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欧州女形演芸場ものがたり -l'Okama -・10.1

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で。

自称:高級娼婦ユールこと、ジュディト=ジュリー・ベルナールなる婦人。

確かに、この女性がそう名乗ったことに間違いはないようです。

(ええ、パトロンがあらかた、女になったり、男に戻して頂いたとしても失職したりなどで…)

そして、サン=ドニ聖母教会が事あるごとに出している娼婦救済の告知にも応じるか考えあぐねておったようなのです。

なぜか。

このユール、自身が申す通りで高級娼婦。

その顧客は貴族院議員など、それなりの大物ばかり。

サン=ドニで誰彼だれかれ構わずに客を引いておるそこらの娼婦とは一線を画す存在だったのです。

つまり、貴族の分類に入れてもおかしくはない、貴婦人のたぐい。

下賤の客を取るにはあまりに躊躇ためらう気持ちも、わからんことはありません。

で、この娼婦ユールことジュディト=ジュリー・ベルナールなる人物、どうやらその出自、もともとは球根詐欺国の出であることもわかってまいりました。

(どうやら球根詐欺国うちのくににおった湯田屋の行商人の娘だったようで…で、パリに来て大物客に見そめられ、社交界にも顔を出しかねない高級娼婦に成り上がることに成功したようですわ)

これは、他国の大使や弔問に訪れた貴族たちと歓談しつつも、わたくしテレーズを通じて、娼婦ユールの諸々を探って頂いたマルハレータ殿下のお言葉です。

で、ユールの困窮は本当のようですので、私は殿下たちと相談した結果を申し渡すことにしました。

「娼婦ユール、残念ながらフランス王国は今、その政治や経済の体制を大きく変えつつある時期。あなたが頼りにしていたパトロンたちの失脚も、ある意味では必然と言えることだったかも知れません」

この、私の言葉に血相を変えるユール。

しかし、あわや抜刀しかけたオスカーを止めた私は、ユールに語りかけます。

「いいですかユール…あなたが娼婦稼業でつちかった床わざの数々、フランス王国のために活かすつもりがおありならば、このテレーズがあなたの衣食住を保証しましょう。ただし…フランス王国聖女騎士団の中に設けた遊撃騎兵隊に入隊頂く必要があります」

それはどのようなもので…と言いかけたユールの脳裏に、ひらめくものがあったようです。

ええ、ユールの有力顧客から、遊撃騎兵隊の存在、おぼろげながらも聞かされておったようなのです。

「ポーリーヌ、そしてドロテア…このユールに遊撃騎兵隊がどのようなものであるか、早速にも教えて差し上げてください…」

(アルト閣下、申し訳ございませんがこの娼婦ユール、マサミさんいわく、本人もですけど娘さんたち、わけてもそのうちの1人に大変な価値があるかも知れないそうです…このユールの若返りと疾病治癒しっぺいちゆ、それからユールの娘たちの保護をお願いできませんでしょうか…)

(りょうかいでございます。ぞうさもないはなし…ダリア、ペルセちゃん、サン=ドニに、このじゅでぃとさんのむすめさんたち4人がいるそうです…くろばら騎士をほごにむかわせてください…)

ええ、この娼婦ユール、放置しておけば反・王室貴族と接触してあれこれやらかす可能性がありました。

それならば、このユールを若返らせて、早速にも遊撃騎兵隊としてのお仕事に入ってもらおうかと思い立ったまで。

少々強引ですが、ここまでしても囲い込んでおいた方が良い人物のようなのです、マサミさんによれば。

(むすめさんたちはどうするのですか)

(ええとですね、ロンシャン競馬場建設に伴うロンシャン修道院の廃止の代替として、以前のベルサイユ宮殿のすぐそばにございますメゾン・ド・グラン=シャンという孤児寄宿学校を拡充して、聖院学院神学部認定校のグラン=シャン修道院に転換しておりましたかと。あそこは孤児たちの面倒を見ておるパンショナきしゅくがっこうですので、育児放棄すら考えていたユールにしてみれば渡りに船であるかと存じます)

