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とんでもないイスタンブール -昔の名前で出ていません-・5
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「ひぃいいいいいい!」
「いやああああああああああ!助けてっ!助けてっ!」
ええ、我々の見る前で触手が引きずって行くのは、黄色い豚服…はいれぐTばっくれおたーどとかいう分類の服を着たハポネスの女。
その体は見る間に赤い血の池めいた巨大な地底湖の中に引きずり込まれていきます。
で、私もシェヘラザード局長も、聞き分けの悪い女が何人もこうされて来たのを見ておりますし、こうしろと指示する立場ですから、平然としたものです。
それに今回は、完全に溶解させずに変質させますから、嘔吐するような凄惨な光景にはならないのですが…。
(あの液体に浸かっても窒息死することはありませんよ)
ええ、ベラ子陛下が申される通りで、確かに溺れて死にません。
溺れては死にませんけどね…。
「皆さん。確かに皆さんがここに連れて来られたのを理不尽に思っておられる気持ちはわかります。実は私も、そうした立場だったのです」
で、ここは私がと、説得役を買って出たわたくしフランシスカ。
そう…実のところは、私も拉致されたか、はたまた祖国の方針で痴女皇国に送り込まれたかの違いはありますが、過去には今、目の前の苗床洞窟の中に座らされて体の自由を奪われた女たちのような立場だったのです。
で、記憶共有をかけて、私がどういう経緯でここにいるかの概略、ベラ子陛下にもご協力を頂いて豚扱いの数十名の女たちに説明して行きます。
幸いなことに、日本在住の外国籍者や帰化者も数名。
そして、日本人でも私がどこの誰かを多少ながら知っている者がおりましたので、比較的理解は早かったのです。
もっとも、理解はしても私の言うことを聞いてくれるか、それはまた別問題。
彼女たちの基準では、完全にこちらが犯罪行為を犯して連れて来たという認識なのですから。
ただし、犯罪…つまり、無理矢理に他人の自由を奪って拘束拉致することが犯罪に問われるとしても、その犯罪を取り締まる側が黙認するならば、どうなるでしょうか。
かつてのメヒコでは、麻薬組織に汚染された一帯…更には軍や警察そのものが麻薬組織と変化してしまった無秩序地帯がありました。
こんな場所では法律が正義が秩序が倫理がと言っても、その地での権力を握る者には全く通じなくなります。
暴力と銃弾、または凶器以外では自分の要求を通せなくなるのです。
私は、自分自身がカルテルに脅された時の実体験を敢えて見せてから、話を切り出しました。
「皆さん…我々はまず、皆さんに選んで頂ける選択肢を用意してお話をしました。しかし、それにも関わらず頑なに私たちの提案を拒絶し、更には反抗的とみなされた2名を順番に処分することで、私たちの意向に背けばどうなるかを実際にお見せするしかなかったのです」
と、たった今苗床に引きずって行かれた女と、その直前に「精気供給を断たれたり、あるいは魔毒除去を怠ると痴女種でもどうなるか」を火葬場で身をもって我々に見せた女の最期を思い出させてあげます。
「あの、自ら発火して死亡した女性は、今、すでにあなたたちに対して私たちが授けた恩恵と、そして短所に対する対処の説明をよく聞かずに反抗的に振る舞った報いを受けたのです…」
この、私の発言にムカっと来るもの、数名。
他にも、色々な考えが飛び交います。
(てめぇらが勝手にあたしたちを拉致して勝手に体を作り変えたんだろ…何を言ってんだよこの白人のアマ…)
(しーっ、こいつら考えが読めるって言ってるよ…あんま反抗的にものを考えたらあの、焼けて死んだやつの二の舞よ…)
(何のリョナモノのエロゲよこれ…今時、こんな本、3日目でも売れないじゃん…)
そう、敢えてこの女たちには心話を遮断せずに、考えを相互に読めるようにしておいたのです。
「では皆さん、お聞きしましょう。皆さんが行っていた活動、果たして正しいのでしょうか」
ええ、この言葉に、ビクっとした女が数名。
ふふふふふ。
この辺の知識はセニョーラ・雅美やベラ子陛下が監修して下さったのです。
いわく、コスプレイヤーとか言われるtrabajo de medio tiempo…日本語でアルバイトというのですかに身をやつしておった人種は、法律的には極めて微妙な存在であると。
「例えば、このマリアヴェッラ陛下は皆さんの中の多数がご存知だと思いますが、ビューティーツインズの公式コスプレイヤーであり、著作権者から許諾を得ています。いえ、公式イベントなどで宣伝のために衣装を着る機会も多いお方ですね」
そう…私以上に、この連中に名前と顔が知れているのがベラ子陛下。
しかし、痴女皇国の皇帝であることを知る者は不幸にしていなかったのです。
「イタリア政府と連邦政府の嘱託職員である以上を公開していませんからね…無理もありませんけど…」
または、ベラ子陛下が痴女皇国皇帝であることを知る者は、痴女皇国の女官…すなわち陛下の臣下または親族であるか、さもなくば協力的な関係者ばかりなのです。
そして、そんな協力的な人物であれば、そもそもこうして無理からに拉致されてはいないでしょう。
いえ…本人たちが拉致されたと思っているだけで、彼女たちの周囲には、全く感付かれてはいないのです…。
なぜならば彼女たちの家庭や職場には複製分体が送り込まれており、一定期間を経過した後で、その分体は書き置きを残して失踪したかのように回収されてしまうからなのです。
(日本の警察の捜査習慣で、自分の意思で失踪した場合と、誰かに攫われたような場合では扱いが全く違うのですよね…)
