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番外編:淫化帝国姫騎士ものがたり・1
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「いやはや、言葉も通じぬばかりか剣を向けられては我らとて致し方なく…」
苦い顔で話を切り出す、南米大陸淫化支部長のアヤ・マンコ陛下。
…で、この方の名前が日本語ではすごく言いづらい件なのですけどね。
(ティアラちゃん…マンコ・カパック陛下の名前が言いづらいのはわかりますが)
(こればかりは仕方ありませんよね…)と、ベラ子陛下同様に内心で頭を抱えているわたくし中井ティアラ。
そしてですね、何で私が淫化支部のあるクスコまで来ているのか。
その理由たるや、眼前に横たわる1人の女性と、傍らに膝ついて女性に取りすがる少年にあります。
「言語体系の解析、終了しました。明らかに地球由来の言葉とは違いますわ…」で、その女性を介抱しているのは痴女皇国国土局のエマニエル建設部長。
「エマちゃん、あと、この人たち由来の微生物も検査しておいてください…淫化の人たちにはアレーゼおばさまが欧州由来の疾病対策を施しておられると思いますが、念のために…」
そう、エマニエル部長のもう一つの顔…人型救世主兵器としてのお役目でこのクスコにお越しなのです。
「すみません…ヤスニ様が剣を抜いてしまって…」
と、申し訳なさそうな顔で言う男の子ですが、その服装は明らかに淫化人でもなければスペイン、ひいては痴女皇国関係者のそれではありません。
「まぁまぁ、それより何より、あなたとその…イリヤ・ヤスニさんですか。お二人の身体をちょっとだけ見せてもらいますからな。そのままで構いませんよ」
言うなり、エマニエル部長の姿がいつもの土建業風のスタイルから、桃色の羽根を広げた天使の姿に変わります。
「ちょっとだけ光を当てますからな。害はありまへん」エマニエル部長が告げると、どこからともなく青い光がその女性と、傍の男の子を撫でて行きます。
(ヤマダ・フユキくんですかな、この方は大丈夫ですわ。ただ…その女性についてはなるべく早く元の世界に戻した方が良いと思います。やはりというべきか、連邦世界はもとより痴女皇国・聖院世界の人類が持ってる常在微生物や酵素要素が著しく少ないんですわ…)
(かと言ってこの世界で魔法を使われると困りますからね…)
そう。
なぜベラ子陛下とエマニエル部長が急遽、淫化支部まで来ているのか。
そして、一応は白薔薇三銃士兼・聖隷騎士団指導員としての南米地区の担当が私だからでもありますけど、元はと言えば日本人の私が呼ばれて来ているのか。
このクスコの街から多少離れたマチュピチュ神殿という場所に、いきなりこの二人が現れて騒動になっただけではありません。
理由はこのお二人の出自にあるのです。
「ふぅ。とりあえず魔物とやらは全て捕縛しておいたが…」
そこに、米大陸本部を仕切るアレーゼ本部長がお戻りに。
見れば、紫色の肌の女性らしい何かを担いでおられます。
その姿を見た男の子、怯えたような表情を見せますが。
「ああ、大丈夫だ。万が一にも私や彼女らはもちろん、君たちにも危害を及ぼすような事はない。よっ、と」
アレーゼ本部長はその担いでいたものを床に下ろすと、顔の上で手をかざします。
「○*△◆$%##&!」途端に起き上がって何かを叫ぼうとしますが、アレーゼ様がぎろりと睨むと、お黙りに。
「おばさま、その魔物とやらは…」
心配そうにアレーゼ本部長を見るベラ子陛下ですが。
「ああ、アルトがついてくれている。魔法とやらさえ封じておけば万一にもアルトの敵じゃないのははっきり判ったしな」
…あー…。
でまぁ、その紫色の女性めいた方の口走る変な言葉、私たちには理解できませんのでエマニエル部長が通訳をされましたところ。
(その剣聖と小僧を追って我らはここな未開の地に来たまで。その二人の人族を引き渡せば我等にはそなたたちを害するつもりはない…)
(うそをおこきなさい!くすこのひとびとをおそってたべようとしていたでしょう!)
えーと、即座に表にいるらしいアルトさんから反論が来ていますが。
(いや、最初は我らの国のある土地の民かと思ってだな…)と、急にしどろもどろになる、その女性めいた方。
「何を言ってるんだ…お前たちが人に戦争を仕掛けるから、僕もリュネ王国に召喚されたんじゃないか!嘘をつくのもいい加減にしろアスタロッテ!」
(こ、この出来損ない勇者めが…身体さえ動けば剣聖が付かぬお前ごときなど…)
で、睨み合う紫さんと男の子の間に、アレーゼ様が割って入ります。
「おい。争いたいならば君たちの世界でやってくれんか。ここは聖院…そして聖院を継承した痴女皇国の管理下にある地球という惑星だ。どういう経緯で君たちがここに現れたのかは調査中だがな。それより君たち、特に魔物とか魔族という種族が好戦的なのは理解したが、その性質を私たちの前で発揮されると、こちらは甚だしく困るのだよ…」
もう1回やるかね?といった感情を露わにした目でアレーゼ様が睨むと、流石に紫の人は黙り込みます。
で、本当ならこんな突き放した話には怒りそうな男の子ですけどね。
(ヤマダ君と言ったな。私は菅野アレーゼと言うが、君が元々いた日本とは少し違うかも知れないが日本語は理解できる…いや、痴女皇国の女官ならば聖院第二公用語として日本語を理解するから、発音しなくとも頭で考えれば私たちには意志は示せるから、望みがあれば言ってくれ。あと、正直言ってこのアスタロッテとかいう者、我々としても危険な存在というのは理解できる。そして他の魔族とやらと同様に一括して処分したいのはやまやまなのだが、聖院には不殺の掟というものがあってな…)
「それよりもイリヤは大丈夫なのでしょうか…」
「心配はいらん。ただ、エマニエルが言った通りで、私たちのこの世界では君たちの活動に必要な要素が皆無に近い。そこのアスタロッテとやらもそうだとは思うが、このままではヤマダ君…君以外の者たちは恐らく生命を維持出来なくなるだろう。つまり…我々が手を下さずとも、魔物とやらは片端から死に絶える事になるんだが」
(やめてくれ!私はいいからせめて配下だけでも元の世界に!)
