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がんばれペアーズ・おねショタ布教軍創設ものがたり・10.3
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「さ、さむいのですぅ…」
「アルト閣下…今しばらく、シンボウ願います…」
淫化帝国挿入器具市の東南にそびえ立つ大きな山。
万年雪という、溶けない雪の白い模様をその頂上に見せることから、ネバド・アウサンガト…雪に覆われていて淫化の神々の世界とを繋ぐ門の役目の山、と言う意味の名前がつけられておるそうです。
このアウサンガト山こそが、私ことリュネ剣聖のイリヤと、魔族のアスタロッテが目指している目標です。
既におおよその調べはついておりまして…目標の山頂付近を覆う、ほぼ永久に溶けないであろうとされる氷と雪の中に眠る少年少女の遺体が、我々が目指している場所に存在していること、判明しております。
そしてそのうちの一体が、わけても絶対に回収必須とされるいにしえの淫化の皇子クシの遺骸であるそうです。
しかし、文字が存在しなかった淫化。
副葬品や遺骸の性別で、クシ皇子か否かを判別しなくてはならないとなりまして…。
ただ、今や淫化の地には私やロッテ、それに私たちの同族が順次、移住しております。
しかも、その多くは神官待遇として迎え入れられておる立場。
(ならば、淫化の領内の高山に多数が眠る少年少女の遺骸、神への伝使のお役目を果たしたとして改めて祀っても良いのでは)となりました。
ただ、この話には裏があります。
この、カパコチャと称される、いけにえの儀式。
優秀な少年少女を選抜して対象にしていたそうです。
で…リュネ世界から移植された魔族の技術である苗床なる生きた血の池。
これ、私たちリュネ世界の人間だけでなく、淫化の地で私たちが魔法を使えるようにと配慮された結果、淫化各地に繁殖させている魔毒苔という生き物の撒き散らす魔毒の穢れを抜いた体にする手段のひとつなのですが、この苗床に人体を浸すと強力な痴女種やリュネ出身者以外、消化されてしまうのです。
つまり、食べられます。
ただし、その消化にもいくつかの段階があって、苗床と同化するだけではなく再生可能な状態で保管させることも可能だと、相棒にしたくはないのですが相棒とでも言うべき相手のロッテ、申しよります。
(私もお前のような粗暴な女の相棒なぞ)
(武芸剣芸の鍛錬をしたいならいつでも受けて立ちますよ)
(むぐぎぎぎ)
このロッテ、以前も申しましたが実際には私と互角以上には強いのです。
ただ、魔力をふんだんに供給される魔大陸、わけても苗床原種の所在する巨大な地下の湖の近辺でないとその強さを充分に発揮できない弱点が存在するのです。
ですから、弱毒性魔毒苔を撒いてもらっている淫化の地ではその強さ、十全に見せつけることは出来ません。
もっともそれは私も同じでして、今、かなりの高さであるアウサンガト山の山頂を飛行して目指すために、アルトリーゼ閣下とジョスリーヌ団長が携帯している新開発装置の助けを得ております。
そして私はアルト閣下…アルトさんを抱えて飛んでいるのです。
同様に、ロッテはジョスリーヌ団長を。
そして、このお二人は痴女皇国幹部の中でも上から数える方が早い地位と能力の方々。
その莫大な蓄積精気、我々が飛行で消費する魔力に転換するための変換器なる装備をお持ちなのです。
(あと、アルト閣下の大の苦手である雪山克服を言い渡されている件も伝えた方が良いだろう…)
(じょすりん一人でじゅうぶんなにんむではないですか!なんであたくしまで!)
(我々の体重の重さも軽減する必要があるからですよ…閣下の百億卒の精気蓄積が必要なのです…)
(ううううう)
そして、我々の隣を飛んでおられる羽根持ちの方。
(やれやれ、ほんまはうち一人でも出来る仕事ですねんけど、箔付けが必要なみたいで…皆さん頑張って飛んでください…)
ええ、痴女皇国本国の国土局からお越しのエマニエル建設部長、その元来の姿である桃色の羽根を広げたお姿で我々と並んで飛んでおられます。
そして、部長のお仕事ですが…淫化領内に残るカパコチャの儀式の結果、あちこちの山に残っている少年少女の遺骸を回収し、衣服や副葬品と遺骸を分別する為にお越しになったと。
(ぶっちゃけ、優秀な少年少女の遺骸から遺伝子を頂戴して、苗床で淫化人として再生するために回収するとか、一体誰が考えたのかと…)
そうです。
今から回収される遺骸、挿入器具市を見下ろす丘に建つ淫化皇帝宮殿であるサクサイワマン神殿の地下の苗床に入れられるのです、一体以外は。
その一体が、我々が特に求めるクシ皇子の遺骸なのです…。
(ではじょすりん、一時的にあたくしのちからをおかししますが、べらこへいかをしばく前にまずは、おうじさまのみいらをみつけるのですよ…)
今のアルトさんが着用しているあなあきばんぴれらなる服。
この服は聖院白金衣と称される特殊戦闘服で、指定した人物に聖院金衣能力を貸し与えることができるそうです。
で、通常でもお強いジョスリーヌ団長が迅速に山頂付近で行動できるように計らうのだとか。
(イリヤ殿。言葉通りに捉えない方がいい。アルト閣下は自分が楽をしたいが為に私に億卒以上の力を貸し与えるつもりなのだ…)
(もともとそういうつかいかたをする服でもあるのです…)
で、ジョスリーヌ団長の指示で、我々は山頂上空で二人を放り出します。
(いきなりなにをするのですか!)
(アルト閣下…これくらいは普通に着地しましょうよ…)
ええ、不意打ちめいた落とし方をしたせいで、アルトさんはあわや山頂から数千メートル…で合ってますかね、痴女皇国世界の単位の申し上げ方…を転げ落ちる寸前でした。
一方、強風吹き荒れる上に風向きが目まぐるしく変わる山頂付近の状況をものともせずに降り立つジョスリーヌ団長。
(私はアルプスの山岳地帯で作戦訓練も受けたし、中仏支部と提携しているバーデン=バーデンの南独支部領内で行動することも多いからな。あの辺も雪が多いのだよ)
(だからあたくしはさばくの生まれで、しかもうみの女なのです!)