そして分体たちは、足取りを掴ませないように巧妙に消え去っているのですから…。
(まぁ、姉から加藤さんを通じて今回の拉致作戦の対象者は密かに政府内部に連絡済みです。万が一にも踏み込んで調べる者はいないとは思いますし、踏み込んで調べようとすれば…)
そう、日本の警察組織も自衛軍も、かなりのところまで痴女種、または比丘尼国の巫女種の系統の女官神官が潜入進出しているそうです。
それどころか。
「ちなみに今年度の日本の通常国会に出された売春防止法の法名を含む改正案、満場一致で可決しましたが覚えておられる方、いらっしゃいますか…」
この、ベラ子陛下の問いかけに頷く者は三分の一程度。
ただ…これは一般的な連邦世界での報道以前に、私も痴女皇国の国内報である月間痴女宮でその内容を知っていました。
なぜならば、売春を容認する代わりに、痴女皇国または比丘尼国からの派遣者の管理下に置くに等しい法改正だったからです。
無論、誰がやらせたか、関係者ならば一目瞭然。
で、売春防止法改め売春管理法となったこの新法案と…そして関連して改正された風俗営業法によりますと。
映像送信型風俗営業のみならず、公共の場での服装規制や、果ては図画販売にも認可を求める内容となっていたのです。
(以前から猥褻物頒布罪…刑法第175条の規定はあったけどね…ただ、執行猶予がなくなったのよ…この法律に触れたとされると、一発で実刑判決が出るようにされちゃったのよね)
(雅美さんの話に付け加えておくと、公共の場で警察の許可なく猥褻な格好をした者は現行犯逮捕されるように法律改正されたのです。つまり、コスプレを取り締まる法律ってわけですよ…)
(で、それが嫌なら個人風俗営業許可登録を取るか、指定の映像送信風俗営業者の従業員になること。これで、タレント事務所に所属する人は回避できることにしたけどね…ま、事業所自体が風俗営業許可、取り消されたら一網打尽にされるけど)
(ふふふふふ、そしてマイナンバーカードまたはメディアウォッチで個人風俗営業許可登録を簡単に確認できる状態にする…要は売春を認める代わりに、単純売春以外のお仕事を厳しく取り締まれるようにしてしまったのです…)
これでどうなったか。
つまり、売春に付帯する行為としてコスプレをしていない場合の方が、取り締まりが厳しくなってしまったのです。
(そればかりか、いわゆる地下アイドルとやらの部類も厳しく管理される話になったんですよね…コスプレして男性を集める撮影会も、認可業者や個人でないと禁止するって話ですから)
(更には1年を通じて売春実績がないと風俗営業認可取り消しだもんね…)
そう、売春料金をメディアウォッチでやりとりできる…金銭贈与機能で記録させないと、風俗営業免許を取り消されるそうです…。
(全く、えげつない法律よねぇ…誰よこんなの考えたの…)
(雅美さんも諮問委員として呼ばれてたじゃないですか…)
(それ言うならマリアちゃんもベラちゃんも皇居とか宮内庁に呼ばれて内閣や与党の人たちと意見交換してたでしょ…)
ええ、田中内務局長他、その辺の面子が日本政府に強く干渉したのは明らかです。
そして、この法律で取り締まっても即・釈放となる内規が存在するそうです。
痴女皇国関係者…具体的にはテンプレス・セキュリティや関連企業勤務者は除外されるのです。
(あたしたちの会社に雇用された場合は、自動的に連邦政府の嘱託職員として登録されるシステムとなりました。つまり、痴女皇国女官としての活動、連邦政府に裏書きしてもらえるのですよ)
(そもそもうちの女官、伊香保行くか六本木のピンキーローズを手伝うか、はたまた海老原さんの深海海老のお手伝いをしたら自動的に免許更新できちゃうし…)
(ふほほほほほ、かてて加えて認可業者のギルドを牛耳る存在がいますよ。もはや海老原さんは従来のやくざ組織に代わって日本の裏社会を牛耳って頂いているのです…)
これも恐ろしい話ですが、実の所、ハポンのマフィアは今や、メヒコのカルテルのような非合法組織としては存在できなくなっているのだそうです。
で、合法企業の皮を被っている首領の企業に雇用される社員なり、役員や出資者としての関係者の形で、エビハラという人物を長に頂く組織運営を合同で行っているのだそうです、痴女皇国。
(それに、あの有明の戦場の規模も小さくなったのが後押ししましたしね…)
(ま、紙の本を作る人も刷ってくれる印刷所も減って来たからね…有明のお祭りも年一回、年末だけになっちゃったし…その代わりに模型のイベントが夏に入ったけどさ)
そう、いわゆるHENTAIイベントとやらも様変わりしたのが原因らしいのですよ。
(ここまでの規制というか、痴女皇国に都合のいい日本に作り替えるの、それなりに時間がかかったけどねぇ…)
(比丘尼国にも都合が良いようにする必要、ありましたからね…)
そう…今のハポン、男の気を引く商売をするにはその商売のプロモーターに雇われるか、さもなくば売春とみなされる実績を積むかの、二択。
(ジュニアアイドルや声優については緩和していますよ…ただ、露出の多い写真集とか出すには、高木企画や姉が株主の映像制作会社ですとか、田所社長の会社と仲良くしていないと警察屋さんがこんにちわーしに来ますけど…)
まぁ、こんな事をしておれば、確かに目の前におる数十人の女たち、文句を言いもするとは思います。
しかし、我がメヒコなんぞ、もっと厳しいのですよ。
それに、更に厳しいのが鯖挟国の連邦世界版、つまりトルコです。
あのトルコ帽、一時はトルコの象徴のようなほどに流行したものでありながら、当局によって厳しく取り締まられた結果、着用者を大幅に減らしたのです。
あんな無害そうな帽子ですらこれですから、ましてやアニマシオンやヒストリエタスなんて、規制されずに自由に発表できる国の方が世界的に見て珍しいのですよ?
