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アルトリーネの冬修行・ブロッケン山死の行軍・2

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「しかしアルト。お前、本当に大丈夫か…?」心配そうに覗き込むアレーゼ叔母様ですが。

(だいじょうぶなわけがないですぅ…)

えーと。

思いっ切り頭から雪の中に刺さっていますけど、生きてますかアルトさん。

さすがにちょっと気の毒な気がします。

ですが、あと数日のうちに、わずか3名で1万の軍勢を雪深い森の山中におびきよせて倒さなくてはなりません。

雪に覆われた山中の森林に慣れるのも必要な事なのです。

アレーゼおばさまに両足を掴まれたと思った次の一瞬に引っ張り出されてますが、雪上に座り込んでさめざめ泣いてるアルトさんをよしよししておきましょう。

あとジョスリン、アルトさんを雪山に慣れさせたいがための話なのですがね、特殊部隊所属だったのならば雪山訓練とかしてたのですか。

(無茶を言わないで下さい。私のPMC時代の主戦場、アフリカばかりですよ。それも西部から北部中心ですから、ジャングルとサバンナ地帯が中心ですね。砂漠もあるにはありましたが…そうだ、マドモアゼル・ドミニクの趣味はスキーです。以前のルルドでも少し話が出ましたが、冬休暇の際のバカンスの行き先はスイスまたはフランスアルプスというのが彼女の定番行為ですよ)

ほうほう。

では宙兵隊嘉手納基地にいるはずのドミニクさんに連絡を取ってみましょう。

(ボンジュール、陛下。聞こえていました。ジョスリーヌ…本国の陸軍山岳部隊辺りに依頼する方が話が早いと思うわよ…)

(えー、それが面倒だから貴女に話を回したのですが…)

(最近は横着しすぎよっ。…とりあえずゴルディーニ中将宛に緊急派遣要請、マリアヴェッラ陛下またはマリアリーゼ陛下、ジーナ閣下のうちどなたかから出して頂いて。あとですね陛下。バーデン=バーデンはそちらの世界でも既にスパがあるそうですね。えーと水着は…あ、そうか、ママの店の衣装か痴女皇国の制服装備があれば大丈夫ね…)

ドミニクさん…あなた結局は来る気満々なんですね…。ただ、スキーを持って来ても滑る場所がないと思いますよ、この時代…。

(雪中歩行装備としてのスキーがあるのですよ。滑るための構造ではないんですけどね。あと、大統領夫人に連絡させて頂きました。時間軸処理と後々の宿泊場所を提供して頂けるなら旦那様…即ち閣下自らお越しになるそうです。大統領閣下は本国帰還後、国内の山岳地帯での行動訓練を受けておられますので冬のシャモニーやピレネーの状況を知っておられますよ)

どっひゃあ。

あのー…バーデン=バーデンはドイツに該当する地域なのですが、フランスの大統領閣下自らがお越しになって大丈夫なのでしょうか。

(痴女皇国の間接統治下で支部所在地であれば問題ない。今、山岳地帯積雪迷彩装備品を取り寄せているそうです。明日にはそちらにお伺い出来るかと)

困りましたね。

ねーさん、きてもろて大丈夫なんでしょうか。

(とりあえず特等席で見学してもらえ。フランス陸軍の山岳部隊用TAPPS1装備なら光学アイの映像、連邦世界にリアルタイム送信するか録画できるからPRにゃちょうどいいだろ。あたしからも閣下と心話繋いで話をしとくわ。ベラ子は引き続き、アルトとおばさまの訓練に立ち会っておいてくれ)

へいへい。

あとジョスリン。

堕天使族の皆様といらん交渉、すんな。

今からちょっとそっちにしばきに行くから、ライン川の水で首を洗って待ってなさい。

------------------------

で、これの後の話ですが。

https://ncode.syosetu.com/n6615gx/83/

「陛下。それは反則では…」てめぇいつか覚えてろよという目で、カエル女がめそめそ泣きながら恨みがましくあたしを見るのですが。

「あたしがめんどくさいのと、マリー先生に合意を頂いた結果ですっ」

すぱこーん。あたしの横に立つ人物から痛恨の一撃が出ました。

「痛い痛いっ!マリーも手加減して下さいよっ!」

「ジョスリン、貴女が陛下に絡み過ぎるだけならまだしも、堕天使相手にいらん事持ちかけた件については、さすがにあたくしも懲罰に合意せざるを得ませんわよ。少しは反省なさいまし…」と、赤薔薇服に着替えてジョスリンにお折檻したマリーちゃん、はりせんをぶんぶん空振りしてジョスリンを脅しています。

