アルトリーネさんのいけない修行の日々

すずめのおやど

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惨奴侯爵の妻 - Renee Pelagie de Sade - ・7

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ほんとうならば、あんとわねっと様とルイじゅうろくせい陛下をおそうはずだったきょうだん凶弾

しかし、どんぐりのかたちのような、そのなまりのたま、いままさに…あたくしのめのまえで、空中にういてとまっております。

ちなみに、このたまをうちだしたてっぽう、じょすりんがつかいました。

(ふむ…マリアリーゼ陛下、この時代には元来、ミニエー弾は存在しないのでは…)

(狩猟銃や競技銃用の弾丸として英国にはアメリカ向けに作ってもらってるけどさ、漏れたみたいだな…でなきゃマスケット銃、あの距離からの狙撃に使うなんて発想は出てこねぇよね…)

なにやら、よめとじょすりんがしんこくそうな話をしておりますね。

(そりゃ深刻にもなるぜ…連邦世界でもいまだに実弾銃がレーザーやら荷電重粒子銃やらに完全に駆逐されてない理由の原型になる弾丸なだけに、扱いは慎重にしてもらわないとならねぇんだから…)

(配るのを禁ずればと思ったのですが、痴女種でない者が狩猟や探検に赴く場合を想定されたのでしたね…)

(とりあえずミニエー銃と弾丸についちゃ、フランスに補償してまで軍用装備を禁止してもらった意味がねぇからな…)

(しかもその禁制銃と弾丸、よりによって発明者の国の王様と王妃様の狙撃用に使われかけたんだからな…)

でまぁ、ミニエーというそのぐんじんさん、はつめいかでもありまして、れんぽう世界のてっぽうにちかいものを作ったりなさったかただそうですが、よめとじょすりんがあたまをかかえておるりゆう。

そもそも、にんげんどうしでせんそうしているばあいではないからです。

で、せんそうや人ごろしがだいすきなのかどうかはしりませんが、つかまったおじさんやおにいさんたち。

どこのどなたにそそのかされたのか、しらべはすべてついております。

そして、せっかく、ふらんすのおとこのひとたちのちんちんに元気をとりもどしてもらおうとして王さまとおきさきさまがおいのりをする、せんれいのぎしきをじゃましにきたわるものとしてみなにさらしものにされております。

「でぇ、痴女皇国の流儀の裁判でやってるから、いくらこの連中が口をつぐんでもあたしらの方で勝手に調べ上げてるし、あとはどういうふうに処罰するか、陛下とアントワネット妃の意見をお伺いするだけなんだよね」

つまりは、このしたっぱのへいたいさんたちにてっぽうをわたしてめいれいした、えらいひとが存在します。

そして、あんぬまりーちゃん、じにあちゃん、てぃあらちゃんのさんにんがえらいひとをつかまえてきましたので、したっぱのひとたちといっしょにひろばにしばられてすわらされています。

「カルトー、君がまさか反乱の首魁しゅかいだったとは…」

ええ、こがらでまるっこい、ひげのおじさんが、うらみにみちためでこちらをにらんでおられます。

(本当ならこの人物、今は画家をしていたはずですが…)

(うむ。ジャン・フランソワ・カルトー…革命を契機に軍人となり、将軍にまで登り詰める過程でナポレオンの上官を経験しているはずだ…)

(聖院の欧州本部に、足の治療を受けている履歴があるね…で、本来は志望していた陸軍士官学校への道を進んだってところか…)

(ナポレオンの上官で間違いはないようです)

ええ、よめやじょすりん、そしてポワカールかっかは、このおじさんがどこのだれかをあるていどはしっているようです。

そして、つかまったれんちゅうのなかに、ナポレオンというおにいさんがいました。

もごごもががががと口をうごかそうとしているカルトーとかいうおじさんのいいぶんによれば、ナポレオンというおにいさんがしんへいきのてっぽうをつかって、このそげき計画をたてたのだそうです。

で、おうさまやおきさきさまがこのノートルダムにおこしになるじかんやみちじゅん、ナポレオンのおにいさんにもらしたのが…。

「タレーラン君…私も君が悪いとは思えんが、漏らしたには違いないのだろうな…」

ええ、おうさまがしぶいかおをしているさきには、ふとったえらそうなおじさんが。

(シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール…ナポレオン帝政下では外交相だった人物ですな)

