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女戦士大地に立つ・8.0
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どうも。
中井ティアラです。
で、キノシタ大尉とかいう人のお話は私も機内で聞いていたのですが、なんともはや恐ろしいことになっているようですね、今のブラジル連邦共和国。
確かに豊富な資源と膨大な人口に支えられて、それなりに繁栄しているのは、ついでに飛んで頂いたリオデジャネイロやサンパウロ、そしてブラジリアの発展を上空から拝見しただけでもよくわかります。
ですが、痴女種能力を使って探ったスラム街の惨状や、鉱滓ダムと呼ばれる鉄鉱石の洗浄かすを貯めておくダムの決壊後…つまり自然破壊の状態ですとか、ビトリア製鉄所を上空から見た後で飛んだ連邦世界のアマゾンの大規模な伐採後の環境破壊の話などなど、まさに現地を見ながらキノシタ大尉が解説するたびに皆が絶句します。
で、キノシタ大尉のお話は続きます。
(皆様にお伝えしたいのは、この惨状それ自体の修復の依頼ではありません。むしろ、この惨状を招いている汎銀河人類族連邦政府下諸国が、我がブラジル連邦共和国の資源や人に依存している状態と、我が国の貧富構造格差に目を向けて頂きたいのです。言うなれば非正規に居住している貧困難民も同然の貧民層を維持することで、鉱物資源掘削採集や農業林業の労働力を廉価に得ている皮肉な一面があるのです)
(インドのカースト制と似たようなもんね…)聖院のマリア様が呟かれます。
(木を切り出したり山を掘って石を取り出すなど、辛い仕事を貧しい人にさせているのですね…)
(確かにインドほど明確な宗教戒律がある訳ではありませんが、実質的な貧富格差は頑として存在しますからねぇ…リオデジャネイロの海岸沿いに建つ邸宅や高級アパータメントとスラム街を見比べて、これが同じ国の国民生活かと曽祖父や祖父は絶句していたようですが…)
ああ、キノシタ大尉は現地ではニッケイと称されている日系人であって、純粋な日本人ではない方ですので、この格差が生まれた時から存在していたという価値観をお持ちなのですね。
なるほど。
(ただ、私も貧民の生活が原因で起きている国内の暴動や貧困事情、そして伝染病蔓延などの発展阻害要因であるという認識は持っています。一例を挙げますと、かなり昔の話になりますが、西暦1970年代にゴイアニア市で発生した放射線被曝事故が、我が国の貧困層の知能を示す皮肉な指標となりますかと)
(あー、あれか…ティアラちゃん、今はまだしも、当時のブラジルは原子力発電所はまだしも核兵器なんて持ってなかったし、原発が初稼働するのはもっと先のことなの。じゃ、なんで放射線被曝なんてことが起きたと思う…?)と、聖院のマリア様に尋ねられますが。
(うーん、わかりません)
(セニョーラ・ナカイ…原因になったのは、市内の病院だった廃墟を探索していた物盗りの若者二人が持ち帰った、高価そうに見えるダイヤルロック付きの容器だったのです。実際、それなりに高価なものだったのですけどね)
(病院というところにヒントがあるのよ…あ、そうか、ティアラちゃんは物心ついた時から痴女種として過ごしている時間が長いもんね、病院でやってる検査とか、いまいちピンと来ないでしょう。で、普通の人の場合、病院では身体の透視像を撮影したり、あるいはガンなどを治療するために使うものがあったのよ)
(で、盗人の若者が持ち帰ったのは、セシウム137という物質を格納した容器だったのですよ。この物質は容器から取り出すと薄青い不気味な光を発するのですが、散々に苦労して金目のものを取り出したと思った若者たちは、この微細な粒状のセシウムを近所の人たちにお裾分けしたり、見せびらかします…ますが…)
(あれさぁ、光るからってカーニバルの衣装の飾りに取り付けるとか恐ろしい事を考えた人もいたのよね…)
どうやら、マリア様はことの顛末をご存知のようですね。
(でさ、最終的にはその若者が容器を持ち込んだ解体屋の夫婦を含む4人が死亡しただけじゃなくてさ…遮蔽容器の中の鉛を含めてお金になると思った解体屋の店員たちも廃病院に行って、残りの放置格納容器を盗んで帰ってるのよ…)
(なぜそのような危険な容器が廃墟に放置されていたのか詳細は省きますが、一言で申し上げますと我が連邦共和国の汚点たるずさんな処置を許した気風、これに尽きます。そして…死者4人で済むわけはなく、厳重に密封された格納容器に仕舞い込まれているべきはずの危険な有害物質を素手で触ったり、あるいは被曝する距離まで近づいて眺めた住民たちが次々と身体の異変を訴え、11万人を市内のスタジアムに隔離して放射能汚染検査を行う羽目になったのです…)
11万人って…今の痴女皇国世界のマドリードの倍の人口じゃないですか。
(そして、重度の被曝汚染に晒されて指などを切断せざるを得なかった者や、即死こそ免れたものの、後に後遺症に悩まされた挙句早死にした者などの総数は249名にも及びます)
(まぁ、いくらその時期の世界だと原爆の被害にあった日本以外では一般の民間人に放射性物質の危険があまり知られていなかったのはあるとしても、無知って怖いよねじゃ済まない話になったわけよ…)
ええ、なんでそんなものを盗んだとか、そんな危険なものならば容器やその周囲に何か注意書きの類があっただろうに何をやってるんだなどなどの反応、多数。
むろん、ことの重大さをあまり理解できない女戦士の方にも「人を治す呪術師の使うものには危険な石があり、その石を扱う手順を知らずに許しなく触った罰が当たったのである」という感じで理解を頂いたようです。
要は、勝手にそこらのもん、盗むな。
これに尽きるでしょう。
(まぁ、これは鉄鉱石も該当するんだけど、鉱物の原石の中には危険な有害化学物質を含むものも決して少なくないのよ。で、ブラジルだけじゃないんだけど、原鉱石を洗って有害部分を取り除いたりしたカス混じりの水をダムに貯めて、汚染物質を沈澱させて上澄みの水だけ川の下流に流すようなこともしていたのよね)
(その目的で建設された鉱滓ダムの決壊で、下流の畑はもちろん、町の水道までもが汚染された事故が数件発生しています。その際には溢れた汚染水によって、ダムから先の土地は広い範囲にわたって使い物にならなくなったのです)
うわぁあ…まさに、人災というべきでしょう。
(ちなみにティアラちゃん、海賊共和国の島々などに置いてる灯台の水銀軸受に使ってる水銀、あれもものすごい危険物質なのよ…ただね、昔の方法だと、金を鉱石から取り出すのに水銀を使う方法が確実だったの)
え…。
(比丘尼国の大和の国にある大仏…大きな仏様で仏型最終決戦兵器は、連邦世界の奈良県東大寺だと、ただの青銅製の単なる仏像です。14歳の子供をいけにえにして動くことはありません)
なんでそんなもん持ってるんですか、比丘尼国。
(昔、強くて凶悪な上に、人や神様と敵対していた鬼さんをしばくためだったのよ…ただ、実際に使う前にちょっと待てさすがに被害甚大ってことで、結局は試運転しただけなんだけどね…まぁ、ともかくその大仏様は連邦世界だと、製造した当時は金色に輝いていたんだけどね…)
(あ、なんか話が見えた気がします。つまり、そんな大きな仏様を全部、金で作るわけにいかないから表面だけ金で塗ったとか)
(惜しい!ええ…その時は最新技術だった金メッキという方法で、銅の表面に金の膜を作ることにしたのね。ただ…その、金メッキの際にも水銀を使ったのよ…そして、水銀を熱で蒸発させた際の蒸気を作業者がことごとく吸い込んで、水銀中毒者を多数出すはめになったの…)
(アマルガム法ってやつだよ。ま、金銀をあたしらが握ってる理由の一つに、人体には極めて有害な物質を多量に使わないと純金が分離できないってのもあるんだ。精錬法自体は各地の大学に伝えてはいるけど、実際には危険だから学校の授業課程の実験以外ではやらないでくれって申し渡してるし、だいいち試そうにも主な金鉱はあらかた空っぽにしてるからな)
(マリアリーゼ陛下、その金ですが、これまたアマゾン奥地の砂金産出地帯での話、セニョーラ・ナカイにさせて頂こうかと)
(ああ、ガリンペイロの件だろ。あたしがするよ。で、川の泥や河岸の土の中に微量の金が少なくない量で含まれている地域じゃ、その砂金を集めて生計を立てる奴が現れたんだ。これはわかるかい?)
