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番外編:淫化帝国姫騎士ものがたり・3
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どぇえええええ。
確かにこの金釘のような文字、どこかで見た気もします。
で、マリア様は詳しいであろうお方に鑑定を依頼したようですけど。
(なるほど…マリアリーゼの目を通じて見ているけど、これ確かにルーン文字、それも北欧ルーンで間違いないと思うわよ…単語自体は地球のそれではないけど、この綴りなら、発音までは可能ね)
(スクルドさんがそういうなら確定だよなぁ…)
ふむふむふむ。
(スクルドさんはもともと北欧神話の神様ですよ…今はNB担当の運命の神様ですけどね…)
(その神様稼業をそっちのけにして、あんたら手伝わされて何年になるのよ…1年超えてるわよ!)
(派遣期間延長、姉はともかくあたしは申請してませんよ。ウルドさんとかヴェルザンディさんに文句言ってくださいよ)
(うるせぇっ!…ジーナ・高木…そのけんたっきーばーぼんとかいう瓶ちょっと寄越しなさいよ!)
(あきませんがな!そもそもNBでこんな酒どうやって手に入れましたんや!首相官邸焼き討ちされかねん酒ですやないか!)
(ジーナさん…私よ…ミス・スクルドがヘンリーの秘蔵の酒蔵を開けそうになったから、密輸で頼んだの…)
(なら仕方ありまへんな…というか言うてくださいよアグネスさん、それやったら…安酒を充てがうんやったらうち、なんぼでもツテありますがな…)
(ああもううるせぇなっよこせっおらっ)
(マリア!今すぐスクルドさんの義体操作して酩酊状態解除せぇ!酒癖悪いんもお前から見えとるやろ!)
どうもNBでは、エイリーン・ヨシムラさんという方が泥酔して暴れているようですが。
Eileen Yoshimura Dulles. (Skuld) エイリーン・ヨシムラ・ダレス Ten Million Suction. (Limit variables.) 千万卒-可変能力制限者- Slut Visual. 痴女外観 George Bush Center for Intelligence - United Galaxtica of humanity. (McLean, VA 22101 U.S.A.) ジョージ・ブッシュ記念連邦政府統合情報センター Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団
Skuld. 未来策定神 Ten Million Suction. (Limit variables.) 千万卒-可変能力制限者- Slut Visual. 痴女外観 Special Advisor, Ian Lancaster Fleming Memorial Research Institute, New-British. イアン・フレミング記念情報研究センター特命顧問 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 Norse mythology Goddess. 北欧神種族 فَاطِمة 運命付与種
(いいじゃないたまには!私もいい加減ストレス溜めててヴァルハラの宴が懐かしい時もあんのよ?)
(せやから言うて首相官邸を宴会場にされても困りますねん!ああっ神化したらあきませんって!)
(ま、謎解きは後だ。差し当たってはこの人たちを故郷へ連れて行こう…スクルドさん、わりーけど後でこの世界の分析情報回すから意見が欲しい。強制酩酊解除するよ…)
(ううううう)
でまぁ、私たちが今いる場所…宇宙空間らしき所から見てる光景ですけど。
マリアリーゼ陛下が目を剥いておられます。
「なんだよこれ…ファンタジー世界と思ってたらとんでもねぇ人工世界じゃねぇか…」
そう…異世界人とかいう方々御三名様のお住まいの場所、普通の惑星とか星の部類じゃなかったんですよ…。
