……そうするしかないだろう。生娘のせいか随分、狭い」
「そりゃ難儀っすね。────はーい、どうぞ」
私を挟んで彼らは、二人にしか分からない会話を交わす。
そしてぬるりとした感触がしたと思った途端、身体を貫く痛みが全身に走った。一気に朱色の髪の男のものが自分の中に押し入ったことを本能で知った。
「いやぁ!痛い!やめてっ」
なけなしの力を振り絞って絶叫する。けれど、無情にも朱色の髪の男は、痛みに硬直した私の体を片手で抱きしめながら、更に激しく動き出した。
「うわぁ泣いちゃった。ゴメンね。痛いよね。でも、もう少しで終わるから、頑張って耐えてね」
そんな吐き気のする激励が遠くで聞こえてくる。けれど、世界が揺れる中、涙でにじむ私の視界は目の前で揺れる名も知らぬ花をぼんやりと見つめることしかできない。
ああ、私、知らない男に汚されているんだ。その現実だけが、頭の中でぐるぐる回り、頬に涙が伝う。
そして永遠と思われた長い苦痛の時間は、朱色の髪の男は、微かな呻き声を出したことで終わりを告げた。
けれど、それと同時に私の中でどくどくと脈打つ感触と、断続的に熱い何かが吐き出されるを覚える。………それは間違いなく、彼が私の中で達した証拠。
でも、身を起こして足の間を覗くことなど、恐ろしくてできそうもない。反対に彼らは、一仕事終わったような安堵の表情を浮かべ、私の拘束を解く。
「……ねぇ……どうしてこんな酷いことをするの?」
拘束を解かれ自由になっても、起き上がることができない私は、仰向けに転がったまま朱色の髪の男に力なく問いかける。
立ち上がった朱髪の男は、私を見下ろしながら金色の瞳を細めて何か言葉を紡いだ。けれど、それは私の元まで届かない。
そして色鮮やかだった世界が色を失くして、視界が暗い闇に覆われていく。けれど、栗色の髪の男は私の肩を揺さぶって、慌てた様子で口を開いた。
「あっ、ちょっと待って。気を失う前に言っておくけどさ」
一旦言葉を区切って栗色の髪の男は私を覗き込んだ。そして、それは綺麗で残忍な笑みを浮かべて口を開いた。
「君、当分、この人に抱かれるからね」
形の良い唇から、残酷な言葉が紡がれる。
この人達、やっぱり悪魔だ。そう思ったと同時に、私の意識はぷつんと途切れてしまった。
もう気付いているかもしれないけれど、朱色の髪の私を犯した男は、時空の監視者であるバルドゥール。
そして、強姦幇助をした栗色の髪の持ち主は、バルドゥールの部下であり、同じ時空の監視者であるルークだった。
瀕死の人間を凌辱した彼らは、間違いなく地獄に堕ちるであろう最低な人間だ。けれど、彼らは、この世界では罪に問われることはない。
そんな不条理がまかり通るなら、私にとって、どこの世界でも同じとしか思えなかった。
でも、まるで生きながら地中に埋められたような苦しさに耐え切れず、倒れ込んだ私に気付いた途端、ものすごい早さでこちらに向かってくる。
「────!?」
男の一人が何かを叫んでいる。でも私は、それを言葉として拾うことはできなかった。
肘を付いて起き上がることすらできない。ぜいぜいと肺に届かない無駄な呼吸をしながら、すぐ傍に来た男達を仰ぎ見ることしかできない。
青空を背にして私を見下ろすその一人は、燃えるような朱色の髪に金色の瞳を持っていた。
そして、私の身体全てが影で覆われる程の厳つい体躯。目つきは良くいえば鋭く、悪くいえば鋭利な刃物のようだった。
もう一人は栗色の髪に水色の瞳。私を見下ろす彼は心配そうに眉を下げ、憂わしげな表情を浮かべている。
そして二人とも軍人の制服のような揃いの白い詰襟の服装だった。ただ朱色の髪の男の方が、地位が上なのだろう。袖口や襟元には濃紺の刺繍がしていて、少し動くたびに肩の装飾がしゃらりと音を立てる。
「──────?」
朱色の髪の男が再び首を傾げ、私に問いかける。それも私には言葉として認識できず、見上げることしかできない。
そんな虚ろな目で見つめていた私に、突然、朱色の髪の男は膝を付いたかと思えば、両腕を伸ばして私を抱え込んだ。
そして次の瞬間、顎を掴み強引に唇を合わせた。しかも、それだけならまだしも、瀕死の私の口内に舌をねじ込んできたのだ。
「─────っ」
異物が口の中に入る気持ち悪い感触と、執拗に動き回る舌の動きに鳥肌が立つ。
私を抱えこむ逞しい腕から逃れようと、彼の胸に手を押し当てて必死にもがくけれど、朱色の髪の男は更に力を籠める。
そして、淡々とした口調でこう言った。
「これで、息はできるだろう?」
そう言われてやっと気づいた。自分が呼吸をできていることに。でも、それは満足なものではない。辛うじて意識を繋ぎ止めることができる程度の微量なもの。
けれど、頭上から響く彼らの声だけは鮮明に聞こえてくる。
「間に合うか?」
「さあ、どうでしょう。もし仮に間に合っても、ぎりぎりでしょうね」
「………やってみるしかない。俺が行く」
「オッケー、先輩。じゃ、僕はアシストですね」
「余分なことはするな。お前は、周辺警護でもしておけ」
「はーい。了解でーす」
的を得ない話に、何の話をしているのだろうと、純粋な疑問を持つ。
でも、ぼんやりと耳にしていたそれが、どんな内容で、この後、私の身に降りかかる悪夢がどんなものなんて、その時は気付かなかった。
