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てるちゃん奮戦記 -Hôtel de Atlantide- 1

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みなさまご機嫌よろしう、てるこです。

…ええ、てるこ呼ばわり、諦めました。

で、てるこ呼ばわりされておりますわたくしですが、現在は痴女皇国内務局長、テルナリーゼ・アクエリアスと名乗らせて頂いております。
そしてこれまでの本編にて何度か出てまいりました件ではございますが、わたくしの本来の姿ですとか名前、今の姿とは別にいくつか存在するのは覚えておいででしょうか。

そうなのです。
わたくし、実は聖院を開く前にもあちこちで崇められておりました。
これは姉も同じです。
そして…失敗したこともございます。
これは娘達には話してはおりませんが、一度や二度ではございませんでした。
そのためにりせっとをかけた事も…。

ま、詳しくは申しません。
そちらのお国の南の端の方、あそこにも規則正しく海底に沈んだ大きな石がいくつもございますでしょ。
あと、田中雅美たなかまさみさんが指摘されていました一万年以上昔の文明遺跡ですとか。
ああしたものが、わたくしどもの「しくじり」の痕跡と思って頂ければ。

で。
何ですかまた…。
「おねげぇします初代様、今回ばかりはあたしの苦手の部類なんですっ!」
「姉が勝てない勝てないと申している相手、私も無理です!」
土下座しながら請願を繰り返す「娘」たち…。人間の方々で言えば孫娘だの曾孫だのとなりますけど、あたくしが作り上げた聖院金衣の系譜では娘の部類になる子供たちです。
「…仕方ありませんわね。とりあえずあちらで話をお聞きしますからお立ちなさい」と、内務局内の応接セットを示します。

…まったく、姉も姉ですよねぇ。
娘たちの話を聞いたあたくしの感想です。
これ、完全に比丘尼国ですべき仕事ではないですか。
一体全体なにゆえに、自分ちの巫女さんや鬼さんたちではなくて痴女皇国のこどもたちに処理を依頼するのか。
ぷんすかぷんぷん。
「しょ、初代様…髪の毛の色…」マリアリーゼが注進に及びます。及びますが。
「マリアリーゼ。これがなぜこうなのか。そもそもの経緯を考えますと、姉があなた方にあれこれ頼んだ事が契機でしょう。そしてマリアリーゼにマリアヴェッラ。あなた方は聖院で申しますと金衣相当。特にマリアヴェッラ。あなたは元来ならば一人で金衣の業務をこなさなくてはならぬ立場ですよ? まぁ、出生の経緯を鑑みますと、純粋な金衣の生まれではありませんから無理は申しませんが…」あまり怒ってもあれですから、娘二人の頭とほっぺた撫でときます。そして侍従女官にコーヒーを四つ、きっさ室からでまえするよう依頼。お砂糖とフレッシュつけてね。
そして、今、この応接室に三人なのに四つ頼んだ理由。
実はマリアリーゼ曰くのおっさんという存在…仮におじ様としておきますが、彼の力を借りなくてもあたくしであれば何かを引き寄せる事は出来なくはありません。