「ダメだ!お前たちを戻せば絶対に人を攻め滅ぼそうとするに決まってるじゃないか!」
その男の子…山田冬樹君の真剣そうな顔を見るまでもなく、本当にこの紫色の女らしき生き物が危険なのが理解できました。
ただ…痴女皇国世界に来てしまったのが運の尽き。
そればかりか、長期間ここにいると、床に寝かされている女性同様、真剣に生死の境をさまよう事になるようです。
ですので、アレーゼ様の判断では元いた世界に送り返す事で聖院規範の一つである不殺の掟に触れないようにしたいと、この場に居合わせた私たちは全員が思っています。
しかし、冬樹君の記憶を読む限りでは、素直に戻せば絶対に向こうの世界の人類と敵対するであろう事が明らかです。
(しかし、いんかの技術というのですか、こまったものですねぇ…こうしたひげきをおこさないためにも、聖院ではほかの世からの何かをよびこむのはだめだったのですが…)
では、ここでアルトさんが…そして他の痴女皇国関係者がボヤく理由をご説明しましょう。
この時点でアレーゼ本部長引率のもと、私とアルトさんは南米大陸の尻出国を出発後、アルゼンチンチンを経由して淫化帝国の首都であるクスコにやってきました。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/126/
ところが、クスコの町に滞在中、マチュピチュの太陽神殿の中で不穏な動きが観測されたという報告を受けた我々の目の前に、見るからに怪物!という外観の一団が出現したのです。
こちらはアレーゼ様との対話の試みも虚しく、人々を支配してくれよう、抵抗すればクスコの町を破壊して皆殺しだとか言い出したがために一瞬で…ええ、私もちょっと殴ってみたくはあったのですが、あっさりとドレインされていましたから…。
(ここが我らの世界ならば、遅れは取らぬものを…)
まぁ、ぼやいている紫の人はともかく。
そこで倒れている、明らかに人間の女性と日本人らしい少年について。
このお二人、実はマチュピチュの神殿内に出現したのです。
ところが言葉が通じず、心話での呼びかけにも応じなかったとあって淫化支部独自兵力の黄金騎士団の騎士が鎮圧を試みるも、結構強い人だったようです。
つまり、私たちの尺度で言うと千人卒以上。
で、アルトさんが現地へ転送で向かったところ…ほぼ瞬殺で倒されてしまったそうです…。
そして山田冬樹君と言うお付きの男の子が日本語を理解するということでざっとの事情を聞いたアルトさん、このお二人も差し当たってはクスコに連れて行く方が良かろうと転送依頼を出して、クスコの宮殿に戻って来たのが、大まかな出来事の流れです。
「しかし、淫化人が転送技術を含めた高度文明を過去に有していたのはともかく、なぜ自らの知識や技術を半ば封印したのか…初代様、ご存知ありませんか」
と、ベラ子陛下の中にいる初代様にお聞きになるアレーゼ様。
(かんたんです。あたくしや姉とけんかになるからです)
そして淫化の創造神を信仰しつつ、南米の山中に特殊文明由来の王国を築いていた淫化人ですが、アレーゼ様の第一回来訪時に現地の開発と協力を打診されて応諾。
(あの時は本当にアレーゼ様にはお世話になったのです…イスパニアの侵略を食い止めて下さった御礼がございますから)
で、その際にはまだ男性だったアヤ皇帝、老齢でもあり女官化も承諾して痴女皇国の支部化にも応じられた方です。
つまり…。
Ayar Manqu アヤ・マンコ(マンコ・カパック)Thousand Suction (Limited Ten thousand) . 千人卒(限定万卒)Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 Peru branch, South-America Americas Regional Headquarters, Imperial of Temptress. 痴女皇国米大陸統括本部淫化支部 qurimanta caballerokuna 黄金騎士団 ñawpaq kaq kamachikuq, inca qhapaq suyu 初代淫化皇帝
ええ、痴女種化された方なのです…。
淫化の人々、元々はかなり小柄で高地生活に特化した特徴があるようですが、このマンコ皇帝、痴女種化の際にスペインとの混血化を想定した姿になっておられます。
即ち、南欧支部管轄で生まれた女官の姿と比べても身長も体格も引けを取らないお姿です。
で、マンコ皇帝いわく。
「アスタロッテとか申したか。そなたは何故人と争って来たのかは存じぬが、我が淫化の地は見ての通りに山また山。人であれ何であれ争うばかりでは生計は立たぬ。この地に留まるにしても、そなたらの国に帰すにしても争いを避ける心なくば如何なる土地にあろうと、よろしくない最期が訪れる事必定であろう。現にこの淫化に狼藉を働こうとした者は哀れにも労奴の地位に堕ちておると聞くが、いかがする」
「お前た…貴君らは我らを滅ぼすというのか!」
「それはこのヤマダ君次第だ。ヤマダ君。君はいますぐ日本に帰りたいかね」と、冬樹君に話を振るアレーゼ様。
(まぁすぐに帰るつもりがないのは分かっているが、この魔族とやらに対する交渉に協力してくれ)
(はい)