うーむ。
この方が痴女皇国最強の戦士の地位にあるとは、信じられません。
(確かにアルト閣下、活躍の場所を選ぶんだよな…)
(ジョスリーヌ様の振る舞いを見ていますと、確かにアルトさんがお強い時を見ておられるからこその敬意だと言うのはわかるのです。ですが…)
(まぁともかく、その…いけにえとなった子供たちの死骸だな)
(ありましたよ)
はやっ。
雪をかき分けてみると、なかば凍りついたぼろ布…と言うほどには痛んでいませんね…にくるまった子供の死体らしきが。
更には周辺には煌びやかであったろう、金のサンダルや装身具などが見受けられます。
(これは女の子ですね。周りに5~6体、似たようなミイラ化した死体が…男の子が一人。周辺の副葬品や身につけているものが全く違います。恐らくこれがクシ皇子でっしゃろ)
エマニエル部長が手を触れずに、慎重に雪を吹き飛ばすと、同じようなミイラ…干からびた死体が出て来ます。
聖母教会の流儀でしょう、十字形に手を動かして黙祷するおふた方。
そして、エマニエル部長の手には、なぜか玉に糸か紐を通した輪が。
(ジーナかーさまの実家が浄土宗ですよってな…)
(エマニエル部長が神様のようなものなのに、まさか仏教徒とは)
(まぁまぁじょすりん、ちじょ宮にはぱんちさんもいらっしゃいますし)
聞けば、人の身で修行と思考を重ねて神に近い領域に達した人物で、死後は特別待遇を得ている方が聖院学院の要職に就いておられるそうですね。
で、遺体によっては下手に動かせない状態のものもあるため、そのクシ皇子らしい分以外はエマニエル部長が遺骸とそれ以外を分類してサクサイワマンへ転送なさると申されます。
(この子供たちのDNA/RNA…遺伝子を使って、今後その苗床を経由して産み出される子供を再生することになりますわ。ただ…リュネ世界の本体苗床を使った再生はイリヤさんとアスタロッテさんにお願いすることになります…)
そうです。
クシ皇子の遺骸の持っている遺伝子とやらを使い、魔大陸の苗床からリュネの皇子クシーを再生するのです。
奇しくも二人の不遇な皇子の名、偶然にも似ているのですが。
(イリヤさんの体内、順調に駄洒落菌が育っとるようですな)
じーっと私を観察なさるエマニエル様。
何か、よろしくない事でも。
(気のせいかな、どうも寒さが増した気がする)
何が言いたいのよ、ロッテ。
思わずロッテを山頂から蹴り落としたくなりましたが、この女も飛べるんですよね…。
(それはそうとアルト閣下、アレーゼ本部長からの伝言が。帰りは自分の足で麓まで降りろ、だそうですが)
(おにですかアレーゼさまは!)
(小官も付き合いますから…あ、リュネのお二方は山頂から降りるなら気流をうまく使えるだろうと)
ええ、確かに、降りる分には気流さえ読めば、魔力も精気も消費せずに降りられます。
で、失礼とばかりにジョスリーヌ団長、アルト閣下を山頂から蹴り落とすと、自分も跳躍して降りていかれました…。
(この行為はアレーゼ本部長の指示です。苦情は本部長に…)
あんぎゃああああああとかひぎゃあああああという絶叫が風に乗って辺りに広がります。
(普通ならこれほどの高さから一気に降りず、徐々に身体を慣らしていく高度順応が必要なのだがね…ま、痴女種化している上に、元来は黒薔薇騎士団の誰よりも速く強く動けるはずのアルト閣下だ、情け無用とアレーゼ様からも念を押されたんでね…)
ええ、あっという間に下の方まで行かれておしまいになるジョスリーヌ様。
痴女種化しているというよりも、本来の身体の運動能力がお高いのでしょう。
リュネの戦士仕様の剣、もしもお渡しすれば、兵隊魔族の強い方とも楽に渡り合えるのでは。
(無駄遣いさせるな…あ、一応、サクサイワマンやワイナピチュ、マチュピチュの苗床からも兵隊魔族、出せるには出せるぞ。ただ、あまり多数は産み出せないがな…)
(何をするつもりですか…)
(勘違いするな。オリューレ局長の依頼でマリアリーゼ陛下の許可も出ている件だが、補助労働力としてだよ…街道整備や神殿建設はエマニエル様に依頼できるとしても、淫化由来の作物は平地の畑で大量に耕作できないものもあるだろう…)
ああ…なるほど、兵隊魔族を畑仕事に回そうというのですね。
平地ならいざ知らず、淫化の山中にありがちな棚畑であっても、兵隊魔族なら飛んだり跳躍することで普通の人ではありえない速さで移動できるのは私がよく知っております。
そして、兵隊魔族の強力な四肢の力を畑での力仕事に振り向ければ、さぞや捗るものもあるでしょう。
これは素直に賛同を示しておきましょう。
ただ…魔毒を撒き散らすのはやめといた方がいいですよ。
(これもサクサイワマンなど、淫化側の苗床を使えば我々程度の魔毒放出で済むのが確認されている。少なくとも純粋な戦闘用の兵隊魔族とは似て異なる者が出てくると思ってくれ…)
(実はその辺の労働魔族っちゅうんですか、淫化の開発のために動かすもんの改良に、このミイラの子供たちの身体が必要やっちゅうのもあるんですわ…淫花の人々は実のところ、他の国ではありえん高さで長年暮らしてはるんで、肺や血液が平地暮らしの他の民族の方とは少々異なるのですよ…)
エマニエル部長によれば、一般の淫化の人々…主に神界という分類がされている山中の住人に対して、今後のリュネ人や魔族の要素を組み込んで魔毒耐性を持たせる方向で行くそうです。
(まぁ、いつもの痴女皇国の要領で、神殿にあれをしに来て貰えれば勝手に身体改良が進むようにしときますけどな…あと、低地に住んではる人については現状は別枠扱いという話ですけど)
あ、俗界の方々ですね…この方々は魔毒を必要としない移民の方も多数なので、どうしたもんかという話も出ております。