で、引き寄せました。

「なんじゃてるこ!痴女皇国にも関わる話であるからこの二人に頼んだのに何をいかっておるのや!」
「うっさいですわ姉様!この子達が苦手な部類なのを分かっておられるなら、せめて前田まつさんの説得くらいは姉様がすべきでしょうが!そして一応は金衣の系譜で生を受けたマリアリーゼはまだしも、マリアヴェッラに至っては曲がりなりにも人として生まれたのですよ? わたくしや姉様と違って神として生を受けた訳ではございませんからね? いくら人に試練を与えるのは神族の務めの一つとしても、ものには限度というものがございます!…マリアリーゼ、たばこお持ち?」
「…は、はい!ロ○マンズですけど…」娘が箱を開けて一本差し出してきます。くわえると火をつけてくれます。…誰ですか。やくざ者の親分子分とか言う人は…あたくしは娘のために、娘になりかわって言いにくいことを代弁して差し上げておるのですよ? これくらいはしてもらっても…こほん。
「…ふう。はいらいとの気分でしたが、まぁよいでしょう。宇賀神うがじんさんのお父様がお吸いだったと思いますので、今度買い付けて頂きます。で、姉様」
「…てるこ…お前、今日はえらい吹き上がっとるが…」姉もキセルを取り出して一服おっ始めています。ええ、あたくしが煙草を吸い出した理由を理解したのでしょう。我ら二人が本来の姿になって喧嘩を始めたが最後、またぞろ街を沈めた山を吹き飛ばした大陸を沈めたとかいう話になりかねません。
ですので、こういう話はやくざやいんでぃあんの手打ちと同じで、落ち着いて始める事が肝心なのです。
「そりゃあまぁ、うちの娘たちも不甲斐ないといえば不甲斐ない話ですわよ。今やこの子達も神族に近い状態。それがいかに身体強健にして精神も知能もずば抜けておるとはいえど、只人ただひと類一人たぐいひとり説得できないとは一体何事かと。更には武勇の者と聞きますので、ならば剣でも槍でも持ち出して試合の一つでもしてくれば良いのですよ。…マリアリーゼ、あの方、結城秀康ゆうきひでやすという御仁を叩きのめしてから講和の取りなしを依頼しておりましたでしょう?」と、ソファの隅っこで縮こまってる娘二人を睨みます。
「…ええ…ですがあのおっさんと人間の状態で切り結んで勝つ自信、流石のあたしもありませんって…」
「それに相手は米沢よねざわに隠居して何年かになるのでしょう? 主従共々老齢の域ではありませんか」
「だから余計に厄介なんですよ。ただでも意固地になると厄介な性格なのに、頑固じじいの説得になるんですから…」
「いっそ若返らせて差し上げてから説得すればよいではありませんか?」
「そりゃそーですけどねー」マリアリーゼが口とんがらせて拗ねておりますが、この子がこれをするのも結構、珍しいと言えば珍しい…あ、菅野直かんのなおし様の時がそうか。ふむ。
「マリアリーゼ。そなた…菅野様と似た部類の方が苦手とみえますね。そうですね、あまり無理難題を申しても事態は進展しません。よろしい。本任務、あたくしの一存で聖母様に依頼いたしましょう」
「…ちょ、ちょちょちょ初代様!それこそ交渉決裂になりかねませんって!あのおばはんとあの傾奇者って相性激悪じゃないですか!」
「では誰にやらせます? そなたが苦手というならば、わたくしには他に思いつきません。それに…内縁の奥様でしょ、それにお供の者がお一人お二人…三人か。あと、例の大きなお馬さん。一切合切を米沢から横浜まで運ぶの、例のゆそうきで運んで差し上げた方がよろしいのでは?」
「…あぃ…おっしゃる通りです…スケアクロウを動かすなら最低、あたしかマリアヴェッラかジーナ母様のうち二人が最低でも必要です…」
「そしてお姉様。我々だけでは異国の異人がずけずけと上り込んでやぶからぼうに頼み事をしている絵図になりかねません。いかに痴女皇国の利害も絡み一蓮托生いちれんたくしょうとは申せど、ここは一つ比丘尼国側のえらいおかたが同道しませんと、相手は従う道理がないと申すでしょう。お姉様にも同行頂きますよ?」
「え…わしもどっちかっちゅうと苦手なんじゃがの…あのの連中…」
「おだまんなさいっ。先程マリアリーゼに申しましたお説教、お姉様に対してするともっと厳しい物言いになりますわよっ。仮にも伊勢に祀られ、あの神宮を居宅として好き勝手し放題できる立場の方が一体全体何を申されるのですかっ」
はぁ…なんだってこう、うちの連中と言い姉と言い、男臭いなお方が苦手なんでしょうねぇ…。
そして、あたくしが動く間の内務局、お留守になっても困ります。
というわけで、とりあえず姉や娘たちを下がらせた後、あたくしも旅支度に入ります。
ふう…聖院金衣としての立場では不甲斐ないと思う反面、親としてはある意味うれしくもあり。
頼られ泣きつかれるうちが華なんでしょうかねぇ。
あ、しまった…マリアリーゼにもう一本もらっておくのでしたわ、たばこ!