ふむふむ。なんとなく。
(で、金だから僅かな量でも貧乏な人には1日の生活費には十分ってことになってしまうんだ。そして、ひたすらにどじょうすくいのような姿勢で湿地帯や泥濘地で金をすくって暮らす貧民階層が生まれるほどになったんだ。これが、現地ではガリンペイロって呼ばれてる貧民層の由来さ)
(ありがとうございます。セニョーラ・ナカイ…更には、このガリンペイロだけではなく、貧民たちを労働力や主な収益源としてはびこるギャング…犯罪組織の存在が、改善を困難としているのです。豊富な資金と武力、そして軍や警察の腐敗を利用して彼らは政府に癒着しています。彼らは警察や軍から不正に横流しされた武器で武装してすらいるのです)
えええええ。
(まぁ…ですので、コカインを効果淫にしてしまったことは犯罪組織には極めて甚大な打撃だったようなのですよ…痴女皇国に直接苦情が言えないので、政府機関を通じて文句たらたらだというのは私も存じております。反・痴女皇国のロビー活動に人的資金的に協力する他、効果淫からコカインの類似覚醒物質を再生成できないかと研究させる資金まで投入しているようですが)
(あー、それこっちでも把握してるから大丈夫だよ、キノシタさん。そのためのヴァンセンヌ娯楽館、そしてフランスの掌握なんだわ。フランスの次期大統領にポワカール夫人が内定も同然なのは聞いているだろう?)
(は、マリアリーゼ陛下。こちらにも伝わっております…そして、連邦宙兵隊幕僚部直轄の情報機関、英国とフランス特殊部隊出身者を中心とした編成に切り替えて行っておられるとも)
(ぶっちゃけ戸籍ロンダリングでNBのフレミング機関員を送り込んでるしね。あたしの母親の高木ジーナはともかく、今やアグネス下院議員ですら英国籍を取得してるし政府機関要人として連邦政府事務局に堂々出入り出来る立場になったしな)
(は。私どもの方でも連邦政府への浸透工作に余念はありません。何せ大統領から閣僚、有力議員に至るまで、下半身が潔癖ではない持ち主多数ですので、逆に浸透は容易ですわね)
(ティアラちゃん…駄洒落菌を使って選択的に政府要人の愛人さんや奥さんに娘さん経由でブラジルの政府要人や経済界の有力者を汚染しているんだよ、堕天使さんたちの協力も得てな…)
(セニョリータ・ナカイ…彼らは今や、そうとは気づかずに痴女皇国への利益誘導役として我々の管理下に入りつつあるのです。私がこうも堂々と、皆様をご案内して領空を飛行できるのも、その成果の一つとお考えください)
どうやら、痴女種による浸透工作とかいう作業はこのブラジルでも行われていて、それなりの成果を上げているようですね…。
(だからこそ、尻出国ではしくじって欲しくないんだよ…連邦でもNBと提携して人間の資源化を模索する方向に入っているんだけど、その先行実験を痴女皇国、そしてNBで順次行うことで問題点を洗い出す必要もあるんだけど、事態が切羽詰まってるのはどこも同じだ。ただ、倫理基準がうるさくない我が痴女皇国世界の地球で試すことで、問題点を炙り出しやすくする狙いがあるんだよ)
それはわかります。
やはり、いちばんに邪魔が入りづらいのは痴女皇国世界でしょう。
灸場がそうでしたけど、私ですら「こんなこと、連邦世界でやったら反対の声多数」だと思えます。
ただ…私を更に驚かせる話、オリューレさんから聞かされる事になるとは、この時は思いもよりませんでしたよ…。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/204/
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さて翌日、改めて訪れたかんぽの大平原。
今度は聖院からテンプレスが来て下さいまして、私たち以外にも首狩り族や女戦士族の主だった方々をお連れしている他、いったん連邦世界に転移して飛行機ごとキノシタ大尉を受け入れてから、かんぽの平原に移動。
その所要時間、30分未満。
昨日、目星を付けておいた場所の地表すれすれに降りたテンプレスから大型エレベーターで地面に降ろして頂きます。
で、朝日が上がり始めたばかりのかんぽの平原を見て回る皆ですが、ところどころに危険な生物…アリクイなどがいますので、必ず騎士が付き添うようにしております。
で、キノシタ大尉も飛行服を脱いで、赤薔薇騎士団の制服姿に変わっておられます。
見た目は私からしても日本の方っぽいのですが、普段の言葉はポルトガル語だそうですね。
(頭の中味を見て頂ければ分かりますが、我々日系人は現地に根付いておりまして、白人やバルド…混血人種とほぼ変わらぬメンタリティを有しております。もっとも、親や祖父・祖母の教えと生活様式を守って日本語も会話可能な者もそれなりに数がおりまして…私もそうなのですがね)
ただ、下着の傾向は現地の人、まんま。
(群馬県で働くニッケイの労働者の町には、こちらから移り住んでブラジルの流行の服を売っている者もおりますよ)
ええ…痴女皇国の制服まであと一歩のド派手かつ猥褻な下着や水着を平然と着るニッケイ女性も多いと。
更には。
(尻を出す下着や水着で当たり前、むしろ恥じらう者はニッケイの中にも皆無に近い有様ですね。ただ、男たちはポルトガルの影響もあって男らしい服装や振る舞いを好みます。やたら上半身裸になりたがる傾向までは真似しなくとも良いかも知れませんけどね)
ふむふむ。
(女性が尻を出す下着を好むというよりは、現地先住民の服装習慣に由来するのです。痴女皇国世界でも尻出国の名前で呼ばれていますが、アマゾンに生息するカンジェロ…カンジールという肉食ドジョウの攻撃から身を守るためにも、女性は貞操帯を自作して水浴びや漁に赴いたのです)
この人食いドジョウ、なんと水中に入ってくる動物の穴を狙い潜り込んでくる習性があるそうですね。
で、人が水浴びを楽しみ身を清めようとすると、その膣や肛門を狙って潜り込み、肉を食い荒らすのだそうです。
更には食われた穴から流れ出た血の臭いを嗅ぎつけたピラニアやワニが寄って来るとか、痛みに耐えかねて暴れ溺れてしまい結局は魚の餌になってしまうとか、侮れない恐ろしさがあることを教えて頂きます。
(ですから、川に入る際には必ずカンジェロ対策として下着か水着を着込んで頂くべきです。痴女種ならば放熱や強烈な膣圧攻撃ですとか、更には身体の瞬間効果でカンジェロが齧れないようにしてしまったり等、反撃の手段はいくらでもありますが、隙を見せればまず、齧られて痛い思いはしますからね…)
なるほど。死なないだけで最初の攻撃を受けて痛いと泣くのは同じ、と…。
ベラ子陛下。
今度私になんかしたら、水中でおめこを犯させてください。
もちろん、下着なしで。
ちょっとは痛い目を見た方がいいと思えますから。
(股間にはちみつを塗ってアリの巣の側に放置しますよ…あのペルシャの凌遅刑のように…)
(マリアリーゼ陛下。あの軍隊アリとかいうアリって、陛下の言うこと聞くんですか)
(いや、ティアラちゃんの言いたいことはわかる。アルゼンチンチンから冷凍肉を輸出するための屠殺処理設備が立ちあがってるから、そこで出た血を数百CC貰えばそれで用事が足りるだろ。あとはベラ子の身体を拘束して、軍隊アリにかじらせたいところに血をかけて進路上に放置すればいいと思うよ)
(ねーさん、それ、あたしの懲罰を認めてませんかっ)
