188 / 377
番外編・吉原よいとこ一度はおいで 7
しおりを挟む
皆様ボンジュール。
出家前の名を名乗らせて頂きますが、ブリュンヒルダ・アウストラシアと申します。
Brüntliene (Brunhilda Austrasia)ブリュントレーネ Hundred thousand Suction(Limited million) 十万卒(限定百万) Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Duchy of Lorraine Branch.中欧支部
でまぁ、私の出自ですが、古のロレーヌを支配していたフランク王国が彼の地を呼んでおった名称たるアウストラシアを姓としております。
ただ…偽装する必要があったのですよ…。
今は、突進公たるシャルル・テレメールことシャルル・ヴァロイス・ブルゴーニュの娘であり、最後のブルゴーニュ公として…そして、大変な美女であった件でも知られた富貴公マリー・ド・ブルゴーニュが私の元来の姉だという事だけお伝えしておきましょう。
で、私は現在、痴女皇国の欧州地区の支部に勤務しておりますが、急遽、八百比丘尼国に出張する立場となりました。
では、なぜこんな事になったのか…まずは前回の続きを兼ねて、ベラ子陛下…痴女皇国皇帝マリアヴェッラ陛下からお話し頂きましょうか。
-------------------------
で、話を引き継ぎました毎度おなじみマリアヴェッラですが。
さて、お江戸は江戸城西側の永田馬場と呼ばれる、日枝神社と国主屋敷街が存在する一帯にあります、近江招猫彦根国主たる井伊家のお屋敷からお送りさせて頂きます。
現在の日本で申しますと、国会議事堂敷地から皇居のお濠までの地域一帯を指す場所、あたしたちはその辺にいるとお考え下さい。
そして、現在は井伊家の次男で、将来は井伊家を継ぐはずの家督相続予定者たる直滋くんが、突如出家して偽女種になるという爆弾発言をした直後から語らせて頂きましょう。
「あ、兄上…確かに兄上は早くから女に目覚めておったとは思いまするが、何もそのように性急なるお考えに至るなど…しかも、偽女種になるなどとは…」
ええ、必死でお兄さんの直滋くんを止めようとしている井伊直澄くん。
で、直澄くんは何を止めようとしているのでしょうか。
(共に育った兄がいきなり目の前から消え去ろうという話を始めた上に、その理由が偽女種になるというのは、僕としてもちょっとこれは諸々色々さまざまに困りますし、何よりも、果たして兄が晴れて偽女種になったとしても、家を出てごはんが食べていけるのでしょうか…というのが僕の疑問です…少なくとも父ならば勘当じゃあとか叫んで暴れるのはまちがないでしょう…)
「母上…我らは元服前の習わしという事で、時には女児の服を着せられたりしておりますでしょう…」
「ですが直滋…そなた、おなごの装いをするだけなのと、偽女種に変わるのは全く意味が違うのですよ…それに、いくら幕府も巷も偽女種を尊ぶ風向きではあると思いますが、なろうとしてなれるものでは…」
で、実のお母さんではないそうですけど、とりあえずこの子達の戸籍上の母親たる、井伊家当主正室の阿喜姫様。
踊阿呆酢橘国の初代国主様で、家光さんに昔話を聞かせる役目ももらっていた蜂須賀家政さんの実の娘さんだそうです。
(と言うより蜂須賀小六の孫娘って言った方が理解が早いと思うわよ…)
それ…かえってイメージ悪くなるんじゃないですか…。
(うん…明治天皇の時代だけどさ、大名から華族にクラスチェンジした当代の蜂須賀家の当主の侯爵様が明治天皇にお会いした際、天皇陛下が立たれてる間に応接セットの煙草を1本拝借したのよね…で、気付かれた天皇陛下が「蜂須賀よ、先祖は争えぬのう…」なんて冗談を言われたくらい、蜂須賀小六って言ったら盗賊団の親玉ってイメージが固定されてる部類の人だったらしいのよ、その時も…)
まぁ、ご本人は口さえ開かなければ、どっかのカエル女のように良い方向に誤解してくれる部類ですね…痛いわよ!
(小官以外にも口さえ開かねば美しい誤解で終わる人物は痴女皇国に少なくないという実態を認識して頂きたいだけなのです。例えばそこの皇帝陛下とか言う上司だの、ロレーヌ公マリアンヌとかいう上司だの…Voilà!)
「阿喜殿…なれるようになったのじゃ…穢多を身分制ではなく職制に変えるのでな…それに、ここだけの話として、偽女種への変わり身、実のところ巫女様にかかる必要こそあるが、変えること自体は容易なのであるぞ…ま、偽女種にもその寿命の限り、只人より短くなってしまうとか、はたまた不肖この匿名の偽女種11号や5号12号のようにおのこに戻れたり、あるいは6号のように妖艶な美魔女とやらにも化けられるなど、様々な区切りや取り決めがあるようでな…」
と、赤い牛柄刺繍の入った頭巾…穢多身分の陰間または夜鷹を示すそうですけど…を直される、どこの誰かはもはやバレバレの偽女種11号様。
(べらこ様…人は、身分門地立場その他諸々を隠さねばならぬ時もあろうと思いまする…余だって言っちゃなんですがね、公方言葉より楽な話し方したいのですけどね、それやると後で上様は誰とそれで口の利き方をお変えになるとか言いよる阿呆が出よるのですよ…ああ、もう直滋よりよほど余の方が気楽な偽女種稼業でもやりとうございます…って偽女種になってはおります、な…)
で、公方様ではなく、あくまでも偽女種11号さんの嘆きはともかくとしまして。
「えええええ…上様いやさ11号様、そのような沙汰など…いわば、おのこを女性に変えるのに近い話でございましょう…天狗の技でも何でも良いのですが、それが出来まするとしても、我が子にそれを認めるのはちと…」
「うむ。阿喜殿の懸念もわかる。もしも余がこの子らの父や兄であったとしても、真っ当な理由なくば偽女種に変わるなどとは到底認めまい…偽女種になる術があるのと、それを実際に施術いたす方々がやってくれるかは全く別の話であろ?」
ええと、その…なんでまた、井伊直滋くん、偽女種になろうとしたのでしょう。
(へーか。この美少年、マダム・マサミと二人で診せて頂いてよろしいですか?)
ふむ。井伊家の異母兄弟の爆弾発言に気付いたマリーちゃん、あたしに具申して来ましたが。
「マダム・マリアンヌ…そもそもリッチャルデットのようなこのギャルソンにSous-vêtements érotiquesを与えたのはまずいのでは…」
(リッチャルデットとは、いにしえのフランク王国に伝わるカロリング物語の中のシャルルマーニュ十二勇士が一人でございます。兄リナルドと二人してパラディンに数えられましたのですが、彼は女性と見紛うほどの美形であったと…)
(あああああ…ブリュントレーネのお家の家系の昔の伝説でしょ…でさぁ、某英霊ゲームの明日何とかきゅんと違って、カロリング物語じゃその子の方が男の娘っぽいのよ…でね、当時のイスパニアのお姫様にれずいや百合を迫られて、いやさほれられて困った妹さんのブラダマンテって女騎士に化けて、ウチの妹は百合やおまへんで、ちんぽの方がよろしおすえとやったこともあんのよね…)
(さっすが雅美さん…あれ、伝説は伝説なんですけど、あの十二勇士はほんっとーに存在した可能性があるんですよね…ちなみにあの伝説で出てくるエステというイタリアの名家の系譜に連なってるのが、今のイタリア連合公国のイザベラ・デステ大公殿下なのは覚えておいてもいーかも知れまっせんわよっ)
まぁ、歴女の裏話もさりながら、血縁的にあたしの叔母に該当するあの口うるさい絶倫豪傑おばちゃんはともかく。
(マリアヴェッラ…はよ、鉄の道をうちの半島にも敷いて下さいな…貴女の悪口、それで聞かなかった事にしましょう…)
(アメリゴ・ヴェスプッチ型の設計図のパテンテで我慢して下さいよ…痴女皇国の国土局長の室見はいざ知らず、我が娘のエマニエルが土建業続きで酒浸りで重度のタバッキ中毒になって憂さを晴らしてる醜態、あたしが嘆き憂えているの、ご存知でしょ…)
(マリアヴェッラ…聖母たる貴女が産んだ娘が普通の人間なら、私は同意しましたよ…)
ううううう。
まぁともかく、マリーちゃんとブリュントレーネさんの会話に戻りましょう。
「ええブリュントレーネ、確かにそーですわね…へーか、よもやこの淫蟲下着、この界隈の貴族の息子たちに与えておられますの?」
ロレーヌ組の二人が顔を真っ青にしています。どうやら、アルザス=ロレーヌで、淫蟲下着を男性が履いたことによるトラブルがあったのかも知れませんね…。
(ただでもこの時代の欧州の男ども、貴族ならばコッドピースこそ着けてますけど、ちんぽの膨らみが丸わかりのタイツ姿ではないですか…欧州でも男色、全く事例がないわけではないのですよ…)
(おまけに、淫蟲下着の効果だけでもございませんけど、男たちも見目麗しくなる罪人状態化を推進しておりますでしょ…肥満や痩せすぎの男でなくば、あの下着、男も卑猥に見せてしまうのは茸島どころか聖院学院本校の男子生徒や、痴女宮の罪人でとうに立証されておりましょうに…)
(ああ…ブリュントレーネとマリーちゃんの言いたい事わかる…男もナルシストになる危険があるのよ…いえ、男だから余計になの…で、ベラちゃん…淫蟲下着の配給元、ベラちゃんは把握してる?)
(ええ…配給は比丘尼国側で行っています。井伊家の所在するこの一帯であれば…まぐわいふんどしの支給を担当する窓口、どこになりますかね…)
(わたしです…)
えええっ、おまつさんですか?