そして行きの当日早朝。
「オリューレ。数日、あたくしは内務局を空けます。その間の女官管理室業務、メルトリューレに任せてそなたに内務局長代理をお願いしたいのですが」と、青い服風の専用女官服に身を包んだオリューレを呼んで依頼。
で、メル子ちゃんとは良かれ悪かれどつきあいしばきあい犯し合いの中でもあり、聖院時代から延々と続いてる腐れ縁のオリューレをご存知の方も多いでしょう。
ここで、オリューレの現在のすてーたすを見てみましょう。

Aurieune(Aurieule) オリューネ Million Suction(Limited Ten million)百万卒(限定一千万卒) Slut Visual.痴女外観 Blue Rosy knights, Imperial of Temptress. 青薔薇騎士団 Interior Manager, Home Ministry. 痴女皇国内務局庶務部長 

そうです。実は上級女官制度が存在した聖院時代からの生え抜き女官たるオリューレ、元来なら名目上は騎士職主体の今、銀衣騎士時代のアルトリーゼ同様にアルトリー「ネ」と語尾変化または出家名改名対象となっているはずなのですよ。
ま、出家名が足らないということで、聖院時代にマリアリーゼがその辺りの命名規則を簡略化してしまいましたし、今ではこの命名規則を覚えている女官の方が少数派ですから、本人は通りの良いオリューレで通したい意向を示していると聞いております。
「承知いたしました。…メルトリューレがこれをしてくれるまでに成長すれば良いのですが…」
「まぁ、メルトリューレがダメル子なの、あいも変わらず痴女宮七不思議の一つとも言われておりますからねぇ。今更あなたの監督責任云々もないでしょう。よろしくお願いいたしますよ」
「行ってらっしゃいませ」席をオリューレに譲ると、あたくしは内務局を出てそのまま船着場に向かいます。

…そう、このおふぃす、痴女宮22階の貴賓宿泊区画を見直した際に設けられまして、すぐ下の21階にあった皇帝室秘書課いんまのすくつを統合する為に全く同じ体裁になっております。
ちなみにわたくしがもともと長を務めておりました21階の財務本部。財務局に変わりましたのと、痴女皇国自体の事業企画業務が他部署にも割り振られました関係で少し面積が減らされ、空いた場所に国土局の事務室が設けられております。
更にはこの21階に設けられました渡り廊下で修学寮や女官寮を通じて罪人寮に繋がる事になりまして、女官寮21階の警務局が手狭になった場合は罪人寮21階に移動する予定だとか。
一方、厚労局は既に罪人寮21階、文教局は同じく修学寮21階に事務室が設けられました。この辺りは監督する部門になるべく近いようにと配慮があったと伺っております。

え?分かりにくい?
仕方ありませんわね。天の声に何か作らせましょう。
こんなものでいかがでしょうか。

   修学寮 痴女宮     女官寮 罪人寮
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24階     皇族室
23階     皇族室
22階     内務局・皇帝室
21階 文教局 財務局・国土局 警務局 厚労局
-------------------------------------------- 
B21  囚人技士寮・管制技士寮
B22  痴女宮設備管制室・電算室
B23  外事局・財務部・出納部・第一金庫室・専用地下鉄駅
B24  地下墓所・懲罰具庫・第二金庫室・高圧受変電設備
--------------------------------------------
B100 微生物制御部室(修学宮地下)・危険物研究室(痴女宮地下)

しかし、聖院開闢当時からすると聖院宮だけでも三倍、いや七倍くらいの規模にまで大きくなったのですかねぇ。
痴女宮を聖院本宮と読み替えて頂けますとお分かり頂けますかしら。
そんな事を考えながら正面廊下を歩いて堤防側へ。
この構造も覚えておいででしょうか。聖院湖の船着場に到着した来賓の方、段差なしに貴賓宿泊区画にお越し頂けるつくりになっております。元々は聖炎宮での儀式の際の寝台搬送通路でしたが…。
さて、堤防から聖炎宮への浮橋にそのまままっすぐ…左手にはまだ日の出前なせいで、真っ黒い山のような姿に見えるてんぷれす二世がいます。そして浮橋の途中に分岐する桟橋が出来ておりまして、そこにすけあくろうというひこうきがおりますね。機体のあちこちの灯りがついており、先っちょのところの窓の中もよく見える状態です。
(あー初代様来た来た)
(とりあえずナビ席空けてますよって、乗ったってください)マリアリーゼと聖母様が心話をよこされます。
すけあくろうの前でエマニエルが手を振っていますので、桟橋の側から出ている渡し板を伝ってひこうきの中にお邪魔します。
今回はエマニエルはお留守番らしいので、渡し板を片付けたりひこうきを桟橋に繋いでいる綱を外すお仕事をしてくれるようですね。
あたくしが乗り込むと、入れ替わりにマリアリーゼが後ろに行き、扉を閉めているようです。
ちなみに今回のせきじゅん、こんなんだそうですわよ。

