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欧州女形演芸場ものがたり -l'Okama -・10.2

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で、王立ベルサイユ演劇場という正式名称となった、我がベルサイユ宮殿の東翼棟の外れとなる場所に存在するオペラ劇場ですが。
https://x.com/725578cc/status/1859012706206183855

オペラ・ガルニエほどには大きな劇場ではありませんが、設備も整い、まずまずの演舞の場所と言えるでしょう。

わたくしテレーズも、ここでバレエの練習もしておりましたし、何より、つい先程までは宰相タレーランの国葬参列者慰労晩餐会の開催場所でした。

ですが、空気を入れ替えの床掃除も施しの、舞台前の観覧席を再設置しーので、今は普通の演劇場の姿を取り戻しております。

むろん、ひいお爺様が凝りに凝った造りを指示したと言う、昇降式の舞台前の床も再び下げられ、舞台とは段差ができて…あれ。

罰姦聖母教会関係者の座る部分、つまり昇降式の床になっている劇場中央の1階部分、普段の下がり具合じゃないのです。

具体的に申し上げますと、普段のこの劇場1階客席のあるべき姿である、昇降床をめ一杯下げた低さの、半分くらいまでしか降りていません。

その気になれば、舞台から飛び降りなくともスッと足を運ぶだけで客席に降りられる低さなのです。

(はっはーん、あれのためやな…)

(では、用意の方が整ったということで…)

ええ、先導の聖女騎士団員姿の女官に案内され、劇場内に入って来られたのはルイーサ副教皇猊下、そしてシャルロット・ダルブレ大司教に…少し遅れてオクタヴィア枢機卿。

みなさま、階級別の違いはありますけど、罰姦仕様の黒い葬儀用衣装姿です。

(オクタヴィア枢機卿、普段は東方の総主教用制服ですからね…)

と、裏事情も教えて頂きましたが、実のところはオクタヴィア枢機卿については「仕方なしに」この場においでであり、あらかじめ観劇するかの希望を尋ねた上での参加なのです…。

(ハミゴにすると後でフランス相手にねっちねちやるのが目に見えてますからね、無理を申します)

と、裏の会話を密かに、私とオスカーだけに通じるようになさるルイーサ猊下ですが、表向きはきちんとわたくしどもに挨拶をなさいます。

「テレーズ殿下、今般はわたくしども罰姦聖母教会要職者のために骨を折って頂いたようで、感謝の言葉もございません…」

「いえいえ、わざわざパリまでご足労の上、我が王国の外交と治世に貢献したとはいえど不肖の奸物の葬儀の祭礼を執り行い頂き、感謝の言葉もございません」

で、罰姦流の抱擁を3人と順番に交わし、着席頂きます。

今回は国賓観劇ということで、びっぷ用とやらである大きめの椅子が3つ、舞台前に据えられておりま…。

ちょっと待てや舞台係。

これ、よく見れば背もたれが倒れる姦淫椅子仕様やないけぇっと思いましたが、よう考えてみればこの仕様で座席をしつらえておく必要、今回は特にありありなのです。

そして、元来ならばわたくしたち王族が観劇したり、あるいは国賓や王室が招待した客のために設けられた、オペラ・ガルニエの貴賓席めいた張り出し式の個室型貴賓観覧席、小さめではあるのですがこのベルサイユ演劇場に存在することはするのです。

では、なんでそこに案内せずに、かぶりつき席をわざわざと設置した上でそこに案内しておるのか。

その謎解きの前に、まずは司会役のフラメンシアが開幕を告げ、照明を落とすことを伝えてまいります。

『それでは、これよりジョルジュ・バタイユ男爵の新作脚本演劇でありますところの新・尼僧エドワルダ。この寸劇の正式公演に先立ちましての限定公開を開演させて頂きたく存じます。語り部ナラシオンは不肖わたくし、フラメンシア・ド・ヴァロワが務めさせて頂きます』

んで、ここで注釈。

オクタヴィア枢機卿は、この演劇を「ただの観劇」か、はたまた劇の途中か最後で要人が絡む催しであるとしか考えておられません。

つまり、この演劇をここで開園しとる真の理由をご存知の観客、ルイーサ様だけ。

ふへへへへへ。

で、シャルロット様とオクタヴィアーナ様はベラ子陛下とルクレツィア支部長に「観とかんと今後、イタリアで同じようなもんやって欲しいと要望しても聞き入れてもらえんから絶対参加、拒否不可」と申し渡された上での、渋々のお付き合いのようなのですよ…。