(国主奥方会にて子女の数だけ、各家に配布を。支給指示については上様の名前で行っておりますが、おかみ様も承認済みですわ…)
(べらこへいか…なおしげくんにはいらんすりこみがはいってますよ…つまり、まだ、ちんぽがおとなになる前のじょうたいでいんちゅう下着をはかせたわけでしょう…)
ええ、今も穿いてますね。
(そして、こんなほそみでかわいいおとこのこたちです…しかも、まいばんのようにおかま少年とおくさまやおねえさんたちのすけべいをのぞきみたり、じぶんたちもおめこしてきたわけではないですか…じょそうどころか、おかまになってみたいという願望にめざめたのです…)
どぇええええ。
女官種能力で直滋くんの脳内を調査していたアルトさん、直滋くんがとんでもない性癖を育てていた実態を発掘したようです…。
(いうなれば、くりすさまとにたようなものですよ…)と、あたしだけに聞こえるようにクァンタムリンクを使うアルトさん。
(くりすさまと違い実の母親ではないにせよ、お母様にえろ下着をきせられ、あまつさえ変態行為や、さらにはおめこ相手になるように仕向けられたのですよ? …ただ、これまたくりすさまと違って、直滋くんは無理やり変なことをさせられたという風に思っていませんのが救いですけど…)
(しかし、アルトさん…これ、めっちゃまずくないですか…クリスおじさまはまだしも、この子たちは将来のお殿様候補…)
(とりあえず、くりすさまのことはふせて、通常心話でみなさまと協議しましょう…)
ええ、アルトさんの喋り方がまともな時は、ある意味ではロクな事が起きていない証拠です。
それに、あたし同様にクリスおじさまの心理状態や過去の経験や性癖傾向を知り尽くしてはいるアルトさんが警告を出す理由。
武家諸法度に準拠した男臭い節制生活をしろというのが建前となっている江戸時代の日本の武士社会で、女装趣味の萌芽傾向なんぞが出たのは極めてまずい傾向だというの、アルトさんもわかっているからです。
(ほら…妹が九鬼のおうちにのこしているこどもたち…あのこたちも、たくましい海の男になるように鍛えられているでしょう…ぎゃくにいえば、としごろのおとこのこって、ちゅういしていないとおかまになる危険があるとおもうのです…ナディア、おりますか…)
(サレルフィール姉様…聞こえました…井伊家であっても、九鬼家と事情に大差はないでしょう…しかも、井伊家の今の正室の奥様、野盗から身を起こした大立者の蜂須賀家の出身ではございませんか…そこの家のお子が出家して偽女種になるなどとは、よほどの理由づけがないと、表立ってはともかく、裏では陰口や噂の種たる醜聞となってしまいまするかと…)
ええ、日本の武士事情もよく知っておられるアルトさんの実の妹で、海賊一家…そして幕府でも瀬戸内海の村上家と並んで水軍を率いている立場の九鬼家に奥様としての籍も残しておられるナディアさん…このお話の時点では痴女皇国海事本部長職という、かなりの地位についている方です…。
これはまずいと思われたのでしょう。
(凛ですけど…なぁ、直滋くんいうたかな…おんしゃ、なんでまた偽女種になろうとしたんよ…九鬼家はもちろんやけどな…村上のおうちでも、きみみたいなんは絶対確実に海に叩き込まれて鍛えられるがね…さむらいの家に生まれたら、逃げ出して乞食か坊主にでもならん限りは絶対にさむらいになれなれ言うてうるさいん、おんしゃ自身がようわかっとるやろし、それに、アルトはんを通じて見してもろたがね、おんしゃは別にさむらい修行ができんくらい弱っちい子でもなかろうがね…)
と、何でまたそんな変態の道に行くのよという声がまた、一人。
(で、アルトはん…そうは言いましたがな、瀬戸組や村上の縄張りならいざ知らず、よそさまのおうちの子が偽女種になりたい言うのん、わしらは今ゆうたみたいに、そんなんやめときやとは言えますけど、体ずくで止めるのまでは難しいき…)
ええ、人魚種が率いる水棲ヤクザの瀬戸組の四代目で、痴女皇国海軍というべき紺碧騎士団を率いている瀬戸の凛ちゃんまでもが心話を送って来ました。
彼女のおうちは人魚…そして水棲妖怪の家系ですけど「鬼や天女や妖怪の類は人間と婚姻して混血児を跡継ぎにすべし」という比丘尼国の人外向けの掟を守って、代々の当主は瀬戸内海の人間側の海賊一家たる村上家と血縁関係にありますので、彼女も人間の武士社会の事情、よく知ってるんですよ。
やはりというべきか、武士、それも有力国主のお子様が「女装趣味が嵩じて出家して偽女種になる」とか言い出すのは非常に危険な行為となるようですね…。
(待たれよ皆…直滋の心根、何とはなく分かり申す。おなごと見まごうおのれ自身の姿を見て、いっそおなごになりたくなったのであろう…ほれ…元服前の男児を女装させ、芋侍どもに女の代用として与える薩摩の風習…豊久が心底嫌がっておったが、あれを自らやりたくなったのであろうよ…余も偽女種の姿を選べるようになったから分かるが、何とはなしに、さながら歌舞伎の売れっ子女形のごとく、おなごに優越感を抱いてしまうのよ…)
と、これは徳川いえみ…偽女種11号さんからです。
(ベラちゃんにわかりやすく言うと、イケメンレイヤーで男の娘状態になって女の子キャラを演じたがる人、そこそこいるでしょ…あれよあれ、あの心境や境地よ…あの美男公を演じた結果、性別を女として登録しちゃった人とか、みっどさまーで老人の姿そのものを見せてビビられた昔の美少年俳優のようなものなのよぉおおおお)
はいはいはいはいっ。ほんまに推しのことになるとうるさいですね、このひとも。
で、美男公推しの雅美さんが薩摩の恐るべきほも事情を暴露なさいます。
(ベラちゃんが相変わらず、密かに様子を見に行ったり仕送りを欠かさない割にはボロクソな扱いにしてる美男公はともかくとして)
(ベテハリ君を行かせたのに…寒い場所があかんと言われては…)
(それはまぁしゃあないわよとしても、薩摩特有の二才制度についてだけどさ、もっとエグい習慣があるの知ってる?…あそこ、その少年女装風習だけじゃなくてガチホモ風習もあってね…ほもを嫌がるノンケの少年がいたら、ほも同士で徒党を組んでその子の家に行って、集団で犯すことすらやってたの…後に大日本帝国の政治家になった薩摩出身の人、いるでしょ)
(ええと、私が死んでも自由は死せずとか言った人ですか)
(あの人が何度も少年暴行容疑で捕まってたのは知ってるかしら…?江戸時代は少年が集団強姦されても家族も見て見ぬふりだったらしいんだけど、さすがに明治以降は警察沙汰になっちゃうからさ…)
でぇえええええ…あの人にそんな性犯罪履歴があったんですか…。
(3号様…あそこは確かに男色、絶対にやっとるとは思いましたが…なにせ外城制度を敷いておって、武士階級が人口の三割に達しておりますからな…結束で分厚い機密の壁を敷いてはおりますが、ここな聖環と納税制度を導入したからには、もはや全てを包み隠すことはできませぬ故に…)
(普通の諸国は、平時では武士を人口の一割程度に留めておくのですよ…侍身分を増やせばそれだけ俸禄を与えねばならず、財政を圧迫しますからな…)
(薩摩がすぐ切腹だ死罪だってことで武士の口減らしできるのも、あそこ…郷士が多いからすぐ補充できるのよね…)
(まぁまぁ、あの特殊で奇怪な芋侍国の話をしておっても詮無きこと。それよりは直滋の話を致しましょう。12号よ、直滋の独白、いかがに思うか)
(は…わしは偽女種となるのは正直あまり気が進まぬ部類でありまするが、直滋も上様の元服前同様、決して逞しくはない身体つきでしょう…おなごと言うても通る身と顔立ちに恵まれたのが却って災いとなったやも。まして、美しく着飾ったり、男ですらまらをいきり立たせる上玉のおなごまがいの偽女種を毎日見ておれば、まだ若いおのこが偽女種に憧れてしまうのかも知れませぬな…じんえも…5号、如何か)
(確かに信綱さ…12号様の申される通り。わしと小太郎殿はお役目にて、遊女や陰間のめんたるけあとやらをやる立場でございますが、およそ陰間となる者、おのこでありながらおなごの姿や衣装、更には振る舞いに憧れておる節がござる事多いのです…いえ、おなごになりたいと願うからこそ、単なる衆道ではなく陰間の道に走るのでしょうな…)
と、女装心理を分析される吉原名主の庄司甚右衛門さん。
(5号殿…河原…河原芸人の系譜が正にそうでござろう…歌舞伎や演芸では女形がつきもの、身も心もおなごを心がけて演じるべき役柄故に、舞台以外でもおなごの振る舞いを致す者も少なからずでありましょう…)
と、遊女と偽女種さんの監督役たる風魔小太郎さんが指摘するのは、いわゆる女性ばかりで編成された歌劇の舞台の真逆のお話。
(つーか、日本じゃそっちが伝統だったのよ…女性が男装して演技するのが一般的になるのは、例のヅカな歌劇が有名になったからなのっ)
むむむ…確かにそれ、あるかも知れませんね…バレエでも、男の人は勃起させてはならない掟もありますし…。
(っていうか有名なバレエ団あるでしょ…男ばかりの…)
あー、あれですかい…。
(ベラちゃん…それに、クリスくんにさ…人前でエロ下着や勃起ちんぽや、あげく露出せんずりを女官に見せつける悪癖刷り込んだでしょ…あたしはジーナちゃんに黙っとくし、アグネスさんやベリンダちゃんもジョアンナさんも口止めに回ってるからいいとしても、確実にあの子、ベラちゃんの悪影響、出てるからね…)
えええ…。
(そりゃあたしも例の裏商売でさ、女装子にコスプレさせてシコらせて汁飛ばせるのとか、素人流出もの風に屋外でそれやらせる動画撮らせてるから、その手の変態の心理はよく理解してるけどさぁ…)
なんて事なのでしょう…あたしはそこまで参考にしたつもりはありませんでしたけど、おじさまとあたし他、茸島関係者でやってる行為の一部、変態としてそれなりにヤバい事だったみたいなのです…。
(特に、女を憎んでいる女装はさ…なまじの女性より過激なボディコンスーツとかショーパン姿とか、あるいは逆に悪趣味なまでにゴスってる服装を好むのよ…そして突き詰めた変態女装ってさ、過激な自己愛を極めた単体の変態行為とかカマレズに行っちゃうのよ…)
でぇええええ…が、しかし考えてみれば連邦世界で捕獲している欧州や南米のをかまさんたち。
趣味の女装の方を含めて、悪趣味な格好が多いですよね…そして、行為も…雅美さんが言う通りで、ノンケの男性や理解力の薄い女性が見れば確実に眉を顰めて忌み嫌う部類。
おじさまの行為も、あたしだからご馳走なだけで、心狭き潔癖症な女性が見れば確実に気味悪がったり不潔だの変態だのと公然と口汚く罵ったり、口にはしなくても嫌悪感を催す可能性、大でしょうね…。
(クリスくんのはまだ見れるけど、汚っさん系熟女装連中の姿を見るだけでも充分に変態博覧会になるでしょ…)
(ううう、旧来の陰間も、実はその傾向が…)
(そうでございますよねぇ…あまりのおぞましさ故に、いっときは陰間も取り締まったのでございます…)
(まさか、陰間に忍びの変装術を教え仕込む訳にもいかず…)
ええ、江戸のをかまさんも、オネエな外観の方が結構いたようですね…。
(しかし、亭主を昏倒させて正解でございます…こんなもん、頭の硬いこの男に聞かせたら、何を言い出すやら)
(わたくし…父上とはもう既に何度も喧嘩をしておりますよ、母上…)
(ああ…わたくしの副業の件などなどですね…)
ええっ。
反抗期とやらでしょうか…。
(いえいえ。僕も、お阿喜母様が申される件は正しきに思うのです。そして、父上は女遊びを嫌う事で分かる通り、質素倹約の人です。母や側女中たちにも奢侈を許さぬどころか、過剰に質素を強いる傾向がありまして…もう少し着飾らせてあげてもいいんじゃないかと思う時もしばしばございます)
(確かに、奥方会でもお阿喜様や井伊の方、地味ですわね…奥の無駄遣いは戒められるべきと諸法度にもございますが、過度に行き過ぎますとお家のよくない噂にもなりましょうや…)
(おま…7号様、我ら兄弟は、母や女中たちにもう少し女らしき装いをして頂きました方が、他家の男児には母や井伊家中の女は美人であると自慢できるのです…先ほどの話に出たまうんととやら、男の子供の内でもございまする…僕の母はかくも美人だとか、いやうちの側室はそそるぞとか…)
(えええ…おのこたちはおのこたちで家の女の自慢大会を…)
(そりゃ、将軍家の中におってはなかなか伝わらぬ話ですわよ、8号様…流石に上様の側女について、美女ばかり集めてるとか、はたまた醜女とか地味とか、とにかく何かしらの言いがかりをつけ陰口を叩こうとするのがおなごのおなごたるやの上様がお嫌いな欠点でございましょう)
(であるな…春日にはかような奥を見つけ次第、おまつ殿共々しばいてくれと頼んでおったが…)
(ですが、実際にはそうした陰口、万一にも誰かの耳に入ろうものならば、即座に上様ないしわたくしどもに注進が及ぶでしょう…しかしながら、そうした陰口や噂がひとり歩き致しかねぬ仲の国主の子同士、そうした些事でもお家の位を自慢して相手を下に見ようとする年頃やも知れません…)
(ええ、はっきり申し上げまして、外様は外様でうちの家はこうだとか、いや当家はこうだぞとか自慢大会、何かあるとおっ始めておりまする。さすがに外様の子が譜代たる我らにまうんとは取って来ませんが、今度は譜代の子同士で致すのですよ…お国自慢に家自慢…)
(そして、母様が江戸城の集まりで偽女種に逆お手つきした、先のどうがですよ…あれ、あんなもの見たら最後、ここに上様がご臨席でなかったら、母様を斬ろうとしてたと思うのです…)
(そうなったら逆に応戦してましたわね…)
ああ、なんという悲しき自慢の繰り広げ。
そうなると、直滋くんが偽女種になろうとした理由もなんとなくわかります。
むしろ、直滋くんはお家の恥どころか、ある意味ではお家の誇りとなろうとしたのでしょう…。
(井伊の家から出た偽女種が、諸家の女房様方から引っ張りだこであれば、母や弟にも面目が立つというもの。僕も陰間に偽装して他家の奥様や娘様と遊んで、相応の感触を得たなればこそ、偽女種となっておなごを抱きたいのです)
な、なんちゅう直球。
そして、ある種の懸念が的中した人もいるようです。
「直滋…実はな、穢多を偽女種にする案が出た際に、あることが懸念されたのだ…」
「うむ、11号様の申される通りなのだ…そして、それは5号様6号様のような色里経営者はもちろんの事、武家の奥を取り仕切り取り締まる立場の7号様にもよろしくない話であろうとされたのだ…」
「そ、それは何でございましょう…」
「今でも一部の牢人どもが、江戸から離れた場所では夜鷹を囲うてそれをしよる場合がある。無論、発覚したが最後、神社や色里の商売にはこの上なく邪魔であるので、即刻取り締まってはおるがな…」
どれ、ちょっと考えてみろよと後輩に言う顔で告げる11号さん。
「で、牢人の中にはやくざと通じ、用心棒となったり、あるいは珍平三下となって奉行所の手を煩わせておる鼻つまみ者もおるであろ…そんな、士官の口がない竹光浪人のごときはまだしも、例え内職であろうとも致さず正業につかぬ輩や、土方公募所だの人足公募所に足を運ぼうともせぬ者が次に考えそうなことよ…」