更には、このコスプレイヤーとやら、自分の創作衣装だけで世に有名となった者ばかりなのか。
これは、お読みの皆様のご想像の通りかと。
(ぶっちゃけコスプレ、特に日本のは著作権者の黙認で成立してることが多いのよ…あと、撮影場所も決して認可を取ってない場合があるから…)
(パイセンが言ってましたよね、上越線の駅でトンネルの中にあって地表まで登る階段の途中で撮影したらしい写真見て、鉄ヲタさんが騒ぎかけたって話…)
(そんなケースでも、緑文字の会社が「うちの駅の構内で写真撮って売り物にするとは」って騒いだら問題になるからね…)
そう、この件を指摘すると、皆が黙り込んだのです。
そして、マリアリーゼ陛下、今や出版業界や映像業界に顔が利く立場であり、いくらでも圧力をかけてその辺の認可を取っていない人々を弾圧することが可能なのですよね…。
(で、実際に弾圧した結果がこれというわけなのですよ。かわいそうですが、皆さんが活動していると、あたしたちが展開しようとしている事業…男性を性交に向かわせる事業の支障となるのです)
(で、セニョーラ・エ・セニョリータ…私もかつてはセックスシンボルのように見られた立場です。そして皆さんが、当局の勧告を頑なに拒否するか、はたまた無視して表現活動とやらに勤しまれた結果でここにいらっしゃることには、それなりに同情の目を向けなくもありません)
そう、私は地域を限定しますけど、人口だけで言えば知名度や支持者数、この女たちよりは遥かに多かったんですよ?
ハポンじゃあまり有名になってなかっただけで。
ええ、私の写真で自家発電した男どもの人数も競ってよろしい。
そして、私が既婚女性に対しての敬称で呼びかけたのにも注目願います。
そう…コスプレイヤーとかいう人種、ヒトヅマも結構おられるようですね。
しかし、改正風俗営業法並びに売春管理法では、売春実績を残さないと認可取り消しとなります。
これがために、民法の離婚要件やら色々なことを弄って、風俗遊び…もっというと売春を実質的に合法化したそうですよ、連邦世界における日本。
ですからペーパードライバーというのですか、免許だけ取って運転しない女のようなごとき、売春免許を取って実際に売春しない女は許されないのが日本の現状になってしまったようです。
(その代わりに、認可を受けた売春管理業者に雇用されるか契約を結べば売春実績がなくともおkにしたからねぇ…)
で、これに反発したり当局の呼び出しを無視していた連中を順次検挙するどころか、黒薔薇騎士団や紫薔薇騎士団を使って巧妙に回収したのがこの連中。
重ねて申しますが、そもそも売春と同じで、女を売り物にするのは連邦世界だと何をどうしても厳しい。
これが、メソ・アメリカで生まれ育った私の認識です。
この女どもは、規制の網目を潜ってやっていたことがたまたま世間から注目されただけに過ぎないのです。
言ってみれば、儲かるから云々で株式投資や為替取引に手を出した主婦や独身女性と変わらぬでしょう。
グレーゾーンというのですか、規制がまだ為されていないか、はたまたお目こぼしを受けていたような地帯で商売していれば、風向き変われば規制される対象にもなるだろうと。
それが嫌ならば我がメヒコで独立を勝ち取った革命英雄たちのように、権力者との死闘を覚悟して反旗を翻すなり、あるいはルチャのような国民の熱狂的な支持を受ける分野で大成すれば良いのです。
(さすがにメキシコ生まれの人は厳しいですね…)
(女性の権利も弾圧していた国でしたから…)
ええ、このフランシスカがメヒコの女性大統領としては初、なのですよ…連邦世界では。
いくらメソアメリカ全域を襲った大地震の復旧にかこつけて任じられたとは申せ、曲がりなりにも権力の頂点となったのですよ、私?