『さて、時は今より少しばかり遡り、ルイ16世陛下ご夫妻が存命であった時分のパリでございます。当時のパリだけに留まることなくフランス全土を揺るがした発禁小説、それを幾編も刊行した罪のみならず、侍従や通りすがりの者への乱暴狼藉に果ては淫行を企図し実行のあげく、世を騒がせたかどでお尋ね者と成り果てた・サド侯爵』

な・ま・え。

流石にこの言い間違え、わざとやろお前とフラメンシアに突っ込みたくなりましたが、我慢しておきます。

客席のお三方はもとより、照明や音響を管理する調整席からも失笑の気配がしましたが、皆、懸命に笑いをこらえておりますので…。

で、緞帳が上がりますと、そこには白い長い映写幕が降ろされておりまして、サド侯爵の犯罪の数々の記録や、警視に捕まりお縄となった当時の侯爵の哀れな姿が映されます。

『しかし、いかな者の手引きか、サド侯爵は文章の弟子であり実生活でも舎弟のごとき存在となったジョルジュ・バタイユ伯爵を従えてパリ市内に潜伏し、国外脱出の機会を窺うのでした』

この辺のくだりが、旧版の尼僧エドワルダとの違いだそうなのです。

旧版ではパリに密かに舞い戻ったサド男爵とバタイユ男爵の二人が、謎の手紙に誘われて呼び出されたところ、尼僧となって世を忍んでいた悪女シモーヌ・エドワルダと再会、再び悪徳と背徳に満ちた執筆を再開するための体験取材と称して、姦淫の悪徳に手を染めるところまでを描いた寸劇となっています。

では、新版ではその辺、どう変えられたのか。

白銀の映写幕はそのままで、その前にすすっと音もなく、パリの街並みらしい背景の大道具が押し出されてまいりました後、まずは雨に降られたと思しき、ずぶ濡れ風の髪の女二人が舞台の袖から現れます。

しかし…その身につけた衣装、何をどう見ても男の服装です。

そして、身なりの良さをそれなりに窺わせるもの。

で、男二人は舞台中央にまでよろよろと進み出ると、その一人が観客席に向けて怨嗟の声で怨みの相手の名前を述べ立てるのです。

「うう、口惜しや…おのれ、おのれスタール夫人…おのれモントルイユ夫人…おのれボーヴォワサン…」

この台詞で、怨みがましい演技をしておる女まがいがサド侯爵だというのが分かるでしょう。

しかし、その声は明らかに、女の声…あ、配役をお教えするのはちょっと後で。

で、もう一人の女まがいが、サド侯爵役に声をかけます。

「侯爵、ここは何としても一旦はフランスを離れるべきでは…」

こちらは、どうやら実際に偽女種の配役となっているようです。

「うむ…確かに今こそが千載一遇の好機…官憲の目を誤魔化せる間に何としても女の服を手に入れ、パリを離れるのだ…」

ここで、フラメンシアによる解説が入りますが。

『女に変わる雨を浴びた二人、なんとその体は女まがいになってしまったのです…しかし、ことはそう簡単に行かぬ様子…二人は娼婦ならば供の者もおるまいとばかりに、娼婦どもが根城にしておる場所を訪ね、追い剥ぎに及べそうな相手を物色するつもりなのです』

(普通に洗濯物でも盗めばよさそうな気もするけど…)

(母様、イタリアならばいざ知らず、この時代のパリでは流石に難しいでしょう…)

(いやぁ、イタリアでも存外に難しいのでは…)

などと3人の観客の興味を惹きつつも、その女まがいとやらになった二人、再び歩き出そうとしますと。

ちゃりんちゃりんと鳴らし鐘の音がしまして、二人が出てきた舞台の左袖から、ケッタに乗った尼僧が姿を表します。

これは、聖母教会助祭の服ですね。

「これ、お待ちなさい殿方…見ればお困りの様子…」

で、尼僧の声にビクッとして足を止める演技をする2人。

今が好機とばかりに、尼僧に襲い掛かろうとする1人ですが、その肩を後ろから掴むのは相方…どうやらバタイユ伯爵役…いえ、こちらの配役はバラしても良いようですから申し上げますと、なんとバタイユご本人の演技のようなのです。