「日本に戻りたいのはやまやまですが、イリヤとの…そしてリュネ王国との約束がありますから」
「なるほど…私も読心はできるが、今日昨日の争いでもなさそうだな。おい、アスタロッテとやら。君は魔族とか魔王とかいう輩の要職のようだが、人と争うのを止める事は出来ん話なのかね」
「無理を言うな…魔王様に逆らえる訳がないのだ…」
(ふむふむ。では、そのまおうか何かしりませんが、それをたおすかなかせば人とあらそうのをやめてくれるのですか)
「ふん、いくら貴様らが強かろうと、魔王軍に勝てる訳は…」
「その前に…これをご覧頂けますか」
紫の人が何か言おうとするのを制止するベラ子陛下ですが、この場ではそうしておいた方が確かに無難でしょう。
なぜならば、ベラ子陛下がこうして婉曲に制止しておかないと、アルトさんの性格なら「ならあたくしとどちらがつよいかためしてみようではありませんか」と絶対に言い出すと思ったくらい、この米大陸視察旅行ではアルトさんの事が分かってきたからです。
アルトさんならば、絶対に売られた喧嘩は買います。
そして悪い事に、白金衣という痴女皇国最強装備を与えられた最強騎士なのです。
で、ベラ子陛下が、淫化支部備品のパソコンを借りて、プレゼンモードで投影画面を出して皆に見せたもの。
NB星系下の第5番惑星で撮影された試験戦闘映像だそうですが、蟹服を着込んだマリアリーゼ陛下と向き合う、白金衣姿のアルトさんが。
その手に握られるのは、いつものアルトさんの装備たるリトルクロウではなく…使い込まれて古びた木のバットです。
「これ、池尻大橋の備品のあれでは…」
私の悪い予感は当たっていました。
黙って頷く、ベラ子陛下。
そして…マリアリーゼ陛下の着込んだ蟹服の頭部から突き出た間抜けな蟹の目から放たれる青い光線ですけど。
「まず、姉が蟹光線の威力を試します」
(例の山一つ吹き飛ばす、あれですよ…)とベラ子陛下から解説を密かに頂きますが、これ…大気圏内用に出力を絞ってるんですよね…。
「ふん、魔王様ならばこのくらいは造作もない…」と言ってる紫の人ですが、汗の匂いが微妙に変わってますよ。
そして読心結果。
(こいつら、確かに大口叩いたり我らを一網打尽にするだけはある…なんとかして魔王様の居城にこいつらの事を伝えねば…くそ、思念通信が全く開かぬ…)
「では、次にアルトさんに向けて蟹光線を試験発射した映像ですが」
かにびいいいいいいいいむ、という声こそ聞こえませんが、再び蟹衣装のマリアリーゼ陛下が放つ青い二条の光線がアルトさんを直撃…しません。
光線、どっかに行ってしまいました。
「分析のための映像ですから、この後で超高速スロー撮影の分が入ります。それを見ればアルトさんの身を守った仕掛けがわかりますよ」
えっ。
…その、高速度撮影というゆっくりとした映像を見ていますと、光線がアルトさんに当たる直前に握ったバットが黄金に輝くと、真っ黒い板のような何かが一瞬だけアルトさんの前に出現します。
そこに吸い込まれて行く光線。
更には、何事もなかったかのように黒い板か紙のような何かは消え去ってしまいます。
同時に、アルトさんの持つバットも、元の使い込んで古ぼけたただのバットに戻ってしまいます。
(このほーむらんばっとを持つに相応しいと認められた打者を防御する隔壁のひとつだそうです…本当ならクラインの壺のように発射された方向に帰るそうなのですが、ここでは別の空間…有り体に言うとブラックホールに吸い込まれるように姉が設定しています、ほーむらんばっとの防御隔壁…)
そして、アルトさんが足元の適当な石を拾ってぽい、と空中に浮かせると…重力が地球よりはるかに低いそうです…その石をめがけてバットを振ります。
むろん、片足一本で立つ独特のフォームで。
実はこのバット、私も試しに持ってみた事があるんですけど、球を撃つとか打ち返す際にこのフォームを強要されるのです。
そして、精神を保っておかないと756回または868回、ホームラン級の打球を放つまで打撃をやめられなくなるそうです…ええ、私もそうなりかけましたから。
まぁともかく、アルトさんの打撃ですが。
おお、ナイスバッティング…というか、綺麗なフォームで石を打ちます。
そして、打撃を受けた際に青い光に包まれた石、マリアリーゼ陛下をかすめてその背後に着弾したのですが…先ほどの山に向けて撃ったのと同じように地形、変わってますよ…。
(これが姉曰くのほーむらんばっと・等倍返し機能だそうです…あのバットは握った者が受けた攻撃をそっくりそのままお返しする使い方もできるそうなのです…)
(あたりまえや。あのばっとつくるのにわしとまりやがそだてた木、どこにうえておおきくしたとおもうとる。えらばれたもんにはわしのちから、そっくりそのままつかわすこともできるからな)
(おかみ様…やりすぎですよ…確かにあのバット、あたしも試し振りしましたけど、初代様の本気状態を止めるために使えますよあれ…)
(ええやんけ。おかげでなにや、その、ねぇちゃんの主人のまおうからおうかかいとりの王さまか何かしらんけど、みせのまえにぺんぺんぐさ一本はやさへんくらいのことできるねんから)
何と言うことでしょうか。
いやその、除草剤どころじゃありませんよ…そのほーむらんばっと…。
更に悪い事に、アルトさんはやる気になっています。