ジーナ マリア
ベラ子 てるこ
おかみ ダリア
アルト(お客様席)

「えーと聖母様、この荷物いかがしましょ」
「操縦室一番後ろに荷物棚用意してますんで、そこに入れといてくださいな」で、言われた通りにアルトさんの座ってる後ろの空いてる場所にあたくしのきゃりーばっぐ…マリアヴェッラがいたりあで買ってきてくれました…を入れてっと。
しかし、聖母様はつくづくそこに座らされますねぇ。娘たちにこれの動かし方を教えているにも関わらず…。
(しゃーないですわ。今回は初訪問ですからねぇ、江戸も米沢も。あ、マリ公、とりあえずHNDはねだGAJいもにの座標だけ暫定入力して、初代様のナビ席のコンソールに送っといてな)
(おいおい、江戸城と羽田はまだしも、山形と米沢ってかなり離れてねーかよ…)
(しゃーないがな、米沢に一番近い空港までのフライトデータ流用するから。それに江戸から山形やったら、ノータムきしょうじょうほうによるけど成層圏に上がるまでもあらへんやろ)
(江戸での着陸地点どうすんのさ)
(えーと、おかみさまー。江戸城の前の適当な空き地でええんですよねー)
(おう。前田屋敷と江戸城ははなれとるからの。上杉屋敷におまつはん来てもろて、奥村助右衛門おくむらすけえもん直江兼続なおえかねつぐのつきそいで江戸城でたぬき交えて面談いうだんどりらしいわ)
(その二人が米沢まで付き添うてくれたら楽でええんですけどねー)
(あー、そのつもりらしいぞ。なんぞ、慶次郎けいじろうがごねとるなら俺とおまつ様が行かんと動かんだろうとのりきになってくれとるようでな)
(あー…多分それ、直江さんが手を回してくれましたね…)
(米沢から使者が来ての動向を伝えたそうや。宮入貝さつがい国におったとび加藤いう気色悪い忍びらしいけどの)
(あー、それ武田のほねですよおかみ様。純粋な前田利益まえだとしますの家臣じゃありませんけど、連邦世界だと関ヶ原の戦い前後から利益に付き従って上杉に関わってますね)マリアリーゼが教えてくれますが、にんじゃというのですか、そういう類の従者が三名、そのかぶきものの前田利益に仕えているそうですね。
(初代様、残り二人のうち一名が捨丸すてまるのはずです。加賀前田家のお庭番の忍び上がりですね。それと一夢庵風流記の通りなら、あと一名は倭寇の残党の金悟洞きんごどう、暗殺術の達人で狙撃銃使いです)
(しかし、そのまえだ利益なる人物、はなはだ面倒そうな性格だそうですが…なんでそのような者を英国公使の警備に任じようとしたのですかお姉様)
(いやなぁ、最初は外様の国主…だいみょうから差し出させようとしたらしいんじゃ。みやもと武蔵とか、あとさつまに何人か出させようとしたらしいねんけどな)
(ああ…薬丸兼成やくまるかねしげとか東郷重位とうごうしげかたとか丸目蔵人まるめくらんどとか色々いますね…さつま界隈…)
(いや…しまづは豊久とよひさちゅうんか、あの二才児にせごのいろおとこを差し出そうとしたんや。せやけどたぬきが断りよってな。あのしまづの家のもんを箱根から東になんの担保もなく置きとうないと)
(なんかものすごくわかりそうな気がする)
(いろおとこならよいではないですか。このじだいのにほんにはほもも多かったのでしょう?)
(アルトさん…島津家知らんでしょ…あそこの連中は見た目で判断しちゃダメっすよ…)