私から見ても、こんなもん絶対におかしいよ、普通じゃないよと思える、その場所がどんなものだったのか。
一言で言うと、超・大きなお盆。
それも不思議な白金色に光り輝くお盆。
そしてお盆の先に、円形の鏡のような物体が浮いています。
で、リシュリューの設備を使ってマリアリーゼ陛下が探った、このお盆や鏡の位置関係、略図にするとこういう感じだそうです。
鏡 盆 恒星
↓ ↓ ↓
( ) ○
「盆の表面に大地や海が存在するのですね…」
「それと、鏡は盆の周りを公転してるな…昼と夜を作り出してるのか…」
「盆の裏側…太陽に対して相対している面は純粋な平滑面ではありませんわ。複雑な凹凸が表面に存在します。恐らくは表面で太陽光の受光効率を上げるため…すなわち、恒星の光を利用する機構の存在が予想できますわ。更には、太陽光を直接に盆の生存圏面に当てず、光量を調節する役目をあの反射鏡が負っていると推測されます…」
「いや…これはあの恒星のスペクトル分類がIV…準巨星へ変化しつつあるせいもあるだろ…エマ子、現状であの恒星の直径は今、どんくらいになってる?」
「シリウスからプロキオンへと移行してる段階ですな。つまり、現状でも太陽の2倍近い状態ですわ。あの人工惑星めいた構造体、恒星から2天文単位以上の距離の公転軌道で恒星周囲を巡っとりますけどな、恒星の膨張を見越してるんでしょうな。何らかの移動機関も持ってる可能性があります」
「なるほど…それであの反射鏡か…生存圏面に当てる光量が適切になるように調整する役割を負ってるんだな…」
「ねーさん…とりあえずM-IKLA-20の分体を呼びました。それと、うちもリミット解除します。今の時点で異物排除めいた武装の存在はあの物体には感知できまへんけど、飛来物から生存圏表面を防御する機構を考えずに造り上げたとは思えませんからな…」
エマニエル部長の身体が桃色に輝くと、桃色の天使の羽を備えた姿に変貌なさいます。
その姿に、誰よりも驚いたのは…剣聖様とアスタロッテさん。
「こ、この方はよもや人族…」
「それもイリヤ以上の能力者…」
「ああ、違いますわ。うちが本来の姿に戻ると皆さんには見えなくなりますよって、代わりに用意する…端末がこれですねん」と、ご自身の身体をぽんぽんと叩くエマニエル部長。
「んじゃエマ子、あれの解析頼む。流石にあれを見りゃ、蟹光線で解決ともいかなくなったな…」
「吹っ飛ばすにはあまりに惜しいのはうちも同じですわ。ほな」
ふっ、とリシュリューの船橋から消え去るエマニエル部長。
(マリアリーゼ…KPT013、エオン分体だ。今、M-IKLA-22と合流した。現時点で判明した分析結果を伝える)
え。
1分もかかってませんよ。
(マリアリーゼ…そしてリシュリュー艦内の諸君に伝える。あれ…あの天体は人工物だ)
(やっぱりかよ)
(ただし、その構成物は元来、当該恒星系に存在した数個の惑星を崩壊させて採集し得た資源から回収したとみられる。その残滓は小惑星帯として人工天体と恒星の間の内惑星公転軌道にリング状に散在しており、安定して公転軌道を周回している)
(ついでに言うと人工天体の補修物資としてそこに漂ってる節がありますわ。で、件の人工天体ですけどな…)
(マリアリーゼが盆のように例えた本体天体…生物可住コロニーとして推定される本体で直径約1000キロ、表面積は90万平方キロを超える球状凹面体だ。そして本体の周囲を周回する凹面鏡が直径約1200キロ、この凹面鏡は外惑星軌道から飛来する隕石類から本体を防護する盾の機能が備わっている。自動迎撃設備も観測された…ただし、物理的に破壊するのではなく重力制御によって衝突軌道から外す操作を行う機構である)
(ふむ…まぁ、リシュリューが宇宙空間に出た時点であたしに感知できねぇ迎撃設備があれば動いてただろうし、妥当なとこだろうな…)
(それと、あのお盆も鏡も軌道遷移のための推進設備を持ってますわ。太陽光線で発電した電力でイオン推進をかけるのと、うちらのICD/Gとはロジックが少々異なりますけど動作原理は類似の仕掛け持ってます)