「12号の話に補足するとだな…偽女種となって美しくなっただけで、心根はおのこである穢多の中にも、これをやりそうな者が出ると懸念されたのよ…あと十数えるうちに察しがつけば、この中の誰かと御目子を存分に致せるように、余から頼み込んでやろうぞ、ほれ考えてみよ」
えええ、11号さんも賭け事、お好きなんでしょうか。
(むぅ…じょすりぬ様にも…)
(ふふ、ギャルソン・ナオシゲならば股を開く事、考えてやらなくもないが、とりあえず君の君主の出題を考えてみたまえ…これは君の成長程度を知ろうとする試験だが、解答できないからと言って処罰されるわけでもないだろう。どれ、気楽にやってみろ)
「まぁ、人に考えや行いを促す常道でございますよ。ふふ…ごー、ろく、しち、はち、く、とう…無理か。まぁ良い、罰や褒美のために云々言うたわけではないから教えてつかわす。お阿喜殿、あれはこの部屋にござらぬか」
「全く、うちの息子、親父に似てこういうところは鈍ぅございますわね、直滋、そんなことでは偽女種となってもおなごやおのこをあしらえませんわよ…」
と、隅のたんすやら何やらを漁る奥様。
で、側室のお一人、目当てのものらしきを指差されます。
「奥様、差し当たりまして殿を縛っておりますものが」
「では女中に、これの他にもあれは無きかを聞いてまいります。下手に殿が目覚め暴れては一大事、殿を拘束しておりますぶつ、このままに致しましょう」
(井伊家においては亭主を縛るのが日常なのでしょうか…)
(言うことを聞かぬ旦那は旦那に非ず、簀巻きにもしております…)
と、ご先祖様譲りなのでしょうか…見た目に似合わず、肉体言語を得意としそうな奥様はともかく、その旦那様を拘束している物件を見て、望み通りのものだと申される11号様。
「おお、これよこれよ…直滋、思いつかぬか…ふっふふふ、江戸城にあって、世間に疎い筈の余でも危険が懸念できたのだが、思いに至らぬのはある意味では直滋が素直で真面目な子の証でござろう…」
「はぁ、上様…これは、ひもにしか見えぬものでございますが…」
「その紐よ…あぁ、お主はヒモとは何かを知らぬのであるな。うむ…阿喜様。お子にお教え願えぬか」
「かしこまりました…直滋、これの考えに至らぬは確かに、上様が申す通りに悪事の知恵に考えが向かぬ正しき者の証でしょう。しかし…世間には悪党というものがおるのです」
(うちの先祖がまさにその部類だったのは内緒で…)
(承知、野暮は申しませぬから続きをば…)
「で、直滋…やさ男や悪党の中には、おなごを働かせておのれは酒にばくちにと、遊び呆けるくずもおります。そうした人にあって人でなし、人の恩孝を忘れた忘八の類を、まともな堅気の者はヒモと呼ぶのです。ヒモですよ。いいですか、そうした忘八をなぜ、ヒモと呼ぶのか」
(なんか、江戸を舞台にした話で、正にヒモ扱いされるのを嫌がってる人がいた記憶が…)
(っていうか何度もヒモひも紐とヒモ連呼してますよ…)
(あんたもしてるわよ、ヒモヒモヒモと…)
んで、届けられたヒモをご自身…偽女種陰間衣装のままのウェスト部に通して輪っか状に縛る奥様。
「で、直滋。このひもの端をお持ちなさいな」
「は、はぁ…母上、この紐は一体…」
「で、わたくしめが仮に、この姿でそなたに引っ張られて通りで男に買われておってはどうなりますか」
「ぬ…それは母上、僕は、母上の夜鷹のあがりで飯を食うことに…はっ!」
「気付いてくれましたか…そうです、おなご、分けても春をひさぐおなごを働かせて上がりを取るやくざをヒモと申すのです…」
「まぁ、実のところはこうしたやくざ、江戸のみならず比丘尼国ではおなご商売に手を出せばおかみ様の生業の邪魔になるから、忘八として我らの下に着くか、さもなくば博打や的屋など、春売り以外の稼業でしのぎを見出せと申しておりますがな…」
「うむ、おなごの匂いのするところ、大きなしのぎの匂いなどせぬのだ…」
「ええ、上様の申される通り、やくざ者好みの講談などはあくまでも作り話、少なくともでっかいしのぎを求むるならば、女のおそそで飯を食う類の行為に目を向けるなぞは、もっての他なのです…」
「吉原日本堤の屋台なぞ、まさにその的屋がやっておりまするよ」
「左様さよう、やくざと言われるからにはせめて、うで卵を茹でて地道に稼ぐだけでも、売り方によっては牛馬が買えようものを…」
(天の声は例の雌阿寒岳のヤクザの卵売り話、よほど好きなようね…)
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/55/
(なまこやホヤの密漁よりは犯罪性、少ない気はしますね…少なくとも盗んだ卵をゆでてはいないでしょう…)
ええ、痴女皇国同様に比丘尼国も「働かざる者食うべからず」が徹底しています。
成人、特に男性については、何をどうしても働かされます。山の中に逃げ込んでも探されます。
山窩の皆様やアイヌ、そして琉球や台湾の先住民族の方々であっても、およそ比丘尼国の行政制度に組み込まれていて、姉やあたしが文化保存他の理由で納税を免除しない限り、絶対に居所を掴まれて聖環を装着され、納税対象にされてしまうのです…。
で、労働を免除されるための悪知恵を働かせようとしても、病気や先天性障害、そして負傷による身体欠損などの労働の障害となる何がしかは治療という名の身体修理行為で排除され、働くしかないように追い込まれるのです…。
(働かなくて良いのは学業を納める者、即ち子供か学者であろう…まぁ、学者は学問をするのが労働であるからな…)
(逆に、子供でも一日中働かせると怒られるのですよねぇ…)
(寺子屋の履修切手がないと百姓や漁師の免状も下ろして貰えないと、百姓たちがこぼしておるようですが)
(義務教育というものを浸透させるためなのです…11号さんも、これはお祖父さんのタヌキさんが是非やってやってと痴女皇国、もっというと姉に依頼したからこそ推進しているのを覚えておいて下さいね…)
(承知。というか、民衆に学問をさせる事決して怠ってはならずと、毎年毎年、年頭の東照宮でひつこいほどに念を押されております…ええ、東照宮の参拝手順がございまするが、あれの掲示手順の通りに参拝の礼を致さぬ者すなわち文字が読めぬ者であろうと見做されまして、その人数を下男に数えさせて余に告げて来るのですよ…尊敬はしておりますが、あればかりは…あればかりは…)
(姉経由で、そこまでダメ押しで児童の教育をゴリ押ししなくてもとはお伝えしときます…)
-------------------------
「で、ギャルソン…君は女装をすることで何を望むのか、ちょっと私たちに教えてくれないか。君がジゴロになることを企んではいないというのが理解出来たが、今度はそれで生活の足しになる金を稼げるか、現実的に考えて欲しいのだ…」
と、珍しく真面目に聞いてるカエル女ですけど。
「珍しくは余計ですよ…で、ギャルソン・ナオシゲ。ここにいるムッシュ・ジンナイやマダム・マリアンヌはオカマやカゲマとやらになって金を稼ぐ難しさを知っているのだ…そうだな、私は一応はフランス共和国という国の人間でもあるんだが、そこにはこのエドの町のように、広大な森…それも、君のような子供や、あるいは大人たちが遊んだり体を鍛えたり、はたまた集まって劇や音楽を楽しむことが出来る施設が存在するのだ」
「直滋殿、じょすりん殿はわしも参加した陰間狩り…それも、紅毛人の国の大きな都の中心に敢えて残され、庭園となったその森で陰間稼業に勤しみ世を乱していた陰間や、小僧目当ての衆道亭主どもを捕縛するお勤めを手伝った事があるのよ…で、実のところ、かのふれんちなる国は破廉恥かつ面白い春売りをしておってな、先の豪勢かつ巨大な歌舞伎演芸場、あの鍵付き座敷であるとか、はたまたおなごの腰巻きの下に何もつけずに、足を高く掲げて女陰を一瞬だけ見せるような奇矯な卑猥芸を大尽に観覧させる、色事芸の達者を育てておった国なのじゃ」
「ふむふむ、何とはのう、わかったようなわからぬような」
(じんないさんもだじゃれきんにやられているのでしょうか)
(っていうか偽女種って、必然的に駄洒落菌の歩く感染培地になってしまうんですよ…)
「ギャルソン、パリというその都、金や人や物が集まりやすい場所にあった関係で、おかねやひまをもてあました貴族や富豪が寄り集まって、ひまつぶしにけったいなスケベ男向けの遊びを考えさせておったのですよ」と、ブリュントレーネさんが入れ知恵してくれます。
「で、この、エドという町も行く行くはそんな感じのすけべい文化がさかんになる可能性がございますようですが、問題は…さばくの国や暑い上におそろしい生き物がたくさん住んでいて人が暮らすにはあまりよろしくない密林の国などから、お金もちがいっぱい住んでいるフランスを目指して旅をしてくる貧しい人たちが沢山おったとお考えなさいな…」
「まりー様ですか、お国には関所はないのでしょうか。我が比丘尼国では、人相風態怪しく通行手形を持たぬものの通行をとがめる関所がございまして、はぐれ者や流れ者が道の真ん中を堂々歩けぬようになっておりまする」
「ああ、なんとなーくわかりますの、ええとねギャルソン、わたくしたちの国では、旅人の通行を改めるのは、そうですわね、えどならえどの街に入る手前に石垣やら壁やらを作っておいて、その中に街があるんですの。で、壁のなかに入るためには門番におねがいするのでしてよ」
「はっはっはっ、直滋、あちらは広大な陸地が広がるゆえ、海に面しておらぬお国もあるのだ…従って、我らのように、くにの境でいちいち関を作り改めておっては往来が面倒となって困るのである。なにせ、交易の際にそんな面倒があった場合、商人はその面倒なまちを避けて他所に行きよるのよ。従って、やさぐれものや食い詰め者、あるいは住まいを持たぬ流れ者を振り分くるためには、まちの入り口の門で止める方が互いに面倒がないという寸法なのだ」
「はぁ…」
「何せ、鬼汗国の連中のような馬に乗った騎馬武者が昔、遥か西の国まで陸地を進んで攻めよったことがあってな、いちいち関を街道筋にいくつも作るよりも、旅人や交易品を改めるも軍隊や匪賊から身を守るにも利便が良いとなったのじゃ」
「日の本でも堺や大坂、それに正に鬼汗国に攻められた博多がそうした城郭の町のつくりを一部で取り入れておるのだが、まぁ、まちがまるごと城な訳であるから、入城税などという、街に入る税を取っておられるのよ」
「または、わたくしが治めるストラスブール。ここは国さかいの大きな川に、橋と河底の穴がそれぞれ通っておりますが、そこを通る際に通行税を頂いておりますわね…で、ここからが問題。ギャルソン・ナオシゲが疑問に思ったような素性の怪しい流民がどうするか。町に入って仕事の口を探したい。あるいはひと稼ぎしたいとしましょう。しかし、剣をぶら下げた番兵が番をしているのですわ」
と、城塞都市の事例の画像を見せつつ説明してるマリーちゃん。
(まぁ実際には支部同士ですから実質無税または減税となるような策を取ってるのは、強姦作戦の時に話が出ておりますけど、ここはこのギャルソンにわかりやすいように…)
「忍びの術でも使わねば、この砦の石垣は超えられそうにはございませんね…」
「うふ。警備の門番も人でしょう。つまり、通行手形はそちらの国にもおありなのは存じてますけど、身分証や手形のたぐいのにせものを用意したり、あるいは、わいろを掴ませて通してもらったり、町の住民に身分の証明をしてもらうとか、ては幾らでもあるのですわ」
「ちなみに今のパリになぜ、カゲマが増えたかというと、海の向こうから船で密航してくる上に、哀れな難民を装って、慈悲を乞い入国を手引きする者の助けを得ているのだよ…表立っては、何百人何千人と来る上に、その自分たちは貧しい民だと言ってる怪しい連中は、君たちが言うカワラバン屋と結託していて、軍隊が追い返したり射殺すると政府は残酷だ凶暴だと言って騒ぎ立てる予防手段を講じているのだ」
「即ち、我が幕府ほどには簡単に追い返せぬ面倒がおありと…で、そのよその国の貧民ども、女よりは値段が落ちるが手っ取り早い稼ぎ方として陰間をやっているとお見受けしましたが」
「明察です、ジェネラール。更には、本物の女のヨタカを襲って強盗や強姦をして、商売ガタキを排除していたのですよ。何せ女の服装や化粧をしているだけで、中身は男ですからね…ムッシュ・ジンナイ…捕獲した連中の姿、ジェネラルやギャルソンに見せてよろしいか」
「致し方ありませんな…夢見そうで嫌ではあるが、上様や老中様にも見聞となりましょう」
で、再生される悪夢の映像。
ええ、クリスおじさまを追いかけ回すランニングシャツに、女性用のレーシングパンツを履いたほものおっさんはまだ、マシな部類だったでしょう。
下着姿でケッターマシンを乗り回すのとか、路肩に立つ黒人のトラニーとか、どう見てもおっさんの女装ですとか。
「あの…じょすりぬさま…お国に、まともな遊女はおらぬのでしょうか…」
「ギャルソン、私がそうだよ。そうだな…一応はこれでも、一晩10万UGHDだったんだぞ。ま、政治家や富豪に工作を仕掛けるための偽装職業での話だが」
「直滋殿、じょすりん様は、本当はくのいちだが遊女身分を偽って、お偉方の醜聞を集めるようなこともしていたのだ…即ち、遊女に成りすませるのじゃよ。何もくのいちになれとは言わぬが、こうした話で見当がつく程度のあたまは遊女には必要なのじゃ」
「ふふふ、じょすりん様と床を共にするのを望むなら、高尾太夫同様に百両かかるのじゃ…」
「つまりだなギャルソン・ナオシゲ、一般庶民に手頃な金額でオメコをさせてくれる女と遊びたいなら、いっそ普通の男女の付き合いを考えろと言うのが共和国の常識なんだ。これだけでも、バイシュン…女を買うのが昔は盛んだったが、今はあまり一般的じゃないのがわかるだろう?」
(ヴァンセンヌ娯楽館の話、今は内緒で…)
(ええ、あれを引き合いに出すと話がこじれますわね…)
「では、春を買いたいおのこがおった場合はどうなさるのでしょ…」
(変なところに着目なさいますわね…)
「いわゆるジユウレンアイという名目で、細々と個人事業をしている女を公共温泉で見つけるか、さもなくば私を買ってた連中のように、高級売春婦の仲介業者を経由するかだな。あとな…ギャルソン、君の故郷で言うと、ヒコネの町にヨタカはいなくても、キョウトや…更には、トウキョウに行けば女が買えるユウカクがあるじゃないか。そして、今ならキシャを使えば1時間くらいだろ? ふふふ、フランスの隣で変態がたくさん住んでる国には、国が経営するユウカクがいくらでもあるんだよ。そうだな…一番近い場所なら、パリから2時間前後…飛行機ならもっと早いか…要は、売春婦がいる国まで遊びに行くのだ」
(その変態のすくつの国って、一体どこのどいつが変態風俗をやってるか即座に想像できるわね…)
(フランスの隣扱いで海の底の穴で繋がってる国にも変態紳士がなんぼでもいてますけど、あそこだと売春は取り締まってますからね…一応)
(フローレシェーネです。未来のうちの国や神聖ローマ帝国とですね、現状の当国を同一視される風聞は避けて頂けませんか。バーデン=バーデンに変態は無用なのです…)
(そうよジョスリン…あなた、私の出身国と担当地域知ってるでしょ!)