何をするのだろう。そんなことをぼんやり考えている私とは反対に、すぐに朱色の髪の男は私の足の間に入り込む。そしてスカートの裾に手を這わした。
そして、ごつごつとした大きな手が私の太股に触れた瞬間、この後、自分の身に起こることが容易に想像がついた。
「嫌っ。触らないでっ」
この男は瀕死の私を犯そうとしているのだ。なんて最低なことをするんだ。
叫びながら、身体を捩って逃げようとするけれど、彼は片腕で私を抱え込み、まったく動じることがない。そして下着を引き抜かれたと思った途端、体の中心に激痛が走った。
「っ痛」
あまりの痛みに耐えきれず悲鳴を上げれば、朱色の髪の男は弾かれたように動きを止めた。
「嘘だろ?」
朱髪の男は驚きの声を上げた。そしてすぐ片手で顔を覆ってしまい、こちらからでは、彼の表情はわからない。
「………参った。指だけで痛いとは、お前、生娘か?」
指の隙間から、そう唸るように問いかけてくる男に、私は僅かな期待を抱いてしまう。
もしかして処女なら、良心の呵責で見逃して貰えるかもしれない。そんな希望を持って、私は一縷の望みを賭け頷いた。
けれど、その望みはあっけなく打ち砕かれてしまった。
「ルーク戻ってこいっ」
朱色の髪の男が首を捻って叫べば、遠くから、えーっという不満げな声が聞こえる。けれど、足音は確実にこちらに近づいて来る。
「こいつ生娘だ」
「あちゃー。じゃ、僕が押さえておきますから。先輩ー、お願いしますっ」
栗色の髪の男が私の頭上に回り込む気配を感じた。そして身を堅くする私の顔を覗き込み、苦笑を浮かべた。
「すぐ終わるから、ちょっと我慢しててね」
そう言って私の両腕を押さえつけた。まるで聞き分けの無い子供をあやしているような素振りと口調に、本気で殺意が湧く。
言葉無く睨む私に、栗色の髪の男は水色の瞳を不憫な色に変え、こう言った。
「どうあっても、君は逃げられないよ。さ、諦めて、大人しくして。無駄に暴れない方が君の為でもあるんだから」
寝言は寝て言え。誰が諦めるものかと、更に身を捩り足をばたつかせた……つもりだったけれど、大の男に二人がかりで抑え込まれた私は、僅かに身動ぐことが精一杯だった。
そんな中、再び朱色の髪の男が口を開いた。
「おい、アレ持っているか?」
「潤滑油ですか?ええ、ありますよ。使いますか?」
「……そうするしかないだろう。生娘のせいか随分、狭い」
「そりゃ難儀っすね。────はーい、どうぞ」
私を挟んで彼らは、二人にしか分からない会話を交わす。
そしてぬるりとした感触がしたと思った途端、身体を貫く痛みが全身に走った。一気に朱色の髪の男のものが自分の中に押し入ったことを本能で知った。
「いやぁ!痛い!やめてっ」
なけなしの力を振り絞って絶叫する。けれど、無情にも朱色の髪の男は、痛みに硬直した私の体を片手で抱きしめながら、更に激しく動き出した。
「うわぁ泣いちゃった。ゴメンね。痛いよね。でも、もう少しで終わるから、頑張って耐えてね」
そんな吐き気のする激励が遠くで聞こえてくる。けれど、世界が揺れる中、涙でにじむ私の視界は目の前で揺れる名も知らぬ花をぼんやりと見つめることしかできない。
ああ、私、知らない男に汚されているんだ。その現実だけが、頭の中でぐるぐる回り、頬に涙が伝う。
そして永遠と思われた長い苦痛の時間は、朱色の髪の男は、微かな呻き声を出したことで終わりを告げた。
けれど、それと同時に私の中でどくどくと脈打つ感触と、断続的に熱い何かが吐き出されるを覚える。………それは間違いなく、彼が私の中で達した証拠。
でも、身を起こして足の間を覗くことなど、恐ろしくてできそうもない。反対に彼らは、一仕事終わったような安堵の表情を浮かべ、私の拘束を解く。
「……ねぇ……どうしてこんな酷いことをするの?」
拘束を解かれ自由になっても、起き上がることができない私は、仰向けに転がったまま朱色の髪の男に力なく問いかける。
立ち上がった朱髪の男は、私を見下ろしながら金色の瞳を細めて何か言葉を紡いだ。けれど、それは私の元まで届かない。
そして色鮮やかだった世界が色を失くして、視界が暗い闇に覆われていく。けれど、栗色の髪の男は私の肩を揺さぶって、慌てた様子で口を開いた。
「あっ、ちょっと待って。気を失う前に言っておくけどさ」
一旦言葉を区切って栗色の髪の男は私を覗き込んだ。そして、それは綺麗で残忍な笑みを浮かべて口を開いた。
「君、当分、この人に抱かれるからね」
形の良い唇から、残酷な言葉が紡がれる。
この人達、やっぱり悪魔だ。そう思ったと同時に、私の意識はぷつんと途切れてしまった。
もう気付いているかもしれないけれど、朱色の髪の私を犯した男は、時空の監視者であるバルドゥール。
そして、強姦幇助をした栗色の髪の持ち主は、バルドゥールの部下であり、同じ時空の監視者であるルークだった。
瀕死の人間を凌辱した彼らは、間違いなく地獄に堕ちるであろう最低な人間だ。けれど、彼らは、この世界では罪に問われることはない。
そんな不条理がまかり通るなら、私にとって、どこの世界でも同じとしか思えなかった。
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