(なんですかダリア。そんなぶっそうな方々なのですか)
(ああ、アルト…島津豊久って、もし関ヶ原の戦いをやってたらそこで戦死してたんだけどよ…その死に方があまりにもめちゃくちゃだったんだよ…)
(アルトくん。単純に言うと、敵に囲まれた状態の島津軍を逃すために全員で敵の正面を突破してるねんけど、普通はそういう確実に全員死んでまうような無茶な退却の仕方、絶対せぇへんねん。ところが犠牲者多数ながら中核の国主一族を逃がしよってん。んで、その正面突破の際に前に立ちはだかった連中をボコボコに倒しまくった連中を率いていたのが豊久と思いなさい)
(あると。しまづのさむらいいうんはな、ほとけに会うたらほとけを斬り、かみに会うたらかみを斬るような教えられ方をしとるんや…。わしらですらあつかいにこまるねん。ぶっちゃけ、まずかたなを抜いて斬りかかることから話をはじめよるからな)ええ、あたくしもその習性、伺っております。
(確か前田利益様も、そこまでは行かなくとも気難しいお方とか)
(うむ。んで、たぬきも考えて、じょうけんをつけた。そのくにの国主の血筋でない奴を差し出して、とりあえず十年つとめてちゃんとしごとしてくれたらそのくにを譜代ふだいにとりたてたるからと、とざま全員に頼んだそうなんや。ま、たしかにふだいになればぜいもやすなるし、ぎゃくにばくふからくに普請のほじょとかいろいろしてくれるからの)
(ああ…これは失敗を嫌がるパティーン…)
(なんか露骨にミスをしたらお取り潰しの臭いしかしませんがな…アホかあのタヌキは…)
(かというて親藩しんぱんや譜代の連中から差し出させて何かあっても困るというとるねん。で、征明せいみん言うて龍皇国を攻めようとした時分に、あれこれあってを視察に行かせたそうでな。それを覚えておったたぬきが、あいつやったらええんちゃうかとを指名した)
(んで、米沢に転封されて貧乏財政確定な上杉も乗り気と…)
「とりあえず出しますわ。マリ公、チェックリスト再確認」
「おーけー。マスターコーションライト・グリーン消灯。ベラ子、リアクタナンバ01と02の出力定格範囲内確認とハイドロと電圧電流表示チェック。慌てなくていいからFE席の手順履修しぃなやりなさい
「あぃ…うう、乱暴ルギーニよりややこしいでしゅ…」
「そら当たり前や。つーかあたしのスーパーディモナあるやろ。あれ飛ばすんと大して変わらんわこんなん。動翼作動OK。BLC正常。システムオールグリーン。VNAV,LNAVパラメータチェッカ、グリーン。各員ベルト確認。ハッチ気密確認。ドアモードサイン、オールフライト。風向170、風速10kt、視程7、離陸方向360。マリ公、仮想ターンパッド位置設定」
「あいよ。離陸滑走距離1,000でいい?」
「離陸滑走距離1,000入力。離岸開始。後方確認」
「後方よし。左右翼端よし。アスターンスロー」
しかし、これスケアクロウにご厄介になる度に思うのですが、めんどくさい乗り物ですよねぇ…。
(あたしもそう思います。もっとこう、乗り込んでぱぱっと発進できないものかと)
(ベラ子、大変残念だがその望みはかーさんに却下されるだろう。スケアクロウはMIDIテクノロジー使いまくりなG型ですら、基本的に普通の輸送機として普通の人間が飛ばすように出来てるんだよ…)