さながら中古買取の車、どこにも傷や故障がないのに殴る蹴るして壊してしまおうとする上司のような気分になっておられます。
要するに、自分より強いとか勝手に言われて腹を立てている状態なのです。
これは危険な兆候です。
確か別の時にマリアリーゼ陛下にお聞きしたんですけど、惑星の一つくらいは一撃で粉々にも出来るそうですね…全力状態で金色に光ってる時のその、ホームランバット…。
ええ、意識を取り戻したらしい、その剣聖か何かと呼ばれている方の女性も怯えておられます。
しかし同時に、これほどの力があるならば魔王軍も倒してもらえるのではないか、そのような事もお考えです。
ですが、剣聖のお姉さん。
私、中井ティアラは申し上げたいのです。
出来ればそっちの世界か何かに痴女皇国関係者、特にアルトさんをお邪魔させるのは避けた方がいいんじゃないかな…と。
何故ならばこの時点ですら、マリアリーゼ陛下が作った何かしらのものがろくでもない性能を持っているという認識、既に私にも理解できていたからです。
聞けば、元々はただの人間男性だという宇賀神雪子さんのお父様が仮にヤクザや反社勢力と揉めて向こうの事務所に殴り込んだり、はたまた旧車會とかいう珍しい車の集団を相手しても彼らを片づけた上で五体満足で帰宅できるようにと精魂込めて作り上げたそうなのですが…。
ですから、普通の男性に全盛期の昭和の神戸の事務所だの九州や愛知の事務所だとか、果ては自衛軍の歩兵連隊駐屯地に殴り込んでも生きて帰れる攻撃力と防御力を与えるだけでもろくなものじゃないの、わかりますから!
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あすた「一つお聞きしたい。私たちを生かして帰すつもりはおありなのか」
べらこ「人を襲ったり食べないならば」
まんこ「逆らうつもりがあるならやめておけ…」
いりや「いやむしろ私たちにとってみれば救世主が突然現れたようなものなのですが」
ふゆき「ヤスニ様、ですがこの方々が自分たちで言われるように、リュネ王国にお越しになればそれはそれで怖い気もします」
いりや「何を言われますかフユキ、この方々ならば魔王軍を倒す事も困難ではないように思えますが」
べらこ「いやその、うちの痴女皇国には決まりがあるのですよ…不殺もそうなのですが」
いりや「わたくしの体で良ければ、いえアスタロッテの身でも」
あすた「こらっヤスニっ私を勝手に生贄にするなっ」
てあら「ちなみにこの、ナロウノテンプレめいた方々、本当にそういう世界の方らしいようです…」
べらこ「魔法が使える世界という時点で、あたしたちが介入するとすっごくまずい事になる可能性があるのも、あたしが渋っている理由です。そしてアレーゼおばさま、やはり聖院規範は適用すべきでしょうか」
あれーぜ「仕方ないのだよな…ヤスニ殿、そしてアスタロッテとやら。私たち聖院由来の女官は人を助けるのが存在理由の一つだ。しかし、助けられた者には何かしらの返礼を求めるのが決まりなのだよ…」
べらこ「等価でなくても良いのですが、最低でもあたしかおばさまを納得させるものを差し出して頂きたいのです」
あすた「ではお聞きするが、仮に我らがそちらに助けを願うのはどうなのだろうか」
べらこ「受け付けます。ただし、人を殺すとか支配する類の依頼はお断りしますよ」
あすた「うむむむむむ」
いりや「難しい話ですね…」
べらこ「あたしたちもそう思ってますので、この手の話が出来る人物を呼んでいます」
マリア「なんだよークッソ忙しいのに…で何だって?淫化文明の何かが動いたって?」
べらこ「まぁまぁねーさん、ところでこういう場合はどうするんですか」
マリア「よりによって困った話が持ち込まれたな…こんなもん、あたしが以前懸念した通りじゃねぇか…」
べらこ「そこを何とか」
マリア「あたしからすりゃ喧嘩両成敗にしてぇんだけどさ、まぁともかく、次回までに考えてみよう」
他全員「ええええええ」
マリア「それと、そっちの世界に干渉するにしても、誰かを一時的に行かせる必要はあるんだよな…」
あると「あたくしを行かせるきまんまんですねこのよめは」
マリア(だからそれが危険だから考えさせて欲しいんだってば…)
べらこ「という訳で次回に続くのです…それと、このお話は閑話休題の部類らしいのです…」
マリア「あと何でこうなったのか、あたしが次回までに聞いとくから…」
いりや「なにとぞよしなに」
あすた(魔王様とこの者たちとどっちが怖いかな…)
いりや(寝返るなら今のうちかも知れないわよ…)
あると「だすものさえだしていただけるならば、どちらのみかたにもなるのです…」
他全員(アルトさんの方がよほど悪役になりそうな予感…)
苦い顔で話を切り出す、南米大陸淫化支部長のアヤ・マンコ陛下。
…で、この方の名前が日本語ではすごく言いづらい件なのですけどね。
(ティアラちゃん…マンコ・カパック陛下の名前が言いづらいのはわかりますが)
(こればかりは仕方ありませんよね…)と、ベラ子陛下同様に内心で頭を抱えているわたくし中井ティアラ。
そしてですね、何で私が淫化支部のあるクスコまで来ているのか。
その理由たるや、眼前に横たわる1人の女性と、傍らに膝ついて女性に取りすがる少年にあります。