(推進系が存在する理由として考えられるのは、光源となる恒星の膨張に対してより遠方の軌道へと遷移するためでもあると予測。すなわち、一万年から十万年は最低でも稼働させて凹面上の生存圏に居住する生体を生存させる設計でもあると言えるだろう)
(で、ねーさん…この建造物類ですけどな…機械的な可動部がほぼ、存在しませんのや…無機体で構成されている部分であっても、流体構造を多用していて保守の回数を極力減少させる設計ですわ…お盆本体の地殻を保持する面や梁部も、自己再構成して応力分散はもとより構造物自体の質量と重量から生じるひずみを除去する…いわば軟体構造生物に近い構成ですねん…)
何やら難しい話に、大半の人々はちんぷんかんぷんのようです…私も恥ずかしながら…正直、
よ う わ か ら ん というのが感想です。
(えーとね、ティアラちゃんにある程度理解しやすいように言いますとな、こんなどでかいもんを作ると、それ自体の重さで自らが崩れる危険がありまんのや。地球はもちろん、月でもたまに地震が起きるのは月を構成する岩石の質量それ自体のせいでもあると思って下さいな。天然もんの惑星ですら地震起こすねんから、どんだけ軽く作ったとしてもこれだけの大きさのもん、ガッチガチに堅く作ると必ず、経年によるひずみが発生します。そしてこの人工天体は静止してまへんねや…まだ止まってたらええんですけどな)
(人工天体本体は回転している。これは潮汐力と重力を表面に発生させるため、そして居住圏の水分や大気を偏在させないための運動であると容易に推測可能)
(球体惑星の自転と同じ効果を出すためか…地表の…海抜ゼロメートルで重力がどれくらいあるか測定できる?それと大気成分)
(地球表面の居住環境に同一。1Gが確保されている模様である。大気組成は成層圏より下の対流圏上層部で窒素76%、酸素20%…ほぼ地球同様の炭素系生物生存に必要な元素で構成されているのがスペクトル分析で確認可能。ただし、サンプルを採取しないと同定は困難だが地球外分子構造の微粒子を確認。これが、現地住民の言う魔素または魔毒と称される有毒かつ超物理現象の伝播粒子であると予測)
(おっさんの分析で間違いないすわ。今、私が惑星表面に近い空中を飛んでますけどな…それと、魔王の城とかいうもんが多分それの中心やと思いますけど、一方の大陸の地下にどでかい地底湖…ほれ、オーストラリアのグレートアーテジアン盆地みたいな感じのもんがあると思うて下さいな…その地底湖の水、単なる水やなさそうですけどな…)
(なんだよそれ。まさか光学異性体の人間もどきがその中から出てくるのかよ)
(それがこの方…アスタロッテさんが言わはる苗床とかいう、遺伝子プールの役目を果たす流体生物みたいですねんわ…)
(ええー…何よそれ…おいエマ助…そのサンプル取れねぇか?)
(やったら恐らく一瞬で魔王とかいうおばはんに勘付かれまっせ…そうなったら即交戦ですやん…)
(え。魔王って女なのかよ)
(ハチやアリ型の昆虫コロニーめいた生態の時点で予測できた話ですやんか…少なくともメス型の形状と身体器官を備えた存在でっせ)
で、エマニエル部長から、恐らく魔王城の内部を透視したと思われる映像が送られて来ましたが。
「む…これは確かに紛う方なく我らが魔王…一体どうやって…」
(ふほほほほほ、うちらにかかればこれ、この通り…とドヤ顔したいところですがな、問題はこの魔王が座っとる場所をよう見て欲しいんですわ…)
ぬう。
何やら石の玉座らしき場所に座る、女性めいた姿ですが…その映像ですら、明らかに人外さんです。
まず、目が人間の目じゃありません。
複眼、というのですか…虫の目のようなのです。
そして、背中からはアスタロッテさんにあるような翼ではなく、何らかの腕か管とでもいうべき、赤紫のミミズめいたものが何十本も出ています。
で、更に気色悪いことに、その腕か管か触手とでも言うべき何か…玉座の背後にある鍾乳洞のような光景の大半を占める、これまた赤紫色の液体の中に伸びていってるのです。
