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弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 4.3
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さて、私たちを乗せました御料車なる「おかみ様専用車」ですが、宝塚を出ますと後は大阪を目指して一直線。
(この時代の尼崎はまだ未開発…でもないんですけど、まだまだ自然が残ってますからねぇ)
そして、淀川の上に架かる長い長い橋を渡るのですが、その淀川の川幅の広さと、その先に広がる大坂の街並みに驚く弥助。
(もちろん、連邦世界ではありませんから、天を突くような櫓の類はありませんし、大坂城の天守閣を遮るような建物も今はまだ建ててませんよ)
ええ、淀川の先…埋田という場所に広がる商家らしき家並みが見えるのみですが、それにしても今まで通ってきた道中とは全く違う様相なのです、淀川を渡り切った先。
室見理恵・国土局長様…理恵さんプラウファーネさんの仲ですが、その理恵さんに聞けば、この地は文字通り川の河口を埋め立てて田を作ろうとした事から埋田の名がついた後、連邦世界という理恵さんの生まれた世界では梅田という歓楽街めいた場所として発展しておるそうですね。
で、その梅田と、連邦世界の大阪駅を拝見しますと。
(これ、本当に人が作ったんですか…)
(これでも一度、戦争で全壊したんです…で、駅舎だけでもってことで、後の高層ビルは今、建て直している最中なのですよ…)
まぁ、この辺のお話をしております間にも、列車は大坂駅に滑り込もうとしております。
『こちら新大坂運転司令室・担当遠山。5082E運転士殿・車掌殿、本日の運転内容変更確認につき応答されたし』
『こちら5082E前の運転士藤川、司令室遠山殿、本日の運転内容変更確認を承知、どうぞ』
『こちら5082E後ろの車掌藤浪、司令室遠山殿、本日の運転内容変更確認を承知、どうぞ』
『こちら司令室・遠山。8號車御料車乗車のお客様方、新大坂駅拾壱番線にて捌時肆拾伍分発臨時第三三四光號に乗換に変更。本日5082Eは新大坂駅入線番線を拾番線に変更。回送準備も拾番線で行うため回送御者との引き継ぎも拾番線にて挙行されたしとの司令室助役指示ありましたでござる、どうぞ』
『こちら5082E・藤川。5082Eは新大坂到着後向日町回送は変わらず、入線番線を拾番線に着線変更。回送御者への引き継ぎも拾番線入線中に行うでござる。どうぞ』
『こちら5082E車掌藤浪、5082Eは新大坂到着後向日町回送は変わらず、入線番線を拾番線に着線変更。回送車掌係への引き継ぎも拾番線入線中に行うでござる。どうぞ』
これは…どういう内容でしょうか。
どうも、この準急橋立號の運転者や乗客・車両係がどこかしら指揮をする場所と交わしている交信のようなのですが。
(本当なら大坂で途中下車と行きたいところですが、弥助くんもプラウファーネさんも宮福線…大江山線開通記念試乗会参加者ですから大坂を訪れた経験があるかと思います。で、今回は申し訳ないのですが光號の乗り継ぎ、新新大坂でさせて頂こうかと)
ふむふむ。
(光號の特等車である廿号車なら、さほど歩かなくとも良いと思います。新大坂では橋立號が停車する10番線の隣にいますよ)
で、大坂駅で見ておりますと、こちらは拾壱と書かれた乗降場所に到着したようです。
(読者の皆様にお伝えしておきますと、大坂は一時期の夜行寝台列車が運転されていた時代の大阪駅とほぼ同じような状態です。9番と10番線が東京方面の優等列車にあてがわれておりまして、11番線は主に北陸方面出発または山陰方面からの到着ホームとなっています。)
で、私たちが乗る橋立號が入りました線路の右隣の10番線とやらに停まっておるくるま、見覚えがあります。
ええ、いつぞやの東京…江戸行きの際に乗った、超特急光號とやら、そのもの。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/134/
で、隣の光號、私たちの列車が停まると同時に動き出します。