「言語体系の解析、終了しました。明らかに地球由来の言葉とは違いますわ…」で、その女性を介抱しているのは痴女皇国国土局のエマニエル建設部長。
「エマちゃん、あと、この人たち由来の微生物も検査しておいてください…淫化の人たちにはアレーゼおばさまが欧州由来の疾病対策を施しておられると思いますが、念のために…」
そう、エマニエル部長のもう一つの顔…人型救世主兵器としてのお役目でこのクスコにお越しなのです。
「すみません…ヤスニ様が剣を抜いてしまって…」
と、申し訳なさそうな顔で言う男の子ですが、その服装は明らかに淫化人でもなければスペイン、ひいては痴女皇国関係者のそれではありません。
「まぁまぁ、それより何より、あなたとその…イリヤ・ヤスニさんですか。お二人の身体をちょっとだけ見せてもらいますからな。そのままで構いませんよ」
言うなり、エマニエル部長の姿がいつもの土建業風のスタイルから、桃色の羽根を広げた天使の姿に変わります。
「ちょっとだけ光を当てますからな。害はありまへん」エマニエル部長が告げると、どこからともなく青い光がその女性と、傍の男の子を撫でて行きます。
(ヤマダ・フユキくんですかな、この方は大丈夫ですわ。ただ…その女性についてはなるべく早く元の世界に戻した方が良いと思います。やはりというべきか、連邦世界はもとより痴女皇国・聖院世界の人類が持ってる常在微生物や酵素要素が著しく少ないんですわ…)
(かと言ってこの世界で魔法を使われると困りますからね…)
そう。
なぜベラ子陛下とエマニエル部長が急遽、淫化支部まで来ているのか。
そして、一応は白薔薇三銃士兼・聖隷騎士団指導員としての南米地区の担当が私だからでもありますけど、元はと言えば日本人の私が呼ばれて来ているのか。
このクスコの街から多少離れたマチュピチュ神殿という場所に、いきなりこの二人が現れて騒動になっただけではありません。
理由はこのお二人の出自にあるのです。
「ふぅ。とりあえず魔物とやらは全て捕縛しておいたが…」
そこに、米大陸本部を仕切るアレーゼ本部長がお戻りに。
見れば、紫色の肌の女性らしい何かを担いでおられます。
その姿を見た男の子、怯えたような表情を見せますが。
「ああ、大丈夫だ。万が一にも私や彼女らはもちろん、君たちにも危害を及ぼすような事はない。よっ、と」
アレーゼ本部長はその担いでいたものを床に下ろすと、顔の上で手をかざします。
「○*△◆$%##&!」途端に起き上がって何かを叫ぼうとしますが、アレーゼ様がぎろりと睨むと、お黙りに。
「おばさま、その魔物とやらは…」
心配そうにアレーゼ本部長を見るベラ子陛下ですが。
「ああ、アルトがついてくれている。魔法とやらさえ封じておけば万一にもアルトの敵じゃないのははっきり判ったしな」
…あー…。
でまぁ、その紫色の女性めいた方の口走る変な言葉、私たちには理解できませんのでエマニエル部長が通訳をされましたところ。
(その剣聖と小僧を追って我らはここな未開の地に来たまで。その二人の人族を引き渡せば我等にはそなたたちを害するつもりはない…)
(うそをおこきなさい!くすこのひとびとをおそってたべようとしていたでしょう!)
えーと、即座に表にいるらしいアルトさんから反論が来ていますが。
(いや、最初は我らの国のある土地の民かと思ってだな…)と、急にしどろもどろになる、その女性めいた方。
「何を言ってるんだ…お前たちが人に戦争を仕掛けるから、僕もリュネ王国に召喚されたんじゃないか!嘘をつくのもいい加減にしろアスタロッテ!」
(こ、この出来損ない勇者めが…身体さえ動けば剣聖が付かぬお前ごときなど…)
で、睨み合う紫さんと男の子の間に、アレーゼ様が割って入ります。
「おい。争いたいならば君たちの世界でやってくれんか。ここは聖院…そして聖院を継承した痴女皇国の管理下にある地球という惑星だ。どういう経緯で君たちがここに現れたのかは調査中だがな。それより君たち、特に魔物とか魔族という種族が好戦的なのは理解したが、その性質を私たちの前で発揮されると、こちらは甚だしく困るのだよ…」
もう1回やるかね?といった感情を露わにした目でアレーゼ様が睨むと、流石に紫の人は黙り込みます。
で、本当ならこんな突き放した話には怒りそうな男の子ですけどね。
(ヤマダ君と言ったな。私は菅野アレーゼと言うが、君が元々いた日本とは少し違うかも知れないが日本語は理解できる…いや、痴女皇国の女官ならば聖院第二公用語として日本語を理解するから、発音しなくとも頭で考えれば私たちには意志は示せるから、望みがあれば言ってくれ。あと、正直言ってこのアスタロッテとかいう者、我々としても危険な存在というのは理解できる。そして他の魔族とやらと同様に一括して処分したいのはやまやまなのだが、聖院には不殺の掟というものがあってな…)
「それよりもイリヤは大丈夫なのでしょうか…」
「心配はいらん。ただ、エマニエルが言った通りで、私たちのこの世界では君たちの活動に必要な要素が皆無に近い。そこのアスタロッテとやらもそうだとは思うが、このままではヤマダ君…君以外の者たちは恐らく生命を維持出来なくなるだろう。つまり…我々が手を下さずとも、魔物とやらは片端から死に絶える事になるんだが」
(やめてくれ!私はいいからせめて配下だけでも元の世界に!)