うん、最近はあたしが直接にジョスリンをしばくより効率ききわけが良いという事で、今回「も」マリーちゃんに来てもらいました。

ついでに白金衣の加勢能力で10分限定の億卒昇格。しかも鬼細胞で強化されてるマリー先生です。

ジョスリンも決して弱いわけではないのですが、流石に奥さん役のマリー先生相手に全力は振るえず、あえなくマリーちんちんで犯されています。

(まぁつまり、陛下に対して不敬行為の程度が過ぎたり、あまつさえ誘惑や籠絡はもとより詐欺や欺瞞を働こうとした場合、罰が軽い場合でもこうなるとお考え下さいまし…)マリー先生の通告に対して、ルシフェルさん以外は全員ガクガクと震えている気配がします。

(言っときますけど、初代様にあたしの身体をお貸しするというですね、最終から二、三歩手前の方法もありますからね?)うん、あたしも脅しておきましょう。この方々、どうやら初代様が現役の神様をやっていた時代をリアルに知ってるようですから。

マリアヴェッラ陛下の弱点なんかあったっけとか、はたまた籠絡は難しいよねとかジョスリンを含めて困った声で心話相談しているのがダダ聞こえなのは、この際無視しておきましょう。

なんでこの方々はこう、悪事が大好きなのか。

反省という文字は貴女たちの脳内辞書にはないのですか。

(懲りてくれていたら元の世界への天界復帰もあり得たんだがなぁ…)上司に当たるルシフェル先生もお悩みのご様子です。

しかし、制御する手はあります。

マリーちんちんを使用されているジョスリンの感覚、ルシフェルさんがソロモン72柱とかいう堕天使の皆様全員に繋いで共有させていましたから。

つまりですねぇ、身体を与えてもらえるとちんちん咥え込めまっせ。

更には、働きが良ければちんちん装備させたげますよ。

なにせ、基本的に人を堕落させるように心技体を特化させている個体が多い堕天使さんたちです。

人を堕落させるためにも使える痴女種の身体に目が行かない訳がありません。

要するに、痴女種として精勤してくれるなら身体渡します。

しかし働きが悪かったり暴走や謀反をやらかすならば身体、取り上げまっせ。

それと監督役、ルシフェルさんだけじゃ不十分なのはわかりました。

ですのでうってつけの監査役候補、こちらから任命しましょう。

(マリアヴェッラ。あたくしを厄介払いする気ですか…?)

「そのような事は微塵も思っておりません。ですが、堕天使の皆様と顔なじみな上に恐ろしさが知られている。こんな好適な人事を実行しない話はないと思えるのですっ」

(まさか、あたくしをルシフェルに押し付けるとか考えておりませんわよね?)

「そのまさかに決まってるじゃないですか。それに今後の人事異動でジョスリンを情報部長に引き上げたり、雅美さんの内務局長昇格が内定している中で初代様の復活話が怪しくなってる件も聞いておられますよね?」

ええ。別に四六時中、初代様に行動行状を監視されるのはまだしも、あれしたいこれしたいあれ飲みたい食べたい等々の初代様からの要望の数々がいい加減ウザくなっている訳じゃありませんからね。

ほんっとーにこの贅沢おばちゃんとか思ってるわけじゃないですよ。

それに初代様、ルシフェルさんならちんちん、あるでしょ。

(つまり、マリアヴェッラをしばくという誓いを果たすためにルシフェルに相乗りしろと。なかなかに魅力的な提案ではありますわね。ただ…マリアヴェッラ…もちろん、何かしらの思惑はありますわよね?)

(もちろん堕天使族の監視という意図があります。単純に上位の女官に憑依させるだけでは不安に思えるのはこのカエル女を見ての通りですが)

(そもそも痴女種自体が堕天使に悪影響を受ける可能性は否定しませんが…小官だけをご覧になって判断されるのいかがなものかと!)