(るせぇっ。豹に襲わせるぞっ)
見れば、アレーゼ様やアルトさんの前に、立派な豹の家族が現れて服従の姿勢を取っています。
更には、立派なたてがみというか、馬の毛のようなものを首の後ろに生やした狼や、巨大なアリクイたちまでもがのしのしと現れてはアレーゼ様に平伏したかのように。
更には野生馬らしきを倒して来たのか、その肉を献上しようとするオオカミの群れに苦笑するアレーゼ様ですが、何をなさっておられるのでしょうか。
アルトさんは豹の喉を撫でて遊んでおられますけど、怖くないのですか。
首狩族の男性や女戦士の皆さん、ドン引きしてますよ。
(おおきなねこのようなものです。あたくしのつよさをわかってじゃれておるのです)
まぁ…懐かれているのはいいことですね。
豹の子くらいなら、私の方に寄って来てもらっても。
モフらせてもらえないか聞こうとしましたところ。
「ティアラ、この獣たちを管理する立場の存在に聞いてみたが、ふたつ足…つまり、我々人類が迂闊にこの平原を切り拓けば、ゆくゆくは君が元いた世界以上の災厄が訪れる事になるだろうとのご託宣だ」
それ、どなたなのでしょう。
「マリアヴェッラの中におられるよ。初代様がその人だ」
えええええ。
(ふほほほほほ。どうも、淫化の母神パチャママとはわたくしでしてよっ)
(このおばちゃんは何をしているのですか…しかも確か、パチャカマックという無責任な創造神もいて…)
(マリアヴェッラ。あれは姉でしてよ…)
(あのなぁてるこ。わしも、ほったらかしにしたかったわけとちゃうんやぞ…)
これは…いわゆる、おかみ様ですね。
はるか昔の事とは思いますけど、一体全体、この南米くんだりで何をしておいでだったのでしょうか、この方々は。
(何って…ちきゅうのあちこちに神と、神をあがめるしもべとして人を配しておっただけですわよ…)
(そやそや。ちゃんとしごとしとるんやぞ)
(まぁまぁ。しかし、初代様におかみ様。かと申しても、この動物たちの生活の場をある程度は脅かさなければ豆畑も作れはしないでしょうに…)
(おやおやアレーゼ、あなたほどの方が頭を抱えるとは。しかし、てはありますわよ。…そこなユウコとやらの国にきょうりょくしてもらう必要はおありでしょうが)
(はぁ…何をお考えに…)
瞬間、閃くものが。
(アレーゼ様。理解できました。即ち、初代様はこの簡保平原に豆畑を切り開く事で住処を追われる動物、そっくりそのまま連邦世界のブラジルに移すことをお考えでは)
(ティアラとやら、ご明察でしてよ。ユウコ、マリアヴェッラ経由で探る事ができましたが、よもやれんぽう世界の側のこのかんぽ平原、そなたたちの許しなく密かに畑を作って豆を売りさばいておる不届き者、決して少なくないとみましたが、いかが?)
(は…推察の通りです。元来はカンポ・デ・セラードの開発は許可制です。ですが、商品作物として売れると知った者たちが密かに草原や森林を切り開いて勝手に畑を作っているのです。当局も取り締まってはいるのですが…)
(それに、これらのどうぶつ達のすみかをなかば無理に切り開いたことで貴重な生き物が減ったのにあせって、のこった場所をこうえんとやらにしたり等々、あとおいの対策に追われているとか。マリアリーゼ)
(へいへい。で…キノシタ大尉、いや痴女皇国ブラジル連邦共和国連絡事務室長。あたしらなら割と簡単に、この動物たちを何とかできるって思ってくれてないか)
(はい…私ごときには無理でも、陛下他、幹部痴女種であれば…)
(まぁ、あたしにもできない事はあるし、初代様やアレーゼおばさまの力も借りないとダメな話もいくらでもあるけどね。だけど…)
(マリア。お前ならば割と楽にできるのではないか?)
(そっすねー。例えば、向こうの違法大豆畑とここの草原、そっくり入れ替えるとかね。そうすりゃ大豆も黙って手に入るし、ついでに違法畑で操業してる労働者には気の毒だけど、経営者含めてそっくり痴女皇国に来てもらって罪人として処理しちまえば文句を言うやつもいねぇだろって筋書き、書けますね)
(なるほど、どうせ無許可で切り開いた大豆畑なら畑ごとそっくり頂いても誰が文句を言えるかと言うわけだな。いいだろう。マリア、私はティアラたちを引率してこの南米の大地を巡察するのが今の最大優先事項であると思っているが…)
(確かに、下手にティアラちゃんたちに手伝ってもらおうにもこれはちょっと大仕事ですよね。まぁ、今すぐどしんばたんと片付けようと思えば片付けられますけど…海綿菓子国の未来にも関わる話なので、幹部会を開催して方針や計画詳細を決めてからかかるべきだと思えます。曲がりなりにも、尻出国の原住民を含めると数百万人の人々の未来にも関わって来る話でしょうから…)
(済まんな、元来であれば私が主導して話を決めるべきであろうが、ブラジル連邦共和国との話にもなるだろうから、連邦世界での地位も有するマリアの方が事業を進めやすいだろうと思ってな…)
(いえいえ。決めさえすりゃ実際の施工は早いこと済みますよ。既に、大豆の原種種子などはブラジルで使用しているものの入手も済ませてもらってます。あとは土地を確保して土壌性質を変更するくらいですね。まぁ、農機具なんかは大規模な農園用の機械化機材を調達するくらいか…一ヶ月ほど頂ければ、豆畑にとうもろこし畑、四国くらいの面積は用意できるかと)
つまり、この瞬間にこの、かんぽ平原の開拓は痴女皇国の国家事業扱いに格上げされたと見るべきでしょう。
しかし、そうなりますとますます私のやる事が…。
(とりあえずティアラちゃんはおばさまに付いて、次の視察地に向かってくれればいいよ。えーと、次はアルゼンチンチンか。本当はそのままアマゾンを遡って淫化に行くのが話が早いだろうけど、パンパの開発はスペイン管轄でもあるしな)
はぁ。
(確かに国土開発のような重要事業に参加するのも大事だけどさ、専門家でないと辛い事もあるから気にしなくていい。それよりは自分の見識や見聞を広めるのと、聖隷少女団の活動のために必要なことを考える機会をもらったって思えばいいんだよ)
とまぁ、マリアリーゼ陛下には学生身分の延長めいた立場で出来ることを期待されているようです。
それに…本格的な土木や治水となれば、明らかに専門家以外が口をはさめる話でもないでしょう。
(南欧支部の利権に関わる話ですから、本当は口を差し挟んで欲しかったのですが、規模が大き過ぎるとあっては確かにティアラには辛い話になりますわねぇ…)
無茶言わんでくださいよ…イザベル陛下、こんなだだっ広い平原の開拓、いくら痴女種でも1ヶ月で終わる話じゃありませんよっ。
「ふっ。まだまだティアラちゃんにはしゅぎょうがたりませんね。あんですの山奥で修行するのです」
(アルト…ティアラちゃんをヨガの眠りが必要な7つの姿に変身させたいのか…耳毛が生えたらどうするんだ…)
やめてくださいお願いします。
それとアルトさん、自信満々ですが、何をする気なんですか。
「あたくしが蟹いしょうを着ればよいのです。いえ…着なくてもあらいざらいふきとばせばよいのでしょう?」
(や・め・ろ)
「アルト。そんなに暴れたいなら、ティアラを背負って私とマツカゼに付いてくるか。なに、ここからブエノスアイレスまでは3,000キロほどだが…私たちとお前ならば3時間ほどで着けるだろう」ぐわしっ、とアルトさんの背後から両肩を掴む手が。
見れば、アレーゼ様が筋骨隆々な姿に変わっておられます…。