(どうも生まれが早まり、ルイ16世陛下の下で外交顧問と外交相を務めておったようで)

(英国から新式銃を輸入できた背景には、このタレーラン氏が英国大使の経験者であったのが関係しているようだね、ジョスリーヌ君…)

(マリアリーゼ陛下、あまり英国の好きにさせますと、妙な商売を始めるのでは…)

(どうもクロムウェルのおっさんの部下がさ、海軍に内緒でお小遣い稼ぎしたみたいなんだよね…ほら、ティーチやロバーツがあたしや通商局を経由せずに武器なんか絶対に売るわけないじゃん…)

ええ、かいぞくあがりの商人のみなさん、ちじょ皇国のじゃまになるようなものはかってに売り買い、ぜったいにしようとしませんから。

(最低でもクレーゼ母様の許可は取るように徹底してるからね。そんかわり、あたしらが売って買ってって言ったら火薬や硫黄や硝石でも売買してくれるけど)

とりあえず、いぎりすからみのややこしいおはなし、よめにまかせましょう。

あそこはクリスさまやアグネスさまのかんけいで、痴女こうこくといえどもかんたんに手がだせないのですよね…。

しかし、ふらんすのなかというのも、王さまがぜったいにえらいというわけでもないようですね。

(なるべくわかりやすく言うとだな、この時代のフランスはアルトが思っているような王様がえらい国…絶対王権制度が揺らいでたんだよ。で、今捕まってる皆様はだね、隙があれば自分がフランスで一番偉い人になるとか、あるいは偉い人を交代させようとかしていたわけだ)

(しかしマリアリーゼ陛下、この者たちをどうされるおつもりで)

(そーですねー、とりあえず皆さんの不満の一つは解消できると思うんですよ。つまり、この場で国王陛下と王妃殿下の祈りが届けば、この人たちが不満に思ってるフランス病の件もさ、快癒に向かうんじゃないかなーと)

ええっと。

つまりなんですか、このかたがたがむほんを考えたりゆうとしておおきいのが。

(ううううう、おれの逸物に漲りを戻してくれぇえええ)

(これというのもあの坊ちゃん国王が聖母教会や痴女皇国に強い態度を取らぬが故の話と思うて…)

(嫁入りした王妃にしても、いかにハプスブルグの血筋とは言え、他の国から受け入れねばならぬのか)

(フランス王の妃はフランスから選ぶべきであろう…)

「みなさん、おきもちはわかりますが、とりあえずちんぽをげんきにしてもらえるかどうかは王さまとおきさき様のいのりがせいぼにとどくかどうかにかかっています…」

そうだそうだ。

だいたい暗殺して病気が治るとか、いけにえを捧げて効き目があるって思ってるような蛮族の考えかよ。

おれらの不満をネタにして椅子取りやってんじゃねぇぞ。

などなど、のみなさまをふくめて、あつまった方々がつかまったものたちに罵声をあびせます。

「皆の者、気持ちはわかるが鎮まりたまえ…彼らを責めても事態は好転せぬ。まずは私と妃が聖母様にすがらせて頂いてからである…」

ええ、よめのとくいわざのひとつですが、あつまったぜんいんに、おうさまのはなしをむりにでも聞かせてしまいます。

(アルトもやろうと思えばできるだろ…)

(わかったからぎしきをするのです…)

で、おうさまにはよめ、おきさきさまにはあたくしがついて、べらこへいかのまえへきてもらいます。

「皆まで申さずともよろしいですよ。姉同様に、あたしも人の心の中は見通せますから…」

「何卒、この国の男の股ぐらに力を戻して頂ければ幸甚に存じまする…」

「よろしうにお願いいたします…」

と、べらこへいかがさしだすてをとって、すがるおふたり。

(カエル女、タイミングをちゃんと合わせるのですよ…)

(はいはい、広場の儀式の進捗に合わせてルドゥタブルを撃ち込む手配は済ませています。あんな骨董品に近いミサイル、艦上発射型への変更だけでも大変だったのですからね…)

ふむふむ、るどうたぶるといえば、あのけがれだま。

いっぱつうちこむだけでも、国ひとつをほろぼしかねないしろものですね。

(アルトさん…あれ、今はもう迎撃手段もありますし、連邦世界では用途廃止になったんですよ…ただ、あたしたちの世界では使い道があるんです、今まさにこれからやるんですけど、駄洒落菌混じりの生化学弾頭、パリ上空で炸裂させますから…)