(人類がおよそ飛行機というものを発明してから、戦闘中でもない民間機だけで何百機落としたと思うておるのや。しかも離陸時の3分と着陸前の8分にどれだけ固まっておるか。まぁ…旧ソ連めいた自動化設計思想も入ってるから、これでもかなり短縮されとるんやぞ、手順)
(うぐぐぐぐ…がんばりましゅ)
(とりあえず今回はフライトエンジニアの手順履修中心にな。よし、機首方向サンロクマル。マリ公、アイハブ。主翼モード、シングルトランスファ。テールモード、ノーマル。動翼再確認。主翼面冷却系統圧力値グリーン)あたくしの席からは聖母様の動きがある程度わかりますが、両手総動員という感じです。とにかく飛び上がるまで、手を休めている事がありませんね。
「こちらGイレブン、テンプレス2世、エマ子、テイクオフクリアランス、デリバリー」
「こちらエマニエル。G11、テイクオフクリアランスOK。離陸承認」
「了解。G11離陸する」聖母様が右手ですろっとるればーの先にあるすいっちを押し込みますと、むにっという感じでればーが勝手に動いて行きますね。
「V1、VR…V2」マリアリーゼが何か読み上げる中、ひこうきはまだ暗い聖院湖上の空に舞い上がり、そのまままっすぐ北に向かって飛んでいきます。
(すみませんねぇ早朝出発で。痴女島界隈、日が出たら最後あっちゅう間に積乱雲…入道雲が育って、延々と低高度を飛んで避ける必要がありますんで。普通の雲とちごて入道雲は中が大荒れに荒れてるんで、迂闊に中に突っ込まれへんのですわ)と聖母様がこんな早くから飛び立つ理由をご説明になります。
(普通の輸送機より、上昇すんのだけは早いんですよ。ただ、翼を目一杯伸ばしたら降ろすのに時間食うのと、右に左にとやるのが死ぬほど面倒なんで…)
(しかしながら聖母様、転送でなくてこれで行く必要性はございますわ。転送で何でもかんでもという訳にいかない場合は当然ございますし、何よりこの時代に、からくりで空を飛ぶ発想をする者はいるやも知れませんが、実際にそれが形になって飛ぶのを見るとは全く別でしょう。更に、聡い者なら持ち主から何をされるか想像致しますからね)
(天女やもののけですら簡単に手が出せん高さまであがりよるからな。うちゅうに行かれたらわしやてるこでも手は焼く。これはまちがいない)
(その代わり、これで地べたに何かできまへんで。確かに穢れ弾積めますし、それなりの事に使えなくはありませんけど、使こたあとの土地が使いもんになりまへんがな。痴女皇国世界ではこれ、基本、人運びモノ運びのためのもんですわ)
(しかしよう、こんなけったいなおもろいもん作りよったな。わしのめでみても、おまえらの世界でもあつかいされるん、ようわかるぞ…)
(あー、おかみ様はコレ入れた経緯ご存知ないか…いやね、今は鯖挟国の領地になりますけど、アルトの生まれたあたりとかで人間やめる薬の話が出た際に、んじゃこーゆーのあるから持ち込むよって話が出てよこしてくれたんですわ)
(で、後から聞いた話じゃアレーゼおばさまの一件があった時に既に計画が出てて、聖院の世界の地球だと絶対こういうのが必要になるだろうって事で作ってたみたいなんですよ。そしてかーさんやあたしがいるなら、そっちで必要な時にいちいちNBまで借りに来なくても一機くらい持っとけば? という話になりまして)確かに中東作戦ですか、あの時はもちろん鬼退治などでも使っておりましたのを存じていますし、もの運びだけでなく、簡単には手出しできない高さからの物見ていさつに使えますからねぇ。