と申しますのも、淫化の統治は各地の太陽神殿で行う方針が打ち出されております。
当然、神殿に詰める神官…太陽乙女や月乙女は魔毒と魔法対応の痴女種になってもらうと。
しかし、それでは弱毒性とは申せど魔毒苔を神界と同じ密度で繁殖させなくてはなりません。
いかに鎖国状態の淫化支部といえど、陸続きで他の支部との境界が存在しますし、作物の輸出を始めとして交流はあるのです。
淫化と明日輝と魔屋だけでやっていきます、他は知りませんというような方針ではなく、可能ならばよそ様…特に海賊共和国や尻出国の方々との往来を可能にしたいというのが私のみならず淫化側の希望です。
(その件もあってレオノールさんを来させたみたいですけどな、ま、ぼちぼち私らも戻りましょか)
で、さくっと50キロほどの距離を飛んで戻ったクスコから、私とアスタロッテは布にくるまれたクシ皇子の遺骸もろともリュネ世界の魔族大陸に向かいます。
ええ、母体苗床を使うのです。
既に魔王にも連絡が行っており、成人状態かつ普通の人の目ではなく虫のような複眼状態に変化した魔王、苗床の湖の湖岸で待ってもらっております。
「しかし、面白い事を思いつくもんじゃな。確かにクシー王子を普通に復活させれば、イリヤと同じようなリュネ人の姿で出てくるであろう」
「で、魔王様…クシー王子、この淫化の少年の身体に近い状態に変えて欲しいのですよ」と、私の抱えている遺骸を示すロッテ。
「なるほどなるほど、ちたま人とやらの子供のなきがらであるな」
どれどれふむふむと遺骸を見聞する魔王。
「まぁちょっとやってみよう。どれどれ」と、触手を操って私から遺骸を受け取る魔王。
そして触手は、苗床の液面に遺骸ごとずぶずぶと引っ込んでいってしまいます。
「でなイリヤ。そちとロッテ、ちょっと協力してくれんか」
えええええ。
「特にイリヤ、お主じゃお主」
断る間もなく伸びてくる触手。
待てや。
思わず聖剣を抜き放って魔王をしばき回そうかと思いましたが、何とその魔王も、何かやっとります。
「あのー魔王様、我々の逸物から何かを絞ろうとするのはまだ良いとして、それは何ですか」
「ああ、これな、痴女皇国の連中の知識にあった、だっちわいふとかいうもんや」
で、腐れ魔王が何をしておるのか。
何と、苗床を操作して兵隊魔族を産んでおるのです。
しかし、いつもの兵隊魔族ではありません。
まぁ、兵隊魔族にもいくつか種類があるらしいので、私の知らない初見の個体かも…と思っておりますと、明らかにその魔族、戦闘用ではないのです。
そうそう、一般的な兵隊魔族その1はロッテが「比較的弱い」とか言っていた人型で、ロッテなど幹部魔族のそれに近い外観です。
かつては人族大陸の沿岸に送り込まれて人を拉致っていた尖兵、主にこいつらです。
で、兵隊魔族その2というのが今の魔王に近い姿でして、手足も虫の関節に近いとか、生えてる羽根も虫の羽根めいている特徴があります。
とどめに、その2は顔の半分くらいを占めている目が複眼です。
はちおんな、とかいう単語が思い浮かびましたが、どうも天の声とやらに言わせると、もすきーとむすめとか言う怪物に近いようですね。
https://x.com/725578cc/status/1726817640323408086?s=20
この兵隊魔族その2、割と真剣にリュネ側を攻める際に出てくる連中でして、関節の挙動に特徴があったり口から火を吐いたりして強さを見せつける類なのです。
(兵隊魔族その1でもびみょーーーーーーーに虫の癖があるんだよなぁ…)
(アスタロッテ…余とて魔大陸でただひたすら無聊を囲うておったわけではないぞ!見よ!この人やお前にも負けぬ流麗円滑な動きを!)
んーと。
確かに、その動きは人そのもの、いえ、人以上。
ですがね、何をやっとんねん、魔王。
そう、魔王も痴女種互換の体にされたため、ちんぽが存在するのです。
で、生成した魔族の尻にちんぽを突っ込んで尻を振っておるのです。
しかも魔族は魔族で腰、激しく使ってますし。
「うむ、今日も会心の出来。苗床も慣れて来たようであるな…姦淫魔族の生成」
おいいいいいいいい。
「ふっふっふっふっふっ、見よイリヤ!お前がフユキの口に以下略する時を参考にだな」
えーと、この腐れ魔王、射精の際にそのまま中田氏をするのかと思いきや、何とその性交用魔族とやらの口にちんぽを突っ込んでおります。
しかも、その行為の例え、私の性行為と比較すんなよ。
偽女種化したフユキに対して私が弱毒魔毒…痴女皇国世界の方に言わせるとわくちんの効果があるそうなのですが、その行為を覗き見してやがったようなのです、この覗き魔で変態のド腐れ魔王。
もはや、側溝に潜り込んで女の下履きを覗いて捕まること三度目のヨコヅナ級変態もかくや。
「イリヤの場合、ワクチンというよりワクワクちんちん祭りって顔してたな、フユキに咥えさせてる顔」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいこら待てやロッテ。
「お前がワイナピチュの日没儀式の時にフユキを連れて来て私に見せたんじゃないか!それも、まだ相方がいない時の私に自慢げに見せつけるような大人げない真似をしてドヤカオとやらになってただろ!」
ふん、それぐらいの自慢、広い心で見つめなさいよ。
「その言葉、そっくりお前に返していいか。エイモンが言ってたぞ…最近イリヤ様が僕のことを妖しい目で見るし、やたら偽女種の姿にさせたがると」
ぎゃあああああ。
「あれは単にエイモンならば痴女種の服装の方が似合うと思ったからですっ」