(しかし、いくら人品外観才能に優れていても、人は機会を与えられないとせっかくの天賦の宝を持ち腐れにさせてしまうのは、私とて理解しています。そこで皆さんに提案です。この滅姦のみならず、痴女皇国世界では優秀な女性が出世できる機会がふんだんに用意されているのです。もしも皆さんが、現役当時の私と同等以上の地位をお望みであれば、そこに登ろうとする機会が今、ここに存在するのです)
(フランシスカさんの提案が、皆さんに用意できる最後の機会ですよ…私たちはいつまでも待てません。ただ、決断に踏み切られた方々には、このマリアヴェッラの名にかけても、女官や騎士の修練の道に進んだ後の人生がそれなりになることを約束させて頂きましょう)
(ただし、このダニヤザードより申し上げます。女官となるに当たっては、騎士の修行が必ずついて回ります。聖母教会のあるところ、その管轄地の犯罪や悪事を取り締まる役目が尼僧には課せられます…聖母教会の尼僧は文武両道なのです。そしてフランシスカ様…フランシスカ様がかつてお治めであったメキシコ帝国と申す場所、いかがでしたか?)
(痴女皇国世界のアステカ、そしてマヤ文明の地は統合され、帝国となりました。その初代皇帝、他ならぬこの私であったのです…そして明日輝や魔屋の神殿の女神官はもちろん、治安を預かる女闘士を育て上げ鍛えるための学校や、地域での選抜競技会も開催していました…)
で、実際に武道の心得のありそうな者を選抜して、試しにダニヤザード様と私が、どれだけ強いのかを見せる羽目に。
え。
「ふふふ、面白い試み…どれ、久しぶりにこの私が剣を取ってみましょうか」
ええ、シェヘラザード様、立候補。
ですが、その腰に下げたニホントウらしきをベラ子陛下に預けられます。
「ダニヤ、練習用の模擬刀はありますか。あれば拝借させてくださいな」
「折らないでくださいよ、姉様…」
で、ケンドウの心得のある者に、騎士訓練に使うというヘッドギアゴーグルめいた物や、防具を装着してもらいます。
では、対峙するシェヘラザード様の身なりは。
「ふふふ、これを着るのも久々ですわね…」
聞けば、聖院銀衣騎士時代の服装らしいのです、この白い皮革に銀の装飾をあしらったびきにあーまーとやら。
ただ…お尻は剥き出しですよ。
「さぁ参りなさい。このシェヘラザードの体にかすりでもすれば、そなたの身は自由として差し上げましょう。無論、そなたが負けたとしても特段の罰など与えませぬ。むしろ勇気を称えるべきでしょう。さ」
ええ。
だらんと垂れ下がったような、構えていない…剣も真面目に握っていないように見えるシェヘラザード様に、さすがにその女もやる気になったのでしょう。
記憶を見ると、ケンドウの有段者ではあるようです。
しかし、相手が悪過ぎました。
というかシェヘラザード様、剣、相手の剣を受ける道具にしか使っておられませんよ。
そして、絶対に百万卒以上でないと見れない動きで、女の鳩尾に膝蹴りを軽く入れたのです。
(殺してしもうては是非もなし、ほれ、起きやれ)
ええ、一撃で悶絶して倒れたその女に対し、介抱するふりをするシェヘラザード様。
「おやおや、加減したつもりがなんともはや、ラービア様、ちと介抱をば…」
「ええ、シェヘラザード様…内臓は破裂しておらぬよう。苗床で身体を戻してやれば良いでしょう」
そう…ここの苗床ですが、東方聖母教会預言派総主教の地位につかれた預言聖女とされるラービア様の管理下なのです。
つまり、ラービア様は中東行政局における苗床管理者、第二弾。
「これはあくまでも介抱のため…それに、聖院銀衣騎士でもあらせられたシェヘラザード様に果敢に挑んだ功績を称える行為でもあります。この女、次に苗床から出た時は十人卒…只人にして十人ぶんの強さとなりますよ…」
「ま、私どもに挑む勇者は他におりませぬか。おらぬならばこのまま…」
「お待ち下さい、このフランシスカに格闘で挑む者がおれば、受けて立ちたく」
「おお、忘れておりました…フランシスカ様も、ジョシプロレスとやらで名を馳せたのですね…」
ふふふ。
震災復興のためにも、メヒコ国民の意欲を煽るべく、ルチャ・リブレに代わってルチャ・フロレンシア…乙女闘技を流行らせておるのですよ、メキシコ合衆国。
そして、私もリングに上がることで、闘う大統領を印象付けているのです。
格闘の心得のある者を煽るべく、私は例の赤白緑三色のルチャドーラの姿に変わります。
「見ての通り、私の身体はモデル風。下手をすれば皆さんよりも痩せておりますよ。3カウントとは申しません。例え1カウントでも、私の両肩を地面に伏せればよしにしましょう」
どうでしょうか。
先程のシェヘラザード様の圧勝っぷりでこの女たちの腰は引けているでしょうか。
それとも、挑んでくれるのか。
(いいですか、ここで挑む姿勢を見せる人はまだ、人生を諦めないやる気があるとみなされるのです…ニホンの方が喧嘩を嫌うのは私も知っていますが、ここはジュウドウやケンドウ、アイキドウなどで名を馳せたサムライの国の人のヤルキを見せる時です。それに、ここでヤルキを見せておかないと、本当に奴隷のような扱いに進んでしまいますよ…)
「いやああああああああああ!助けてっ!助けてっ!」
ええ、我々の見る前で触手が引きずって行くのは、黄色い豚服…はいれぐTばっくれおたーどとかいう分類の服を着たハポネスの女。
その体は見る間に赤い血の池めいた巨大な地底湖の中に引きずり込まれていきます。