(これで撮影したもの見せたら、この時代ならまず大抵の国の軍人経験者は黙りますね。丸見えになることがどれだけ怖いか、賢いやつほど一瞬で理解しますから)
(だから逆に元無職のおじさんマキァベッリがうるさいんや…これ貸してくれたらハンニバル・バルカ並みの事できるからとか神聖ローマ帝国攻められるからとか!)
(あのおじさんもイタリア人ですから…)
(妙に血の気が多いというか、割と戦争したがるよな…)
(戦争経済がまかり通る時代やからしゃーないねんけどな…土地やら賠償金やら戦利品をぶんどればええいくさは第一次世界大戦までなんや…それ以降は兵器の威力が上がり過ぎてむしろ復興に金がかかるし、戦争したら大赤字確定状態なんや…)
(あのおさるさんがそうでしたわね。龍皇国を攻めようとか無茶言い出すから…)
(あんときは玄蘇げんそがなぁ、明帝せいふとの交渉ばかりで毎日泣いてたんや…頼むから無茶言い出してくれるなとなぁ…)
(あのおじさんは豊臣秀吉被害者友の会会長になっていいと思うんだ…)
が今もかたみ狭い思いしとるからのう。のおばちゃん、いまでもおまえがしょうぐんやらんのはまちごうとるとか吠えとるらしいがのぅ)
(連邦世界に比べたら全然マシですねんけどな…前田利家まえだとしいえも秀頼さんの後見人になる事については、かなり熱心やったからなー)
(あれはけいさんに細かいというか、義理堅すぎたんじゃ…まつに会うたらそのへんの愚痴はやまとでるとは思うがの、ひとことで言うとあたまの堅いぶるいよ)
(このじだいのおさむらいさまらしい、すけべいでほもなぶるいなのですね)
(アルトくんが日本の武士に間違った認識を…)
(確かに利家は若い頃、ノッブとホモってたり、側小姓とホモる仲だったけどなぁ…アルトにはいらん事言わさんようにしよう)
(よめがげんろんふうさをしようとしております。あたくしはほんまのことをいうだけですのに!)
(世の中バラしたらダメなこともあるんだよ!例えば最近はベラ子が学業やらスケアクロウの操縦資格認定で忙しいのにかこつけてだな、初代様がたのきちを使ってるとかな!)
(ままままマリアリーゼ!何をばらしておるのですか!あたくしはたのちゃんの大きめのお尻が好み…ではなくてマリアヴェッラに代わって精気授受をしておりますだけでしてよ!)
(えー…それで最近、たのきちがおとなしいんですね…初代様、ダメとは言いませんけど一言断っていただけますと…)
(こういうのは内緒にするのが燃えますのよ!いわゆるねとられN T Rですわっ!)
(なんか初代様が息子の嫁を寝取る助平おじさんに見える…)
(あたしも同感です。しかも理恵ちゃんに行かずにたのちゃんに行くのがなんかもう色々。あの方、もう財務じゃなくて文教局ですやん…)
(だりあちゃん!ひとにはこのみがあるのです!あたくしにもそれなりにあるんですからね!)
(なんかすげー棒読みだ…)
(初代様が散々田野瀬さん持ち上げてたの、タイプだったからなんかい…)
(ですからちがいますと! それをいいだすなら聖母様とクリス様!)
(わぁあああ、いらん話出さないでください!あたし巻き込まれたないんですから!)

