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アルトリーネの仁義なき妻たち 8

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「で、石灘の会社事務所にあった車がこれと」

「なんか見るからにすげえのばかり」

「緑の中を走り抜ける真っ赤な車ばかりね…」

「ベラちゃんの乱暴ルギーニに似たのもあるね。色が軍用車みたいな艶消しだけど」

「どうもポ◯シェマニアっぽいラインナップね。このカエルさんみたいな外観で羽根生やしてやたらペタペタの扁平率高いタイヤ履いてる赤いの、結構いいお値段するんじゃない?」

「あー、そのGTなんとかってのか。海老原さんのお付き合いのある業者さんが査定してくれる予定だけど、電話口でとりあえず車名だけ伝えたんだけどさ、状態まともなら絶対三千万下らないってよ。あ、業販のオークションで落とす値段な」

「ただ…マリアちゃん、痴女皇国で使い物になりそうなのって、そのカイ◯ンくらいしかないよね…」

「うちは正直これ全部処分して欲しいっ」

「かーさんのドイツ嫌いはなぁ、ナなんとか並みに蛇蝎だかつのごとく嫌ってるもんなぁ」

「んであれか、中井と吉崎の車って何かわかったんかいな」

「えーとな、まず中井。便通の四駆のごっついのであーまーげーかあーみーまーの63とか65って書いてんのか。これは普段使いだな。フレンチの店何軒か持ってんならフランス車買ってやれよって話はともかく、ドアが変な開き方する便通も持ってる。これが大黒パーキング用だな」

「何ですかこの夜霧や霧笛が俺を呼んでるような人が乗ってそうだったり、柱一本残さないで全焼させないと保険が降りない漫画家の人が乗ってそうな銀色のいかつい車はっ」

「ああ、これも五千万は下らねぇらしいな。なんかルマンで空を舞いそうな姿とドアだけど、あと4ドアのマイバッカかなんかもある」

「こちらは便通派なのか…」

「一体どういう商売してんのよ…奥さん用には奥さん用で小さいワゴン買ってるよね、便通の」

「んで吉崎だな。まずフェラ    ーリのフロントエンジンのやつが一台、ロールスロイスが一台。で…」

「あー、この乱暴ルギーニ…あたしがにゅるにゅるしてる道で乗せられたやつだ…」

「しかしこいつはこいつで3台で1億円超えどころか2億円に近づくくらいか…なぁ雅美さん、こいつらの金の出所ってわかる?」

「えっとね、まず石灘は瀬戸内海沿いになるのかな…みかんジュースの県の南の外れの網元の家の出ね。地元では名士ってほどじゃないけどかなり名前知られてるそうよ。で、割といい大学出してもらって東京で起業したけど失敗、一度破産してるわね。これ本人申告ね。そして今の奥さんの実家にお金出してもらって再起業、アメリカに渡りアジア系の…ジーナちゃんも沖縄で履いてるようなダンサー系シューズブランドやエッチ系コスチュームメーカーと渡りをつけたり、在米なんたら人系の民族つながりで半島や大陸の縫製業者を紹介してもらいクラブイベントの衣装バイヤーとして再起を図る」

「で、その過程でAV業界や風俗店とも繋がりができて裏の顔を持つに至ってんのか。確かにクラブ系は東京や横浜だと昔アメリカ今は宙兵隊や宇宙軍とつながりできるからな」

「ただ、宇宙軍や宙兵隊って戦闘機や強化服使う人が多いぶん、あんまし薬物売買のうまみはないみたいなのよね。生体インターフェイス装備にともなう身体強化手術を受ける関係あるから」

「ゴルディーニのおっさんがあれの機能使ってわざとED気味にしてたくらい、改造後は薬物が極めて効きにくくなる。ついでに血液中に変なもん混ざったという警報が勝手に発信されてまうからな」

「で、駐留規模は減った米陸海軍が主な密輸元って寸法か」

「更にはロスのダウンタウン経由で米国南部から中南米方面への違法移民ブローカーとも繋がりが出来たみたいね」

「安田くんが言ってた成田の人買い人売り業者っての何者よ」

「あー、そっちは元々中井の繋がりよ。レストランで働くやつがいないからってアジア系を調達したいからと研修生を紹介する仲介業者を探してたらさ、千葉県の業者を紹介してもらえたらしいんだけど、そこの金主が千葉のお風呂屋さん絡みのヤクザまがいの地主系因業おばちゃん。で、もともとは都内の闇金にも出資してたようなんだけど、今はデジタルマネー時代だし闇金はやりにくいからと人買い人売りに投資してたと。で、安田の知り合ったロシア系業者とも提携話が出来て手広くやれてめでたしめでたし…な訳ないよね」