で、私もシェヘラザード局長も、聞き分けの悪い女が何人もこうされて来たのを見ておりますし、こうしろと指示する立場ですから、平然としたものです。
それに今回は、完全に溶解させずに変質させますから、嘔吐するような凄惨な光景にはならないのですが…。
(あの液体に浸かっても窒息死することはありませんよ)
ええ、ベラ子陛下が申される通りで、確かに溺れて死にません。
溺れては死にませんけどね…。
「皆さん。確かに皆さんがここに連れて来られたのを理不尽に思っておられる気持ちはわかります。実は私も、そうした立場だったのです」
で、ここは私がと、説得役を買って出たわたくしフランシスカ。
そう…実のところは、私も拉致されたか、はたまた祖国の方針で痴女皇国に送り込まれたかの違いはありますが、過去には今、目の前の苗床洞窟の中に座らされて体の自由を奪われた女たちのような立場だったのです。
で、記憶共有をかけて、私がどういう経緯でここにいるかの概略、ベラ子陛下にもご協力を頂いて豚扱いの数十名の女たちに説明して行きます。
幸いなことに、日本在住の外国籍者や帰化者も数名。
そして、日本人でも私がどこの誰かを多少ながら知っている者がおりましたので、比較的理解は早かったのです。
もっとも、理解はしても私の言うことを聞いてくれるか、それはまた別問題。
彼女たちの基準では、完全にこちらが犯罪行為を犯して連れて来たという認識なのですから。
ただし、犯罪…つまり、無理矢理に他人の自由を奪って拘束拉致することが犯罪に問われるとしても、その犯罪を取り締まる側が黙認するならば、どうなるでしょうか。
かつてのメヒコでは、麻薬組織に汚染された一帯…更には軍や警察そのものが麻薬組織と変化してしまった無秩序地帯がありました。
こんな場所では法律が正義が秩序が倫理がと言っても、その地での権力を握る者には全く通じなくなります。
暴力と銃弾、または凶器以外では自分の要求を通せなくなるのです。
私は、自分自身がカルテルに脅された時の実体験を敢えて見せてから、話を切り出しました。
「皆さん…我々はまず、皆さんに選んで頂ける選択肢を用意してお話をしました。しかし、それにも関わらず頑なに私たちの提案を拒絶し、更には反抗的とみなされた2名を順番に処分することで、私たちの意向に背けばどうなるかを実際にお見せするしかなかったのです」
と、たった今苗床に引きずって行かれた女と、その直前に「精気供給を断たれたり、あるいは魔毒除去を怠ると痴女種でもどうなるか」を火葬場で身をもって我々に見せた女の最期を思い出させてあげます。
「あの、自ら発火して死亡した女性は、今、すでにあなたたちに対して私たちが授けた恩恵と、そして短所に対する対処の説明をよく聞かずに反抗的に振る舞った報いを受けたのです…」
この、私の発言にムカっと来るもの、数名。
他にも、色々な考えが飛び交います。
(てめぇらが勝手にあたしたちを拉致して勝手に体を作り変えたんだろ…何を言ってんだよこの白人のアマ…)
(しーっ、こいつら考えが読めるって言ってるよ…あんま反抗的にものを考えたらあの、焼けて死んだやつの二の舞よ…)
(何のリョナモノのエロゲよこれ…今時、こんな本、3日目でも売れないじゃん…)
そう、敢えてこの女たちには心話を遮断せずに、考えを相互に読めるようにしておいたのです。
「では皆さん、お聞きしましょう。皆さんが行っていた活動、果たして正しいのでしょうか」
ええ、この言葉に、ビクっとした女が数名。
ふふふふふ。
この辺の知識はセニョーラ・雅美やベラ子陛下が監修して下さったのです。
いわく、コスプレイヤーとか言われるtrabajo de medio tiempo…日本語でアルバイトというのですかに身をやつしておった人種は、法律的には極めて微妙な存在であると。
「例えば、このマリアヴェッラ陛下は皆さんの中の多数がご存知だと思いますが、ビューティーツインズの公式コスプレイヤーであり、著作権者から許諾を得ています。いえ、公式イベントなどで宣伝のために衣装を着る機会も多いお方ですね」
そう…私以上に、この連中に名前と顔が知れているのがベラ子陛下。
しかし、痴女皇国の皇帝であることを知る者は不幸にしていなかったのです。
「イタリア政府と連邦政府の嘱託職員である以上を公開していませんからね…無理もありませんけど…」
または、ベラ子陛下が痴女皇国皇帝であることを知る者は、痴女皇国の女官…すなわち陛下の臣下または親族であるか、さもなくば協力的な関係者ばかりなのです。
そして、そんな協力的な人物であれば、そもそもこうして無理からに拉致されてはいないでしょう。
いえ…本人たちが拉致されたと思っているだけで、彼女たちの周囲には、全く感付かれてはいないのです…。
なぜならば彼女たちの家庭や職場には複製分体が送り込まれており、一定期間を経過した後で、その分体は書き置きを残して失踪したかのように回収されてしまうからなのです。
(日本の警察の捜査習慣で、自分の意思で失踪した場合と、誰かに攫われたような場合では扱いが全く違うのですよね…)
そして分体たちは、足取りを掴ませないように巧妙に消え去っているのですから…。
(まぁ、姉から加藤さんを通じて今回の拉致作戦の対象者は密かに政府内部に連絡済みです。万が一にも踏み込んで調べる者はいないとは思いますし、踏み込んで調べようとすれば…)
そう、日本の警察組織も自衛軍も、かなりのところまで痴女種、または比丘尼国の巫女種の系統の女官神官が潜入進出しているそうです。