「ティアラ殿、これが魔王が統べている苗床だ。この画では全てを写してはいないようだが…魔王や我らが住まう地の下に広がるのが、この苗床を飼うための池なのだよ…そして魔王となった暁には、再びの再生を要するほど老化するまではこの玉座から離れることは基本的に出来なくなるのだ」
痴女種との互換処理を施されたアスタロッテさんが説明してくれますけど…。
って事はこれ、生きてんですか…。
(ぬう…アスタロッテ達はしくじりおったようだな…止むを得ぬ…兵を増やすか…)
えっと、ホラー映画か何かでしょうか。
その、赤紫色の液体から何かが這い上がって来ます。
それは次第に人の形めいた何かに変わり、更にはアスタロッテさんのような羽根を生やしていきますよ。
「これが兵族だ…しかし、人どもを全て攫うか、はたまた食らわせるつもりか…マリアリーゼ殿、正直あまり猶予はなさそうだ…あれ1体で人の兵士百人に匹敵するのだ…何体を放つか知らねど、10体もおればまず人の国は一晩で1つ、滅びかねぬ…」
「アスタロッテの申す通り…リュネの対魔族隊の精兵でもなくば、手こずる事は必定なのです…魔族に相対する訓練と装備を備えた兵でなくば、ただただ蹂躙されるだけなのです…」
じゃあ、今までなんで蹂躙されなかったのでしょう。
ふっと思ったこの疑問、これまたアスタロッテさんが答えて下さいました。
「人の滅亡はこれまで禁じられていたのだ…我らは苗床の維持に要する人を攫いおおせた時点で退却していたのだよ…」
「逆に、我ら人側も魔族を根絶やしにまで退治るのは禁則となっておりました…互いに争いつつも、辛うじて互いの領地を犯さぬ程度のいくさに留めておったのです…」
なぁるほど…。
(言ってみれば、この人たちは異なる種族で出来レースの戦争プロレスをやってたんだよ…お互いのためにな…)
その、ある意味では残酷な現実に、皆が絶句します。
(で、こっからはあたしの作戦だけど…アスタロッテさん、確か、あの魔王とかってのはある程度生きたら、あの血の池みてーな苗床ってのに飛び込んで再生を果たすんだよな?)
「は、はぁ…マリアリーゼ殿の申される通りであるが…」
怪訝そうな顔をするアスタロッテさん。そして、マリア様の悪い顔が、なんとなくこの先に言われる話がろくでもなさそうなものである予感を皆に与えます。
「じゃあさ、今、魔王ってのがあんだけピンシャンしてても、あの苗床ってのに突っ込まれたら強制的に再生がかかる可能性はあるよな?…おいアルト、出番だ…わかってるよな、やること…」
確かにこの金釘のような文字、どこかで見た気もします。
で、マリア様は詳しいであろうお方に鑑定を依頼したようですけど。
(なるほど…マリアリーゼの目を通じて見ているけど、これ確かにルーン文字、それも北欧ルーンで間違いないと思うわよ…単語自体は地球のそれではないけど、この綴りなら、発音までは可能ね)
(スクルドさんがそういうなら確定だよなぁ…)
ふむふむふむ。
(スクルドさんはもともと北欧神話の神様ですよ…今はNB担当の運命の神様ですけどね…)
(その神様稼業をそっちのけにして、あんたら手伝わされて何年になるのよ…1年超えてるわよ!)
(派遣期間延長、姉はともかくあたしは申請してませんよ。ウルドさんとかヴェルザンディさんに文句言ってくださいよ)
(うるせぇっ!…ジーナ・高木…そのけんたっきーばーぼんとかいう瓶ちょっと寄越しなさいよ!)
(あきませんがな!そもそもNBでこんな酒どうやって手に入れましたんや!首相官邸焼き討ちされかねん酒ですやないか!)
(ジーナさん…私よ…ミス・スクルドがヘンリーの秘蔵の酒蔵を開けそうになったから、密輸で頼んだの…)
(なら仕方ありまへんな…というか言うてくださいよアグネスさん、それやったら…安酒を充てがうんやったらうち、なんぼでもツテありますがな…)
(ああもううるせぇなっよこせっおらっ)
(マリア!今すぐスクルドさんの義体操作して酩酊状態解除せぇ!酒癖悪いんもお前から見えとるやろ!)