「ダメだ!お前たちを戻せば絶対に人を攻め滅ぼそうとするに決まってるじゃないか!」
その男の子…山田冬樹君の真剣そうな顔を見るまでもなく、本当にこの紫色の女らしき生き物が危険なのが理解できました。
ただ…痴女皇国世界に来てしまったのが運の尽き。
そればかりか、長期間ここにいると、床に寝かされている女性同様、真剣に生死の境をさまよう事になるようです。
ですので、アレーゼ様の判断では元いた世界に送り返す事で聖院規範の一つである不殺の掟に触れないようにしたいと、この場に居合わせた私たちは全員が思っています。
しかし、冬樹君の記憶を読む限りでは、素直に戻せば絶対に向こうの世界の人類と敵対するであろう事が明らかです。
(しかし、いんかの技術というのですか、こまったものですねぇ…こうしたひげきをおこさないためにも、聖院ではほかの世からの何かをよびこむのはだめだったのですが…)
では、ここでアルトさんが…そして他の痴女皇国関係者がボヤく理由をご説明しましょう。
この時点でアレーゼ本部長引率のもと、私とアルトさんは南米大陸の尻出国を出発後、アルゼンチンチンを経由して淫化帝国の首都であるクスコにやってきました。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/126/
ところが、クスコの町に滞在中、マチュピチュの太陽神殿の中で不穏な動きが観測されたという報告を受けた我々の目の前に、見るからに怪物!という外観の一団が出現したのです。
こちらはアレーゼ様との対話の試みも虚しく、人々を支配してくれよう、抵抗すればクスコの町を破壊して皆殺しだとか言い出したがために一瞬で…ええ、私もちょっと殴ってみたくはあったのですが、あっさりとドレインされていましたから…。
(ここが我らの世界ならば、遅れは取らぬものを…)
まぁ、ぼやいている紫の人はともかく。
そこで倒れている、明らかに人間の女性と日本人らしい少年について。
このお二人、実はマチュピチュの神殿内に出現したのです。
ところが言葉が通じず、心話での呼びかけにも応じなかったとあって淫化支部独自兵力の黄金騎士団の騎士が鎮圧を試みるも、結構強い人だったようです。
つまり、私たちの尺度で言うと千人卒以上。
で、アルトさんが現地へ転送で向かったところ…ほぼ瞬殺で倒されてしまったそうです…。
そして山田冬樹君と言うお付きの男の子が日本語を理解するということでざっとの事情を聞いたアルトさん、このお二人も差し当たってはクスコに連れて行く方が良かろうと転送依頼を出して、クスコの宮殿に戻って来たのが、大まかな出来事の流れです。
「しかし、淫化人が転送技術を含めた高度文明を過去に有していたのはともかく、なぜ自らの知識や技術を半ば封印したのか…初代様、ご存知ありませんか」
と、ベラ子陛下の中にいる初代様にお聞きになるアレーゼ様。
(かんたんです。あたくしや姉とけんかになるからです)
そして淫化の創造神を信仰しつつ、南米の山中に特殊文明由来の王国を築いていた淫化人ですが、アレーゼ様の第一回来訪時に現地の開発と協力を打診されて応諾。
(あの時は本当にアレーゼ様にはお世話になったのです…イスパニアの侵略を食い止めて下さった御礼がございますから)
で、その際にはまだ男性だったアヤ皇帝、老齢でもあり女官化も承諾して痴女皇国の支部化にも応じられた方です。
つまり…。
Ayar Manqu アヤ・マンコ(マンコ・カパック)Thousand Suction (Limited Ten thousand) . 千人卒(限定万卒)Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 Peru branch, South-America Americas Regional Headquarters, Imperial of Temptress. 痴女皇国米大陸統括本部淫化支部 qurimanta caballerokuna 黄金騎士団 ñawpaq kaq kamachikuq, inca qhapaq suyu 初代淫化皇帝
ええ、痴女種化された方なのです…。
淫化の人々、元々はかなり小柄で高地生活に特化した特徴があるようですが、このマンコ皇帝、痴女種化の際にスペインとの混血化を想定した姿になっておられます。
即ち、南欧支部管轄で生まれた女官の姿と比べても身長も体格も引けを取らないお姿です。
で、マンコ皇帝いわく。
「アスタロッテとか申したか。そなたは何故人と争って来たのかは存じぬが、我が淫化の地は見ての通りに山また山。人であれ何であれ争うばかりでは生計は立たぬ。この地に留まるにしても、そなたらの国に帰すにしても争いを避ける心なくば如何なる土地にあろうと、よろしくない最期が訪れる事必定であろう。現にこの淫化に狼藉を働こうとした者は哀れにも労奴の地位に堕ちておると聞くが、いかがする」
「お前た…貴君らは我らを滅ぼすというのか!」
「それはこのヤマダ君次第だ。ヤマダ君。君はいますぐ日本に帰りたいかね」と、冬樹君に話を振るアレーゼ様。