それどころか。
「ちなみに今年度の日本の通常国会に出された売春防止法の法名を含む改正案、満場一致で可決しましたが覚えておられる方、いらっしゃいますか…」
この、ベラ子陛下の問いかけに頷く者は三分の一程度。
ただ…これは一般的な連邦世界での報道以前に、私も痴女皇国の国内報である月間痴女宮でその内容を知っていました。
なぜならば、売春を容認する代わりに、痴女皇国または比丘尼国からの派遣者の管理下に置くに等しい法改正だったからです。
無論、誰がやらせたか、関係者ならば一目瞭然。
で、売春防止法改め売春管理法となったこの新法案と…そして関連して改正された風俗営業法によりますと。
映像送信型風俗営業のみならず、公共の場での服装規制や、果ては図画販売にも認可を求める内容となっていたのです。
(以前から猥褻物頒布罪…刑法第175条の規定はあったけどね…ただ、執行猶予がなくなったのよ…この法律に触れたとされると、一発で実刑判決が出るようにされちゃったのよね)
(雅美さんの話に付け加えておくと、公共の場で警察の許可なく猥褻な格好をした者は現行犯逮捕されるように法律改正されたのです。つまり、コスプレを取り締まる法律ってわけですよ…)
(で、それが嫌なら個人風俗営業許可登録を取るか、指定の映像送信風俗営業者の従業員になること。これで、タレント事務所に所属する人は回避できることにしたけどね…ま、事業所自体が風俗営業許可、取り消されたら一網打尽にされるけど)
(ふふふふふ、そしてマイナンバーカードまたはメディアウォッチで個人風俗営業許可登録を簡単に確認できる状態にする…要は売春を認める代わりに、単純売春以外のお仕事を厳しく取り締まれるようにしてしまったのです…)
これでどうなったか。
つまり、売春に付帯する行為としてコスプレをしていない場合の方が、取り締まりが厳しくなってしまったのです。
(そればかりか、いわゆる地下アイドルとやらの部類も厳しく管理される話になったんですよね…コスプレして男性を集める撮影会も、認可業者や個人でないと禁止するって話ですから)
(更には1年を通じて売春実績がないと風俗営業認可取り消しだもんね…)
そう、売春料金をメディアウォッチでやりとりできる…金銭贈与機能で記録させないと、風俗営業免許を取り消されるそうです…。
(全く、えげつない法律よねぇ…誰よこんなの考えたの…)
(雅美さんも諮問委員として呼ばれてたじゃないですか…)
(それ言うならマリアちゃんもベラちゃんも皇居とか宮内庁に呼ばれて内閣や与党の人たちと意見交換してたでしょ…)
ええ、田中内務局長他、その辺の面子が日本政府に強く干渉したのは明らかです。
そして、この法律で取り締まっても即・釈放となる内規が存在するそうです。
痴女皇国関係者…具体的にはテンプレス・セキュリティや関連企業勤務者は除外されるのです。
(あたしたちの会社に雇用された場合は、自動的に連邦政府の嘱託職員として登録されるシステムとなりました。つまり、痴女皇国女官としての活動、連邦政府に裏書きしてもらえるのですよ)
(そもそもうちの女官、伊香保行くか六本木のピンキーローズを手伝うか、はたまた海老原さんの深海海老のお手伝いをしたら自動的に免許更新できちゃうし…)
(ふほほほほほ、かてて加えて認可業者のギルドを牛耳る存在がいますよ。もはや海老原さんは従来のやくざ組織に代わって日本の裏社会を牛耳って頂いているのです…)
これも恐ろしい話ですが、実の所、ハポンのマフィアは今や、メヒコのカルテルのような非合法組織としては存在できなくなっているのだそうです。
で、合法企業の皮を被っている首領の企業に雇用される社員なり、役員や出資者としての関係者の形で、エビハラという人物を長に頂く組織運営を合同で行っているのだそうです、痴女皇国。
(それに、あの有明の戦場の規模も小さくなったのが後押ししましたしね…)
(ま、紙の本を作る人も刷ってくれる印刷所も減って来たからね…有明のお祭りも年一回、年末だけになっちゃったし…その代わりに模型のイベントが夏に入ったけどさ)
そう、いわゆるHENTAIイベントとやらも様変わりしたのが原因らしいのですよ。
(ここまでの規制というか、痴女皇国に都合のいい日本に作り替えるの、それなりに時間がかかったけどねぇ…)
(比丘尼国にも都合が良いようにする必要、ありましたからね…)
そう…今のハポン、男の気を引く商売をするにはその商売のプロモーターに雇われるか、さもなくば売春とみなされる実績を積むかの、二択。
(ジュニアアイドルや声優については緩和していますよ…ただ、露出の多い写真集とか出すには、高木企画や姉が株主の映像制作会社ですとか、田所社長の会社と仲良くしていないと警察屋さんがこんにちわーしに来ますけど…)
まぁ、こんな事をしておれば、確かに目の前におる数十人の女たち、文句を言いもするとは思います。
しかし、我がメヒコなんぞ、もっと厳しいのですよ。
それに、更に厳しいのが鯖挟国の連邦世界版、つまりトルコです。
あのトルコ帽、一時はトルコの象徴のようなほどに流行したものでありながら、当局によって厳しく取り締まられた結果、着用者を大幅に減らしたのです。
あんな無害そうな帽子ですらこれですから、ましてやアニマシオンやヒストリエタスなんて、規制されずに自由に発表できる国の方が世界的に見て珍しいのですよ?