どうもNBでは、エイリーン・ヨシムラさんという方が泥酔して暴れているようですが。
Eileen Yoshimura Dulles. (Skuld) エイリーン・ヨシムラ・ダレス Ten Million Suction. (Limit variables.) 千万卒-可変能力制限者- Slut Visual. 痴女外観 George Bush Center for Intelligence - United Galaxtica of humanity. (McLean, VA 22101 U.S.A.) ジョージ・ブッシュ記念連邦政府統合情報センター Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団
Skuld. 未来策定神 Ten Million Suction. (Limit variables.) 千万卒-可変能力制限者- Slut Visual. 痴女外観 Special Advisor, Ian Lancaster Fleming Memorial Research Institute, New-British. イアン・フレミング記念情報研究センター特命顧問 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 Norse mythology Goddess. 北欧神種族 فَاطِمة 運命付与種
(いいじゃないたまには!私もいい加減ストレス溜めててヴァルハラの宴が懐かしい時もあんのよ?)
(せやから言うて首相官邸を宴会場にされても困りますねん!ああっ神化したらあきませんって!)
(ま、謎解きは後だ。差し当たってはこの人たちを故郷へ連れて行こう…スクルドさん、わりーけど後でこの世界の分析情報回すから意見が欲しい。強制酩酊解除するよ…)
(ううううう)
でまぁ、私たちが今いる場所…宇宙空間らしき所から見てる光景ですけど。
マリアリーゼ陛下が目を剥いておられます。
「なんだよこれ…ファンタジー世界と思ってたらとんでもねぇ人工世界じゃねぇか…」
そう…異世界人とかいう方々御三名様のお住まいの場所、普通の惑星とか星の部類じゃなかったんですよ…。
私から見ても、こんなもん絶対におかしいよ、普通じゃないよと思える、その場所がどんなものだったのか。
一言で言うと、超・大きなお盆。
それも不思議な白金色に光り輝くお盆。
そしてお盆の先に、円形の鏡のような物体が浮いています。
で、リシュリューの設備を使ってマリアリーゼ陛下が探った、このお盆や鏡の位置関係、略図にするとこういう感じだそうです。
鏡 盆 恒星
↓ ↓ ↓
( ) ○
「盆の表面に大地や海が存在するのですね…」
「それと、鏡は盆の周りを公転してるな…昼と夜を作り出してるのか…」
「盆の裏側…太陽に対して相対している面は純粋な平滑面ではありませんわ。複雑な凹凸が表面に存在します。恐らくは表面で太陽光の受光効率を上げるため…すなわち、恒星の光を利用する機構の存在が予想できますわ。更には、太陽光を直接に盆の生存圏面に当てず、光量を調節する役目をあの反射鏡が負っていると推測されます…」
「いや…これはあの恒星のスペクトル分類がIV…準巨星へ変化しつつあるせいもあるだろ…エマ子、現状であの恒星の直径は今、どんくらいになってる?」
「シリウスからプロキオンへと移行してる段階ですな。つまり、現状でも太陽の2倍近い状態ですわ。あの人工惑星めいた構造体、恒星から2天文単位以上の距離の公転軌道で恒星周囲を巡っとりますけどな、恒星の膨張を見越してるんでしょうな。何らかの移動機関も持ってる可能性があります」
「なるほど…それであの反射鏡か…生存圏面に当てる光量が適切になるように調整する役割を負ってるんだな…」
「ねーさん…とりあえずM-IKLA-20の分体を呼びました。それと、うちもリミット解除します。今の時点で異物排除めいた武装の存在はあの物体には感知できまへんけど、飛来物から生存圏表面を防御する機構を考えずに造り上げたとは思えませんからな…」
エマニエル部長の身体が桃色に輝くと、桃色の天使の羽を備えた姿に変貌なさいます。
その姿に、誰よりも驚いたのは…剣聖様とアスタロッテさん。
「こ、この方はよもや人族…」
「それもイリヤ以上の能力者…」
「ああ、違いますわ。うちが本来の姿に戻ると皆さんには見えなくなりますよって、代わりに用意する…端末がこれですねん」と、ご自身の身体をぽんぽんと叩くエマニエル部長。