(まぁすぐに帰るつもりがないのは分かっているが、この魔族とやらに対する交渉に協力してくれ)
(はい)
「日本に戻りたいのはやまやまですが、イリヤとの…そしてリュネ王国との約束がありますから」
「なるほど…私も読心はできるが、今日昨日の争いでもなさそうだな。おい、アスタロッテとやら。君は魔族とか魔王とかいう輩の要職のようだが、人と争うのを止める事は出来ん話なのかね」
「無理を言うな…魔王様に逆らえる訳がないのだ…」
(ふむふむ。では、そのまおうか何かしりませんが、それをたおすかなかせば人とあらそうのをやめてくれるのですか)
「ふん、いくら貴様らが強かろうと、魔王軍に勝てる訳は…」
「その前に…これをご覧頂けますか」
紫の人が何か言おうとするのを制止するベラ子陛下ですが、この場ではそうしておいた方が確かに無難でしょう。
なぜならば、ベラ子陛下がこうして婉曲に制止しておかないと、アルトさんの性格なら「ならあたくしとどちらがつよいかためしてみようではありませんか」と絶対に言い出すと思ったくらい、この米大陸視察旅行ではアルトさんの事が分かってきたからです。
アルトさんならば、絶対に売られた喧嘩は買います。
そして悪い事に、白金衣という痴女皇国最強装備を与えられた最強騎士なのです。
で、ベラ子陛下が、淫化支部備品のパソコンを借りて、プレゼンモードで投影画面を出して皆に見せたもの。
NB星系下の第5番惑星で撮影された試験戦闘映像だそうですが、蟹服を着込んだマリアリーゼ陛下と向き合う、白金衣姿のアルトさんが。
その手に握られるのは、いつものアルトさんの装備たるリトルクロウではなく…使い込まれて古びた木のバットです。
「これ、池尻大橋の備品のあれでは…」
私の悪い予感は当たっていました。
黙って頷く、ベラ子陛下。
そして…マリアリーゼ陛下の着込んだ蟹服の頭部から突き出た間抜けな蟹の目から放たれる青い光線ですけど。
「まず、姉が蟹光線の威力を試します」
(例の山一つ吹き飛ばす、あれですよ…)とベラ子陛下から解説を密かに頂きますが、これ…大気圏内用に出力を絞ってるんですよね…。
「ふん、魔王様ならばこのくらいは造作もない…」と言ってる紫の人ですが、汗の匂いが微妙に変わってますよ。
そして読心結果。
(こいつら、確かに大口叩いたり我らを一網打尽にするだけはある…なんとかして魔王様の居城にこいつらの事を伝えねば…くそ、思念通信が全く開かぬ…)
「では、次にアルトさんに向けて蟹光線を試験発射した映像ですが」
かにびいいいいいいいいむ、という声こそ聞こえませんが、再び蟹衣装のマリアリーゼ陛下が放つ青い二条の光線がアルトさんを直撃…しません。
光線、どっかに行ってしまいました。
「分析のための映像ですから、この後で超高速スロー撮影の分が入ります。それを見ればアルトさんの身を守った仕掛けがわかりますよ」
えっ。
…その、高速度撮影というゆっくりとした映像を見ていますと、光線がアルトさんに当たる直前に握ったバットが黄金に輝くと、真っ黒い板のような何かが一瞬だけアルトさんの前に出現します。
そこに吸い込まれて行く光線。
更には、何事もなかったかのように黒い板か紙のような何かは消え去ってしまいます。
同時に、アルトさんの持つバットも、元の使い込んで古ぼけたただのバットに戻ってしまいます。
(このほーむらんばっとを持つに相応しいと認められた打者を防御する隔壁のひとつだそうです…本当ならクラインの壺のように発射された方向に帰るそうなのですが、ここでは別の空間…有り体に言うとブラックホールに吸い込まれるように姉が設定しています、ほーむらんばっとの防御隔壁…)
そして、アルトさんが足元の適当な石を拾ってぽい、と空中に浮かせると…重力が地球よりはるかに低いそうです…その石をめがけてバットを振ります。
むろん、片足一本で立つ独特のフォームで。
実はこのバット、私も試しに持ってみた事があるんですけど、球を撃つとか打ち返す際にこのフォームを強要されるのです。
そして、精神を保っておかないと756回または868回、ホームラン級の打球を放つまで打撃をやめられなくなるそうです…ええ、私もそうなりかけましたから。
まぁともかく、アルトさんの打撃ですが。
おお、ナイスバッティング…というか、綺麗なフォームで石を打ちます。
そして、打撃を受けた際に青い光に包まれた石、マリアリーゼ陛下をかすめてその背後に着弾したのですが…先ほどの山に向けて撃ったのと同じように地形、変わってますよ…。
(これが姉曰くのほーむらんばっと・等倍返し機能だそうです…あのバットは握った者が受けた攻撃をそっくりそのままお返しする使い方もできるそうなのです…)
(あたりまえや。あのばっとつくるのにわしとまりやがそだてた木、どこにうえておおきくしたとおもうとる。えらばれたもんにはわしのちから、そっくりそのままつかわすこともできるからな)
(おかみ様…やりすぎですよ…確かにあのバット、あたしも試し振りしましたけど、初代様の本気状態を止めるために使えますよあれ…)