(ふんっ、マドモアゼル・メーテヒルデもマドモアゼル・フローレシェーネもお心が狭い…公営売春窟を主要都市にあらかた開業しておる割には他国の女を雇い入れているような国からあれこれ言われたくはありませんねっ)
(をかま作戦で捕獲したをかまの人種別区分を考えてから申してくださいっ)
(フローレシェーネさん。もっと簡単に黙らせる方法があります。マリーちゃんは私の後輩ですし、私の上司がどこのアルトさんなのかを骨身に染みて知っているはずですよ)
(ええ…クレーニャさんにはなかなか逆らえない立場なんですのよねぇ…)
(ぐぬぬぬぬぬ、縁故主義反対っ)
「ともかく兄様…即ち、じょすりぬさまのお国では、どうやら陰間は女を買えぬ貧乏人が手を出すもよう…」
「なんと…おれのような年端も行かぬ小僧を買うならば、おなごより高い金を取るのが吉原の陰間茶屋であると聞いたのだが…」
「女よりも高い金を取るオカマもいるぞ。しかし、それは本当の女以上に金をかけて体をいじり変えていたり、化粧や衣服に金がかかっているんだ。そして、そういう高級なオカマはな、そこのジェネラールやカピタンにムッシュのような外見でな、衣服も女のオイラン…タユウと同じようなものを着込んでいるのだよ。いわば、女と同じで、オトノサマが買うべき高級なオカマが存在するんだ」
と、くすくす笑いながら欧州の売春事情を説明するジョスリンですがね。
「ほら、こんなの」と、アダルトビデオ映像に出演してるような上玉のトラニーの映像を見せてますよ、このカエル女はぁっ。
「えええええ!なんですかこのでかまら…入りませんよ、こんなの!」
「兄様…しかも、まらをおのこや、果ては紅毛のおなごにまでつっこんでおりまする…」
「なんですの、この破廉恥な装束…こんなんで街中を歩く…あ、べらこ様とか、ちじょのおくにのおなごさまはそうですわね…」
「ええと、べらこ様の逸物も大概ですけど、こやつら、医者にかかって医術で珍宝を膨らましておったのですよな…」
「おのこと陰間に挟まれて、けつめどにも御目子にもマラを…しかも、なんですの向こうのおのこ…まさに野獣のような体つき…」
「向こうのやつらは慶次郎殿並の体格のやつが普通に街を歩いたり、兵士や同心でおるのじゃ…無論、普通の町人や、果ては流れ者にもな…」
「わたくしは横濱やいけにえ村で南蛮人を知っておりましたが…じょすりんさま、ここにおる者の大半は紅毛人の裸やまらや乳の寸法、なまで見ておらぬのはもちろん、服を着た南蛮者すらまともに見聞しておらぬ者もおるのです…」
「マダム・オマツ。よい教育の機会です。小官の実父はとんでもない屑野郎でしたが、そんな屑でも女が引っかかる理由が」
待ったぁ、と止める間もなく、黒人のトラニーとか黒人男優の映像を見せているカエル女。
「えーと、弥助みたいなのばかりの国があるとは聞いたが」
「上様、この真っ黒い焚き木か松明に使うような棒がきゃつめらのマラのようでございます」
「あのー、上様に信綱様、わしはぱりの都で、これの実物を目の前で見せられたのですが」
「甚右衛門…で、どうしたのだ…お前、その時は衆道、やってなかったのでは」
「もちろん、当時はのんけとやら。こんな凶悪無残ないちもつは切り落として晒すべきかと思いましたるに、わしがそれを躊躇なくやるだろうと予想なさった妹姫様他に愛刀を取り上げられまして…きんたまを蹴ってひるんだ隙に逃げましたわぇ…」
「ギャルソン…言っておくが、ビクニ国が開国すれば、他の国から来るチンポはこういうチンポなのだぞ…ほれ…」
こらぁっ。
ええ、カエル女、見本とばかりに自分のペーネを出しやがりましたよ…。
「ちなみにフランス人のちんぽは世界最強の平均さいずらしいですわね。ほら」
マリーちゃぁあああああん…ええ、ブリュントレーネさんと二人して、ちんぽ見学会を開いてます…。
「この腐れ女皇帝の最終凶器も見せておくべきでは」
「ジョスリン、さすがにラスプーチンちんは皆様に見せるべきではありませんわ…殿方が自信喪失なさいます…ほら、ジョスリンはともかく、あたくしのCoqは見た目よりは柔らかいでしょ?ギャルソン…」
「まりーさま…こんだけでかいのはそもそも…」
「じょすりぬ様の珍宝に至ってはかちかちではないですか…」
(いやお待ちなさい直滋に直澄、せっかくですからちょっと味見できませぬか、よそのお国の方のいちもつ)
(あたくしはちじょの島で知っておりますから、孝子様や春日様にお譲りいたします)
(上様…よもや、このでかまら、尻にとか考えてはございますまいな…)
(というより、わしはまりー様の珍宝、突っ込まれましたが…ただ、御目子もさせて頂き)
(じんえもん。それをずると申さぬか。べらこ様やあると様は瘴気毒気のみなもとを抱えておられるからと、わしらに1号様や配下の巫女様とのまぐわいを禁じておいて、おのれはまりー様と。さすがに公平な裁きを求めたく思うのだが)
「というより…11号様…駄洒落宗に入信、なさいます?…冗談抜きに何の手立ても講じないままにまりー様ならまりー様とまぐわえば、一刻に十度は駄洒落を口走る、あの駄洒落宗門徒の殴りたくなる振る舞いと成り果てますかと…」
「ええと3号様、駄洒落衆とは長州腕砲国の困った宗派かと。更にはあの長賊毛利め、毎年正月に倒幕準備を整えては国主に準備万端を知らせ挙兵の可否を伺うとか、更には一族郎党に及ぶまで江戸に足向け就寝しとるとか、上杉殿の爪の垢でも煎じて飲みやれと…」
「ほほほ、11号様…紅毛者の中でも野の虎に等しき御仁たちでございますよ…上様と申せど、そうそう軽々しぅお相手を所望なさるもいかがかと…何でしたらわたくしが慰めて差し上げましょうや」
と、部下の早駆け、というんですかね。
主君より早くご馳走を食べる機会に恵まれた部下の方に対する八つ当たりをしそうな11号さんを宥める7号さんですが。
「い、いや、おまつ殿の手を煩わせるまでもございませぬ…」
「しかし、ギャルソン…あなた、要するに大人のセクスへの憧れもあるし、早く成人したいという思いもあるわね。なら、私から提案をして差し上げましょう。ジェネラール、ちとお伺いしますが、ビクニ国には聖堂騎士だの聖騎士だの、国家と密接に関連した騎士の集団ですとか、はたまた知識人を養成するための宗門主催の学校のようなものはございませんの? 」
と、問いかけるブリュントレーネさん。
「ふむ…王女様と申されましたな。かつては仏教の寺は独自に武装しておりました。で、僧兵という坊主でありながら兵士たる者共を擁しておのが寺の領地を防衛する名目で大兵力を有していた寺院もあったのでございますが…」
「11号様、石山本願寺の事で」
「うむ…かつては寺が兵を養成し国主にも匹敵する戦力を備えて国事に介入すること、これを認めずとした御沙汰が下った事がございます。他ならぬおかみ様のお言葉、これに従わぬ石山本願寺には織田信長公の軍勢による包囲に加えまして、丹波国元伊勢三社より派遣されたる鬼の衆の恫喝に屈した本願寺は開門と武装解除を余儀なくされました。以降、おかみ様の統治下にありますところの神社はまだしも、寺がいくさ以外の知識を持たぬ僧兵を有すること、これを禁じるとされたのです…」
と、連邦世界とはいささか違う内容ですけど、石山本願寺降伏の顛末をすらすら語る11号様。
「ふーむ、ならばサムライの修行のための軍学校や兵学校のようなものはないのですか…」とちょっと悩んだ顔ですね、ブリュントレーネさん。
「ああ、これは彼女、十字軍や丸太騎士団他の教会騎士団を想像していますわね…ブリュントレーネ、サムライの統治する時代のジャポンでは、サムライ階級以外の武装はもちろん、軍事教育や教練も禁止されておりましてよ」
「なるほど…マリー、これは私の案ですが、ギャルソン・ナオシゲはサムライ身分に復帰可能な状態で、聖母教会が扱う偽女種同様の処遇を与えられないかと思ったのです。なぜならば、偽女種となった事を若気の至りで後悔した場合、偽女種でないと受講不可能な学生身分を与えておけば、卒業又は退学後に少年もしくは青年に戻せるでしょう」
「ふむ。へーか、雅美さん、ブリュントレーネの案に近いもん、なんかございませんかしら…」
「ありますよ。この少年…直滋くんが未成年の間に、慈母宗の少年門徒として必要な資格…すなわち偽女種となって修行をさせるのですよ。幸い、このすぐ近所の日枝神社境内に7号さんが住職となっている慈母観音堂が存在します。そこは偽女種の陰間の売春拠点としても整備する予定なので、なおさら直滋くんを一時的に学生僧侶めいた立場として寄宿させるか、はたまたこのお屋敷から通学させることは可能でしょう」
出家前の名を名乗らせて頂きますが、ブリュンヒルダ・アウストラシアと申します。
Brüntliene (Brunhilda Austrasia)ブリュントレーネ Hundred thousand Suction(Limited million) 十万卒(限定百万) Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Duchy of Lorraine Branch.中欧支部
でまぁ、私の出自ですが、古のロレーヌを支配していたフランク王国が彼の地を呼んでおった名称たるアウストラシアを姓としております。
ただ…偽装する必要があったのですよ…。
今は、突進公たるシャルル・テレメールことシャルル・ヴァロイス・ブルゴーニュの娘であり、最後のブルゴーニュ公として…そして、大変な美女であった件でも知られた富貴公マリー・ド・ブルゴーニュが私の元来の姉だという事だけお伝えしておきましょう。
で、私は現在、痴女皇国の欧州地区の支部に勤務しておりますが、急遽、八百比丘尼国に出張する立場となりました。
では、なぜこんな事になったのか…まずは前回の続きを兼ねて、ベラ子陛下…痴女皇国皇帝マリアヴェッラ陛下からお話し頂きましょうか。
-------------------------
で、話を引き継ぎました毎度おなじみマリアヴェッラですが。
さて、お江戸は江戸城西側の永田馬場と呼ばれる、日枝神社と国主屋敷街が存在する一帯にあります、近江招猫彦根国主たる井伊家のお屋敷からお送りさせて頂きます。
現在の日本で申しますと、国会議事堂敷地から皇居のお濠までの地域一帯を指す場所、あたしたちはその辺にいるとお考え下さい。
そして、現在は井伊家の次男で、将来は井伊家を継ぐはずの家督相続予定者たる直滋くんが、突如出家して偽女種になるという爆弾発言をした直後から語らせて頂きましょう。
「あ、兄上…確かに兄上は早くから女に目覚めておったとは思いまするが、何もそのように性急なるお考えに至るなど…しかも、偽女種になるなどとは…」
ええ、必死でお兄さんの直滋くんを止めようとしている井伊直澄くん。
で、直澄くんは何を止めようとしているのでしょうか。
(共に育った兄がいきなり目の前から消え去ろうという話を始めた上に、その理由が偽女種になるというのは、僕としてもちょっとこれは諸々色々さまざまに困りますし、何よりも、果たして兄が晴れて偽女種になったとしても、家を出てごはんが食べていけるのでしょうか…というのが僕の疑問です…少なくとも父ならば勘当じゃあとか叫んで暴れるのはまちがないでしょう…)
「母上…我らは元服前の習わしという事で、時には女児の服を着せられたりしておりますでしょう…」
「ですが直滋…そなた、おなごの装いをするだけなのと、偽女種に変わるのは全く意味が違うのですよ…それに、いくら幕府も巷も偽女種を尊ぶ風向きではあると思いますが、なろうとしてなれるものでは…」
で、実のお母さんではないそうですけど、とりあえずこの子達の戸籍上の母親たる、井伊家当主正室の阿喜姫様。
踊阿呆酢橘国の初代国主様で、家光さんに昔話を聞かせる役目ももらっていた蜂須賀家政さんの実の娘さんだそうです。
(と言うより蜂須賀小六の孫娘って言った方が理解が早いと思うわよ…)
それ…かえってイメージ悪くなるんじゃないですか…。
(うん…明治天皇の時代だけどさ、大名から華族にクラスチェンジした当代の蜂須賀家の当主の侯爵様が明治天皇にお会いした際、天皇陛下が立たれてる間に応接セットの煙草を1本拝借したのよね…で、気付かれた天皇陛下が「蜂須賀よ、先祖は争えぬのう…」なんて冗談を言われたくらい、蜂須賀小六って言ったら盗賊団の親玉ってイメージが固定されてる部類の人だったらしいのよ、その時も…)
まぁ、ご本人は口さえ開かなければ、どっかのカエル女のように良い方向に誤解してくれる部類ですね…痛いわよ!
(小官以外にも口さえ開かねば美しい誤解で終わる人物は痴女皇国に少なくないという実態を認識して頂きたいだけなのです。例えばそこの皇帝陛下とか言う上司だの、ロレーヌ公マリアンヌとかいう上司だの…Voilà!)
「阿喜殿…なれるようになったのじゃ…穢多を身分制ではなく職制に変えるのでな…それに、ここだけの話として、偽女種への変わり身、実のところ巫女様にかかる必要こそあるが、変えること自体は容易なのであるぞ…ま、偽女種にもその寿命の限り、只人より短くなってしまうとか、はたまた不肖この匿名の偽女種11号や5号12号のようにおのこに戻れたり、あるいは6号のように妖艶な美魔女とやらにも化けられるなど、様々な区切りや取り決めがあるようでな…」
と、赤い牛柄刺繍の入った頭巾…穢多身分の陰間または夜鷹を示すそうですけど…を直される、どこの誰かはもはやバレバレの偽女種11号様。
(べらこ様…人は、身分門地立場その他諸々を隠さねばならぬ時もあろうと思いまする…余だって言っちゃなんですがね、公方言葉より楽な話し方したいのですけどね、それやると後で上様は誰とそれで口の利き方をお変えになるとか言いよる阿呆が出よるのですよ…ああ、もう直滋よりよほど余の方が気楽な偽女種稼業でもやりとうございます…って偽女種になってはおります、な…)
で、公方様ではなく、あくまでも偽女種11号さんの嘆きはともかくとしまして。
「えええええ…上様いやさ11号様、そのような沙汰など…いわば、おのこを女性に変えるのに近い話でございましょう…天狗の技でも何でも良いのですが、それが出来まするとしても、我が子にそれを認めるのはちと…」
「うむ。阿喜殿の懸念もわかる。もしも余がこの子らの父や兄であったとしても、真っ当な理由なくば偽女種に変わるなどとは到底認めまい…偽女種になる術があるのと、それを実際に施術いたす方々がやってくれるかは全く別の話であろ?」
ええと、その…なんでまた、井伊直滋くん、偽女種になろうとしたのでしょう。
(へーか。この美少年、マダム・マサミと二人で診せて頂いてよろしいですか?)
ふむ。井伊家の異母兄弟の爆弾発言に気付いたマリーちゃん、あたしに具申して来ましたが。
「マダム・マリアンヌ…そもそもリッチャルデットのようなこのギャルソンにSous-vêtements érotiquesを与えたのはまずいのでは…」
(リッチャルデットとは、いにしえのフランク王国に伝わるカロリング物語の中のシャルルマーニュ十二勇士が一人でございます。兄リナルドと二人してパラディンに数えられましたのですが、彼は女性と見紛うほどの美形であったと…)
(あああああ…ブリュントレーネのお家の家系の昔の伝説でしょ…でさぁ、某英霊ゲームの明日何とかきゅんと違って、カロリング物語じゃその子の方が男の娘っぽいのよ…でね、当時のイスパニアのお姫様にれずいや百合を迫られて、いやさほれられて困った妹さんのブラダマンテって女騎士に化けて、ウチの妹は百合やおまへんで、ちんぽの方がよろしおすえとやったこともあんのよね…)
(さっすが雅美さん…あれ、伝説は伝説なんですけど、あの十二勇士はほんっとーに存在した可能性があるんですよね…ちなみにあの伝説で出てくるエステというイタリアの名家の系譜に連なってるのが、今のイタリア連合公国のイザベラ・デステ大公殿下なのは覚えておいてもいーかも知れまっせんわよっ)
まぁ、歴女の裏話もさりながら、血縁的にあたしの叔母に該当するあの口うるさい絶倫豪傑おばちゃんはともかく。
(マリアヴェッラ…はよ、鉄の道をうちの半島にも敷いて下さいな…貴女の悪口、それで聞かなかった事にしましょう…)
(アメリゴ・ヴェスプッチ型の設計図のパテンテで我慢して下さいよ…痴女皇国の国土局長の室見はいざ知らず、我が娘のエマニエルが土建業続きで酒浸りで重度のタバッキ中毒になって憂さを晴らしてる醜態、あたしが嘆き憂えているの、ご存知でしょ…)
(マリアヴェッラ…聖母たる貴女が産んだ娘が普通の人間なら、私は同意しましたよ…)
ううううう。
まぁともかく、マリーちゃんとブリュントレーネさんの会話に戻りましょう。
「ええブリュントレーネ、確かにそーですわね…へーか、よもやこの淫蟲下着、この界隈の貴族の息子たちに与えておられますの?」
ロレーヌ組の二人が顔を真っ青にしています。どうやら、アルザス=ロレーヌで、淫蟲下着を男性が履いたことによるトラブルがあったのかも知れませんね…。
(ただでもこの時代の欧州の男ども、貴族ならばコッドピースこそ着けてますけど、ちんぽの膨らみが丸わかりのタイツ姿ではないですか…欧州でも男色、全く事例がないわけではないのですよ…)
(おまけに、淫蟲下着の効果だけでもございませんけど、男たちも見目麗しくなる罪人状態化を推進しておりますでしょ…肥満や痩せすぎの男でなくば、あの下着、男も卑猥に見せてしまうのは茸島どころか聖院学院本校の男子生徒や、痴女宮の罪人でとうに立証されておりましょうに…)
(ああ…ブリュントレーネとマリーちゃんの言いたい事わかる…男もナルシストになる危険があるのよ…いえ、男だから余計になの…で、ベラちゃん…淫蟲下着の配給元、ベラちゃんは把握してる?)
(ええ…配給は比丘尼国側で行っています。井伊家の所在するこの一帯であれば…まぐわいふんどしの支給を担当する窓口、どこになりますかね…)
(わたしです…)
えええっ、おまつさんですか?