つまり、この大坂駅で乗り換える場合は、どちらかの車を待たせる必要があったのと、階段を上り下りせざるを得なかったのでしょう。
なるほど、理恵さんがその辺の手配を行うために来られたというのがよくわかります。
それと、アルトさん。
なぜ、来られていたのか。
(やはり、びくにこくではおとのさまの制度をはいしして、せんきょでその国のおとのさまをえらぶことにしていくというのにはんぱつしているかたがたも多いようですね。それと、おさむらいさんの身分をほしょうせず、しけんで役人のかたやへいたいさんにむいているかどうかきめるけんでもこまるひとが多いとおききしましたので…)
どうやら、朝廷や幕府の人間を狙って襲うことで、世の中に不満を持っているぞと世間に知らしめて、更に同じような行動を起こさせて幕府を揺さぶろうと考えている向きが昨今、増えているようです。
(連邦世界のテロと変わりませんね、行動原理。で、そういうことをして世の中が動くかというと、これは政治に対する満足度で変わると思うんですよ)
理恵さんいわく、連邦世界ではこちらにも敷かれている真っ最中の官設鉄道。
戦争の後で「公営会社」という組織に変わったそうです。
つまり、儲けたお金よりも出ていくお金が多ければ、夜逃げしたり首を吊ったり、あるいは家屋敷や土地や金目のものを差し押さえられるような部類になってしまったと。
(それまでは政府…幕府がお金の面倒を見てくれていましたが、戦後は国有鉄道という名前の、一応は独立採算組織にされたのです。しかも、労働者の権利を保証する法律だの何だのができたせいで、鉄道に携わる職員はお客や荷物を運ぶことよりも、自分たちの働き場所を楽にしたり休みを増やしたり、お賃金を増やすことに血道を上げました。そして、要求が通らないと列車を動かすことを拒否したのです)
で、それは結局、成功したのでしょうか。
(不満を持った乗客が列車を焼き討ちしたり、駅の事務所になだれ込んで破壊行為を繰り広げたりしました。つまり、稼ぐことを放棄してもお客の支持は得られなかったのです。更に、無闇に運賃を上げ利便性を損ねる本数削減や設備簡略化を図ったがために、人も荷物も国有鉄道を見放して他の移動手段にお金を払うようになってしまったのです…)
(この時代の尼崎はまだ未開発…でもないんですけど、まだまだ自然が残ってますからねぇ)
そして、淀川の上に架かる長い長い橋を渡るのですが、その淀川の川幅の広さと、その先に広がる大坂の街並みに驚く弥助。
(もちろん、連邦世界ではありませんから、天を突くような櫓の類はありませんし、大坂城の天守閣を遮るような建物も今はまだ建ててませんよ)
ええ、淀川の先…埋田という場所に広がる商家らしき家並みが見えるのみですが、それにしても今まで通ってきた道中とは全く違う様相なのです、淀川を渡り切った先。
室見理恵・国土局長様…理恵さんプラウファーネさんの仲ですが、その理恵さんに聞けば、この地は文字通り川の河口を埋め立てて田を作ろうとした事から埋田の名がついた後、連邦世界という理恵さんの生まれた世界では梅田という歓楽街めいた場所として発展しておるそうですね。
で、その梅田と、連邦世界の大阪駅を拝見しますと。
(これ、本当に人が作ったんですか…)
(これでも一度、戦争で全壊したんです…で、駅舎だけでもってことで、後の高層ビルは今、建て直している最中なのですよ…)
まぁ、この辺のお話をしております間にも、列車は大坂駅に滑り込もうとしております。
『こちら新大坂運転司令室・担当遠山。5082E運転士殿・車掌殿、本日の運転内容変更確認につき応答されたし』
『こちら5082E前の運転士藤川、司令室遠山殿、本日の運転内容変更確認を承知、どうぞ』
『こちら5082E後ろの車掌藤浪、司令室遠山殿、本日の運転内容変更確認を承知、どうぞ』
『こちら司令室・遠山。8號車御料車乗車のお客様方、新大坂駅拾壱番線にて捌時肆拾伍分発臨時第三三四光號に乗換に変更。本日5082Eは新大坂駅入線番線を拾番線に変更。回送準備も拾番線で行うため回送御者との引き継ぎも拾番線にて挙行されたしとの司令室助役指示ありましたでござる、どうぞ』