「女の子は特殊なアジア方面とか東南アジアへのツアーとかに回して、そこから行方不明って筋書きも用意してたっぽいですね」

「中井は中井で何したらこんだけ羽振り良くなれたのよ」

「最初は都内に小さな店を出したのよね。で、海老原さんの知り合いがたまたま来て味を気に入り、海老原さんにも引き合わせてさ、そこからは腕のいい料理人を育てるつもりで海老原さんが支援してたんだけど、当の中井が経営に色目を使い始めたみたい。これは海老原さんに近い人からの話ね」

「腕のいい料理人を育てるつもりが、本人は金儲けに走ってしまったのか…」

「で、客として来た吉崎に目をつけられ、女の子たちを使ってコンタクトを取った吉崎の話に乗ってラーメン屋が大きくなる要領で店を増やす。その過程でサイドビジネスとして民泊を千葉や埼玉で始め、移住就労目的の来日者相手の違法ビジネスに手を染める」

「で、石灘も中井の店の客だったけど、吉崎が口利いて風俗繋がりの協力関係を組んだわけか…」

「で、吉崎やな」

「これは執事喫茶からスタート。ただ、在籍店でノウハウを掴んだ吉崎は数ヶ月で退店してボーイズバーの世界に行く。そしてホストデビュー、ボーイズバーからの引き抜きやスカウトで仲間を増やし、ボーイズバーやらホスクラで働いていた元・走り屋系や珍走系の面子で実力行使部隊を編成。もともと実家がクリーニングやおしぼり系で割とお金持ってたけど、千葉の金主とも中井の絡みで繋がりができて金の力を使い水向け街金にも手を出しーの、ホストクラブチェーンやキャバ嬢上がりの商売の元締めになるのに、執事喫茶時代から10年ちょいかな」

「あー、そら若いうちからそういう世界ばかりの上に、やることなすこと成功を収めてたら天狗にもなるわなー…」

「見た目フツメンなんだけどね、まぁ黒い黒い」

さて、実はここ、テンプレス2世の格納庫甲板です。で、石灘の自宅や事務所から回収して来た高額動産をここに置いて処分について話しておりますが、そもそもテンプレス2世は今、どこにいるか。

…千葉県成田市近郊の若様の牧場の上空に滞空しております…。

本当は宮内庁車馬課主馬班所属名目の「とある職員の上司の上司のそのまた上の上の方」から、そういう話ならウチの上でも良いからと滞空許可を貰えたそうなのですが、もう少し作戦計画を進めてからの方がありがたいから今はこちらにいますとマリアちゃんがお返事しています。

(今回、ついでに密かに中を見たいって話が出てるんだよ…若様経由でテンプレス持って来てる話をしたら悪戯心を起こされてさ…後で大掃除しとかねーとまずいんだよ…)

(普通は宮内庁がお戯れをと止める話じゃない…)

(それがあれよ。例の鉄道話が流れてるから、日本にも利益もたらす話じゃん。JR各社始め、関係企業一同に無言のプレッシャーかけるのに都合がいいだろって若様が話通しちゃってよ…確かにあたしら、特にりええにさ「よろしくお願いいたしますよ」ってただの一言言っただけでさ、失敗が許されない話になるよな…これ)

(あ、なるほど…テンプレス・レイルウェイズの役員に挨拶して頂けるだけで、本当の主導権をどこが握ってるかわかる話よね)

と、そこへ。

「あ、宇賀神さん…はいはい。うん。だいたいのところでいいよ。んじゃ今どこかな。あ、南青山か。うん。田所さんもいる? じゃ車に乗ってよ。こっち引き寄せっから」

そして格納庫に転送されてきた黒い車から降りてくるゆっきーのお父さんと田所さん。

「ほう。本当に空母そのものみてぇな格納庫だなぁ…って?」

「何だこのポルポルの展示会は、って関係者の車か…」

「例のAV屋さんちからもらって来たもんだよ。あと自宅や会社にあった編集用の機材あっからさ、ちょうど今回の件に使えるじゃん。ノンリニア編集やるなら充分なブツ揃えてくれてたからね」