「そういうのはフユキに頼めよ!エイモンはあまり女らしい姿を取りたくないのだぞ…せめてハルキに頼めっ」
「ハルキはチャスカの持ち物です」
「ならエイモンも私の所有物って理屈が成り立つだろ…」
呆れ返るロッテですが。
「そちら。言い合っておるところ誠にすまんが、お前たちが精毒を提供してくれたおかげで仕事が捗ったわ。クシー。久方ぶりの現生であろう。もはやそなたを直接に覚えておるのはこの魔王とアスタロッテのみ。されどそなた害するものもまた、もはやこの世にはおらぬ。おるとすればそなたを伝説の子として敬う者どもであろう。さ、出てまいれ」
おおっ。
しかし、ちょっと待てや魔王と言いたくなりました。
わしの外観そっくりではないものの、これではリュネの女やないか、と。
ただ…股間にちんぽ、存在しますね。
「ふふん、慌てるでないわ。いんまぬえるを通じてマリアリーゼに聞いたが。このクシーはそなたらの側の苗床にも浸けて、今後の子作りのためのさんぷるとかいうものにするんじゃろ?なればリュネの者の外観特徴も持たせておらねば片手落ちであろ。クシー。ちょっと姿を変えてみよ」
「は。失礼…」
その全裸の女、何と髪の毛が黒色に変わります。
で、少年に近い姿に変化。
「マリアリーゼのおーだーでは、誰かに寄り添わせるためには偽女種の方が良きと言われてな。クシー、そちにはもはや剣を振るって我らと戦う事を求められてはおらぬ。しかし…その股倉のわざものを振るって女どもを斬って斬って斬りまくる事を求められるであろう」
「ほう…クシー王子、私も知ってるんだが確かに美少年公とか言われておってな。当時の王宮では人気者だったはずだぞ…ただ、この美しさが災いしてな…」
「んーとな、確か当時のクシーと跡目争いした王妃マーモルの産んだ子がな…子がな…」
「イリヤ。上の書物蔵にある王子タークマの肖像画だ…司書魔族の視覚をお前に繋ぐぞ…」
ふむ。タークマとはその、クシー王子を追い落とそうとした正室王妃の産んだ子なのですね。
どれどれ。
ぶ。
あかん、これはあかん。あかんねん私、と言う感想、思わず口をついて出てしまいそうになります。
ええ。そのタークマ王子、超絶に醜男ではありません。
むしろ見た目は筋骨隆々、なかなかに体格は良い部類。
しかし、写実的に描かれたタークマ王子の顔と全身の姿…恐らくは偵察魔族か誰かがありのままに見た姿を何かに記録したのでしょう…。
目の前のクシー王子と比べてしまうと、どうしても人徳や人格がわかってしまいそうな顔立ちなのです。
よもやまさか、何をさせても問題を起こすか、職や持ち場を変えた挙句、とんでもない凶行に走るとかいう末路になったのでは。
昔の剣聖が犯されてエイモンを孕んだ件といい、どうもリュネ王室や文人ども、ダイホンエイパッピョウなる技で、リュネ側の敗北や失態を隠そうとする傾向があるようです。
そして、私の懸念は的中しとりました。
「あー、イリヤ。リュネの恥をまたしても暴露してすまんのじゃがな…」
「魔王様、私が。イリヤ…お前の見立て通りだ。このタークマ王子、女癖がものすごく悪かったようでな…。宮廷の女には嫌われておったので、城下町の女をお手つきしておる悪癖持ちだったとある」
「で…ついには城に監禁されてしまったのじゃが、あわや脱走して兵子学校…イリヤも知っとるじゃろ…を襲って暴れようとして、やむをえず時の剣聖に鎮圧されたとあるな」
「そして、タークマは箱舟の刑とされ、魔大陸目指して流されたのだ…」
「まぁ、経緯は我らも知るところ。正直こんなもん苗床に漬けとうなかったから、アスタロッテに兵魔を放ち襲わせるよう命じざるを得んかった…むしろ、リュネ側もそうしてくれと言わんばかりに、箱舟に目印の旗と魔灯までつけておってな…」
まぁ、そうしたくなる気持ちはわかります…ロッテの記憶を参照するに、これはあかん子やというのがタークマ王子に対する私の感想でしたし、私が当代の剣聖であったら聖剣で焼いておったかも知れません。
「クシー、そちにとっては残念な結果ではあるが、そちの去った後のリュネ、かような有様であったので、やむをえず別の側室の産んだ子を次期王として戴冠させたと聞く」
「ただなぁ。その別の側室…ヤスニ氏族の女だったんだよなぁ」
…何を言いたいんや、ロッテ。
お姉さんに言うてみい。
「お前にBBA扱いされることを覚悟で言うが、私も魔王様もお前からすればお姉さんどころではない年齢」
「まぁまぁ、当代の剣聖様ですね。朕が魔大陸に逃れさせて頂いた後の経緯は教えて頂きました」
と、ここで仲裁に入ろうとなさるクシー王子。
美形というだけではなく、人柄の良さが滲み出ております。
「本当ならば我が兄タークマが流刑となった後、私がリュネに戻れば話はまた、変わったかも知れませぬが…」
「これは我らに伝わる占いの結果でもあるのじゃ。このクシー、当代のリュネではなく後のリュネで蘇らせよ、とな」
「恐らくクシーの性格では戦乱のリュネでなく、平和となった世で蘇らせる方が良いとされたようだ。我らとてクシーの優秀な遺伝子情報…と今では言えるが、魔族生成の基礎を貰い受ける利点はあったのだけどな…」
まぁ、その辺は敢えて深く突っ込まんようにしておきましょう。
「ではクシーよ、伝えた通り、この魔大陸を含むリュネの世は半ば眠りにつきかけており、民は異界の方々の手助けによって淫化帝国なる地に逃れ、新たな生を享受しておる様子じゃ。そなたもそれにならい、このロッテとイリヤに従って淫化の地で幸福に生きるがよいであろう…」
「アルト閣下…今しばらく、シンボウ願います…」
淫化帝国挿入器具市の東南にそびえ立つ大きな山。