ええ、女戦士の方が畏敬の視線を向けておられますが、その被害を被りそうな私にはアレーゼ様の筋肉美を褒める余裕などありはしません。
むしろ、3,000キロを3時間って、音速で地表を走るってことじゃないですか。
私の認識で言えば、茸島での緊急出動訓練に匹敵するスピードで延々と走ったりジャンプするはめになるんですが。
しかも、アレーゼ様の話しぶりでは、アルトさんが私を背負うのを嫌がるのは明白ですし、そうなれば私を馬の後ろに乗せてアルトさんを単独で走らせるおつもりなのでしょう。
ええ、アルトさんが脱兎の如く逃げ出したので、本当にアレーゼ様はそうなさるおつもりだと悟れましたから。
しかし、アレーゼ様が猛然と追いかけて走り去っておしまいに。
それは良いのですが、私はどうすれば良いのでしょう。
(多分1時間未満で戻ってくるわよ。アルトじゃおばさまから逃げ切れないし)
でしょうねぇ…とりあえずはアルトさんの無事でも祈っておくことにしましょう。
なんでしたらベラ子陛下も、運動不足解消のために一緒に追いかけて来られたらいかがですか。
(無茶を言わないでください…)
(っていうかアルトさんの能力解除したらベラ子陛下と同等かちょっと下でしょう? 私ではもちろん無理ですけど)
(ティアラちゃんの言い方に猛毒を感じます。そんなに肩で息をするあたしが見たいのですか)
「ちょうどいいんじゃない?で…あたしも最近は聖院本宮からあまり動いてないし、ベラちゃんちょっと付き合ってもらうわよっ」
言うなり、強制制御がかかったのか、はたまた、またもや初代様に身体を乗っ取られたのか。
ベラ子陛下も、アルトさんやアレーゼ様を追って走り出します。
そして、その後をこれまた猛然と追いかける聖院のマリア様。
「あの…聖院の方々が尋常でないお身体だとは存じておりますが…」
ええ、ジョアン4世陛下が呆れておられます。
もちろん、この私も。
しかし、こうも申し上げる事ができるでしょう。
「陛下。えらい人というのはなかなか、一般人の頭では推し量れないことを考えたり実行に移すものです。陛下のお身体も、言ってみればそんな無茶な思いつきのせいで巻き添えを食って偽女種になってしまったようなもの。それを思えば、私たちにとばっちりが来なくてよかったと思うべきでしょう」
「ま、まぁそれはそうではあるな…あるのだが…セニョーラ、そなたはイザベル陛下はもちろん、聖母マリアヴェッラ陛下他、痴女皇国の重要人物と親しいとも聞く」
「ベラ子陛下が勝手に親しくしようとしておるだけですが、まぁ他の女官よりは話をする事が多いでしょう。して陛下、私に頼まれたい事がおありのご様子ですが、ベラ子陛下以外に申されるのであれば」
「いや、まぁあのその、くれぐれもああした戯れの矛先、我らポルトガルはもちろん、尻出の民に向けて頂かぬよう、重ねてお願いしたいのであるが…」
そりゃまぁ、そうでしょう。
あんなとんでもない速度で走って行ける人たちが、走るだけでも大迷惑というもの。
ましてや、幹部同士で喧嘩とか始めようものなら大変なことになるでしょう。
ですので、私は聖霊少女団の教導員騎士としての立場でですが、戻ってきた皆様に説教を入れようと思いました。
身分的には走って行かれた方々より遥かに格下ですけど、その格下の私に対して茸島での緊急走行手順についてマニュアルの配布回覧にはんこついた方が2名、いらっしゃいますから。
ええ、アルトさんと…そして、ベラ子陛下です。
それに聖院のマリア様も、ゆくゆくはそっちの茸島の開発を進める立場ですよね。
あんな走り方してたら、下手すると金玉高原の外輪山をかすめて走る山道でも作ろうものなら、せっかく切り開いた山道が崩れてしまいますよ。
(わかってるけどたまにはストレス発散したいのよ!運動不足解消は女の義務よ義務!)
(あたしも嫌なのですけど…でも最近はあまり走ってなかったし…)
そもそも痴女種だから太らんでしょうがっ。
特にベラ子陛下。
人に走るなとか遠慮しろとか言ってて、何をしておられるのか。
罰として今後1ヶ月は私、中井ティアラへの面会を禁じようと思います。
いいですね!
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べらこ「ティアラちゃんの私的な理由で勝手に罰を決めないでください」
マリア「いや、あたしからの罰とする」
べらこ「えええええ!それはねーさんの横暴です!」
マリア「るせぇっ!おばさまが一緒だからあまり強くは言わねぇけどな、お前ら…かんぽ平原のパルマスってとこから3時間でアルゼンチンチンってな、音速で走らないと行き着けねぇ距離があるっての忘れてるだろ…」
あると「しょうげき波でじめんのうえのものをこわさないようにはしましたが…」
マリア「被害ゼロにゃできねぇだろ…」
あれーぜ「いや、ついアルトが逃げるもので」
マリア「おばさまは衝撃波を緩和しておられましたからまだよしとしても、逃げるアルトと…そして白マリ、あんただあんた!」
まりあ「いいじゃんっ木を何本か折ったけど、帰りに修復しておいたわよっ」
マリア「治しゃ済む問題じゃねぇだろ…聖院のブラジルで同じ事すんぞっ」
まりあ「ちなみに聖院側だとおばさまが最初の視察を始めた時期ね」
マリア「まぁ、ベラ子はいい加減ティアラちゃんべったりになろうとするのをやめろ。南洋行政局絡みの仕事もあるんだからよ…」
べらこ「という訳で、オリューレさんの方でも何かが起きているようなのです…そっちは闇堕ちマリアの方で」
おりゅーれ「尻出国で遊んでばかりでは部下に示しがつきませんよ。それにベテハリとアニサを茸島か南洋島に戻して南洋慈母寺の長にするんですよねっ」
べらこ「みんなして仲を引き裂こうとする…」
てぃあら「仲を引き裂く以前に、主君と臣下、それも私は格下も格下ですよっ」
べらこ「白薔薇三銃士の一人ではないですか…」
てぃあら「とにかく南米視察が終わってからにしてください…それに陛下、この後の淫化編で、どのみち淫化に来ることになるのでは?」
べらこ(そう言えば淫化がありましたね…ふむ、ここで功を焦るのは時期尚早…ぐふふ)
てぃあら(アルトさん、正直、淫化に行った際にベラ子陛下の出番って…)
あると(アレーゼさまが呼ばない限りでばんはおまへん)
てぃあら(ですよねー。私たちで何かあっても片付けてしまえばベラ子陛下が淫化に来る必要はなし、と。…ぐふふ)
マリア(そのいやらしい笑いだと、お互いに最悪の事が起きるフラグが立つと思うぞ…)
まりあ「という訳で、南米編のお話はまだまだ続くのよっ」
中井ティアラです。
で、キノシタ大尉とかいう人のお話は私も機内で聞いていたのですが、なんともはや恐ろしいことになっているようですね、今のブラジル連邦共和国。
確かに豊富な資源と膨大な人口に支えられて、それなりに繁栄しているのは、ついでに飛んで頂いたリオデジャネイロやサンパウロ、そしてブラジリアの発展を上空から拝見しただけでもよくわかります。
ですが、痴女種能力を使って探ったスラム街の惨状や、鉱滓ダムと呼ばれる鉄鉱石の洗浄かすを貯めておくダムの決壊後…つまり自然破壊の状態ですとか、ビトリア製鉄所を上空から見た後で飛んだ連邦世界のアマゾンの大規模な伐採後の環境破壊の話などなど、まさに現地を見ながらキノシタ大尉が解説するたびに皆が絶句します。