「あー。そりゃ自社で切り貼りへんしゅうするから絶対いるよな、AV用機材…」と合点するお二人を連れて作戦会議室へ。

「な…!」果物マークの高級品なワークステーションたっかいぱそこんがそこに2セット。マリアちゃんが手も触れずに起動してしまいます。

「とりあえずデータ取り込みながら内容見てみますよ。尺が足りなきゃうちの連中にサクラ話させるし」と、映像が入ってるらしい板電話用外部バッテリーみたいな形と大きさの業務用メディアメモリーを受け取るマリアちゃん、パソコンのうち一台の前にエマちゃんを座らせてメモリーを渡します。

…って確か、このメーカーのこれ、顔認証か電源ボタンの指紋認証とか自社製メディアウォッチ連動のセキュリティ認証なかったかしら…。

「そんなもんエマ子でなくてもあたしですらいけるよ。ブートメモリドライブのサービスエリアのパスワード格納領域初期化するだけの話よっ」

「中身取り出して専用端子つなぐ必要ありますけどね。ついでにセキュリティチップ内の個人認証データ入れ替えてうんぬん。ま、ちゃちゃっと吸い出してしまいましょ」

そしておっきな画面の純正モニター…本体は長細い棒ですよ…からフローティングさせた画面に出てくるインタビュー内容。

なまじ皆さんの世界よりは海外に「行く」際のチェックが厳しくないが故の驚愕のお話に始まり、お風呂に沈んだのホストのために月に何百万何千万使っただの、更には女性の動画系配信者にも言及する暴露話の数々。

ええ、皆さんの世界の女衒商売の方があこぎな事をしていないのを祈るしかありません。

「まぁインタビューに応じてくれた子たちの話は全部使えねぇとは思いますがね」

「こりゃ海老原さんも見放すっつぅか、縁切りしたがる訳だぜ」

「こちらの調査結果も見といてください。多分顔色悪くなりますよ」マリアちゃんがわざわざ出力してファイルにまとめてくれた、主要メンバーの罪歴を田所さんに渡しましたが、パラパラめくっただけで心底嫌そうな顔をして宇賀神さんに渡します。

「何ですか、そんなに顔色悪くするような…なるほどね。やらかしてる事もたいがいだが、将来のある若者って美辞麗句じゃ到底かばえねぇな、こりゃ」

「一時期の若いADなんかによくいた自閉症めいた奴も大概だったけどよ。かと言って、陽キャってのか? 調子乗ってここまで派手にやらかされんのもなぁ…近頃の若いもんはって繰り言の一言も出てくらぁな」

こうして話をしている間にも、二人の前の果物印の銀色のゴミ箱みたいな縦の円筒の機械、勝手に?げしげしと動いてあれこれしているらしく、フローティングディスプレイに表示された業務用ビデオ編集アプリケーションとおぼしき画面があれやこれやと動いています。

「確かになぁ…自分で進んであの世界に入っていったお嬢様とかいるからなぁ」

「それと実家がそっち系で有名な女優のあれとかですね。絶対に枕話が出て来ねぇっつーか出るわけないあれ」宇賀神さんが小指を隠す素振りで教えてくれます。何かマンモス憐れな黄金聖闘士の姿が浮かんだ気がしますが、蟹座の事を悪し様あしざまに言うとマリアちゃんが怒りそうだからやめておきましょう。

「しかし、何でまたあの連中、自分たちの商売と真逆も真逆、正反対の世界を狙ったのかと言うのが俺の疑問ですね」と、宇賀神さんが眼光鋭くおっしゃいます。この人はご自身を肉体労働者であると位置付けていて、煙草の銘柄もハイライトを愛用しておられますが…実際にはかなりの頭脳派ですよ。

「ああ、あの連中とは水と油だ。秋葉原の連中に処女信仰または純真系が多いのはいまさらだ。ビッチ系な女を商ってる吉崎やら石灘やらはもちろん、中井の嫁も確かオートサロン系の事務所に所属してた姉ちゃんだろ。普通なら絶対にお互いの領分に踏み込まねぇはずだぜバカヤロー」