(ええやんけ。おかげでなにや、その、ねぇちゃんの主人のまおうからおうかかいとりの王さまか何かしらんけど、みせのまえにぺんぺんぐさ一本はやさへんくらいのことできるねんから)
何と言うことでしょうか。
いやその、除草剤どころじゃありませんよ…そのほーむらんばっと…。
更に悪い事に、アルトさんはやる気になっています。
さながら中古買取の車、どこにも傷や故障がないのに殴る蹴るして壊してしまおうとする上司のような気分になっておられます。
要するに、自分より強いとか勝手に言われて腹を立てている状態なのです。
これは危険な兆候です。
確か別の時にマリアリーゼ陛下にお聞きしたんですけど、惑星の一つくらいは一撃で粉々にも出来るそうですね…全力状態で金色に光ってる時のその、ホームランバット…。
ええ、意識を取り戻したらしい、その剣聖か何かと呼ばれている方の女性も怯えておられます。
しかし同時に、これほどの力があるならば魔王軍も倒してもらえるのではないか、そのような事もお考えです。
ですが、剣聖のお姉さん。
私、中井ティアラは申し上げたいのです。
出来ればそっちの世界か何かに痴女皇国関係者、特にアルトさんをお邪魔させるのは避けた方がいいんじゃないかな…と。
何故ならばこの時点ですら、マリアリーゼ陛下が作った何かしらのものがろくでもない性能を持っているという認識、既に私にも理解できていたからです。
聞けば、元々はただの人間男性だという宇賀神雪子さんのお父様が仮にヤクザや反社勢力と揉めて向こうの事務所に殴り込んだり、はたまた旧車會とかいう珍しい車の集団を相手しても彼らを片づけた上で五体満足で帰宅できるようにと精魂込めて作り上げたそうなのですが…。
ですから、普通の男性に全盛期の昭和の神戸の事務所だの九州や愛知の事務所だとか、果ては自衛軍の歩兵連隊駐屯地に殴り込んでも生きて帰れる攻撃力と防御力を与えるだけでもろくなものじゃないの、わかりますから!
--------------------
あすた「一つお聞きしたい。私たちを生かして帰すつもりはおありなのか」
べらこ「人を襲ったり食べないならば」
まんこ「逆らうつもりがあるならやめておけ…」
いりや「いやむしろ私たちにとってみれば救世主が突然現れたようなものなのですが」
ふゆき「ヤスニ様、ですがこの方々が自分たちで言われるように、リュネ王国にお越しになればそれはそれで怖い気もします」
いりや「何を言われますかフユキ、この方々ならば魔王軍を倒す事も困難ではないように思えますが」
べらこ「いやその、うちの痴女皇国には決まりがあるのですよ…不殺もそうなのですが」
いりや「わたくしの体で良ければ、いえアスタロッテの身でも」
あすた「こらっヤスニっ私を勝手に生贄にするなっ」
てあら「ちなみにこの、ナロウノテンプレめいた方々、本当にそういう世界の方らしいようです…」
べらこ「魔法が使える世界という時点で、あたしたちが介入するとすっごくまずい事になる可能性があるのも、あたしが渋っている理由です。そしてアレーゼおばさま、やはり聖院規範は適用すべきでしょうか」
あれーぜ「仕方ないのだよな…ヤスニ殿、そしてアスタロッテとやら。私たち聖院由来の女官は人を助けるのが存在理由の一つだ。しかし、助けられた者には何かしらの返礼を求めるのが決まりなのだよ…」
べらこ「等価でなくても良いのですが、最低でもあたしかおばさまを納得させるものを差し出して頂きたいのです」
あすた「ではお聞きするが、仮に我らがそちらに助けを願うのはどうなのだろうか」
べらこ「受け付けます。ただし、人を殺すとか支配する類の依頼はお断りしますよ」
あすた「うむむむむむ」
いりや「難しい話ですね…」
べらこ「あたしたちもそう思ってますので、この手の話が出来る人物を呼んでいます」
マリア「なんだよークッソ忙しいのに…で何だって?淫化文明の何かが動いたって?」
べらこ「まぁまぁねーさん、ところでこういう場合はどうするんですか」
マリア「よりによって困った話が持ち込まれたな…こんなもん、あたしが以前懸念した通りじゃねぇか…」
べらこ「そこを何とか」
マリア「あたしからすりゃ喧嘩両成敗にしてぇんだけどさ、まぁともかく、次回までに考えてみよう」
他全員「ええええええ」
マリア「それと、そっちの世界に干渉するにしても、誰かを一時的に行かせる必要はあるんだよな…」
あると「あたくしを行かせるきまんまんですねこのよめは」
マリア(だからそれが危険だから考えさせて欲しいんだってば…)
べらこ「という訳で次回に続くのです…それと、このお話は閑話休題の部類らしいのです…」
マリア「あと何でこうなったのか、あたしが次回までに聞いとくから…」
いりや「なにとぞよしなに」
あすた(魔王様とこの者たちとどっちが怖いかな…)
いりや(寝返るなら今のうちかも知れないわよ…)
あると「だすものさえだしていただけるならば、どちらのみかたにもなるのです…」
他全員(アルトさんの方がよほど悪役になりそうな予感…)
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