で、キノシタ大尉のお話は続きます。
(皆様にお伝えしたいのは、この惨状それ自体の修復の依頼ではありません。むしろ、この惨状を招いている汎銀河人類族連邦政府下諸国が、我がブラジル連邦共和国の資源や人に依存している状態と、我が国の貧富構造格差に目を向けて頂きたいのです。言うなれば非正規に居住している貧困難民も同然の貧民層を維持することで、鉱物資源掘削採集や農業林業の労働力を廉価に得ている皮肉な一面があるのです)
(インドのカースト制と似たようなもんね…)聖院のマリア様が呟かれます。
(木を切り出したり山を掘って石を取り出すなど、辛い仕事を貧しい人にさせているのですね…)
(確かにインドほど明確な宗教戒律がある訳ではありませんが、実質的な貧富格差は頑として存在しますからねぇ…リオデジャネイロの海岸沿いに建つ邸宅や高級アパータメントとスラム街を見比べて、これが同じ国の国民生活かと曽祖父や祖父は絶句していたようですが…)
ああ、キノシタ大尉は現地ではニッケイと称されている日系人であって、純粋な日本人ではない方ですので、この格差が生まれた時から存在していたという価値観をお持ちなのですね。
なるほど。
(ただ、私も貧民の生活が原因で起きている国内の暴動や貧困事情、そして伝染病蔓延などの発展阻害要因であるという認識は持っています。一例を挙げますと、かなり昔の話になりますが、西暦1970年代にゴイアニア市で発生した放射線被曝事故が、我が国の貧困層の知能を示す皮肉な指標となりますかと)
(あー、あれか…ティアラちゃん、今はまだしも、当時のブラジルは原子力発電所はまだしも核兵器なんて持ってなかったし、原発が初稼働するのはもっと先のことなの。じゃ、なんで放射線被曝なんてことが起きたと思う…?)と、聖院のマリア様に尋ねられますが。
(うーん、わかりません)
(セニョーラ・ナカイ…原因になったのは、市内の病院だった廃墟を探索していた物盗りの若者二人が持ち帰った、高価そうに見えるダイヤルロック付きの容器だったのです。実際、それなりに高価なものだったのですけどね)
(病院というところにヒントがあるのよ…あ、そうか、ティアラちゃんは物心ついた時から痴女種として過ごしている時間が長いもんね、病院でやってる検査とか、いまいちピンと来ないでしょう。で、普通の人の場合、病院では身体の透視像を撮影したり、あるいはガンなどを治療するために使うものがあったのよ)
(で、盗人の若者が持ち帰ったのは、セシウム137という物質を格納した容器だったのですよ。この物質は容器から取り出すと薄青い不気味な光を発するのですが、散々に苦労して金目のものを取り出したと思った若者たちは、この微細な粒状のセシウムを近所の人たちにお裾分けしたり、見せびらかします…ますが…)
(あれさぁ、光るからってカーニバルの衣装の飾りに取り付けるとか恐ろしい事を考えた人もいたのよね…)
どうやら、マリア様はことの顛末をご存知のようですね。
(でさ、最終的にはその若者が容器を持ち込んだ解体屋の夫婦を含む4人が死亡しただけじゃなくてさ…遮蔽容器の中の鉛を含めてお金になると思った解体屋の店員たちも廃病院に行って、残りの放置格納容器を盗んで帰ってるのよ…)
(なぜそのような危険な容器が廃墟に放置されていたのか詳細は省きますが、一言で申し上げますと我が連邦共和国の汚点たるずさんな処置を許した気風、これに尽きます。そして…死者4人で済むわけはなく、厳重に密封された格納容器に仕舞い込まれているべきはずの危険な有害物質を素手で触ったり、あるいは被曝する距離まで近づいて眺めた住民たちが次々と身体の異変を訴え、11万人を市内のスタジアムに隔離して放射能汚染検査を行う羽目になったのです…)
11万人って…今の痴女皇国世界のマドリードの倍の人口じゃないですか。
(そして、重度の被曝汚染に晒されて指などを切断せざるを得なかった者や、即死こそ免れたものの、後に後遺症に悩まされた挙句早死にした者などの総数は249名にも及びます)
(まぁ、いくらその時期の世界だと原爆の被害にあった日本以外では一般の民間人に放射性物質の危険があまり知られていなかったのはあるとしても、無知って怖いよねじゃ済まない話になったわけよ…)
ええ、なんでそんなものを盗んだとか、そんな危険なものならば容器やその周囲に何か注意書きの類があっただろうに何をやってるんだなどなどの反応、多数。
むろん、ことの重大さをあまり理解できない女戦士の方にも「人を治す呪術師の使うものには危険な石があり、その石を扱う手順を知らずに許しなく触った罰が当たったのである」という感じで理解を頂いたようです。
要は、勝手にそこらのもん、盗むな。
これに尽きるでしょう。
(まぁ、これは鉄鉱石も該当するんだけど、鉱物の原石の中には危険な有害化学物質を含むものも決して少なくないのよ。で、ブラジルだけじゃないんだけど、原鉱石を洗って有害部分を取り除いたりしたカス混じりの水をダムに貯めて、汚染物質を沈澱させて上澄みの水だけ川の下流に流すようなこともしていたのよね)
(その目的で建設された鉱滓ダムの決壊で、下流の畑はもちろん、町の水道までもが汚染された事故が数件発生しています。その際には溢れた汚染水によって、ダムから先の土地は広い範囲にわたって使い物にならなくなったのです)
うわぁあ…まさに、人災というべきでしょう。
(ちなみにティアラちゃん、海賊共和国の島々などに置いてる灯台の水銀軸受に使ってる水銀、あれもものすごい危険物質なのよ…ただね、昔の方法だと、金を鉱石から取り出すのに水銀を使う方法が確実だったの)
え…。
(比丘尼国の大和の国にある大仏…大きな仏様で仏型最終決戦兵器は、連邦世界の奈良県東大寺だと、ただの青銅製の単なる仏像です。14歳の子供をいけにえにして動くことはありません)
なんでそんなもん持ってるんですか、比丘尼国。
(昔、強くて凶悪な上に、人や神様と敵対していた鬼さんをしばくためだったのよ…ただ、実際に使う前にちょっと待てさすがに被害甚大ってことで、結局は試運転しただけなんだけどね…まぁ、ともかくその大仏様は連邦世界だと、製造した当時は金色に輝いていたんだけどね…)
(あ、なんか話が見えた気がします。つまり、そんな大きな仏様を全部、金で作るわけにいかないから表面だけ金で塗ったとか)
(惜しい!ええ…その時は最新技術だった金メッキという方法で、銅の表面に金の膜を作ることにしたのね。ただ…その、金メッキの際にも水銀を使ったのよ…そして、水銀を熱で蒸発させた際の蒸気を作業者がことごとく吸い込んで、水銀中毒者を多数出すはめになったの…)
(アマルガム法ってやつだよ。ま、金銀をあたしらが握ってる理由の一つに、人体には極めて有害な物質を多量に使わないと純金が分離できないってのもあるんだ。精錬法自体は各地の大学に伝えてはいるけど、実際には危険だから学校の授業課程の実験以外ではやらないでくれって申し渡してるし、だいいち試そうにも主な金鉱はあらかた空っぽにしてるからな)
(マリアリーゼ陛下、その金ですが、これまたアマゾン奥地の砂金産出地帯での話、セニョーラ・ナカイにさせて頂こうかと)
(ああ、ガリンペイロの件だろ。あたしがするよ。で、川の泥や河岸の土の中に微量の金が少なくない量で含まれている地域じゃ、その砂金を集めて生計を立てる奴が現れたんだ。これはわかるかい?)