万年雪という、溶けない雪の白い模様をその頂上に見せることから、ネバド・アウサンガト…雪に覆われていて淫化の神々の世界とを繋ぐ門の役目の山、と言う意味の名前がつけられておるそうです。
このアウサンガト山こそが、私ことリュネ剣聖のイリヤと、魔族のアスタロッテが目指している目標です。
既におおよその調べはついておりまして…目標の山頂付近を覆う、ほぼ永久に溶けないであろうとされる氷と雪の中に眠る少年少女の遺体が、我々が目指している場所に存在していること、判明しております。
そしてそのうちの一体が、わけても絶対に回収必須とされるいにしえの淫化の皇子クシの遺骸であるそうです。
しかし、文字が存在しなかった淫化。
副葬品や遺骸の性別で、クシ皇子か否かを判別しなくてはならないとなりまして…。
ただ、今や淫化の地には私やロッテ、それに私たちの同族が順次、移住しております。
しかも、その多くは神官待遇として迎え入れられておる立場。
(ならば、淫化の領内の高山に多数が眠る少年少女の遺骸、神への伝使のお役目を果たしたとして改めて祀っても良いのでは)となりました。
ただ、この話には裏があります。
この、カパコチャと称される、いけにえの儀式。
優秀な少年少女を選抜して対象にしていたそうです。
で…リュネ世界から移植された魔族の技術である苗床なる生きた血の池。
これ、私たちリュネ世界の人間だけでなく、淫化の地で私たちが魔法を使えるようにと配慮された結果、淫化各地に繁殖させている魔毒苔という生き物の撒き散らす魔毒の穢れを抜いた体にする手段のひとつなのですが、この苗床に人体を浸すと強力な痴女種やリュネ出身者以外、消化されてしまうのです。
つまり、食べられます。
ただし、その消化にもいくつかの段階があって、苗床と同化するだけではなく再生可能な状態で保管させることも可能だと、相棒にしたくはないのですが相棒とでも言うべき相手のロッテ、申しよります。
(私もお前のような粗暴な女の相棒なぞ)
(武芸剣芸の鍛錬をしたいならいつでも受けて立ちますよ)
(むぐぎぎぎ)
このロッテ、以前も申しましたが実際には私と互角以上には強いのです。
ただ、魔力をふんだんに供給される魔大陸、わけても苗床原種の所在する巨大な地下の湖の近辺でないとその強さを充分に発揮できない弱点が存在するのです。
ですから、弱毒性魔毒苔を撒いてもらっている淫化の地ではその強さ、十全に見せつけることは出来ません。
もっともそれは私も同じでして、今、かなりの高さであるアウサンガト山の山頂を飛行して目指すために、アルトリーゼ閣下とジョスリーヌ団長が携帯している新開発装置の助けを得ております。
そして私はアルト閣下…アルトさんを抱えて飛んでいるのです。
同様に、ロッテはジョスリーヌ団長を。
そして、このお二人は痴女皇国幹部の中でも上から数える方が早い地位と能力の方々。
その莫大な蓄積精気、我々が飛行で消費する魔力に転換するための変換器なる装備をお持ちなのです。
(あと、アルト閣下の大の苦手である雪山克服を言い渡されている件も伝えた方が良いだろう…)
(じょすりん一人でじゅうぶんなにんむではないですか!なんであたくしまで!)
(我々の体重の重さも軽減する必要があるからですよ…閣下の百億卒の精気蓄積が必要なのです…)
(ううううう)
そして、我々の隣を飛んでおられる羽根持ちの方。
(やれやれ、ほんまはうち一人でも出来る仕事ですねんけど、箔付けが必要なみたいで…皆さん頑張って飛んでください…)
ええ、痴女皇国本国の国土局からお越しのエマニエル建設部長、その元来の姿である桃色の羽根を広げたお姿で我々と並んで飛んでおられます。
そして、部長のお仕事ですが…淫化領内に残るカパコチャの儀式の結果、あちこちの山に残っている少年少女の遺骸を回収し、衣服や副葬品と遺骸を分別する為にお越しになったと。
(ぶっちゃけ、優秀な少年少女の遺骸から遺伝子を頂戴して、苗床で淫化人として再生するために回収するとか、一体誰が考えたのかと…)
そうです。
今から回収される遺骸、挿入器具市を見下ろす丘に建つ淫化皇帝宮殿であるサクサイワマン神殿の地下の苗床に入れられるのです、一体以外は。
その一体が、我々が特に求めるクシ皇子の遺骸なのです…。
(ではじょすりん、一時的にあたくしのちからをおかししますが、べらこへいかをしばく前にまずは、おうじさまのみいらをみつけるのですよ…)
今のアルトさんが着用しているあなあきばんぴれらなる服。
この服は聖院白金衣と称される特殊戦闘服で、指定した人物に聖院金衣能力を貸し与えることができるそうです。
で、通常でもお強いジョスリーヌ団長が迅速に山頂付近で行動できるように計らうのだとか。
(イリヤ殿。言葉通りに捉えない方がいい。アルト閣下は自分が楽をしたいが為に私に億卒以上の力を貸し与えるつもりなのだ…)
(もともとそういうつかいかたをする服でもあるのです…)
で、ジョスリーヌ団長の指示で、我々は山頂上空で二人を放り出します。
(いきなりなにをするのですか!)
(アルト閣下…これくらいは普通に着地しましょうよ…)
ええ、不意打ちめいた落とし方をしたせいで、アルトさんはあわや山頂から数千メートル…で合ってますかね、痴女皇国世界の単位の申し上げ方…を転げ落ちる寸前でした。
一方、強風吹き荒れる上に風向きが目まぐるしく変わる山頂付近の状況をものともせずに降り立つジョスリーヌ団長。
(私はアルプスの山岳地帯で作戦訓練も受けたし、中仏支部と提携しているバーデン=バーデンの南独支部領内で行動することも多いからな。あの辺も雪が多いのだよ)
(だからあたくしはさばくの生まれで、しかもうみの女なのです!)