(国主奥方会にて子女の数だけ、各家に配布を。支給指示については上様の名前で行っておりますが、おかみ様も承認済みですわ…)
(べらこへいか…なおしげくんにはいらんすりこみがはいってますよ…つまり、まだ、ちんぽがおとなになる前のじょうたいでいんちゅう下着をはかせたわけでしょう…)
ええ、今も穿いてますね。
(そして、こんなほそみでかわいいおとこのこたちです…しかも、まいばんのようにおかま少年とおくさまやおねえさんたちのすけべいをのぞきみたり、じぶんたちもおめこしてきたわけではないですか…じょそうどころか、おかまになってみたいという願望にめざめたのです…)
どぇええええ。
女官種能力で直滋くんの脳内を調査していたアルトさん、直滋くんがとんでもない性癖を育てていた実態を発掘したようです…。
(いうなれば、くりすさまとにたようなものですよ…)と、あたしだけに聞こえるようにクァンタムリンクを使うアルトさん。
(くりすさまと違い実の母親ではないにせよ、お母様にえろ下着をきせられ、あまつさえ変態行為や、さらにはおめこ相手になるように仕向けられたのですよ? …ただ、これまたくりすさまと違って、直滋くんは無理やり変なことをさせられたという風に思っていませんのが救いですけど…)
(しかし、アルトさん…これ、めっちゃまずくないですか…クリスおじさまはまだしも、この子たちは将来のお殿様候補…)
(とりあえず、くりすさまのことはふせて、通常心話でみなさまと協議しましょう…)
ええ、アルトさんの喋り方がまともな時は、ある意味ではロクな事が起きていない証拠です。
それに、あたし同様にクリスおじさまの心理状態や過去の経験や性癖傾向を知り尽くしてはいるアルトさんが警告を出す理由。
武家諸法度に準拠した男臭い節制生活をしろというのが建前となっている江戸時代の日本の武士社会で、女装趣味の萌芽傾向なんぞが出たのは極めてまずい傾向だというの、アルトさんもわかっているからです。
(ほら…妹が九鬼のおうちにのこしているこどもたち…あのこたちも、たくましい海の男になるように鍛えられているでしょう…ぎゃくにいえば、としごろのおとこのこって、ちゅういしていないとおかまになる危険があるとおもうのです…ナディア、おりますか…)
(サレルフィール姉様…聞こえました…井伊家であっても、九鬼家と事情に大差はないでしょう…しかも、井伊家の今の正室の奥様、野盗から身を起こした大立者の蜂須賀家の出身ではございませんか…そこの家のお子が出家して偽女種になるなどとは、よほどの理由づけがないと、表立ってはともかく、裏では陰口や噂の種たる醜聞となってしまいまするかと…)
ええ、日本の武士事情もよく知っておられるアルトさんの実の妹で、海賊一家…そして幕府でも瀬戸内海の村上家と並んで水軍を率いている立場の九鬼家に奥様としての籍も残しておられるナディアさん…このお話の時点では痴女皇国海事本部長職という、かなりの地位についている方です…。
これはまずいと思われたのでしょう。
(凛ですけど…なぁ、直滋くんいうたかな…おんしゃ、なんでまた偽女種になろうとしたんよ…九鬼家はもちろんやけどな…村上のおうちでも、きみみたいなんは絶対確実に海に叩き込まれて鍛えられるがね…さむらいの家に生まれたら、逃げ出して乞食か坊主にでもならん限りは絶対にさむらいになれなれ言うてうるさいん、おんしゃ自身がようわかっとるやろし、それに、アルトはんを通じて見してもろたがね、おんしゃは別にさむらい修行ができんくらい弱っちい子でもなかろうがね…)
と、何でまたそんな変態の道に行くのよという声がまた、一人。
(で、アルトはん…そうは言いましたがな、瀬戸組や村上の縄張りならいざ知らず、よそさまのおうちの子が偽女種になりたい言うのん、わしらは今ゆうたみたいに、そんなんやめときやとは言えますけど、体ずくで止めるのまでは難しいき…)
ええ、人魚種が率いる水棲ヤクザの瀬戸組の四代目で、痴女皇国海軍というべき紺碧騎士団を率いている瀬戸の凛ちゃんまでもが心話を送って来ました。
彼女のおうちは人魚…そして水棲妖怪の家系ですけど「鬼や天女や妖怪の類は人間と婚姻して混血児を跡継ぎにすべし」という比丘尼国の人外向けの掟を守って、代々の当主は瀬戸内海の人間側の海賊一家たる村上家と血縁関係にありますので、彼女も人間の武士社会の事情、よく知ってるんですよ。
やはりというべきか、武士、それも有力国主のお子様が「女装趣味が嵩じて出家して偽女種になる」とか言い出すのは非常に危険な行為となるようですね…。
(待たれよ皆…直滋の心根、何とはなく分かり申す。おなごと見まごうおのれ自身の姿を見て、いっそおなごになりたくなったのであろう…ほれ…元服前の男児を女装させ、芋侍どもに女の代用として与える薩摩の風習…豊久が心底嫌がっておったが、あれを自らやりたくなったのであろうよ…余も偽女種の姿を選べるようになったから分かるが、何とはなしに、さながら歌舞伎の売れっ子女形のごとく、おなごに優越感を抱いてしまうのよ…)
と、これは徳川いえみ…偽女種11号さんからです。
(ベラちゃんにわかりやすく言うと、イケメンレイヤーで男の娘状態になって女の子キャラを演じたがる人、そこそこいるでしょ…あれよあれ、あの心境や境地よ…あの美男公を演じた結果、性別を女として登録しちゃった人とか、みっどさまーで老人の姿そのものを見せてビビられた昔の美少年俳優のようなものなのよぉおおおお)
はいはいはいはいっ。ほんまに推しのことになるとうるさいですね、このひとも。
で、美男公推しの雅美さんが薩摩の恐るべきほも事情を暴露なさいます。
(ベラちゃんが相変わらず、密かに様子を見に行ったり仕送りを欠かさない割にはボロクソな扱いにしてる美男公はともかくとして)
(ベテハリ君を行かせたのに…寒い場所があかんと言われては…)
(それはまぁしゃあないわよとしても、薩摩特有の二才制度についてだけどさ、もっとエグい習慣があるの知ってる?…あそこ、その少年女装風習だけじゃなくてガチホモ風習もあってね…ほもを嫌がるノンケの少年がいたら、ほも同士で徒党を組んでその子の家に行って、集団で犯すことすらやってたの…後に大日本帝国の政治家になった薩摩出身の人、いるでしょ)
(ええと、私が死んでも自由は死せずとか言った人ですか)
(あの人が何度も少年暴行容疑で捕まってたのは知ってるかしら…?江戸時代は少年が集団強姦されても家族も見て見ぬふりだったらしいんだけど、さすがに明治以降は警察沙汰になっちゃうからさ…)
でぇえええええ…あの人にそんな性犯罪履歴があったんですか…。
(3号様…あそこは確かに男色、絶対にやっとるとは思いましたが…なにせ外城制度を敷いておって、武士階級が人口の三割に達しておりますからな…結束で分厚い機密の壁を敷いてはおりますが、ここな聖環と納税制度を導入したからには、もはや全てを包み隠すことはできませぬ故に…)
(普通の諸国は、平時では武士を人口の一割程度に留めておくのですよ…侍身分を増やせばそれだけ俸禄を与えねばならず、財政を圧迫しますからな…)
(薩摩がすぐ切腹だ死罪だってことで武士の口減らしできるのも、あそこ…郷士が多いからすぐ補充できるのよね…)
(まぁまぁ、あの特殊で奇怪な芋侍国の話をしておっても詮無きこと。それよりは直滋の話を致しましょう。12号よ、直滋の独白、いかがに思うか)
(は…わしは偽女種となるのは正直あまり気が進まぬ部類でありまするが、直滋も上様の元服前同様、決して逞しくはない身体つきでしょう…おなごと言うても通る身と顔立ちに恵まれたのが却って災いとなったやも。まして、美しく着飾ったり、男ですらまらをいきり立たせる上玉のおなごまがいの偽女種を毎日見ておれば、まだ若いおのこが偽女種に憧れてしまうのかも知れませぬな…じんえも…5号、如何か)
(確かに信綱さ…12号様の申される通り。わしと小太郎殿はお役目にて、遊女や陰間のめんたるけあとやらをやる立場でございますが、およそ陰間となる者、おのこでありながらおなごの姿や衣装、更には振る舞いに憧れておる節がござる事多いのです…いえ、おなごになりたいと願うからこそ、単なる衆道ではなく陰間の道に走るのでしょうな…)
と、女装心理を分析される吉原名主の庄司甚右衛門さん。
(5号殿…河原…河原芸人の系譜が正にそうでござろう…歌舞伎や演芸では女形がつきもの、身も心もおなごを心がけて演じるべき役柄故に、舞台以外でもおなごの振る舞いを致す者も少なからずでありましょう…)
と、遊女と偽女種さんの監督役たる風魔小太郎さんが指摘するのは、いわゆる女性ばかりで編成された歌劇の舞台の真逆のお話。
(つーか、日本じゃそっちが伝統だったのよ…女性が男装して演技するのが一般的になるのは、例のヅカな歌劇が有名になったからなのっ)
むむむ…確かにそれ、あるかも知れませんね…バレエでも、男の人は勃起させてはならない掟もありますし…。
(っていうか有名なバレエ団あるでしょ…男ばかりの…)
あー、あれですかい…。
(ベラちゃん…それに、クリスくんにさ…人前でエロ下着や勃起ちんぽや、あげく露出せんずりを女官に見せつける悪癖刷り込んだでしょ…あたしはジーナちゃんに黙っとくし、アグネスさんやベリンダちゃんもジョアンナさんも口止めに回ってるからいいとしても、確実にあの子、ベラちゃんの悪影響、出てるからね…)
えええ…。
(そりゃあたしも例の裏商売でさ、女装子にコスプレさせてシコらせて汁飛ばせるのとか、素人流出もの風に屋外でそれやらせる動画撮らせてるから、その手の変態の心理はよく理解してるけどさぁ…)
なんて事なのでしょう…あたしはそこまで参考にしたつもりはありませんでしたけど、おじさまとあたし他、茸島関係者でやってる行為の一部、変態としてそれなりにヤバい事だったみたいなのです…。
(特に、女を憎んでいる女装はさ…なまじの女性より過激なボディコンスーツとかショーパン姿とか、あるいは逆に悪趣味なまでにゴスってる服装を好むのよ…そして突き詰めた変態女装ってさ、過激な自己愛を極めた単体の変態行為とかカマレズに行っちゃうのよ…)