ふむふむ。なんとなく。
(で、金だから僅かな量でも貧乏な人には1日の生活費には十分ってことになってしまうんだ。そして、ひたすらにどじょうすくいのような姿勢で湿地帯や泥濘地で金をすくって暮らす貧民階層が生まれるほどになったんだ。これが、現地ではガリンペイロって呼ばれてる貧民層の由来さ)
(ありがとうございます。セニョーラ・ナカイ…更には、このガリンペイロだけではなく、貧民たちを労働力や主な収益源としてはびこるギャング…犯罪組織の存在が、改善を困難としているのです。豊富な資金と武力、そして軍や警察の腐敗を利用して彼らは政府に癒着しています。彼らは警察や軍から不正に横流しされた武器で武装してすらいるのです)
えええええ。
(まぁ…ですので、コカインを効果淫にしてしまったことは犯罪組織には極めて甚大な打撃だったようなのですよ…痴女皇国に直接苦情が言えないので、政府機関を通じて文句たらたらだというのは私も存じております。反・痴女皇国のロビー活動に人的資金的に協力する他、効果淫からコカインの類似覚醒物質を再生成できないかと研究させる資金まで投入しているようですが)
(あー、それこっちでも把握してるから大丈夫だよ、キノシタさん。そのためのヴァンセンヌ娯楽館、そしてフランスの掌握なんだわ。フランスの次期大統領にポワカール夫人が内定も同然なのは聞いているだろう?)
(は、マリアリーゼ陛下。こちらにも伝わっております…そして、連邦宙兵隊幕僚部直轄の情報機関、英国とフランス特殊部隊出身者を中心とした編成に切り替えて行っておられるとも)
(ぶっちゃけ戸籍ロンダリングでNBのフレミング機関員を送り込んでるしね。あたしの母親の高木ジーナはともかく、今やアグネス下院議員ですら英国籍を取得してるし政府機関要人として連邦政府事務局に堂々出入り出来る立場になったしな)
(は。私どもの方でも連邦政府への浸透工作に余念はありません。何せ大統領から閣僚、有力議員に至るまで、下半身が潔癖ではない持ち主多数ですので、逆に浸透は容易ですわね)
(ティアラちゃん…駄洒落菌を使って選択的に政府要人の愛人さんや奥さんに娘さん経由でブラジルの政府要人や経済界の有力者を汚染しているんだよ、堕天使さんたちの協力も得てな…)
(セニョリータ・ナカイ…彼らは今や、そうとは気づかずに痴女皇国への利益誘導役として我々の管理下に入りつつあるのです。私がこうも堂々と、皆様をご案内して領空を飛行できるのも、その成果の一つとお考えください)
どうやら、痴女種による浸透工作とかいう作業はこのブラジルでも行われていて、それなりの成果を上げているようですね…。
(だからこそ、尻出国ではしくじって欲しくないんだよ…連邦でもNBと提携して人間の資源化を模索する方向に入っているんだけど、その先行実験を痴女皇国、そしてNBで順次行うことで問題点を洗い出す必要もあるんだけど、事態が切羽詰まってるのはどこも同じだ。ただ、倫理基準がうるさくない我が痴女皇国世界の地球で試すことで、問題点を炙り出しやすくする狙いがあるんだよ)
それはわかります。
やはり、いちばんに邪魔が入りづらいのは痴女皇国世界でしょう。
灸場がそうでしたけど、私ですら「こんなこと、連邦世界でやったら反対の声多数」だと思えます。
ただ…私を更に驚かせる話、オリューレさんから聞かされる事になるとは、この時は思いもよりませんでしたよ…。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/204/
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さて翌日、改めて訪れたかんぽの大平原。
今度は聖院からテンプレスが来て下さいまして、私たち以外にも首狩り族や女戦士族の主だった方々をお連れしている他、いったん連邦世界に転移して飛行機ごとキノシタ大尉を受け入れてから、かんぽの平原に移動。
その所要時間、30分未満。
昨日、目星を付けておいた場所の地表すれすれに降りたテンプレスから大型エレベーターで地面に降ろして頂きます。
で、朝日が上がり始めたばかりのかんぽの平原を見て回る皆ですが、ところどころに危険な生物…アリクイなどがいますので、必ず騎士が付き添うようにしております。
で、キノシタ大尉も飛行服を脱いで、赤薔薇騎士団の制服姿に変わっておられます。
見た目は私からしても日本の方っぽいのですが、普段の言葉はポルトガル語だそうですね。
(頭の中味を見て頂ければ分かりますが、我々日系人は現地に根付いておりまして、白人やバルド…混血人種とほぼ変わらぬメンタリティを有しております。もっとも、親や祖父・祖母の教えと生活様式を守って日本語も会話可能な者もそれなりに数がおりまして…私もそうなのですがね)
ただ、下着の傾向は現地の人、まんま。
(群馬県で働くニッケイの労働者の町には、こちらから移り住んでブラジルの流行の服を売っている者もおりますよ)
ええ…痴女皇国の制服まであと一歩のド派手かつ猥褻な下着や水着を平然と着るニッケイ女性も多いと。
更には。
(尻を出す下着や水着で当たり前、むしろ恥じらう者はニッケイの中にも皆無に近い有様ですね。ただ、男たちはポルトガルの影響もあって男らしい服装や振る舞いを好みます。やたら上半身裸になりたがる傾向までは真似しなくとも良いかも知れませんけどね)
ふむふむ。
(女性が尻を出す下着を好むというよりは、現地先住民の服装習慣に由来するのです。痴女皇国世界でも尻出国の名前で呼ばれていますが、アマゾンに生息するカンジェロ…カンジールという肉食ドジョウの攻撃から身を守るためにも、女性は貞操帯を自作して水浴びや漁に赴いたのです)
この人食いドジョウ、なんと水中に入ってくる動物の穴を狙い潜り込んでくる習性があるそうですね。
で、人が水浴びを楽しみ身を清めようとすると、その膣や肛門を狙って潜り込み、肉を食い荒らすのだそうです。
更には食われた穴から流れ出た血の臭いを嗅ぎつけたピラニアやワニが寄って来るとか、痛みに耐えかねて暴れ溺れてしまい結局は魚の餌になってしまうとか、侮れない恐ろしさがあることを教えて頂きます。
(ですから、川に入る際には必ずカンジェロ対策として下着か水着を着込んで頂くべきです。痴女種ならば放熱や強烈な膣圧攻撃ですとか、更には身体の瞬間効果でカンジェロが齧れないようにしてしまったり等、反撃の手段はいくらでもありますが、隙を見せればまず、齧られて痛い思いはしますからね…)
なるほど。死なないだけで最初の攻撃を受けて痛いと泣くのは同じ、と…。
ベラ子陛下。
今度私になんかしたら、水中でおめこを犯させてください。
もちろん、下着なしで。
ちょっとは痛い目を見た方がいいと思えますから。
(股間にはちみつを塗ってアリの巣の側に放置しますよ…あのペルシャの凌遅刑のように…)
(マリアリーゼ陛下。あの軍隊アリとかいうアリって、陛下の言うこと聞くんですか)