更には、このコスプレイヤーとやら、自分の創作衣装だけで世に有名となった者ばかりなのか。
これは、お読みの皆様のご想像の通りかと。
(ぶっちゃけコスプレ、特に日本のは著作権者の黙認で成立してることが多いのよ…あと、撮影場所も決して認可を取ってない場合があるから…)
(パイセンが言ってましたよね、上越線の駅でトンネルの中にあって地表まで登る階段の途中で撮影したらしい写真見て、鉄ヲタさんが騒ぎかけたって話…)
(そんなケースでも、緑文字の会社が「うちの駅の構内で写真撮って売り物にするとは」って騒いだら問題になるからね…)
そう、この件を指摘すると、皆が黙り込んだのです。
そして、マリアリーゼ陛下、今や出版業界や映像業界に顔が利く立場であり、いくらでも圧力をかけてその辺の認可を取っていない人々を弾圧することが可能なのですよね…。
(で、実際に弾圧した結果がこれというわけなのですよ。かわいそうですが、皆さんが活動していると、あたしたちが展開しようとしている事業…男性を性交に向かわせる事業の支障となるのです)
(で、セニョーラ・エ・セニョリータ…私もかつてはセックスシンボルのように見られた立場です。そして皆さんが、当局の勧告を頑なに拒否するか、はたまた無視して表現活動とやらに勤しまれた結果でここにいらっしゃることには、それなりに同情の目を向けなくもありません)
そう、私は地域を限定しますけど、人口だけで言えば知名度や支持者数、この女たちよりは遥かに多かったんですよ?
ハポンじゃあまり有名になってなかっただけで。
ええ、私の写真で自家発電した男どもの人数も競ってよろしい。
そして、私が既婚女性に対しての敬称で呼びかけたのにも注目願います。
そう…コスプレイヤーとかいう人種、ヒトヅマも結構おられるようですね。
しかし、改正風俗営業法並びに売春管理法では、売春実績を残さないと認可取り消しとなります。
これがために、民法の離婚要件やら色々なことを弄って、風俗遊び…もっというと売春を実質的に合法化したそうですよ、連邦世界における日本。
ですからペーパードライバーというのですか、免許だけ取って運転しない女のようなごとき、売春免許を取って実際に売春しない女は許されないのが日本の現状になってしまったようです。
(その代わりに、認可を受けた売春管理業者に雇用されるか契約を結べば売春実績がなくともおkにしたからねぇ…)
で、これに反発したり当局の呼び出しを無視していた連中を順次検挙するどころか、黒薔薇騎士団や紫薔薇騎士団を使って巧妙に回収したのがこの連中。
重ねて申しますが、そもそも売春と同じで、女を売り物にするのは連邦世界だと何をどうしても厳しい。
これが、メソ・アメリカで生まれ育った私の認識です。
この女どもは、規制の網目を潜ってやっていたことがたまたま世間から注目されただけに過ぎないのです。
言ってみれば、儲かるから云々で株式投資や為替取引に手を出した主婦や独身女性と変わらぬでしょう。
グレーゾーンというのですか、規制がまだ為されていないか、はたまたお目こぼしを受けていたような地帯で商売していれば、風向き変われば規制される対象にもなるだろうと。
それが嫌ならば我がメヒコで独立を勝ち取った革命英雄たちのように、権力者との死闘を覚悟して反旗を翻すなり、あるいはルチャのような国民の熱狂的な支持を受ける分野で大成すれば良いのです。
(さすがにメキシコ生まれの人は厳しいですね…)
(女性の権利も弾圧していた国でしたから…)
ええ、このフランシスカがメヒコの女性大統領としては初、なのですよ…連邦世界では。
いくらメソアメリカ全域を襲った大地震の復旧にかこつけて任じられたとは申せ、曲がりなりにも権力の頂点となったのですよ、私?