(あと、これに合わせてフランス全域をカバーできるようにドラメを発射してる。アルトの視覚なら、シェルブール沖のフグーから撃ち出されたミサイル、見えるだろ…)

よめにいわれてみますと、たしかに東のかなたでひとすじのけむりが天をめざしてあがっていくのがみえます。

(よしベラ子、お告げを出してくれ…あたしが中継する)

「かしこまりました。王陛下と王妃殿下の願いについて、確かにお聞きしました…只今よりは聖女たる我が姉の奇跡を示させて頂きます。フランス病に冒された方は、今から降ってくる雨を体に浴びてください…この雨が皆様の悩みを取り除くことでしょう…」

(つかまったかたがたも、このあめをそのままかぶってください…おはなしはそれからです…)

(王陛下もそのままでお願いします…)

で、あたくし。

白金衣へきがえろと、よめからいわれました。

なぜか。

ようは今、おとこのひとがあたくしをみて、げんきになるかどうか。

しかもですね。

がんらいはべらこへいか用のひも服じゃないですか、よめにきろといわれた白金衣。

ですが、このばはしかたありません。

で。

ぽわかーるかっか。

どうどうとしておられますが、いっしゅんだけ顔がひきつられました。

いえ…べらこへいかのふだんのふく、こんなものですよ。

ごらんになったことはないのですか。

(直接、すぐ近くで変わられますと…さすがにその…)

(アルト、てめーの体臭もあんだよ…おめーとかシェヘラザードさんって、アラブ系のムスクの匂いを再現してるだろ…それにジョスリンも実はそうなんだけど、黒薔薇の場合エロカロイド成分の分泌がデフォだろ…だからそばにいる男性にはきっついんだよ…)

このよめはなにを、ひとのからだにさいくしとるのでしょうか。

まぁそれはともかく。

ぽわかーるさまはどちらかといえば、かたぶつのぶるい。

(確かに閣下、ニューヨークでもママの店にたまに顔を出されるくらいで、しかも痴女皇国関係者との打ち合わせ程度ですからね…)

(じょすりんにゆびいっぽんふれようともしないじてんで、なんとなくわかります…)

(いやその、ジョスリーヌ君が魅力的でない訳じゃないんだが、どうしても上司と部下の関係だけに気を遣ってしまってね…それに、彼女もカルメンがうるさいのを知ってるからね…)

(閣下の安全と機密問題があるから仕方ないでしょう…リヴィエラさんとヴェロニクさん、それと奥様で囲い込んでる件でご不満があれば、あたしに言ってくださると…)

(うう、小官も上司とは親密になっておきたいのはやまやまなのですが…)

(ジョスリーヌ。あなたはミシェルにいらんことを仕込もうとするのが目に見えております。それならばまだ、泥棒猫のリヴィエラに任せておくほうが私の目が届くという差配なのです…)

(マダム!無実です!)

(この件についてはカエル女、前科数十犯の実績があるのでですね…)

それはよいとして、ときならぬ雨ですが、みなさまはくすりの雨としって、ぬれるがままに。

そして、まちなかでもとおりにでるなどして、雨をあびようとするおとこのひとがあとをたたぬようす。

みなさん、そんなにもなおしてほしかったのでしょうか。

「それはそうでしょう…」

「うむ、他ならぬ余もだな…」

で、おうさまのたいつ。

まえが…ふくらんでおりますね。

それも、かなりごりっぱなかんじで。

(ああ、この時代だし、フランスはまだタイツ文化だったな…)

(しかし王陛下、ご立派じゃないですか…)

(そうだ、いいこと考えた。アントワネット妃にお願いしたいんだけどさ…ふふふ)

え。

よめはなにをさせるつもりなのか。

つぎのしゅんかん、おうさまのたいつがずりおろされました。

えええええ。

しかも、おいうちをかけるおうひさまの、とんでもないおことば。

「皆様、聖母様と聖女様のお力にて、我が夫たるルイの逸物、かように力を取り戻してございます。そして捕らわれたる皆様…今、この場で皆様の持ち物をまろび出させ、このように天を向けること、果たして出来ましょうや…」
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