と、ユールの娘たちの引受先について、エルネスティーヌが案を出してくれます。

うん、あそこならとりあえずは娘さん4人の面倒を見る場所としては好適でしょう。

私も、グラン=シャンの孤児寄宿学校、かつてのベルサイユ宮殿のすぐ近くですし、母に付き合わされて慈善訪問したこともありますから存じております。

それにサン=ドニ聖母教会はともかく、あそこの併設修道院については実のところ、娼婦の養成学校ですしね…。

(てれーずちゃん…まさみさんからですが、そのゆーるさんのむすめさんのうち、さらさん…さら・べるなーるというおこさんには注意をはらってそだててほしいとのはなし…おおばけすれば、かなりのじゅうようじんぶつにそだつそうなのです…)

了解でございますウイ・ダコール

で。

アルト閣下がこそーっと遠隔で痴女種化を済ませられたのか、いつの間にやら若干の若返りを果たした娼婦ユール、ベルサイユでパパンが使っていた区画の客間で、こちらに来たポーリーヌとドロテアに後を任せておきます。

私とオスカーが部屋を出た後で、あんあん言う声が部屋から聞こえてきたのは内緒で。

(ふふふ…母様のちんぽを咥えることで、母様の床わざや貴人向けの口説きの知識を得るのですよ…わたくしからは女官としての力、微力ながら授けさせて頂きますから…)

ええ、助平下着に着替えさせられたらしき娼婦ユール、ポーリーヌとドロテアの母娘に犯されておるのです。

そして、早速にも弔問貴族の籠絡要員として活用するようです…ええ、このユール、それなりに社交界で顔が売れておったようなので、今回の訪問客の中にも顔見知りが幾人かおるようなのです。

むろん、ポーリーヌはともかく、その母親のドロテアにも、マルハレータ殿下からは誰とかいう指示が飛ぶようですので…。

(しかし、融資の相談とは口ばかりの者も結構おりますね…中にはテレーズ殿下を組み敷き犯すことも考えておる者すら…)

(オスカー、そのためにもエルネスティーヌをここに呼んでおります…このテレーズと思って口説いたところがカゲムシャであるとはという筋書きですよ…)

(そうでしたね…エルネスティーヌが、王家の操り人形とするにふさわしいかを検分する役目でございました…)

(それよりオスカー、あなたの幼馴染であるアンドレイ、パリに呼ぶという話はどないなっとるんですか…)

(えええええ…私はテレーズ殿下に忠誠を誓った立場、いまさら男なぞ…)

(うそおっしゃい。週に一度はおてまみめーるに、隙あらば聖環でおでんわでれでれかいわ

(お願いでございますから冷やかしはなにとぞ…)

(ですから職も住まいも用意するゆうとるのですから、さっさと来させなさい…いまやてーじめっちゃはやいぇーべーれっしゃなら2刻もかからずストラスブールからパリ北東駅に来れるのですよっ)

ええ、オスカーには幼馴染のにいちゃんがおるのです。

そして本人には内緒ですが、聖女騎士団長の制服姿だけでなく、密かに着替えやら入浴やらの隠し撮りだの、あげく部下の騎士に奉仕させとる姿の入った特製えろほん、匿名でストラスブール・ノートルダム聖母教会経由でそのアンドレイ(André Grandier)なる青年のもとに届けさせとるのですっ。

ええ、これ以上動きが鈍いようであれば、オスカーのあられもない痴態が載った総天然色ふるからー・高級耐水紙印刷仕様の特製えろほんでちんぽをしこしこしているアンドレイの、これまたあられもない姿を隠し撮りしたものを見せつける準備は万端なのです。

(テレーズ…あたし思うんだけどさ、あんたの性格の悪さ、イザベル母様以上よ…)

(失礼な。フラメンシア…私はね、あんたとあのイザベルおばさまほどには助平で無茶苦茶な性格ではないと思ってんのよ?)