「んじゃエマ子、あれの解析頼む。流石にあれを見りゃ、蟹光線で解決ともいかなくなったな…」
「吹っ飛ばすにはあまりに惜しいのはうちも同じですわ。ほな」
ふっ、とリシュリューの船橋から消え去るエマニエル部長。
(マリアリーゼ…KPT013、エオン分体だ。今、M-IKLA-22と合流した。現時点で判明した分析結果を伝える)
え。
1分もかかってませんよ。
(マリアリーゼ…そしてリシュリュー艦内の諸君に伝える。あれ…あの天体は人工物だ)
(やっぱりかよ)
(ただし、その構成物は元来、当該恒星系に存在した数個の惑星を崩壊させて採集し得た資源から回収したとみられる。その残滓は小惑星帯として人工天体と恒星の間の内惑星公転軌道にリング状に散在しており、安定して公転軌道を周回している)
(ついでに言うと人工天体の補修物資としてそこに漂ってる節がありますわ。で、件の人工天体ですけどな…)
(マリアリーゼが盆のように例えた本体天体…生物可住コロニーとして推定される本体で直径約1000キロ、表面積は90万平方キロを超える球状凹面体だ。そして本体の周囲を周回する凹面鏡が直径約1200キロ、この凹面鏡は外惑星軌道から飛来する隕石類から本体を防護する盾の機能が備わっている。自動迎撃設備も観測された…ただし、物理的に破壊するのではなく重力制御によって衝突軌道から外す操作を行う機構である)
(ふむ…まぁ、リシュリューが宇宙空間に出た時点であたしに感知できねぇ迎撃設備があれば動いてただろうし、妥当なとこだろうな…)
(それと、あのお盆も鏡も軌道遷移のための推進設備を持ってますわ。太陽光線で発電した電力でイオン推進をかけるのと、うちらのICD/Gとはロジックが少々異なりますけど動作原理は類似の仕掛け持ってます)
(推進系が存在する理由として考えられるのは、光源となる恒星の膨張に対してより遠方の軌道へと遷移するためでもあると予測。すなわち、一万年から十万年は最低でも稼働させて凹面上の生存圏に居住する生体を生存させる設計でもあると言えるだろう)
(で、ねーさん…この建造物類ですけどな…機械的な可動部がほぼ、存在しませんのや…無機体で構成されている部分であっても、流体構造を多用していて保守の回数を極力減少させる設計ですわ…お盆本体の地殻を保持する面や梁部も、自己再構成して応力分散はもとより構造物自体の質量と重量から生じるひずみを除去する…いわば軟体構造生物に近い構成ですねん…)
何やら難しい話に、大半の人々はちんぷんかんぷんのようです…私も恥ずかしながら…正直、
よ う わ か ら ん というのが感想です。
(えーとね、ティアラちゃんにある程度理解しやすいように言いますとな、こんなどでかいもんを作ると、それ自体の重さで自らが崩れる危険がありまんのや。地球はもちろん、月でもたまに地震が起きるのは月を構成する岩石の質量それ自体のせいでもあると思って下さいな。天然もんの惑星ですら地震起こすねんから、どんだけ軽く作ったとしてもこれだけの大きさのもん、ガッチガチに堅く作ると必ず、経年によるひずみが発生します。そしてこの人工天体は静止してまへんねや…まだ止まってたらええんですけどな)
(人工天体本体は回転している。これは潮汐力と重力を表面に発生させるため、そして居住圏の水分や大気を偏在させないための運動であると容易に推測可能)
(球体惑星の自転と同じ効果を出すためか…地表の…海抜ゼロメートルで重力がどれくらいあるか測定できる?それと大気成分)
(地球表面の居住環境に同一。1Gが確保されている模様である。大気組成は成層圏より下の対流圏上層部で窒素76%、酸素20%…ほぼ地球同様の炭素系生物生存に必要な元素で構成されているのがスペクトル分析で確認可能。ただし、サンプルを採取しないと同定は困難だが地球外分子構造の微粒子を確認。これが、現地住民の言う魔素または魔毒と称される有毒かつ超物理現象の伝播粒子であると予測)
(おっさんの分析で間違いないすわ。今、私が惑星表面に近い空中を飛んでますけどな…それと、魔王の城とかいうもんが多分それの中心やと思いますけど、一方の大陸の地下にどでかい地底湖…ほれ、オーストラリアのグレートアーテジアン盆地みたいな感じのもんがあると思うて下さいな…その地底湖の水、単なる水やなさそうですけどな…)
(なんだよそれ。まさか光学異性体の人間もどきがその中から出てくるのかよ)
(それがこの方…アスタロッテさんが言わはる苗床とかいう、遺伝子プールの役目を果たす流体生物みたいですねんわ…)
(ええー…何よそれ…おいエマ助…そのサンプル取れねぇか?)