「それがですね、田所さん…雅美さん、教えて上げてよ」マリアちゃんがこっちを見て申しますが。

「はいはい。で、あたしの場合は吉崎に直接だったんだけど、実はこの20年くらい、少子化以上に深刻なのがですね、大卒ですら就職難な状況でしょ。あの子たちのビジネスは言ってみれば景気が良くて男が肉食系でないと成立しにくいジャンルなのよね、中井の経営してるフレンチの店でもかなりの料金取るし、石灘もイケイケの女の子をいくら用意しても売り上げに繋がらないとなぁってボヤいてたし、正直さぁ、吉崎以外はあの仲間で金に困ってないのっていなかったはずなのよ」

「で、雅美さんが持ち込んだ話にホイっと乗っちゃったと…」

「一見みんな羽振り良さそうだけどね、完全な新車に乗ってるの調べたらわかるわよ。それもディーラーものかどうか」

「ああ、北米仕様の並行物とか何台かいたな。後派手めな車ばかり売ってる中古外車屋の扱い品」マリアちゃんが一瞬で車の来歴を調べてしまったらしく、深く頷いてますね。

「あとはディーラー物でも敢えてローン組んでるとか。つまり1~2年で入れ替えるの前提ね」

「自転車操業してた可能性はあるな。なら、瞳の時みたいな派手なカーチェイスや銃撃戦はなしか…それだけでもホっとしますよ」

「なんでぇ宇賀神、せっかくあんなドロドロ派手な音するアメ車だってのによ。ありゃあ俺でも血が騒ぐぜ、俺が若けりゃあんなのでドドっとベガスによ」

「局長の場合はキャディラックの方が似合うんじゃないですか。それもストレッチしたの」

「うるせぇバカヤロー。俺の若い頃ってのはな…まぁいい。年寄りの繰り言をしてても話が進まねぇや。高木さん…車で思い出したんだがな、吉崎ってな、大黒だか何だか、車を見せびらかす趣味はあるんですかね」

「おっ田所さん発想若いねっ。確かにあの黄緑色と黒艶消しの乱暴ルギーニ、大黒PAの常連っぽいよ」
「こりゃあカミナリ族めいた発想なんだが、ムシャクシャすると車を出したがるってのは若ぇもんの行動としちゃありがちだろ。しかもわざわざ週末の大黒に行って見せびらかしたがる部類だ。ストレス解消にそういう事をしねぇ訳がねぇ。だろ宇賀神」

「ええ。つまり、オンエアした週の金曜か土曜の夜中があれか、狙い目って事ですね」

「んじゃもいっこ罠を張ろう。ベラ子、おめぇの乱暴ルギーニ、ちょっとラッピングしていいか? ほれ、公式のデザイン案、作ってもらったから」と、車の四面図を見せるマリアちゃん。

「ええええええ!…まーさーかー…」まぁ…一般の人が本気で痛い車を見る目ですね、ベラちゃん。

「うん、考えてる事何となくわかるだろ?」

「嫌だなー、あれにステッカー1枚貼ってないんですよ。ディーラーのでも窓の裏側に貼るやつなのに…ほら、にゅるにゅるしてる道で運転教えてくれた人いるじゃないですか。あの人のサイン、ボンネットのとこに書いてくれたし…」

「え、マリアヴェッラさんのウ○スのあのサイン…」宇賀神さん、絶句してますね。

「ええ、本物です。あのにゅるにゅる滑る山道で運転教えて下さいまして、その時の記念にって鈴鹿に来た時にわざわざ大阪に足運んでくれてさらさらっと。で、ディーラーの方もボンネットの上からコーティングかけて剥げたり褪せたりしないようにしてくれたんです」

「俺ならそりゃちょっと二の足踏むなぁ、そういう車にをするのは」

どうもその、ドイツの山道でベラちゃんに運転を教えてくれたのってかなり有名な方らしいんですよ。この時代のピュアEV…電気自動車カテゴリーとハイブリッドカテゴリーのF1タイトル両方を獲ったF1ドライバーさんのサインと、多分にゅるにゅるしてる道で一番速い女の車だってメッセージを落書きしてくれたらしいんです。

「A woman faster than Sabine, The fastest woman on the Nürburgring.だったっけ」

「そうですよ、ほらこれ、その落書きしてくれた時の映像」なんとかチューブの乱暴ルギーニ公式らしい動画を見せるベラちゃん。ベラちゃんたちが見守る中、ディーラーの納車式に使う屋内駐車ブースでさらさらっとサインして、小さなトロフィーを贈ってベラちゃんの片手を握ってユアチャンピオーンなんて持ち上げてくれてますね。