「侯爵…あれなるは聖母教会尼僧、迂闊に襲えば我らは返り討ちにされるでしょう…ここはわたくしめが」

と、サド侯爵役に代わって前に進み出る、バタイユ伯爵役のバタイユ男爵(ご本人)。

「おお、尼僧様…わたくしどもは通りすがりの街女、しかるに男に乱暴され、着のみ着のまま、とりあえず手近の服を着て逃げ出したるありさまにございます…」

実はこれ、全くの嘘でもないそうです。

官憲、つまり男に捕まえかけられて追われて逃げているのは間違いないそうですから…。

で、尼僧はケッタから降りると、このような口上を2人に述べます。

「まぁまぁ、なんとお気の毒な。とりあえずわたくしは用向きがございますからお二方を助くることは叶いません。しかし、わたくしが属するヴァンセンヌ修道院の者に、ここにお困りの方がいらっしゃるということで使いを遣るよう計らいましょう。よろしいですか、わたくしと似た尼が2人、ここに参りますまでは何としても物陰に身を潜めておくのです…」

で、ケッタマシンに跨ると、走り去ろうとする尼僧ですが…実はこの尼僧、ルネ・ペラジーこと前・サド侯爵夫人で今は他ならぬバタイユ男爵の妻となったルネ夫人その人なのです…。

で、一旦はきびすを返して舞台の左袖に消える尼僧役のルネ夫人。

しかし、建物の絵が描かれた大道具の影に身をひそめる2人の女まがいの前に、再び自転車に乗った尼僧が姿を現すのです。

しかも、今度は2人。

1人は先ほどと同じルネ夫人ですが、今度は司祭の服装に変わっております。

そして、もう1人はなんと、なんと…。

「うふふふふふ、奇遇なものね、ジョルジュ…しかもおたずね者の侯爵様まで連れて、一体全体これはどのような神の思し召しなのでしょう…」

「そ、その声…よもやそなた、シモーヌか?」

思わず立ち上がり、高笑いしておる方の尼僧を誰何するバタイユ伯爵役のバタイユ男爵(本人)。

(しつこいテレーズねぇ。くどい女は嫌われるわよっ)

(わかったからはよ、劇の進行を進めんかいっ)

「ふふふふふ、いかにも私はシモーヌ・エドワルダ…聖母教会の手によって官憲から逃れ、今では堂々とパリを歩ける身の上となったのよ…」

これ、真っ赤な嘘です。

通称:ランス中後期高等学校集団姦淫懐妊事件以降、表立ってはシモーヌのお尋ね者扱いですけどね。

スペイン政府が死亡を確認し、他国にもその訃報が報じられたサド男爵はともかく、バタイユ男爵やシルヴィア前夫人にルネ夫人、そして肝心のシモーヌの指名手配、全く解かれておりません。

ただ、パリ市警察本部に取って代わった罰姦聖母教会フランス支部警務部が、指名手配されておるはずのロントモン一座の面々を本気で捕まえようとしていないだけなのです。

(まぁ、事実上はシモーヌの言う通りで、パリを堂々歩けると言えば歩けるのよね…聖母教会尼僧服姿に限るけど…)

そう、フラメンシアが呟いた通り、聖母教会の尼僧の服を着ているだけで、一般官憲の誰何の対象外となってしまうのです。

もしも今、シモーヌがベルサイユの外に出ても、いわば犯罪者を警官として再雇用している状態になりますから、シモーヌと同格または上位の騎士資格尼僧でなくば、シモーヌを捕まえられないのです。

(もちろん、一般人が女官を物理的に捕まえられないってのもあるけどね…と言うわけで解説役に戻るわよっ)

はいはい。

しかし、シモーヌはすぐにでも2人を聖母教会に連れて行くのでしょうか。

いえ…ここからが驚愕の光景だったのです。

観客席から見ると、横と右横の姿が目に入るように向かい合って立つ、シモーヌとバタイユ伯爵。

その、尼僧服の正面の裂け目から、にょっきりとCoqが顔を出したのです…。

なんと、いかに観客が3人だけ、しかも聖母教会…ひいては痴女皇国の関係者だと申しましても、舞台の中央で堂々と勃起したちんぽをさらけ出したのです。

「うふふふふふ…ジョルジュ、あなたの体は偽女種になっているようね…そろそろ、尼僧のいちもつを咥えないと収まらないほどに苦しくなっているはずよ…サド侯爵も、早くルネ夫人のちんぽを咥えないと、このままだと死んでしまうのですよ…ほら、善は急げと申しますでしょ…早く、体が燃え始める前に奥様のいちもつを咥えておあげなさいな…」
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