(いや、ティアラちゃんの言いたいことはわかる。アルゼンチンチンから冷凍肉を輸出するための屠殺処理設備が立ちあがってるから、そこで出た血を数百CC貰えばそれで用事が足りるだろ。あとはベラ子の身体を拘束して、軍隊アリにかじらせたいところに血をかけて進路上に放置すればいいと思うよ)
(ねーさん、それ、あたしの懲罰を認めてませんかっ)
(るせぇっ。豹に襲わせるぞっ)
見れば、アレーゼ様やアルトさんの前に、立派な豹の家族が現れて服従の姿勢を取っています。
更には、立派なたてがみというか、馬の毛のようなものを首の後ろに生やした狼や、巨大なアリクイたちまでもがのしのしと現れてはアレーゼ様に平伏したかのように。
更には野生馬らしきを倒して来たのか、その肉を献上しようとするオオカミの群れに苦笑するアレーゼ様ですが、何をなさっておられるのでしょうか。
アルトさんは豹の喉を撫でて遊んでおられますけど、怖くないのですか。
首狩族の男性や女戦士の皆さん、ドン引きしてますよ。
(おおきなねこのようなものです。あたくしのつよさをわかってじゃれておるのです)
まぁ…懐かれているのはいいことですね。
豹の子くらいなら、私の方に寄って来てもらっても。
モフらせてもらえないか聞こうとしましたところ。
「ティアラ、この獣たちを管理する立場の存在に聞いてみたが、ふたつ足…つまり、我々人類が迂闊にこの平原を切り拓けば、ゆくゆくは君が元いた世界以上の災厄が訪れる事になるだろうとのご託宣だ」
それ、どなたなのでしょう。
「マリアヴェッラの中におられるよ。初代様がその人だ」
えええええ。
(ふほほほほほ。どうも、淫化の母神パチャママとはわたくしでしてよっ)
(このおばちゃんは何をしているのですか…しかも確か、パチャカマックという無責任な創造神もいて…)
(マリアヴェッラ。あれは姉でしてよ…)
(あのなぁてるこ。わしも、ほったらかしにしたかったわけとちゃうんやぞ…)
これは…いわゆる、おかみ様ですね。
はるか昔の事とは思いますけど、一体全体、この南米くんだりで何をしておいでだったのでしょうか、この方々は。
(何って…ちきゅうのあちこちに神と、神をあがめるしもべとして人を配しておっただけですわよ…)
(そやそや。ちゃんとしごとしとるんやぞ)
(まぁまぁ。しかし、初代様におかみ様。かと申しても、この動物たちの生活の場をある程度は脅かさなければ豆畑も作れはしないでしょうに…)
(おやおやアレーゼ、あなたほどの方が頭を抱えるとは。しかし、てはありますわよ。…そこなユウコとやらの国にきょうりょくしてもらう必要はおありでしょうが)
(はぁ…何をお考えに…)
瞬間、閃くものが。
(アレーゼ様。理解できました。即ち、初代様はこの簡保平原に豆畑を切り開く事で住処を追われる動物、そっくりそのまま連邦世界のブラジルに移すことをお考えでは)
(ティアラとやら、ご明察でしてよ。ユウコ、マリアヴェッラ経由で探る事ができましたが、よもやれんぽう世界の側のこのかんぽ平原、そなたたちの許しなく密かに畑を作って豆を売りさばいておる不届き者、決して少なくないとみましたが、いかが?)
(は…推察の通りです。元来はカンポ・デ・セラードの開発は許可制です。ですが、商品作物として売れると知った者たちが密かに草原や森林を切り開いて勝手に畑を作っているのです。当局も取り締まってはいるのですが…)
(それに、これらのどうぶつ達のすみかをなかば無理に切り開いたことで貴重な生き物が減ったのにあせって、のこった場所をこうえんとやらにしたり等々、あとおいの対策に追われているとか。マリアリーゼ)
(へいへい。で…キノシタ大尉、いや痴女皇国ブラジル連邦共和国連絡事務室長。あたしらなら割と簡単に、この動物たちを何とかできるって思ってくれてないか)
(はい…私ごときには無理でも、陛下他、幹部痴女種であれば…)
(まぁ、あたしにもできない事はあるし、初代様やアレーゼおばさまの力も借りないとダメな話もいくらでもあるけどね。だけど…)
(マリア。お前ならば割と楽にできるのではないか?)
(そっすねー。例えば、向こうの違法大豆畑とここの草原、そっくり入れ替えるとかね。そうすりゃ大豆も黙って手に入るし、ついでに違法畑で操業してる労働者には気の毒だけど、経営者含めてそっくり痴女皇国に来てもらって罪人として処理しちまえば文句を言うやつもいねぇだろって筋書き、書けますね)
(なるほど、どうせ無許可で切り開いた大豆畑なら畑ごとそっくり頂いても誰が文句を言えるかと言うわけだな。いいだろう。マリア、私はティアラたちを引率してこの南米の大地を巡察するのが今の最大優先事項であると思っているが…)
(確かに、下手にティアラちゃんたちに手伝ってもらおうにもこれはちょっと大仕事ですよね。まぁ、今すぐどしんばたんと片付けようと思えば片付けられますけど…海綿菓子国の未来にも関わる話なので、幹部会を開催して方針や計画詳細を決めてからかかるべきだと思えます。曲がりなりにも、尻出国の原住民を含めると数百万人の人々の未来にも関わって来る話でしょうから…)
(済まんな、元来であれば私が主導して話を決めるべきであろうが、ブラジル連邦共和国との話にもなるだろうから、連邦世界での地位も有するマリアの方が事業を進めやすいだろうと思ってな…)
(いえいえ。決めさえすりゃ実際の施工は早いこと済みますよ。既に、大豆の原種種子などはブラジルで使用しているものの入手も済ませてもらってます。あとは土地を確保して土壌性質を変更するくらいですね。まぁ、農機具なんかは大規模な農園用の機械化機材を調達するくらいか…一ヶ月ほど頂ければ、豆畑にとうもろこし畑、四国くらいの面積は用意できるかと)
つまり、この瞬間にこの、かんぽ平原の開拓は痴女皇国の国家事業扱いに格上げされたと見るべきでしょう。
しかし、そうなりますとますます私のやる事が…。
(とりあえずティアラちゃんはおばさまに付いて、次の視察地に向かってくれればいいよ。えーと、次はアルゼンチンチンか。本当はそのままアマゾンを遡って淫化に行くのが話が早いだろうけど、パンパの開発はスペイン管轄でもあるしな)
はぁ。
(確かに国土開発のような重要事業に参加するのも大事だけどさ、専門家でないと辛い事もあるから気にしなくていい。それよりは自分の見識や見聞を広めるのと、聖隷少女団の活動のために必要なことを考える機会をもらったって思えばいいんだよ)
とまぁ、マリアリーゼ陛下には学生身分の延長めいた立場で出来ることを期待されているようです。
それに…本格的な土木や治水となれば、明らかに専門家以外が口をはさめる話でもないでしょう。
(南欧支部の利権に関わる話ですから、本当は口を差し挟んで欲しかったのですが、規模が大き過ぎるとあっては確かにティアラには辛い話になりますわねぇ…)
無茶言わんでくださいよ…イザベル陛下、こんなだだっ広い平原の開拓、いくら痴女種でも1ヶ月で終わる話じゃありませんよっ。
「ふっ。まだまだティアラちゃんにはしゅぎょうがたりませんね。あんですの山奥で修行するのです」
(アルト…ティアラちゃんをヨガの眠りが必要な7つの姿に変身させたいのか…耳毛が生えたらどうするんだ…)
やめてくださいお願いします。
それとアルトさん、自信満々ですが、何をする気なんですか。