でぇええええ…が、しかし考えてみれば連邦世界で捕獲している欧州や南米のをかまさんたち。
趣味の女装の方を含めて、悪趣味な格好が多いですよね…そして、行為も…雅美さんが言う通りで、ノンケの男性や理解力の薄い女性が見れば確実に眉を顰めて忌み嫌う部類。
おじさまの行為も、あたしだからご馳走なだけで、心狭き潔癖症な女性が見れば確実に気味悪がったり不潔だの変態だのと公然と口汚く罵ったり、口にはしなくても嫌悪感を催す可能性、大でしょうね…。
(クリスくんのはまだ見れるけど、汚っさん系熟女装連中の姿を見るだけでも充分に変態博覧会になるでしょ…)
(ううう、旧来の陰間も、実はその傾向が…)
(そうでございますよねぇ…あまりのおぞましさ故に、いっときは陰間も取り締まったのでございます…)
(まさか、陰間に忍びの変装術を教え仕込む訳にもいかず…)
ええ、江戸のをかまさんも、オネエな外観の方が結構いたようですね…。
(しかし、亭主を昏倒させて正解でございます…こんなもん、頭の硬いこの男に聞かせたら、何を言い出すやら)
(わたくし…父上とはもう既に何度も喧嘩をしておりますよ、母上…)
(ああ…わたくしの副業の件などなどですね…)
ええっ。
反抗期とやらでしょうか…。
(いえいえ。僕も、お阿喜母様が申される件は正しきに思うのです。そして、父上は女遊びを嫌う事で分かる通り、質素倹約の人です。母や側女中たちにも奢侈を許さぬどころか、過剰に質素を強いる傾向がありまして…もう少し着飾らせてあげてもいいんじゃないかと思う時もしばしばございます)
(確かに、奥方会でもお阿喜様や井伊の方、地味ですわね…奥の無駄遣いは戒められるべきと諸法度にもございますが、過度に行き過ぎますとお家のよくない噂にもなりましょうや…)
(おま…7号様、我ら兄弟は、母や女中たちにもう少し女らしき装いをして頂きました方が、他家の男児には母や井伊家中の女は美人であると自慢できるのです…先ほどの話に出たまうんととやら、男の子供の内でもございまする…僕の母はかくも美人だとか、いやうちの側室はそそるぞとか…)
(えええ…おのこたちはおのこたちで家の女の自慢大会を…)
(そりゃ、将軍家の中におってはなかなか伝わらぬ話ですわよ、8号様…流石に上様の側女について、美女ばかり集めてるとか、はたまた醜女とか地味とか、とにかく何かしらの言いがかりをつけ陰口を叩こうとするのがおなごのおなごたるやの上様がお嫌いな欠点でございましょう)
(であるな…春日にはかような奥を見つけ次第、おまつ殿共々しばいてくれと頼んでおったが…)
(ですが、実際にはそうした陰口、万一にも誰かの耳に入ろうものならば、即座に上様ないしわたくしどもに注進が及ぶでしょう…しかしながら、そうした陰口や噂がひとり歩き致しかねぬ仲の国主の子同士、そうした些事でもお家の位を自慢して相手を下に見ようとする年頃やも知れません…)
(ええ、はっきり申し上げまして、外様は外様でうちの家はこうだとか、いや当家はこうだぞとか自慢大会、何かあるとおっ始めておりまする。さすがに外様の子が譜代たる我らにまうんとは取って来ませんが、今度は譜代の子同士で致すのですよ…お国自慢に家自慢…)
(そして、母様が江戸城の集まりで偽女種に逆お手つきした、先のどうがですよ…あれ、あんなもの見たら最後、ここに上様がご臨席でなかったら、母様を斬ろうとしてたと思うのです…)
(そうなったら逆に応戦してましたわね…)
ああ、なんという悲しき自慢の繰り広げ。
そうなると、直滋くんが偽女種になろうとした理由もなんとなくわかります。
むしろ、直滋くんはお家の恥どころか、ある意味ではお家の誇りとなろうとしたのでしょう…。
(井伊の家から出た偽女種が、諸家の女房様方から引っ張りだこであれば、母や弟にも面目が立つというもの。僕も陰間に偽装して他家の奥様や娘様と遊んで、相応の感触を得たなればこそ、偽女種となっておなごを抱きたいのです)
な、なんちゅう直球。
そして、ある種の懸念が的中した人もいるようです。
「直滋…実はな、穢多を偽女種にする案が出た際に、あることが懸念されたのだ…」
「うむ、11号様の申される通りなのだ…そして、それは5号様6号様のような色里経営者はもちろんの事、武家の奥を取り仕切り取り締まる立場の7号様にもよろしくない話であろうとされたのだ…」
「そ、それは何でございましょう…」
「今でも一部の牢人どもが、江戸から離れた場所では夜鷹を囲うてそれをしよる場合がある。無論、発覚したが最後、神社や色里の商売にはこの上なく邪魔であるので、即刻取り締まってはおるがな…」
どれ、ちょっと考えてみろよと後輩に言う顔で告げる11号さん。
「で、牢人の中にはやくざと通じ、用心棒となったり、あるいは珍平三下となって奉行所の手を煩わせておる鼻つまみ者もおるであろ…そんな、士官の口がない竹光浪人のごときはまだしも、例え内職であろうとも致さず正業につかぬ輩や、土方公募所だの人足公募所に足を運ぼうともせぬ者が次に考えそうなことよ…」
「12号の話に補足するとだな…偽女種となって美しくなっただけで、心根はおのこである穢多の中にも、これをやりそうな者が出ると懸念されたのよ…あと十数えるうちに察しがつけば、この中の誰かと御目子を存分に致せるように、余から頼み込んでやろうぞ、ほれ考えてみよ」
えええ、11号さんも賭け事、お好きなんでしょうか。
(むぅ…じょすりぬ様にも…)
(ふふ、ギャルソン・ナオシゲならば股を開く事、考えてやらなくもないが、とりあえず君の君主の出題を考えてみたまえ…これは君の成長程度を知ろうとする試験だが、解答できないからと言って処罰されるわけでもないだろう。どれ、気楽にやってみろ)
「まぁ、人に考えや行いを促す常道でございますよ。ふふ…ごー、ろく、しち、はち、く、とう…無理か。まぁ良い、罰や褒美のために云々言うたわけではないから教えてつかわす。お阿喜殿、あれはこの部屋にござらぬか」
「全く、うちの息子、親父に似てこういうところは鈍ぅございますわね、直滋、そんなことでは偽女種となってもおなごやおのこをあしらえませんわよ…」
と、隅のたんすやら何やらを漁る奥様。
で、側室のお一人、目当てのものらしきを指差されます。
「奥様、差し当たりまして殿を縛っておりますものが」
「では女中に、これの他にもあれは無きかを聞いてまいります。下手に殿が目覚め暴れては一大事、殿を拘束しておりますぶつ、このままに致しましょう」
(井伊家においては亭主を縛るのが日常なのでしょうか…)
(言うことを聞かぬ旦那は旦那に非ず、簀巻きにもしております…)
と、ご先祖様譲りなのでしょうか…見た目に似合わず、肉体言語を得意としそうな奥様はともかく、その旦那様を拘束している物件を見て、望み通りのものだと申される11号様。
「おお、これよこれよ…直滋、思いつかぬか…ふっふふふ、江戸城にあって、世間に疎い筈の余でも危険が懸念できたのだが、思いに至らぬのはある意味では直滋が素直で真面目な子の証でござろう…」
「はぁ、上様…これは、ひもにしか見えぬものでございますが…」
「その紐よ…あぁ、お主はヒモとは何かを知らぬのであるな。うむ…阿喜様。お子にお教え願えぬか」
「かしこまりました…直滋、これの考えに至らぬは確かに、上様が申す通りに悪事の知恵に考えが向かぬ正しき者の証でしょう。しかし…世間には悪党というものがおるのです」
(うちの先祖がまさにその部類だったのは内緒で…)
(承知、野暮は申しませぬから続きをば…)
「で、直滋…やさ男や悪党の中には、おなごを働かせておのれは酒にばくちにと、遊び呆けるくずもおります。そうした人にあって人でなし、人の恩孝を忘れた忘八の類を、まともな堅気の者はヒモと呼ぶのです。ヒモですよ。いいですか、そうした忘八をなぜ、ヒモと呼ぶのか」
(なんか、江戸を舞台にした話で、正にヒモ扱いされるのを嫌がってる人がいた記憶が…)
(っていうか何度もヒモひも紐とヒモ連呼してますよ…)
(あんたもしてるわよ、ヒモヒモヒモと…)
んで、届けられたヒモをご自身…偽女種陰間衣装のままのウェスト部に通して輪っか状に縛る奥様。
「で、直滋。このひもの端をお持ちなさいな」
「は、はぁ…母上、この紐は一体…」
「で、わたくしめが仮に、この姿でそなたに引っ張られて通りで男に買われておってはどうなりますか」
「ぬ…それは母上、僕は、母上の夜鷹のあがりで飯を食うことに…はっ!」
「気付いてくれましたか…そうです、おなご、分けても春をひさぐおなごを働かせて上がりを取るやくざをヒモと申すのです…」
「まぁ、実のところはこうしたやくざ、江戸のみならず比丘尼国ではおなご商売に手を出せばおかみ様の生業の邪魔になるから、忘八として我らの下に着くか、さもなくば博打や的屋など、春売り以外の稼業でしのぎを見出せと申しておりますがな…」
「うむ、おなごの匂いのするところ、大きなしのぎの匂いなどせぬのだ…」
「ええ、上様の申される通り、やくざ者好みの講談などはあくまでも作り話、少なくともでっかいしのぎを求むるならば、女のおそそで飯を食う類の行為に目を向けるなぞは、もっての他なのです…」
「吉原日本堤の屋台なぞ、まさにその的屋がやっておりまするよ」
「左様さよう、やくざと言われるからにはせめて、うで卵を茹でて地道に稼ぐだけでも、売り方によっては牛馬が買えようものを…」
(天の声は例の雌阿寒岳のヤクザの卵売り話、よほど好きなようね…)
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/55/
(なまこやホヤの密漁よりは犯罪性、少ない気はしますね…少なくとも盗んだ卵をゆでてはいないでしょう…)
ええ、痴女皇国同様に比丘尼国も「働かざる者食うべからず」が徹底しています。
成人、特に男性については、何をどうしても働かされます。山の中に逃げ込んでも探されます。
山窩の皆様やアイヌ、そして琉球や台湾の先住民族の方々であっても、およそ比丘尼国の行政制度に組み込まれていて、姉やあたしが文化保存他の理由で納税を免除しない限り、絶対に居所を掴まれて聖環を装着され、納税対象にされてしまうのです…。