…まぁ、瞬間転送じゃこういう打ち合わせはできませんわよね…。
それとあくまで打ち合わせや会議の部類ですからね!決して会議は会議でも井戸端会議の部類じゃございませんからね!

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マリア「絶対に井戸端会議枠です」
ベラ子「同感です。姉に同意します」
ジーナ「同感です。娘に同意します」
マリア「いや実際、あたしらFL800に向けて延々と上昇作業中だったんですよ、前で…」
ジーナ「一応、ある程度の高度まで上がったらオートパイロット入れてるけど監視はいるからな…この時代に地上支援設備は現代ほど期待できんし」
マリア「いちおーVOR/DMEめいた地上施設は要所要所に埋めてるしGPSシステムも組んではいるけどなっ」
てるこ「ですから心話にしましたのですよ!」
マリア「初代様…あれ、無理やり聞かされるようなもんですからかえってキツいんですよ…聞き流しができないんですからね?」
ジーナ「しかも助平話の際には当の行為中の記憶や視覚映像まで共有されかねないのである。運転中にエロBDを脳内でむりやり再生されるようなもんやねんぞ、読者諸君!」
ベラ子「この話にお付き合い頂いている方はおわかりと思いますが、私たち痴女種は基本すけべいです。天の声が濡れ場描写めんどくさがってるだけで、基本的に1日1回はなんかしております」
マリア「毎日やってないの、最近のあたしくらいじゃねーかな。あとドカ◯役になってからのエマ子」
アルト「みなさまおわかりでしょうが、まりあさまもわりとめんどくさがりです」
ダリア「いや本当、痴女皇国開闢当時からしたらほんとーにマリアさん大人しくなったなーとしか」
マリア「いーじゃんかよー。めんどいもんはめんどいんだよー」
ジーナ「こういう横着こきくさりよる娘に母親を弾劾糾弾する資格があるのか。あたしはマリ公こそ堤防送りにすべきだと思うねんけどなっ」
ダリア「しかし現実として、マリア様を取り押さえて懲罰可能な人材は極めて限られている訳でして」
ジーナ「はっはっはっ、うちが何も考えずに言うと思うかねっ」
マリア(アレーゼおばさまは懐柔済み、最近はマイレーネさんもあたしにゃあまりうるさくしない方針なのは確認済みだ…何度も同じ手を食うかよっ)
てるこ「マリアリーゼ…あまり聖母様を舐めてかからない方が良いと思いますよ」
マリア「お言葉ですが初代様。あたしもおばはんとの幾多の死闘を経てハゲに伝承者の地位委譲を迫るラーメン王程度には強くなったのです!みんなにやいのやいの言われてやっとたるみ直しを始めたおばはん如きに遅れはとりません!ふっふっふっババァが地に伏せた絵図の肖像画は雅美さんに発注済みだぜ!」
ジーナ「なんかそれ萌え系ならまだ良くないけどええねんけど、アナル漫画の作者が描いたようなネタ系の仕上がりにならんか…」
マリア「いいのか悪いのかどっちかにしろよ…しかしババァが地に伏すのは間違いない路線だ!」
ジーナ「それはどーかな(ニヤリ)」
たかし「まりあさん。某校の校訓、よもや忘れておられませんよね?(にっこり)」
マリア「ババァてめぇ汚ねぇ汚ねぇぞ!…うう、精力善用と自他共栄でしゅ…」
なおし「あとなぁマリアちゃん…どこぞ大学卒業生じゃねぇか…その校訓を定めた嘉納治五郎って…」
マリア「菅野さんまで呼ぶなよてめぇ!確かに嘉納一族が創設した学校だけどよ、どこぞ高校…」
ジーナ「ふっふっふっ、あの柔道の神様の定めた校訓に逆らうのかね、マリ公っ」
マリア「ちきしょうクソババァ!柔道黒帯のメンチ切りハゲ召喚して投げ飛ばさせるぞてめぇ!」
ジーナ「はっはっはっ奴は柔道精神の持ち主、無用に凶暴凶悪な野生のロシア人と一緒にしたらあかんぞっ」
マリア「ぐぬぬぬぬ」
ジーナ「ちなみにうちの出身校の校訓は立志・礼節・誠実・勤勉や。厳守はしてないかもわからんが不履行ではないぞ!」
ベラ子「ちなみに実際にその場所にある学校と違い、一貫して女子校だそーです、かーさま出身高校」
なおし「とりあえずマリアちゃん、すぼらな母親の轍は踏まないようにした方がいいぞ…」
ジーナ「やかましいっ(ドメちゃんが言ってたけど、なおしは意外に家事はやる方らしいからな…)」
たかし「マリアさんはやればできる人だと信じていますからね(おててにぎにぎ)」
マリア「あ…うん…そーね、期待には応えないとな…」
ジーナ(くっくっくっ、マリ公がある種の逝麺に弱いの、うちがわからいでか)
クリス「ジーナさん。確かに終生将官の立場なら厳しい話が出るのも無理はありません。宙兵陸戦隊辺野古基地か、陸上自衛軍信太山駐屯地での陸上訓練か選んでください。最近だらけてるのは僕も感じていました。何ならTAPPSなしの大台ヶ原か和泉葛城縦走でしたらお付き合いしますがっ」
ジーナ「ききき汚いマリ公お前汚いぞっ!」
マリア「やかましいおばはん!なんなら御在所岳でもいいぞ!あそこも天気よく変わるしな!」
たかし「マリアさんはうちの侍従長が話をしたいそうです。礼儀作法について皇族流を復習なされた方が良いと、無償協力を頂きまして」
マリア「やめて!断れない話はやめて!」
ジーナ「やめて!断れない話はやめて!」
てるこ「母子なのがよくわかる話ですわねぇ」
ベラ子「あたしもジーナ母様の娘なの、今は黙っとこう…」
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