(やったら恐らく一瞬で魔王とかいうおばはんに勘付かれまっせ…そうなったら即交戦ですやん…)
(え。魔王って女なのかよ)
(ハチやアリ型の昆虫コロニーめいた生態の時点で予測できた話ですやんか…少なくともメス型の形状と身体器官を備えた存在でっせ)
で、エマニエル部長から、恐らく魔王城の内部を透視したと思われる映像が送られて来ましたが。
「む…これは確かに紛う方なく我らが魔王…一体どうやって…」
(ふほほほほほ、うちらにかかればこれ、この通り…とドヤ顔したいところですがな、問題はこの魔王が座っとる場所をよう見て欲しいんですわ…)
ぬう。
何やら石の玉座らしき場所に座る、女性めいた姿ですが…その映像ですら、明らかに人外さんです。
まず、目が人間の目じゃありません。
複眼、というのですか…虫の目のようなのです。
そして、背中からはアスタロッテさんにあるような翼ではなく、何らかの腕か管とでもいうべき、赤紫のミミズめいたものが何十本も出ています。
で、更に気色悪いことに、その腕か管か触手とでも言うべき何か…玉座の背後にある鍾乳洞のような光景の大半を占める、これまた赤紫色の液体の中に伸びていってるのです。
「ティアラ殿、これが魔王が統べている苗床だ。この画では全てを写してはいないようだが…魔王や我らが住まう地の下に広がるのが、この苗床を飼うための池なのだよ…そして魔王となった暁には、再びの再生を要するほど老化するまではこの玉座から離れることは基本的に出来なくなるのだ」
痴女種との互換処理を施されたアスタロッテさんが説明してくれますけど…。
って事はこれ、生きてんですか…。
(ぬう…アスタロッテ達はしくじりおったようだな…止むを得ぬ…兵を増やすか…)
えっと、ホラー映画か何かでしょうか。
その、赤紫色の液体から何かが這い上がって来ます。
それは次第に人の形めいた何かに変わり、更にはアスタロッテさんのような羽根を生やしていきますよ。
「これが兵族だ…しかし、人どもを全て攫うか、はたまた食らわせるつもりか…マリアリーゼ殿、正直あまり猶予はなさそうだ…あれ1体で人の兵士百人に匹敵するのだ…何体を放つか知らねど、10体もおればまず人の国は一晩で1つ、滅びかねぬ…」
「アスタロッテの申す通り…リュネの対魔族隊の精兵でもなくば、手こずる事は必定なのです…魔族に相対する訓練と装備を備えた兵でなくば、ただただ蹂躙されるだけなのです…」
じゃあ、今までなんで蹂躙されなかったのでしょう。
ふっと思ったこの疑問、これまたアスタロッテさんが答えて下さいました。
「人の滅亡はこれまで禁じられていたのだ…我らは苗床の維持に要する人を攫いおおせた時点で退却していたのだよ…」
「逆に、我ら人側も魔族を根絶やしにまで退治るのは禁則となっておりました…互いに争いつつも、辛うじて互いの領地を犯さぬ程度のいくさに留めておったのです…」
なぁるほど…。
(言ってみれば、この人たちは異なる種族で出来レースの戦争プロレスをやってたんだよ…お互いのためにな…)
その、ある意味では残酷な現実に、皆が絶句します。
(で、こっからはあたしの作戦だけど…アスタロッテさん、確か、あの魔王とかってのはある程度生きたら、あの血の池みてーな苗床ってのに飛び込んで再生を果たすんだよな?)
「は、はぁ…マリアリーゼ殿の申される通りであるが…」
怪訝そうな顔をするアスタロッテさん。そして、マリア様の悪い顔が、なんとなくこの先に言われる話がろくでもなさそうなものである予感を皆に与えます。
「じゃあさ、今、魔王ってのがあんだけピンシャンしてても、あの苗床ってのに突っ込まれたら強制的に再生がかかる可能性はあるよな?…おいアルト、出番だ…わかってるよな、やること…」
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