「ベラちゃんのあの乱暴ルギーニ、仮にオークションに出したらこのサインが入ってるだけで最低でも一千万円くらいは値段上がりそうだって誰か言ってたよね…世界一速い男が認めた女の車だって」

「いや、逆にそんな車だからこそいいエサになるんじゃね? 確かベラ子がにゅるにゅるさせてる時の動画ってコクピットビューとアウタービューで今でも見れるしさ、有名なのは間違いないんだよな」

「うん、ベラちゃんって確か乱暴ルギーニと年間契約して日本の乱暴ルギーニ公式大使みたいな感じでキャンペーンガールやったよね。ディーラーでちゃんと買ってるオーナーなら知らないはずないか…」

「ああ、アヴェンタ○ールのアルティメットモデルか、あれを流石に並行で買う奴ぁいねえでしょ。絶対にディーラー持込でないとメンテできねぇんだから。つまり、法定点検やら何かの度に絶対にディーラーに行く必要があるし、行ったら必ずマリアヴェッラさんの顔が目に入るでしょう」

「日本在住のキャンペーンモデルって事で経歴は謎なんだけど1回、関メのバラエティに出てくださった事あったでしょう。それと茂木もてぎのスーパーGTか何かにゲスト参戦。とちぎの車番組でも悪役で出てもらえて準レギュラーだからな。全国配信もやってるから見てる奴ぁ見てるだろ宇賀神。あれ結構再生回数稼げてんだぞ、マリアヴェッラさんの出演回」

「やっちゃう会社とたまにやりすぎる会社の2社メインスポンサー番組で、乱暴ルギーニで乱入するあれね…」

「ああ、どっちも栃木に工場があるからな。そうだ、マリアヴェッラさん。明日…PR番組一本撮れねぇですかね。その何だ、痛車ってのか…それバックにして妹さんたちが番組出るからよろしくねって。ああ、版権管理会社には話をつけるしキー局はうちだ。で、今週配信は…おっさん自動車さんの持ち回だな。ちょっとPRを入れるけどいいかいっておっさんの広報に話入れとくか。あとは映画のビューティーツインズのキャンペーンだな。有明のブースにマリアヴェッラさんの車持ち込んでいいなら、オーナー向けのメルマガで告知させるって手もあるから、なおさら吉崎の目に触れるだろ」

「全く、どこの広告代理店ですか。本当にそういう事させると話が早いですね。しかし、ホスト上がりの実業家気取り一人煽るのにここまでやりますか…」呆れたように宇賀神さんが我々を見ますが、辣腕プロデューサーとして何本もの番組をヒットさせて来た田所さんの手腕に納得はしているようです。

「まぁ、これだって番組のPRになるんですし、営利的に色々な人が得するんですからやる価値はありますよ、宇賀神さん。んでその話、乗ってやれよベラ子。ラッピングはエマ子に頼もう。車に傷付けないレベルでちゃっちゃと仕上げるならあいつにさせるのが一番だ。エマ子ー、いいか?」

「またこき使われる…あたしがインマヌエル型じゃなかったら見返り要求しまくってますよ…」

で、呼びつけられるエマちゃん。そして天王寺の英国領事館地下ガレージにあったはずの赤い乱暴ルギーニまでもがテンプレスの格納庫に持ち込まれますが。

『はい施工しましたよ、チェックに来て下さいよっ』

1分かかってないよね。エマちゃん。

「ううううううううううう痛い、痛いっ」

「馬鹿野郎ベラ子、これくらいやらねえと評価されねぇんだよっ」

「しかし見事なもんだな。気泡とかシワ一つないたぁ…」宇賀神さんが感心したようにベラちゃんの車を見回しています。

「サインのとこだけ見事に回避してるのがまた何ともでしょ」鼻高々のエマちゃん…ちなみにもはや制服と言った方がいいくらい板についているド○タスタイルですよ…。

「よし、これで明日関係者に根回しするか。高木さん、いいですか」田所さんの問いかけにマリアちゃんがうなずきます。

「ええ。お願いしますよ。単にうちの妹に手ぇ出そうと考えたアホを罰するだけじゃない、踊らされた関係者が逆に少しでもおいしい思いをさせてもらいませんとね。割に合いませんよ」
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