うーむ。
この方が痴女皇国最強の戦士の地位にあるとは、信じられません。
(確かにアルト閣下、活躍の場所を選ぶんだよな…)
(ジョスリーヌ様の振る舞いを見ていますと、確かにアルトさんがお強い時を見ておられるからこその敬意だと言うのはわかるのです。ですが…)
(まぁともかく、その…いけにえとなった子供たちの死骸だな)
(ありましたよ)
はやっ。
雪をかき分けてみると、なかば凍りついたぼろ布…と言うほどには痛んでいませんね…にくるまった子供の死体らしきが。
更には周辺には煌びやかであったろう、金のサンダルや装身具などが見受けられます。
(これは女の子ですね。周りに5~6体、似たようなミイラ化した死体が…男の子が一人。周辺の副葬品や身につけているものが全く違います。恐らくこれがクシ皇子でっしゃろ)
エマニエル部長が手を触れずに、慎重に雪を吹き飛ばすと、同じようなミイラ…干からびた死体が出て来ます。
聖母教会の流儀でしょう、十字形に手を動かして黙祷するおふた方。
そして、エマニエル部長の手には、なぜか玉に糸か紐を通した輪が。
(ジーナかーさまの実家が浄土宗ですよってな…)
(エマニエル部長が神様のようなものなのに、まさか仏教徒とは)
(まぁまぁじょすりん、ちじょ宮にはぱんちさんもいらっしゃいますし)
聞けば、人の身で修行と思考を重ねて神に近い領域に達した人物で、死後は特別待遇を得ている方が聖院学院の要職に就いておられるそうですね。
で、遺体によっては下手に動かせない状態のものもあるため、そのクシ皇子らしい分以外はエマニエル部長が遺骸とそれ以外を分類してサクサイワマンへ転送なさると申されます。
(この子供たちのDNA/RNA…遺伝子を使って、今後その苗床を経由して産み出される子供を再生することになりますわ。ただ…リュネ世界の本体苗床を使った再生はイリヤさんとアスタロッテさんにお願いすることになります…)
そうです。
クシ皇子の遺骸の持っている遺伝子とやらを使い、魔大陸の苗床からリュネの皇子クシーを再生するのです。
奇しくも二人の不遇な皇子の名、偶然にも似ているのですが。
(イリヤさんの体内、順調に駄洒落菌が育っとるようですな)
じーっと私を観察なさるエマニエル様。
何か、よろしくない事でも。
(気のせいかな、どうも寒さが増した気がする)
何が言いたいのよ、ロッテ。
思わずロッテを山頂から蹴り落としたくなりましたが、この女も飛べるんですよね…。
(それはそうとアルト閣下、アレーゼ本部長からの伝言が。帰りは自分の足で麓まで降りろ、だそうですが)
(おにですかアレーゼさまは!)
(小官も付き合いますから…あ、リュネのお二方は山頂から降りるなら気流をうまく使えるだろうと)
ええ、確かに、降りる分には気流さえ読めば、魔力も精気も消費せずに降りられます。
で、失礼とばかりにジョスリーヌ団長、アルト閣下を山頂から蹴り落とすと、自分も跳躍して降りていかれました…。
(この行為はアレーゼ本部長の指示です。苦情は本部長に…)
あんぎゃああああああとかひぎゃあああああという絶叫が風に乗って辺りに広がります。
(普通ならこれほどの高さから一気に降りず、徐々に身体を慣らしていく高度順応が必要なのだがね…ま、痴女種化している上に、元来は黒薔薇騎士団の誰よりも速く強く動けるはずのアルト閣下だ、情け無用とアレーゼ様からも念を押されたんでね…)
ええ、あっという間に下の方まで行かれておしまいになるジョスリーヌ様。
痴女種化しているというよりも、本来の身体の運動能力がお高いのでしょう。
リュネの戦士仕様の剣、もしもお渡しすれば、兵隊魔族の強い方とも楽に渡り合えるのでは。
(無駄遣いさせるな…あ、一応、サクサイワマンやワイナピチュ、マチュピチュの苗床からも兵隊魔族、出せるには出せるぞ。ただ、あまり多数は産み出せないがな…)
(何をするつもりですか…)
(勘違いするな。オリューレ局長の依頼でマリアリーゼ陛下の許可も出ている件だが、補助労働力としてだよ…街道整備や神殿建設はエマニエル様に依頼できるとしても、淫化由来の作物は平地の畑で大量に耕作できないものもあるだろう…)
ああ…なるほど、兵隊魔族を畑仕事に回そうというのですね。
平地ならいざ知らず、淫化の山中にありがちな棚畑であっても、兵隊魔族なら飛んだり跳躍することで普通の人ではありえない速さで移動できるのは私がよく知っております。
そして、兵隊魔族の強力な四肢の力を畑での力仕事に振り向ければ、さぞや捗るものもあるでしょう。
これは素直に賛同を示しておきましょう。
ただ…魔毒を撒き散らすのはやめといた方がいいですよ。
(これもサクサイワマンなど、淫化側の苗床を使えば我々程度の魔毒放出で済むのが確認されている。少なくとも純粋な戦闘用の兵隊魔族とは似て異なる者が出てくると思ってくれ…)
(実はその辺の労働魔族っちゅうんですか、淫化の開発のために動かすもんの改良に、このミイラの子供たちの身体が必要やっちゅうのもあるんですわ…淫花の人々は実のところ、他の国ではありえん高さで長年暮らしてはるんで、肺や血液が平地暮らしの他の民族の方とは少々異なるのですよ…)
エマニエル部長によれば、一般の淫化の人々…主に神界という分類がされている山中の住人に対して、今後のリュネ人や魔族の要素を組み込んで魔毒耐性を持たせる方向で行くそうです。
(まぁ、いつもの痴女皇国の要領で、神殿にあれをしに来て貰えれば勝手に身体改良が進むようにしときますけどな…あと、低地に住んではる人については現状は別枠扱いという話ですけど)