(しかし、いくら人品外観才能に優れていても、人は機会を与えられないとせっかくの天賦の宝を持ち腐れにさせてしまうのは、私とて理解しています。そこで皆さんに提案です。この滅姦のみならず、痴女皇国世界では優秀な女性が出世できる機会がふんだんに用意されているのです。もしも皆さんが、現役当時の私と同等以上の地位をお望みであれば、そこに登ろうとする機会が今、ここに存在するのです)
(フランシスカさんの提案が、皆さんに用意できる最後の機会ですよ…私たちはいつまでも待てません。ただ、決断に踏み切られた方々には、このマリアヴェッラの名にかけても、女官や騎士の修練の道に進んだ後の人生がそれなりになることを約束させて頂きましょう)
(ただし、このダニヤザードより申し上げます。女官となるに当たっては、騎士の修行が必ずついて回ります。聖母教会のあるところ、その管轄地の犯罪や悪事を取り締まる役目が尼僧には課せられます…聖母教会の尼僧は文武両道なのです。そしてフランシスカ様…フランシスカ様がかつてお治めであったメキシコ帝国と申す場所、いかがでしたか?)
(痴女皇国世界のアステカ、そしてマヤ文明の地は統合され、帝国となりました。その初代皇帝、他ならぬこの私であったのです…そして明日輝や魔屋の神殿の女神官はもちろん、治安を預かる女闘士を育て上げ鍛えるための学校や、地域での選抜競技会も開催していました…)
で、実際に武道の心得のありそうな者を選抜して、試しにダニヤザード様と私が、どれだけ強いのかを見せる羽目に。
え。
「ふふふ、面白い試み…どれ、久しぶりにこの私が剣を取ってみましょうか」
ええ、シェヘラザード様、立候補。
ですが、その腰に下げたニホントウらしきをベラ子陛下に預けられます。
「ダニヤ、練習用の模擬刀はありますか。あれば拝借させてくださいな」
「折らないでくださいよ、姉様…」
で、ケンドウの心得のある者に、騎士訓練に使うというヘッドギアゴーグルめいた物や、防具を装着してもらいます。
では、対峙するシェヘラザード様の身なりは。
「ふふふ、これを着るのも久々ですわね…」
聞けば、聖院銀衣騎士時代の服装らしいのです、この白い皮革に銀の装飾をあしらったびきにあーまーとやら。
ただ…お尻は剥き出しですよ。
「さぁ参りなさい。このシェヘラザードの体にかすりでもすれば、そなたの身は自由として差し上げましょう。無論、そなたが負けたとしても特段の罰など与えませぬ。むしろ勇気を称えるべきでしょう。さ」
ええ。
だらんと垂れ下がったような、構えていない…剣も真面目に握っていないように見えるシェヘラザード様に、さすがにその女もやる気になったのでしょう。
記憶を見ると、ケンドウの有段者ではあるようです。
しかし、相手が悪過ぎました。
というかシェヘラザード様、剣、相手の剣を受ける道具にしか使っておられませんよ。
そして、絶対に百万卒以上でないと見れない動きで、女の鳩尾に膝蹴りを軽く入れたのです。
(殺してしもうては是非もなし、ほれ、起きやれ)
ええ、一撃で悶絶して倒れたその女に対し、介抱するふりをするシェヘラザード様。
「おやおや、加減したつもりがなんともはや、ラービア様、ちと介抱をば…」
「ええ、シェヘラザード様…内臓は破裂しておらぬよう。苗床で身体を戻してやれば良いでしょう」
そう…ここの苗床ですが、東方聖母教会預言派総主教の地位につかれた預言聖女とされるラービア様の管理下なのです。
つまり、ラービア様は中東行政局における苗床管理者、第二弾。
「これはあくまでも介抱のため…それに、聖院銀衣騎士でもあらせられたシェヘラザード様に果敢に挑んだ功績を称える行為でもあります。この女、次に苗床から出た時は十人卒…只人にして十人ぶんの強さとなりますよ…」
「ま、私どもに挑む勇者は他におりませぬか。おらぬならばこのまま…」
「お待ち下さい、このフランシスカに格闘で挑む者がおれば、受けて立ちたく」
「おお、忘れておりました…フランシスカ様も、ジョシプロレスとやらで名を馳せたのですね…」
ふふふ。
震災復興のためにも、メヒコ国民の意欲を煽るべく、ルチャ・リブレに代わってルチャ・フロレンシア…乙女闘技を流行らせておるのですよ、メキシコ合衆国。
そして、私もリングに上がることで、闘う大統領を印象付けているのです。
格闘の心得のある者を煽るべく、私は例の赤白緑三色のルチャドーラの姿に変わります。
「見ての通り、私の身体はモデル風。下手をすれば皆さんよりも痩せておりますよ。3カウントとは申しません。例え1カウントでも、私の両肩を地面に伏せればよしにしましょう」
どうでしょうか。
先程のシェヘラザード様の圧勝っぷりでこの女たちの腰は引けているでしょうか。
それとも、挑んでくれるのか。
(いいですか、ここで挑む姿勢を見せる人はまだ、人生を諦めないやる気があるとみなされるのです…ニホンの方が喧嘩を嫌うのは私も知っていますが、ここはジュウドウやケンドウ、アイキドウなどで名を馳せたサムライの国の人のヤルキを見せる時です。それに、ここでヤルキを見せておかないと、本当に奴隷のような扱いに進んでしまいますよ…)
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