(おーいベラ子。お前の懸念してる件なんだがよ。それ、改良型駄洒落菌で解決するから)

え。

言っちゃ何ですが何でまた、駄洒落菌で。

(これは堕天使の皆さんもよく聞いといてくれ。連邦世界、そして聖院や痴女皇国世界の日本のごく一部地域に居住する人間中心に細々と繁殖してきた駄洒落菌だが、自己寿命を待つ以外に完全な駆除が難しい菌なんだわ)

ふむ。

確かクリスおじさまが言ってましたね。ファージに捕食させてもわざと食べられる代わりに遺伝情報をファージに書き込んでしまうと。

(そそ、そして有害微生物駆除用のナノマシンやマイクロロボットでも完全駆除は困難なんだわ。何故なら鬼細胞以上の高速度で人間なら人間の遺伝子に自己転写する習性があってな。その人間の細胞を全て駄洒落菌のDNA/RNAが含まれていないクリーンなものに置き換えてしまわないと根絶は不可能って父様とファインテックが結論を出した)

えええええ。

(まぁ安心しろ。駄洒落菌原種は駄洒落を理解しなかったり、駄洒落に寒い反応を示さない人間とみると数日で死滅するか、活動を休止するだろ)

はい。だからこそ駄洒落山近辺でしか症状が観測されなかったんですよね。

(で、ナノマシンシステムだろうがマイクロロボットだろうが、人間の身体に入り込んで異物扱いされないためには極小構造を取るか、天然の生物細胞に近い素材で構成されている必要があるよな)

はい。

(つまり、DNA/RNAを転写可能なアミノ酸構造物であれば駄洒落菌が取り付いてしまうんだよ。他の真核生物同様に、食われたと見せかけてな…)

あー、だからこそあれは危ないって母様が危険生物指定をかけようと必死になってたあれですね。

(まぁ、原種についてはものすごく微妙な繁殖生態が解明されたし、実害は僅少って事で事実上は放置になったんだけどさ…痴女皇国で改変した改良型菌株、いくつかあるだろ)

はい。生物兵器一歩手前なあれですね。

(現在、この痴女皇国世界に有機生体として存在したが最後、駄洒落菌改良種の1つには確実に感染する)

えー?

(まして、あたしらが義体またはMIDIボディを装備させた場合には絶対に駄洒落菌改良種が組み込まれてると思ってくれ)

ふむふむ。

しかしてその意図はいかに。

(だいたいねーさんがそう言うの仕込むときって、ロクな事じゃないのはわかってますけどねぇ)

(簡単だ。堕天使の皆様のみならず、神種族や鬼にもののけに天女に人魚といった人外の皆様が暴走しないようにするために決まってるだろっ)

(えー。それって人の思想を阻害するのでは)

(だから人間にゃ効かないっつーか、人体に入ると普通の駄洒落菌として振る舞うんだよ、その改良種)

はぁ…、じゃ、仮に堕天使のどなたか…そうですね、例えば色欲のアスモデウスさんですか。この方がエロエロで助平な本性を発揮して人間を色情狂に変化させまくろうと考えたとしましょうか。

(そんときゃ、うちらが人間向けに繁殖本能を植えつけようとしてる駄洒落菌作用が優先する。そしてアスモデウスさんが義体を装備していたらその義体に思考と行動リミッターがかかるし、誰かに相乗りしてりゃ、相乗りしてる奴ごと抑制と警報が出るんだわ)

ふむふむ。何やら堕天使の皆様が壮絶なブーイングを始めましたが。

(堕天使の皆様。お気持ちは分かりますが、あたくしナンムですらこの規制をかけられておりましてよ。重ねて申しますが、あたくしですら辛抱を要求されているのです。あたくしですら!)