あ、俗界の方々ですね…この方々は魔毒を必要としない移民の方も多数なので、どうしたもんかという話も出ております。
と申しますのも、淫化の統治は各地の太陽神殿で行う方針が打ち出されております。
当然、神殿に詰める神官…太陽乙女や月乙女は魔毒と魔法対応の痴女種になってもらうと。
しかし、それでは弱毒性とは申せど魔毒苔を神界と同じ密度で繁殖させなくてはなりません。
いかに鎖国状態の淫化支部といえど、陸続きで他の支部との境界が存在しますし、作物の輸出を始めとして交流はあるのです。
淫化と明日輝と魔屋だけでやっていきます、他は知りませんというような方針ではなく、可能ならばよそ様…特に海賊共和国や尻出国の方々との往来を可能にしたいというのが私のみならず淫化側の希望です。
(その件もあってレオノールさんを来させたみたいですけどな、ま、ぼちぼち私らも戻りましょか)
で、さくっと50キロほどの距離を飛んで戻ったクスコから、私とアスタロッテは布にくるまれたクシ皇子の遺骸もろともリュネ世界の魔族大陸に向かいます。
ええ、母体苗床を使うのです。
既に魔王にも連絡が行っており、成人状態かつ普通の人の目ではなく虫のような複眼状態に変化した魔王、苗床の湖の湖岸で待ってもらっております。
「しかし、面白い事を思いつくもんじゃな。確かにクシー王子を普通に復活させれば、イリヤと同じようなリュネ人の姿で出てくるであろう」
「で、魔王様…クシー王子、この淫化の少年の身体に近い状態に変えて欲しいのですよ」と、私の抱えている遺骸を示すロッテ。
「なるほどなるほど、ちたま人とやらの子供のなきがらであるな」
どれどれふむふむと遺骸を見聞する魔王。
「まぁちょっとやってみよう。どれどれ」と、触手を操って私から遺骸を受け取る魔王。
そして触手は、苗床の液面に遺骸ごとずぶずぶと引っ込んでいってしまいます。
「でなイリヤ。そちとロッテ、ちょっと協力してくれんか」
えええええ。
「特にイリヤ、お主じゃお主」
断る間もなく伸びてくる触手。
待てや。
思わず聖剣を抜き放って魔王をしばき回そうかと思いましたが、何とその魔王も、何かやっとります。
「あのー魔王様、我々の逸物から何かを絞ろうとするのはまだ良いとして、それは何ですか」
「ああ、これな、痴女皇国の連中の知識にあった、だっちわいふとかいうもんや」
で、腐れ魔王が何をしておるのか。
何と、苗床を操作して兵隊魔族を産んでおるのです。
しかし、いつもの兵隊魔族ではありません。
まぁ、兵隊魔族にもいくつか種類があるらしいので、私の知らない初見の個体かも…と思っておりますと、明らかにその魔族、戦闘用ではないのです。
そうそう、一般的な兵隊魔族その1はロッテが「比較的弱い」とか言っていた人型で、ロッテなど幹部魔族のそれに近い外観です。
かつては人族大陸の沿岸に送り込まれて人を拉致っていた尖兵、主にこいつらです。
で、兵隊魔族その2というのが今の魔王に近い姿でして、手足も虫の関節に近いとか、生えてる羽根も虫の羽根めいている特徴があります。
とどめに、その2は顔の半分くらいを占めている目が複眼です。
はちおんな、とかいう単語が思い浮かびましたが、どうも天の声とやらに言わせると、もすきーとむすめとか言う怪物に近いようですね。
https://x.com/725578cc/status/1726817640323408086?s=20
この兵隊魔族その2、割と真剣にリュネ側を攻める際に出てくる連中でして、関節の挙動に特徴があったり口から火を吐いたりして強さを見せつける類なのです。
(兵隊魔族その1でもびみょーーーーーーーに虫の癖があるんだよなぁ…)
(アスタロッテ…余とて魔大陸でただひたすら無聊を囲うておったわけではないぞ!見よ!この人やお前にも負けぬ流麗円滑な動きを!)
んーと。
確かに、その動きは人そのもの、いえ、人以上。
ですがね、何をやっとんねん、魔王。
そう、魔王も痴女種互換の体にされたため、ちんぽが存在するのです。
で、生成した魔族の尻にちんぽを突っ込んで尻を振っておるのです。
しかも魔族は魔族で腰、激しく使ってますし。
「うむ、今日も会心の出来。苗床も慣れて来たようであるな…姦淫魔族の生成」
おいいいいいいいい。
「ふっふっふっふっふっ、見よイリヤ!お前がフユキの口に以下略する時を参考にだな」
えーと、この腐れ魔王、射精の際にそのまま中田氏をするのかと思いきや、何とその性交用魔族とやらの口にちんぽを突っ込んでおります。
しかも、その行為の例え、私の性行為と比較すんなよ。
偽女種化したフユキに対して私が弱毒魔毒…痴女皇国世界の方に言わせるとわくちんの効果があるそうなのですが、その行為を覗き見してやがったようなのです、この覗き魔で変態のド腐れ魔王。
もはや、側溝に潜り込んで女の下履きを覗いて捕まること三度目のヨコヅナ級変態もかくや。
「イリヤの場合、ワクチンというよりワクワクちんちん祭りって顔してたな、フユキに咥えさせてる顔」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいこら待てやロッテ。
「お前がワイナピチュの日没儀式の時にフユキを連れて来て私に見せたんじゃないか!それも、まだ相方がいない時の私に自慢げに見せつけるような大人げない真似をしてドヤカオとやらになってただろ!」
ふん、それぐらいの自慢、広い心で見つめなさいよ。
「その言葉、そっくりお前に返していいか。エイモンが言ってたぞ…最近イリヤ様が僕のことを妖しい目で見るし、やたら偽女種の姿にさせたがると」
ぎゃあああああ。
「あれは単にエイモンならば痴女種の服装の方が似合うと思ったからですっ」