(それはいいとしてフラメンシア…あんたも籠絡要因の中に入ってんのを忘れないでよ…)

ええ、フラメンシアはこのフランス支部の行政顧問の地位を維持しております。

そして、これは誓ってわたくしテレーズの仕業ではないのですが、どういう訳か遊撃騎兵隊の一員として勘定に入っておるのです。

更には。

本当ならば同様に遊撃騎兵隊員扱いのイザベルおばさま、ベラ子陛下がパリに呼びつけて貴族相手におめこさせる段取りだったようです。

(南欧行政局長ならばフランスの政治にも責任を持ってもらうのです…)

(陛下、なんぼなんでもそれはあまりにも言いがかり!せめてフラメンシアを差し出しておることで納得を!)

(イザベルかーさま…私はかーさまがパリでとか言われておる風聞の解消、ご自身でお図り頂く必要性を強く強く強く感じるのです…)

(ですからフラメンシア、イスパニアの借金解消に向けて一番に期待できるあなたをパリに行かせておるのでしょうが…)

(汚いさすがイザベル母様きたない。それに、ザベートとか言われとる理由わかってます? 私の兄やら闘牛騎士団の男性騎士やら、果てはカーサ・デ・カンポ…かんぽ公園のくろんぼを食いに出没しとるとかいう噂だけでなく、実際の動かぬ証拠のえろほん、出てるんですよ?)

(発禁です発禁!)

(ならあの不肖の父親たる変態じょるじゅ男爵ばたいゆの本も発禁にすべきです!)

ええと、スペイン王国関係者。

内輪揉めは自分の国内でやって頂きたいのですが。

とりあえずですね、私はオスカーを伴って、ベルサイユ東翼の一番端っこにあるお部屋に急ぎます。

というのも、顔を出しておく必要があるのです。

(罰姦関係の来客についてはあたしとチェーザレおじさま、ルクレツィアかーさまがしばきます。テレーズちゃんはフランス王国関係者としてルイーサ副教皇猊下を観劇という名の密談に誘うたことにするのです…)

ええ、今般の葬儀の主祭を務めて頂けた件や、他の諸々について御礼の宴席を設けた建前。

しかしながら、この宴席に名を借りた重要な儀式こそが、罰姦への恩返しとなる可能性、今や甚大。

ただ…ですねぇ、罰姦財政にも関わるクレタ島、わけてもキッコス造幣工場を監督するキッコス聖母教会の管轄枢機卿であるオクタヴィア猊下を同席させておかないと、後で騒がれても困るらしいのですよ。

なんせオクタヴィア猊下は猊下でチェーザレ猊下の実の娘さんですし、メディチ家のょぅι゛ょ扱い。

つまり、この方に「フランスはルイーサ猊下ばかり贔屓する」とヘソを曲げられても困るのです。

で、うちの宮殿の東の端。

ここは、私のパパンとママンの婚礼祝賀披露宴をやった会場なのです。

そして今回も、そのからくり構造の客席と舞台を利用して、それなりの広さの宴席を設けて晩餐会の用途に供しておりました。

で、夜会開始と同時に晩餐会場の片付け撤収に入らせた訳ですが、その理由たるや。

ロントモン歌劇団・フランス分団の名目で公開前の新作戯曲の特別お披露目公演を内緒で行うので、その観劇と称して密談を…というのが、ルイーサ猊下とシャルロット大司教の母娘二人をこの王立・ベルサイユ演劇場にお呼びしている建前上の理由なのです。

で、せっかくだからとお招きしておるのが、ルイーサ猊下とはライバル関係らしい、オクタヴィア猊下。

いわば、たった3人の観客のためだけの特別公演にお招きした演劇場のあるじが、このテレーズだという筋書き。

(それであの悪党女のシモーヌを呼びつけてるのね…)

(テレーズ、私が呼んだように言うな…なんせあの不肖のくそ親父がね、書き下ろした寸劇戯曲の題名がね「新版・尼僧エドワルダ」なんだから…まぁ、あの寸劇だと登場人物が尼僧2人と偽女種2人で終わるらしいから、シモーヌとルネ夫人とシルヴィア未亡人でしょ、それと親父…バタイユ男爵だけでとりあえず公演はできるのよ…もっとも、コメディエンヌの人数が少ないからって油断は禁物よ…かなりえげつない内容らしいから…)
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