ええと。

うちの初代様で抑制になるんですか。

ルシフェル先生。そこんとこどうなんでしょ。

「ナンム殿に勝つのは私でも無理だ。それと…エレシュキガル殿とイシュタル殿が娘として再生しているのが更に、我が配下にとっては困りものらしい。特にエレシュキガル殿は冥界を形成してしまうのでね。堕天使たちを封印する地獄を作れるような力を持っているのだよ」

ふむ。

ではちょっと質問を変えてみましょう。

堕天使の皆さん、あたしとやりあって勝てるんでしょうか。

(非常に困難です。そもそも基本的に好色なマリアヴェッラ陛下をこれ以上籠絡するのは不可能に近いです)

(地位や名誉で籠絡しようとしても、既に痴女皇国皇帝であらせられる)

(怒らせるなら何も私があれこれしなくても、ジョスリーヌ殿やナンム殿にマリアリーゼ陛下が自然に日常的に陛下の逆鱗に触れておられます)

(なんだかんだでだらけておられる時も多いので、怠惰を吹き込むのも不可能)

(既に結構、傲慢でいらっしゃるし)

(嫉妬を抱かせようにも、そもそも他の方に対する負い目はほぼ、お持ちでない)

(まぁ、せいぜいイタリア料理に執着されるくらいでは)

あのぉ。

皆さん、ちょっとばかり酷くありませんか、あたしの評価。

(マリアヴェッラ陛下。学校とやらに通って普通に一般人の生活をされておられるせいで人間の生活にどっぷりと嵌っておられるからとは思いますがね。もはや陛下は既に神に限りなく近い逸般人なのですよ?)

堕天使の皆様が総意として申されますねんけど。

(ちなみに他の痴女種の方々の籠絡堕落は不可能ではありませんよ。それこそ、堕天使が支配できるかどうかと言えば、マリアヴェッラ陛下の危惧通りなのですが。が!)

(そこでマリアリーゼ陛下が嫌らしくも撒かれた疫病が効くのですよ…)

(あの疫病の源、我らで改良できれば色々便利なのですが、困った事に仏教の法則で支配されておるようで…)

ああそうか、ウィルスとか細菌って概念ではなく病気として認識しておられるんですね、駄洒落菌。

(まぁなんや。おまえらが好き放題したらな、うちのくにもこまるんやわ。かといってしねとかおらんようになってまえいうのもなぁ。だいいち、ではまだわるいことしてへんのにぬれぎぬきせられても嫌やろ、おまえらも)

あら、おかみ様まで。

(ただ、いらんことしたら黄泉平坂よみのひらさかくだらすからな)

(ふっふっふっ。つまり何だね、堕天使の諸君は我々痴女皇国への協力者以上の能力を発揮したり、いらん野心を考えつくのはまだしも実行したらデビノレマソの刑に処されるのだよっ)

ああ、なるほど。

その悪魔人間の映画に出てくる悪魔のような扱いもさりながら、そもそも人間の考えた醜い悪魔の姿にされるとか美意識を踏みにじられるの、堕天使の皆さん方、すごく嫌がってるんですよね…。

(それと人間から吸い上げる認識念に、我々は強く影響されるのですよ…我々はあくまで堕天使であって、そういう悪魔の姿由来の能力に固定されますと、逆に人間の統治に苦労するんですよねぇ。実際に連邦世界というのですか。そちら様にも私共にも由来の世界、堕天使が悪魔として統治しておりますでしょうか)

なるほど、悪魔になると能力の制限というよりは、強い弱いは別として人に対して出来ることの種類が天使の時よりは制限されるみたいですね。

(出来れば我々は美しく見られたいのです…)

なんか矛盾してまへんか。

わがままやなっ。

(まーまーベラちゃん、その辺はマリアちゃんとあたしがやるから、とりあえずアルトくんとこ戻ってよ。ポワカール大統領ご一家はフローレシェーネさんが付き添って新宮殿で会合してるけどさ、ドミニクさんとアレーゼさんがなだめてる状況なのよ、アルトくん…)

はぁ…あのー、ねーさん。あたしってもしかしてわがままな娘さんたちのお母さんポジションなんでしょうか、今回。

(つーかおめー聖母種認定食らっただろ。あれよあれあれ。あれのせいでおめーに母性を求める傾向も出てんだよ…いや、堕天使の皆様の言われる話と根っこは同じだぞ? あたしの皇帝時代より頼られオーラ出してんじゃないかな…)
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