「そういうのはフユキに頼めよ!エイモンはあまり女らしい姿を取りたくないのだぞ…せめてハルキに頼めっ」
「ハルキはチャスカの持ち物です」
「ならエイモンも私の所有物って理屈が成り立つだろ…」
呆れ返るロッテですが。
「そちら。言い合っておるところ誠にすまんが、お前たちが精毒を提供してくれたおかげで仕事が捗ったわ。クシー。久方ぶりの現生であろう。もはやそなたを直接に覚えておるのはこの魔王とアスタロッテのみ。されどそなた害するものもまた、もはやこの世にはおらぬ。おるとすればそなたを伝説の子として敬う者どもであろう。さ、出てまいれ」
おおっ。
しかし、ちょっと待てや魔王と言いたくなりました。
わしの外観そっくりではないものの、これではリュネの女やないか、と。
ただ…股間にちんぽ、存在しますね。
「ふふん、慌てるでないわ。いんまぬえるを通じてマリアリーゼに聞いたが。このクシーはそなたらの側の苗床にも浸けて、今後の子作りのためのさんぷるとかいうものにするんじゃろ?なればリュネの者の外観特徴も持たせておらねば片手落ちであろ。クシー。ちょっと姿を変えてみよ」
「は。失礼…」
その全裸の女、何と髪の毛が黒色に変わります。
で、少年に近い姿に変化。
「マリアリーゼのおーだーでは、誰かに寄り添わせるためには偽女種の方が良きと言われてな。クシー、そちにはもはや剣を振るって我らと戦う事を求められてはおらぬ。しかし…その股倉のわざものを振るって女どもを斬って斬って斬りまくる事を求められるであろう」
「ほう…クシー王子、私も知ってるんだが確かに美少年公とか言われておってな。当時の王宮では人気者だったはずだぞ…ただ、この美しさが災いしてな…」
「んーとな、確か当時のクシーと跡目争いした王妃マーモルの産んだ子がな…子がな…」
「イリヤ。上の書物蔵にある王子タークマの肖像画だ…司書魔族の視覚をお前に繋ぐぞ…」
ふむ。タークマとはその、クシー王子を追い落とそうとした正室王妃の産んだ子なのですね。
どれどれ。
ぶ。
あかん、これはあかん。あかんねん私、と言う感想、思わず口をついて出てしまいそうになります。
ええ。そのタークマ王子、超絶に醜男ではありません。
むしろ見た目は筋骨隆々、なかなかに体格は良い部類。
しかし、写実的に描かれたタークマ王子の顔と全身の姿…恐らくは偵察魔族か誰かがありのままに見た姿を何かに記録したのでしょう…。
目の前のクシー王子と比べてしまうと、どうしても人徳や人格がわかってしまいそうな顔立ちなのです。
よもやまさか、何をさせても問題を起こすか、職や持ち場を変えた挙句、とんでもない凶行に走るとかいう末路になったのでは。
昔の剣聖が犯されてエイモンを孕んだ件といい、どうもリュネ王室や文人ども、ダイホンエイパッピョウなる技で、リュネ側の敗北や失態を隠そうとする傾向があるようです。
そして、私の懸念は的中しとりました。
「あー、イリヤ。リュネの恥をまたしても暴露してすまんのじゃがな…」
「魔王様、私が。イリヤ…お前の見立て通りだ。このタークマ王子、女癖がものすごく悪かったようでな…。宮廷の女には嫌われておったので、城下町の女をお手つきしておる悪癖持ちだったとある」
「で…ついには城に監禁されてしまったのじゃが、あわや脱走して兵子学校…イリヤも知っとるじゃろ…を襲って暴れようとして、やむをえず時の剣聖に鎮圧されたとあるな」
「そして、タークマは箱舟の刑とされ、魔大陸目指して流されたのだ…」
「まぁ、経緯は我らも知るところ。正直こんなもん苗床に漬けとうなかったから、アスタロッテに兵魔を放ち襲わせるよう命じざるを得んかった…むしろ、リュネ側もそうしてくれと言わんばかりに、箱舟に目印の旗と魔灯までつけておってな…」
まぁ、そうしたくなる気持ちはわかります…ロッテの記憶を参照するに、これはあかん子やというのがタークマ王子に対する私の感想でしたし、私が当代の剣聖であったら聖剣で焼いておったかも知れません。
「クシー、そちにとっては残念な結果ではあるが、そちの去った後のリュネ、かような有様であったので、やむをえず別の側室の産んだ子を次期王として戴冠させたと聞く」
「ただなぁ。その別の側室…ヤスニ氏族の女だったんだよなぁ」
…何を言いたいんや、ロッテ。
お姉さんに言うてみい。
「お前にBBA扱いされることを覚悟で言うが、私も魔王様もお前からすればお姉さんどころではない年齢」
「まぁまぁ、当代の剣聖様ですね。朕が魔大陸に逃れさせて頂いた後の経緯は教えて頂きました」
と、ここで仲裁に入ろうとなさるクシー王子。
美形というだけではなく、人柄の良さが滲み出ております。
「本当ならば我が兄タークマが流刑となった後、私がリュネに戻れば話はまた、変わったかも知れませぬが…」
「これは我らに伝わる占いの結果でもあるのじゃ。このクシー、当代のリュネではなく後のリュネで蘇らせよ、とな」
「恐らくクシーの性格では戦乱のリュネでなく、平和となった世で蘇らせる方が良いとされたようだ。我らとてクシーの優秀な遺伝子情報…と今では言えるが、魔族生成の基礎を貰い受ける利点はあったのだけどな…」
まぁ、その辺は敢えて深く突っ込まんようにしておきましょう。
「ではクシーよ、伝えた通り、この魔大陸を含むリュネの世は半ば眠りにつきかけており、民は異界の方々の手助けによって淫化帝国なる地に逃れ、新たな生を享受しておる様子じゃ。そなたもそれにならい、このロッテとイリヤに従って淫化の地で幸福に生きるがよいであろう…」
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