で、労働を免除されるための悪知恵を働かせようとしても、病気や先天性障害、そして負傷による身体欠損などの労働の障害となる何がしかは治療という名の身体修理行為で排除され、働くしかないように追い込まれるのです…。
(働かなくて良いのは学業を納める者、即ち子供か学者であろう…まぁ、学者は学問をするのが労働であるからな…)
(逆に、子供でも一日中働かせると怒られるのですよねぇ…)
(寺子屋の履修切手がないと百姓や漁師の免状も下ろして貰えないと、百姓たちがこぼしておるようですが)
(義務教育というものを浸透させるためなのです…11号さんも、これはお祖父さんのタヌキさんが是非やってやってと痴女皇国、もっというと姉に依頼したからこそ推進しているのを覚えておいて下さいね…)
(承知。というか、民衆に学問をさせる事決して怠ってはならずと、毎年毎年、年頭の東照宮でひつこいほどに念を押されております…ええ、東照宮の参拝手順がございまするが、あれの掲示手順の通りに参拝の礼を致さぬ者すなわち文字が読めぬ者であろうと見做されまして、その人数を下男に数えさせて余に告げて来るのですよ…尊敬はしておりますが、あればかりは…あればかりは…)
(姉経由で、そこまでダメ押しで児童の教育をゴリ押ししなくてもとはお伝えしときます…)
-------------------------
「で、ギャルソン…君は女装をすることで何を望むのか、ちょっと私たちに教えてくれないか。君がジゴロになることを企んではいないというのが理解出来たが、今度はそれで生活の足しになる金を稼げるか、現実的に考えて欲しいのだ…」
と、珍しく真面目に聞いてるカエル女ですけど。
「珍しくは余計ですよ…で、ギャルソン・ナオシゲ。ここにいるムッシュ・ジンナイやマダム・マリアンヌはオカマやカゲマとやらになって金を稼ぐ難しさを知っているのだ…そうだな、私は一応はフランス共和国という国の人間でもあるんだが、そこにはこのエドの町のように、広大な森…それも、君のような子供や、あるいは大人たちが遊んだり体を鍛えたり、はたまた集まって劇や音楽を楽しむことが出来る施設が存在するのだ」
「直滋殿、じょすりん殿はわしも参加した陰間狩り…それも、紅毛人の国の大きな都の中心に敢えて残され、庭園となったその森で陰間稼業に勤しみ世を乱していた陰間や、小僧目当ての衆道亭主どもを捕縛するお勤めを手伝った事があるのよ…で、実のところ、かのふれんちなる国は破廉恥かつ面白い春売りをしておってな、先の豪勢かつ巨大な歌舞伎演芸場、あの鍵付き座敷であるとか、はたまたおなごの腰巻きの下に何もつけずに、足を高く掲げて女陰を一瞬だけ見せるような奇矯な卑猥芸を大尽に観覧させる、色事芸の達者を育てておった国なのじゃ」
「ふむふむ、何とはのう、わかったようなわからぬような」
(じんないさんもだじゃれきんにやられているのでしょうか)
(っていうか偽女種って、必然的に駄洒落菌の歩く感染培地になってしまうんですよ…)
「ギャルソン、パリというその都、金や人や物が集まりやすい場所にあった関係で、おかねやひまをもてあました貴族や富豪が寄り集まって、ひまつぶしにけったいなスケベ男向けの遊びを考えさせておったのですよ」と、ブリュントレーネさんが入れ知恵してくれます。
「で、この、エドという町も行く行くはそんな感じのすけべい文化がさかんになる可能性がございますようですが、問題は…さばくの国や暑い上におそろしい生き物がたくさん住んでいて人が暮らすにはあまりよろしくない密林の国などから、お金もちがいっぱい住んでいるフランスを目指して旅をしてくる貧しい人たちが沢山おったとお考えなさいな…」
「まりー様ですか、お国には関所はないのでしょうか。我が比丘尼国では、人相風態怪しく通行手形を持たぬものの通行をとがめる関所がございまして、はぐれ者や流れ者が道の真ん中を堂々歩けぬようになっておりまする」
「ああ、なんとなーくわかりますの、ええとねギャルソン、わたくしたちの国では、旅人の通行を改めるのは、そうですわね、えどならえどの街に入る手前に石垣やら壁やらを作っておいて、その中に街があるんですの。で、壁のなかに入るためには門番におねがいするのでしてよ」
「はっはっはっ、直滋、あちらは広大な陸地が広がるゆえ、海に面しておらぬお国もあるのだ…従って、我らのように、くにの境でいちいち関を作り改めておっては往来が面倒となって困るのである。なにせ、交易の際にそんな面倒があった場合、商人はその面倒なまちを避けて他所に行きよるのよ。従って、やさぐれものや食い詰め者、あるいは住まいを持たぬ流れ者を振り分くるためには、まちの入り口の門で止める方が互いに面倒がないという寸法なのだ」
「はぁ…」
「何せ、鬼汗国の連中のような馬に乗った騎馬武者が昔、遥か西の国まで陸地を進んで攻めよったことがあってな、いちいち関を街道筋にいくつも作るよりも、旅人や交易品を改めるも軍隊や匪賊から身を守るにも利便が良いとなったのじゃ」
「日の本でも堺や大坂、それに正に鬼汗国に攻められた博多がそうした城郭の町のつくりを一部で取り入れておるのだが、まぁ、まちがまるごと城な訳であるから、入城税などという、街に入る税を取っておられるのよ」
「または、わたくしが治めるストラスブール。ここは国さかいの大きな川に、橋と河底の穴がそれぞれ通っておりますが、そこを通る際に通行税を頂いておりますわね…で、ここからが問題。ギャルソン・ナオシゲが疑問に思ったような素性の怪しい流民がどうするか。町に入って仕事の口を探したい。あるいはひと稼ぎしたいとしましょう。しかし、剣をぶら下げた番兵が番をしているのですわ」
と、城塞都市の事例の画像を見せつつ説明してるマリーちゃん。
(まぁ実際には支部同士ですから実質無税または減税となるような策を取ってるのは、強姦作戦の時に話が出ておりますけど、ここはこのギャルソンにわかりやすいように…)
「忍びの術でも使わねば、この砦の石垣は超えられそうにはございませんね…」
「うふ。警備の門番も人でしょう。つまり、通行手形はそちらの国にもおありなのは存じてますけど、身分証や手形のたぐいのにせものを用意したり、あるいは、わいろを掴ませて通してもらったり、町の住民に身分の証明をしてもらうとか、ては幾らでもあるのですわ」
「ちなみに今のパリになぜ、カゲマが増えたかというと、海の向こうから船で密航してくる上に、哀れな難民を装って、慈悲を乞い入国を手引きする者の助けを得ているのだよ…表立っては、何百人何千人と来る上に、その自分たちは貧しい民だと言ってる怪しい連中は、君たちが言うカワラバン屋と結託していて、軍隊が追い返したり射殺すると政府は残酷だ凶暴だと言って騒ぎ立てる予防手段を講じているのだ」
「即ち、我が幕府ほどには簡単に追い返せぬ面倒がおありと…で、そのよその国の貧民ども、女よりは値段が落ちるが手っ取り早い稼ぎ方として陰間をやっているとお見受けしましたが」
「明察です、ジェネラール。更には、本物の女のヨタカを襲って強盗や強姦をして、商売ガタキを排除していたのですよ。何せ女の服装や化粧をしているだけで、中身は男ですからね…ムッシュ・ジンナイ…捕獲した連中の姿、ジェネラルやギャルソンに見せてよろしいか」
「致し方ありませんな…夢見そうで嫌ではあるが、上様や老中様にも見聞となりましょう」
で、再生される悪夢の映像。
ええ、クリスおじさまを追いかけ回すランニングシャツに、女性用のレーシングパンツを履いたほものおっさんはまだ、マシな部類だったでしょう。
下着姿でケッターマシンを乗り回すのとか、路肩に立つ黒人のトラニーとか、どう見てもおっさんの女装ですとか。
「あの…じょすりぬさま…お国に、まともな遊女はおらぬのでしょうか…」
「ギャルソン、私がそうだよ。そうだな…一応はこれでも、一晩10万UGHDだったんだぞ。ま、政治家や富豪に工作を仕掛けるための偽装職業での話だが」
「直滋殿、じょすりん様は、本当はくのいちだが遊女身分を偽って、お偉方の醜聞を集めるようなこともしていたのだ…即ち、遊女に成りすませるのじゃよ。何もくのいちになれとは言わぬが、こうした話で見当がつく程度のあたまは遊女には必要なのじゃ」
「ふふふ、じょすりん様と床を共にするのを望むなら、高尾太夫同様に百両かかるのじゃ…」
「つまりだなギャルソン・ナオシゲ、一般庶民に手頃な金額でオメコをさせてくれる女と遊びたいなら、いっそ普通の男女の付き合いを考えろと言うのが共和国の常識なんだ。これだけでも、バイシュン…女を買うのが昔は盛んだったが、今はあまり一般的じゃないのがわかるだろう?」
(ヴァンセンヌ娯楽館の話、今は内緒で…)
(ええ、あれを引き合いに出すと話がこじれますわね…)
「では、春を買いたいおのこがおった場合はどうなさるのでしょ…」
(変なところに着目なさいますわね…)
「いわゆるジユウレンアイという名目で、細々と個人事業をしている女を公共温泉で見つけるか、さもなくば私を買ってた連中のように、高級売春婦の仲介業者を経由するかだな。あとな…ギャルソン、君の故郷で言うと、ヒコネの町にヨタカはいなくても、キョウトや…更には、トウキョウに行けば女が買えるユウカクがあるじゃないか。そして、今ならキシャを使えば1時間くらいだろ? ふふふ、フランスの隣で変態がたくさん住んでる国には、国が経営するユウカクがいくらでもあるんだよ。そうだな…一番近い場所なら、パリから2時間前後…飛行機ならもっと早いか…要は、売春婦がいる国まで遊びに行くのだ」
(その変態のすくつの国って、一体どこのどいつが変態風俗をやってるか即座に想像できるわね…)
(フランスの隣扱いで海の底の穴で繋がってる国にも変態紳士がなんぼでもいてますけど、あそこだと売春は取り締まってますからね…一応)
(フローレシェーネです。未来のうちの国や神聖ローマ帝国とですね、現状の当国を同一視される風聞は避けて頂けませんか。バーデン=バーデンに変態は無用なのです…)
(そうよジョスリン…あなた、私の出身国と担当地域知ってるでしょ!)