「あたくしが蟹いしょうを着ればよいのです。いえ…着なくてもあらいざらいふきとばせばよいのでしょう?」
(や・め・ろ)
「アルト。そんなに暴れたいなら、ティアラを背負って私とマツカゼに付いてくるか。なに、ここからブエノスアイレスまでは3,000キロほどだが…私たちとお前ならば3時間ほどで着けるだろう」ぐわしっ、とアルトさんの背後から両肩を掴む手が。
見れば、アレーゼ様が筋骨隆々な姿に変わっておられます…。
ええ、女戦士の方が畏敬の視線を向けておられますが、その被害を被りそうな私にはアレーゼ様の筋肉美を褒める余裕などありはしません。
むしろ、3,000キロを3時間って、音速で地表を走るってことじゃないですか。
私の認識で言えば、茸島での緊急出動訓練に匹敵するスピードで延々と走ったりジャンプするはめになるんですが。
しかも、アレーゼ様の話しぶりでは、アルトさんが私を背負うのを嫌がるのは明白ですし、そうなれば私を馬の後ろに乗せてアルトさんを単独で走らせるおつもりなのでしょう。
ええ、アルトさんが脱兎の如く逃げ出したので、本当にアレーゼ様はそうなさるおつもりだと悟れましたから。
しかし、アレーゼ様が猛然と追いかけて走り去っておしまいに。
それは良いのですが、私はどうすれば良いのでしょう。
(多分1時間未満で戻ってくるわよ。アルトじゃおばさまから逃げ切れないし)
でしょうねぇ…とりあえずはアルトさんの無事でも祈っておくことにしましょう。
なんでしたらベラ子陛下も、運動不足解消のために一緒に追いかけて来られたらいかがですか。
(無茶を言わないでください…)
(っていうかアルトさんの能力解除したらベラ子陛下と同等かちょっと下でしょう? 私ではもちろん無理ですけど)
(ティアラちゃんの言い方に猛毒を感じます。そんなに肩で息をするあたしが見たいのですか)
「ちょうどいいんじゃない?で…あたしも最近は聖院本宮からあまり動いてないし、ベラちゃんちょっと付き合ってもらうわよっ」
言うなり、強制制御がかかったのか、はたまた、またもや初代様に身体を乗っ取られたのか。
ベラ子陛下も、アルトさんやアレーゼ様を追って走り出します。
そして、その後をこれまた猛然と追いかける聖院のマリア様。
「あの…聖院の方々が尋常でないお身体だとは存じておりますが…」
ええ、ジョアン4世陛下が呆れておられます。
もちろん、この私も。
しかし、こうも申し上げる事ができるでしょう。
「陛下。えらい人というのはなかなか、一般人の頭では推し量れないことを考えたり実行に移すものです。陛下のお身体も、言ってみればそんな無茶な思いつきのせいで巻き添えを食って偽女種になってしまったようなもの。それを思えば、私たちにとばっちりが来なくてよかったと思うべきでしょう」
「ま、まぁそれはそうではあるな…あるのだが…セニョーラ、そなたはイザベル陛下はもちろん、聖母マリアヴェッラ陛下他、痴女皇国の重要人物と親しいとも聞く」
「ベラ子陛下が勝手に親しくしようとしておるだけですが、まぁ他の女官よりは話をする事が多いでしょう。して陛下、私に頼まれたい事がおありのご様子ですが、ベラ子陛下以外に申されるのであれば」
「いや、まぁあのその、くれぐれもああした戯れの矛先、我らポルトガルはもちろん、尻出の民に向けて頂かぬよう、重ねてお願いしたいのであるが…」
そりゃまぁ、そうでしょう。
あんなとんでもない速度で走って行ける人たちが、走るだけでも大迷惑というもの。
ましてや、幹部同士で喧嘩とか始めようものなら大変なことになるでしょう。
ですので、私は聖霊少女団の教導員騎士としての立場でですが、戻ってきた皆様に説教を入れようと思いました。
身分的には走って行かれた方々より遥かに格下ですけど、その格下の私に対して茸島での緊急走行手順についてマニュアルの配布回覧にはんこついた方が2名、いらっしゃいますから。
ええ、アルトさんと…そして、ベラ子陛下です。
それに聖院のマリア様も、ゆくゆくはそっちの茸島の開発を進める立場ですよね。
あんな走り方してたら、下手すると金玉高原の外輪山をかすめて走る山道でも作ろうものなら、せっかく切り開いた山道が崩れてしまいますよ。
(わかってるけどたまにはストレス発散したいのよ!運動不足解消は女の義務よ義務!)
(あたしも嫌なのですけど…でも最近はあまり走ってなかったし…)
そもそも痴女種だから太らんでしょうがっ。
特にベラ子陛下。
人に走るなとか遠慮しろとか言ってて、何をしておられるのか。
罰として今後1ヶ月は私、中井ティアラへの面会を禁じようと思います。
いいですね!
--------------------
べらこ「ティアラちゃんの私的な理由で勝手に罰を決めないでください」
マリア「いや、あたしからの罰とする」
べらこ「えええええ!それはねーさんの横暴です!」
マリア「るせぇっ!おばさまが一緒だからあまり強くは言わねぇけどな、お前ら…かんぽ平原のパルマスってとこから3時間でアルゼンチンチンってな、音速で走らないと行き着けねぇ距離があるっての忘れてるだろ…」
あると「しょうげき波でじめんのうえのものをこわさないようにはしましたが…」
マリア「被害ゼロにゃできねぇだろ…」
あれーぜ「いや、ついアルトが逃げるもので」
マリア「おばさまは衝撃波を緩和しておられましたからまだよしとしても、逃げるアルトと…そして白マリ、あんただあんた!」
まりあ「いいじゃんっ木を何本か折ったけど、帰りに修復しておいたわよっ」
マリア「治しゃ済む問題じゃねぇだろ…聖院のブラジルで同じ事すんぞっ」
まりあ「ちなみに聖院側だとおばさまが最初の視察を始めた時期ね」
マリア「まぁ、ベラ子はいい加減ティアラちゃんべったりになろうとするのをやめろ。南洋行政局絡みの仕事もあるんだからよ…」
べらこ「という訳で、オリューレさんの方でも何かが起きているようなのです…そっちは闇堕ちマリアの方で」
おりゅーれ「尻出国で遊んでばかりでは部下に示しがつきませんよ。それにベテハリとアニサを茸島か南洋島に戻して南洋慈母寺の長にするんですよねっ」
べらこ「みんなして仲を引き裂こうとする…」
てぃあら「仲を引き裂く以前に、主君と臣下、それも私は格下も格下ですよっ」
べらこ「白薔薇三銃士の一人ではないですか…」
てぃあら「とにかく南米視察が終わってからにしてください…それに陛下、この後の淫化編で、どのみち淫化に来ることになるのでは?」
べらこ(そう言えば淫化がありましたね…ふむ、ここで功を焦るのは時期尚早…ぐふふ)
てぃあら(アルトさん、正直、淫化に行った際にベラ子陛下の出番って…)
あると(アレーゼさまが呼ばない限りでばんはおまへん)
てぃあら(ですよねー。私たちで何かあっても片付けてしまえばベラ子陛下が淫化に来る必要はなし、と。…ぐふふ)
マリア(そのいやらしい笑いだと、お互いに最悪の事が起きるフラグが立つと思うぞ…)
まりあ「という訳で、南米編のお話はまだまだ続くのよっ」
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