『こちら5082E・藤川。5082Eは新大坂到着後向日町回送は変わらず、入線番線を拾番線に着線変更。回送御者への引き継ぎも拾番線入線中に行うでござる。どうぞ』
『こちら5082E車掌藤浪、5082Eは新大坂到着後向日町回送は変わらず、入線番線を拾番線に着線変更。回送車掌係への引き継ぎも拾番線入線中に行うでござる。どうぞ』
これは…どういう内容でしょうか。
どうも、この準急橋立號の運転者や乗客・車両係がどこかしら指揮をする場所と交わしている交信のようなのですが。
(本当なら大坂で途中下車と行きたいところですが、弥助くんもプラウファーネさんも宮福線…大江山線開通記念試乗会参加者ですから大坂を訪れた経験があるかと思います。で、今回は申し訳ないのですが光號の乗り継ぎ、新新大坂でさせて頂こうかと)
ふむふむ。
(光號の特等車である廿号車なら、さほど歩かなくとも良いと思います。新大坂では橋立號が停車する10番線の隣にいますよ)
で、大坂駅で見ておりますと、こちらは拾壱と書かれた乗降場所に到着したようです。
(読者の皆様にお伝えしておきますと、大坂は一時期の夜行寝台列車が運転されていた時代の大阪駅とほぼ同じような状態です。9番と10番線が東京方面の優等列車にあてがわれておりまして、11番線は主に北陸方面出発または山陰方面からの到着ホームとなっています。)
で、私たちが乗る橋立號が入りました線路の右隣の10番線とやらに停まっておるくるま、見覚えがあります。
ええ、いつぞやの東京…江戸行きの際に乗った、超特急光號とやら、そのもの。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/134/
で、隣の光號、私たちの列車が停まると同時に動き出します。
つまり、この大坂駅で乗り換える場合は、どちらかの車を待たせる必要があったのと、階段を上り下りせざるを得なかったのでしょう。
なるほど、理恵さんがその辺の手配を行うために来られたというのがよくわかります。
それと、アルトさん。
なぜ、来られていたのか。
(やはり、びくにこくではおとのさまの制度をはいしして、せんきょでその国のおとのさまをえらぶことにしていくというのにはんぱつしているかたがたも多いようですね。それと、おさむらいさんの身分をほしょうせず、しけんで役人のかたやへいたいさんにむいているかどうかきめるけんでもこまるひとが多いとおききしましたので…)
どうやら、朝廷や幕府の人間を狙って襲うことで、世の中に不満を持っているぞと世間に知らしめて、更に同じような行動を起こさせて幕府を揺さぶろうと考えている向きが昨今、増えているようです。
(連邦世界のテロと変わりませんね、行動原理。で、そういうことをして世の中が動くかというと、これは政治に対する満足度で変わると思うんですよ)
理恵さんいわく、連邦世界ではこちらにも敷かれている真っ最中の官設鉄道。
戦争の後で「公営会社」という組織に変わったそうです。
つまり、儲けたお金よりも出ていくお金が多ければ、夜逃げしたり首を吊ったり、あるいは家屋敷や土地や金目のものを差し押さえられるような部類になってしまったと。
(それまでは政府…幕府がお金の面倒を見てくれていましたが、戦後は国有鉄道という名前の、一応は独立採算組織にされたのです。しかも、労働者の権利を保証する法律だの何だのができたせいで、鉄道に携わる職員はお客や荷物を運ぶことよりも、自分たちの働き場所を楽にしたり休みを増やしたり、お賃金を増やすことに血道を上げました。そして、要求が通らないと列車を動かすことを拒否したのです)
で、それは結局、成功したのでしょうか。
(不満を持った乗客が列車を焼き討ちしたり、駅の事務所になだれ込んで破壊行為を繰り広げたりしました。つまり、稼ぐことを放棄してもお客の支持は得られなかったのです。更に、無闇に運賃を上げ利便性を損ねる本数削減や設備簡略化を図ったがために、人も荷物も国有鉄道を見放して他の移動手段にお金を払うようになってしまったのです…)
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