(ふんっ、マドモアゼル・メーテヒルデもマドモアゼル・フローレシェーネもお心が狭い…公営売春窟を主要都市にあらかた開業しておる割には他国の女を雇い入れているような国からあれこれ言われたくはありませんねっ)
(をかま作戦で捕獲したをかまの人種別区分を考えてから申してくださいっ)
(フローレシェーネさん。もっと簡単に黙らせる方法があります。マリーちゃんは私の後輩ですし、私の上司がどこのアルトさんなのかを骨身に染みて知っているはずですよ)
(ええ…クレーニャさんにはなかなか逆らえない立場なんですのよねぇ…)
(ぐぬぬぬぬぬ、縁故主義反対っ)
「ともかく兄様…即ち、じょすりぬさまのお国では、どうやら陰間は女を買えぬ貧乏人が手を出すもよう…」
「なんと…おれのような年端も行かぬ小僧を買うならば、おなごより高い金を取るのが吉原の陰間茶屋であると聞いたのだが…」
「女よりも高い金を取るオカマもいるぞ。しかし、それは本当の女以上に金をかけて体をいじり変えていたり、化粧や衣服に金がかかっているんだ。そして、そういう高級なオカマはな、そこのジェネラールやカピタンにムッシュのような外見でな、衣服も女のオイラン…タユウと同じようなものを着込んでいるのだよ。いわば、女と同じで、オトノサマが買うべき高級なオカマが存在するんだ」
と、くすくす笑いながら欧州の売春事情を説明するジョスリンですがね。
「ほら、こんなの」と、アダルトビデオ映像に出演してるような上玉のトラニーの映像を見せてますよ、このカエル女はぁっ。
「えええええ!なんですかこのでかまら…入りませんよ、こんなの!」
「兄様…しかも、まらをおのこや、果ては紅毛のおなごにまでつっこんでおりまする…」
「なんですの、この破廉恥な装束…こんなんで街中を歩く…あ、べらこ様とか、ちじょのおくにのおなごさまはそうですわね…」
「ええと、べらこ様の逸物も大概ですけど、こやつら、医者にかかって医術で珍宝を膨らましておったのですよな…」
「おのこと陰間に挟まれて、けつめどにも御目子にもマラを…しかも、なんですの向こうのおのこ…まさに野獣のような体つき…」
「向こうのやつらは慶次郎殿並の体格のやつが普通に街を歩いたり、兵士や同心でおるのじゃ…無論、普通の町人や、果ては流れ者にもな…」
「わたくしは横濱やいけにえ村で南蛮人を知っておりましたが…じょすりんさま、ここにおる者の大半は紅毛人の裸やまらや乳の寸法、なまで見ておらぬのはもちろん、服を着た南蛮者すらまともに見聞しておらぬ者もおるのです…」
「マダム・オマツ。よい教育の機会です。小官の実父はとんでもない屑野郎でしたが、そんな屑でも女が引っかかる理由が」
待ったぁ、と止める間もなく、黒人のトラニーとか黒人男優の映像を見せているカエル女。
「えーと、弥助みたいなのばかりの国があるとは聞いたが」
「上様、この真っ黒い焚き木か松明に使うような棒がきゃつめらのマラのようでございます」
「あのー、上様に信綱様、わしはぱりの都で、これの実物を目の前で見せられたのですが」
「甚右衛門…で、どうしたのだ…お前、その時は衆道、やってなかったのでは」
「もちろん、当時はのんけとやら。こんな凶悪無残ないちもつは切り落として晒すべきかと思いましたるに、わしがそれを躊躇なくやるだろうと予想なさった妹姫様他に愛刀を取り上げられまして…きんたまを蹴ってひるんだ隙に逃げましたわぇ…」
「ギャルソン…言っておくが、ビクニ国が開国すれば、他の国から来るチンポはこういうチンポなのだぞ…ほれ…」
こらぁっ。
ええ、カエル女、見本とばかりに自分のペーネを出しやがりましたよ…。
「ちなみにフランス人のちんぽは世界最強の平均さいずらしいですわね。ほら」
マリーちゃぁあああああん…ええ、ブリュントレーネさんと二人して、ちんぽ見学会を開いてます…。
「この腐れ女皇帝の最終凶器も見せておくべきでは」
「ジョスリン、さすがにラスプーチンちんは皆様に見せるべきではありませんわ…殿方が自信喪失なさいます…ほら、ジョスリンはともかく、あたくしのCoqは見た目よりは柔らかいでしょ?ギャルソン…」
「まりーさま…こんだけでかいのはそもそも…」
「じょすりぬ様の珍宝に至ってはかちかちではないですか…」
(いやお待ちなさい直滋に直澄、せっかくですからちょっと味見できませぬか、よそのお国の方のいちもつ)
(あたくしはちじょの島で知っておりますから、孝子様や春日様にお譲りいたします)
(上様…よもや、このでかまら、尻にとか考えてはございますまいな…)
(というより、わしはまりー様の珍宝、突っ込まれましたが…ただ、御目子もさせて頂き)
(じんえもん。それをずると申さぬか。べらこ様やあると様は瘴気毒気のみなもとを抱えておられるからと、わしらに1号様や配下の巫女様とのまぐわいを禁じておいて、おのれはまりー様と。さすがに公平な裁きを求めたく思うのだが)
「というより…11号様…駄洒落宗に入信、なさいます?…冗談抜きに何の手立ても講じないままにまりー様ならまりー様とまぐわえば、一刻に十度は駄洒落を口走る、あの駄洒落宗門徒の殴りたくなる振る舞いと成り果てますかと…」
「ええと3号様、駄洒落衆とは長州腕砲国の困った宗派かと。更にはあの長賊毛利め、毎年正月に倒幕準備を整えては国主に準備万端を知らせ挙兵の可否を伺うとか、更には一族郎党に及ぶまで江戸に足向け就寝しとるとか、上杉殿の爪の垢でも煎じて飲みやれと…」
「ほほほ、11号様…紅毛者の中でも野の虎に等しき御仁たちでございますよ…上様と申せど、そうそう軽々しぅお相手を所望なさるもいかがかと…何でしたらわたくしが慰めて差し上げましょうや」
と、部下の早駆け、というんですかね。
主君より早くご馳走を食べる機会に恵まれた部下の方に対する八つ当たりをしそうな11号さんを宥める7号さんですが。
「い、いや、おまつ殿の手を煩わせるまでもございませぬ…」
「しかし、ギャルソン…あなた、要するに大人のセクスへの憧れもあるし、早く成人したいという思いもあるわね。なら、私から提案をして差し上げましょう。ジェネラール、ちとお伺いしますが、ビクニ国には聖堂騎士だの聖騎士だの、国家と密接に関連した騎士の集団ですとか、はたまた知識人を養成するための宗門主催の学校のようなものはございませんの? 」
と、問いかけるブリュントレーネさん。
「ふむ…王女様と申されましたな。かつては仏教の寺は独自に武装しておりました。で、僧兵という坊主でありながら兵士たる者共を擁しておのが寺の領地を防衛する名目で大兵力を有していた寺院もあったのでございますが…」
「11号様、石山本願寺の事で」
「うむ…かつては寺が兵を養成し国主にも匹敵する戦力を備えて国事に介入すること、これを認めずとした御沙汰が下った事がございます。他ならぬおかみ様のお言葉、これに従わぬ石山本願寺には織田信長公の軍勢による包囲に加えまして、丹波国元伊勢三社より派遣されたる鬼の衆の恫喝に屈した本願寺は開門と武装解除を余儀なくされました。以降、おかみ様の統治下にありますところの神社はまだしも、寺がいくさ以外の知識を持たぬ僧兵を有すること、これを禁じるとされたのです…」
と、連邦世界とはいささか違う内容ですけど、石山本願寺降伏の顛末をすらすら語る11号様。
「ふーむ、ならばサムライの修行のための軍学校や兵学校のようなものはないのですか…」とちょっと悩んだ顔ですね、ブリュントレーネさん。
「ああ、これは彼女、十字軍や丸太騎士団他の教会騎士団を想像していますわね…ブリュントレーネ、サムライの統治する時代のジャポンでは、サムライ階級以外の武装はもちろん、軍事教育や教練も禁止されておりましてよ」
「なるほど…マリー、これは私の案ですが、ギャルソン・ナオシゲはサムライ身分に復帰可能な状態で、聖母教会が扱う偽女種同様の処遇を与えられないかと思ったのです。なぜならば、偽女種となった事を若気の至りで後悔した場合、偽女種でないと受講不可能な学生身分を与えておけば、卒業又は退学後に少年もしくは青年に戻せるでしょう」
「ふむ。へーか、雅美さん、ブリュントレーネの案に近いもん、なんかございませんかしら…」
「ありますよ。この少年…直滋くんが未成年の間に、慈母宗の少年門徒として必要な資格…すなわち偽女種となって修行をさせるのですよ。幸い、このすぐ近所の日枝神社境内に7号さんが住職となっている慈母観音堂が存在します。そこは偽女種の陰間の売春拠点としても整備する予定なので、なおさら直滋くんを一時的に学生僧侶めいた立場として寄宿させるか、はたまたこのお屋敷から通学させることは可能でしょう」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる