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アルトリーネの海賊退治・快速船対海賊船編・2

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えー、いよいよ海戦の開戦でございます。
駄洒落宗派に入信したわけではありませんが、とりあえず海戦です。
「図もつけないとわからないんじゃない?」
「しゃーないなー」
という訳でいよいよお互いの船が可視距離に入って来ました。
うちらは心話が使える事もありますし、いざとなれば縮帆して高速機動航行出来る船ばかりなんで、だいたい500mは最低でも船間距離を取っています。


   (▽オブイェークト2199高速艇)
   (▽カティサーク・クリッパー魔改造)

     ▽エルトゥールル(キャラック船改)

  ▽アークロイヤル(ガレオン船改)

   ▽サンティシマ号(ガレオン船改)


   ▲ガレオン船(ロロノア・ロゥ乗艦)
   ▲ジーベック船(バルバリア1号)
   ▲ジーベック船(バルバリア2号)
   ▲キャラベル船(黒ひげ乗艦)
  ▲ ▲キャラック船
  ▲ ▲キャラック船
  ▲ ▲キャラック船
   ▲ガレオン船(海賊女王乗艦)

とまぁ、上空から見てると大体こんな感じです。それなりにお互い色々考えているというか、物騒な二人が乗り込んでいる先頭のガレオン船、40門砲艦というから小型の部類ですが、一応はこの時代の戦列艦構成の船がこの中では一番困ったちゃんでしょう。
で、ジーベック型と言うそうですが、三角帆を大小こき混ぜて三枚は張ってるスリムな船、これが地中海バルバリア海賊がガレー船の代わりに使い出した高速船で、オールを繰り出す事もできるわ逃げ足が早いわで、バルバリア海賊と交戦した相手を悩ませた代物だそうです。ぶっちゃけ、遠距離砲撃が可能な蒸気船が配備されるまでバルバリア海賊退治が進まなかった理由の一つだそうで。
「ふふふふふ。所詮は帆船よ。それもアメリカズカップで使ってるような水中翼船まがいの化け物ならいざ知らず、この時代の帆船がカティサークに勝てると思うてか。エマ子、準備はよいな?」
(へい、お頭)
(こらこら!海賊のノリで行くな!…こちらスケアクロウ・ジーナです。えー各船に告ぐ。どうも海賊船は船種によって最大船速にかなり差があるようなので、若干の作戦訂正を行います。で、アークロイヤルのドレイク提督にはこちらから情報を送って指揮処理を依頼してるから、基本は提督の指示に従ってください。こちらから指揮介入の必要がある場合はジーナ、指揮介入と付けて心話発信します。緊急時以外は船名または個人名を名乗ってから心話願います。ではガレオン船接近距離1,500mでサンティシマ号は信地反転機動開始、ポート方向へ180度反転して逃げるフリして敵陣を混乱させてください。総員、かかれ!)
サンティシマ号船首の光学センサー映像などを見ていると、海賊船団先頭のガレオン船はまだ、海賊旗を掲げていないようです。砲の有効射程内に充分に入り込んでから威嚇射撃でもぶっかますつもりなのでしょう。
(こちらドレイク。サンティシマ号、指示通り縮帆しながら取り舵一杯。反転全力航行してくれ。後方左舷側より先頭船に牽制威嚇射撃後、こちらも取り舵全速で逃げるふりをする。エルトゥールル号は当艦発砲直後に増速直進、バルバリア海賊船手前で面舵反転反航、後続船団に獲物を迷わせるように仕向けて頂きたい。カティサーク、ネルソン君、予め反転反航してサンティシマ号後方からフランス艦へ閃光弾射撃。その後の実効弾砲撃は帆部上側に留めて航行不能状態に頼む。あとは戦況に応じ各船を順次同様に行動不能に追い込んで行ってくれ)
(こちらサンティシマ、動力反転航行開始、180度反転後両舷全速に移ります)
(こちらエルトゥールル、サリー、動力航行待機依頼済み)
(こちらカティサーク、ネルソン、エマニエル両名了解)

おおーすげー。
左右1機ずつのヘリカルクライオスタットというのですか、電磁誘導でネジ状の内部構造を持つ円筒内に海水を吸引して吐き出す推進機。これがうちらの目下の切り札の一つです。
で、こいつの壮絶な水噴射の方向を調整して戦車真っ青の小回りを果たしたサンティシマ号、5秒とかからずに反転反航を開始します。といってもある程度は緩やかな曲線を描きつつ反転、海賊船の全速から逃げ切るようなコースを取っていますね。海賊船が砲門を備えている横腹をこちらに向けさせないように、でしょう。
で、何じゃ何じゃと追撃を仕掛けるガレオン船に対してアークロイヤルが砲門を開いて砲撃。
この砲撃も、実は炸薬量や品質は元より砲弾重量まできちんと合わせたものを使ってまして、全砲門一斉ではなく軍艦がおるぞとビビらせて反転逃亡させるため、敢えて直撃を微妙に避けるようお願いしています。
更にアークロイヤル以外の艦もそうですが改装時にビルジキールと、船によってはフィンスタビライザを取り付けています。理由は言うまでもなく姿勢安定、特に砲撃時のため。
猛接近していきなり砲撃ぶっ食らわせて向こうがどう出るかを見るつもりですね、ドレイクさん。
砲撃してきた場合はとにかく逃げて下さいとは頼んでますから、スペイン相手のように全力砲戦を挑むような事はされないとは思うんですけど!けど!
(こちらドレイク、敵船砲門開かれました。進路そのままで全力航行して敵船を迷わせます。進路ステディ、両舷全速!)よしよし、サンティシマ号と反対方向にド直進して頂けると。
(こちらジーナ、カティサーク光学偽装解除せよ。動力戦闘機動航行開始、サイコパスのガレオン船をキャン言わせ!)
(こちらカティサーク、エマ子了解。マスターアームオン、砲撃管制イルミネータオン。有効射程・射角圏内に向け全力航行開始。先頭側L/70に近接爆発閃光弾セット済み)さて、縮帆したカティサークです。アークロイヤルやサンティシマ号も帆船としては大概な機動能力を与えていますが、こちらはもっと凄いよ。
(こちらカティサーク、エマ子。ぐふふふふふ。各員全力航行時に備えよ!両舷フルアヘッド!)瞬間、ガスタービン駆動のフリゲート艦どころかウォータージェット型高速ミサイル艇すら凌駕する猛加速でカティサークが動き出しました。ぶっちゃけジェットフォイルより速いんじゃねぇのかよ…。
(かーさん…あれ何だよ…あんま加速したら今の半鋼製フレーム船体じゃヤバいから50ノット巡航くらいに留めさせろよ…おーいエマ子、船体に注意しろよー)あたしを通じて状況を見ていたらしいマリ公が慌てて話をしてきます。
(これこれ、お前が仕様決めたのにビビっとってどないすんねん…いや、あれ一体全体何万馬力相当やねん…連邦世界でも充分に高速船の部類やぞアレ)
(えーと、片舷4万キロワットのヘリカル推進機で…推進出力5万馬力相当。こないだ鬼退治の時に来てたピエトロ・デ・クリストファーロってトリマラン型半潜水タイプのコルベットあったじゃん。あれの推進システムと大体同じくらいだな。もっとも、あれ熱核タービンジェット付随の発電機が動力源だけど)
(…おい、金剛型戦艦でも十三万馬力やぞ…そら速いわなぁ…)上空から見ててもわかります。割とでかい帆船…海上保安庁のPL型千トン級巡視船程度の大きさがある帆船が、他の船の三倍から四倍くらいの激しい造波を艦首に作りながら、文字通り白波蹴立てて時速100キロ以上、ジェットスキーの法定リミッター速度並の速さで突進してくるんですよ…。むろん、こんな速度で帆を張ってても逆に抵抗になるだけなのでとっくの昔に縮帆しています。
(こちらカティサーク、砲戦距離一千、威嚇射撃開始。うちーかたーはじーめー)エマ子の間抜けな声と裏腹に、ばらたたたっと数発の機関砲弾が船首の自動旋回砲塔から撃ち出されています。曳光弾だから弾道がわかりやすいですね。
で、敵船に着弾する二百メートル未満の手前でぱんぱん爆発して閃光を発しています。近すぎると爆発破片で負傷する海賊が出たら困りますので…何で海賊の生死はおろか怪我の心配まで!
(仕方ないっすよー。んじゃ射程外からリアタックしてメインマスト上部に徹甲弾ぶち込みますよー。あー炸裂弾使いてー榴弾とか焼夷弾撃ちてぇえええええ)相手の砲が届く遥か手前で減速急旋回して、再び機関砲を唸らせるカティサーク。ちなみにボフォース40mmL/70、イタリアはブレダ・メカニカ社でライセンス生産された品を含めて最大射程1万メートルありますから。この時代の艦載砲なら良くて3キロから4キロですね、射程距離。
と言うわけで吊ってた帆の付け根辺りをうまく射撃して帆を落とす方向で行動を封じたカティサーク、誰かのドレイン攻撃で船員が動きを止めたバルバリア艦を無視して、逃げ惑う後続船に砲撃を浴びせていきます。と言っても船体は撃ってませんよ。
で、反転反航して逃げようとする最後尾のガレオン船に恐るべき速さで接近するカティサーク。
逃げられぬと知って白旗掲げるか…?
(こちらカティサーク、エマ子。敵船、大砲用火薬に火を放って自爆の指示を海賊女王が出しましたので、ドレインして制止しました)
(よしよし、ようやった。あとはナッソー市街から反転して来た変態水雷艇やな…)アルトくんからの中継で、追い詰められたロロノアやロゥが啖呵を切って切り掛かって来たのは知りましたが、あの二人にかかっては敵うわけがないでしょう。
アレーゼさんは正攻法でロゥの顔面にはりせん食らわせていましたが、アルトくんはムチに変化させたはりせんで、ですね。
よりによってロロノアの金玉をばちこーん!とぶっ叩いて悶絶させたようで!

(こちら黒エマ、フランス戦列艦にアレーゼ様とアルトさん移乗。ロロノアとロゥを含めて全員ドレイン済みだそうです。他海賊船の状況、各船の戦闘兵力無力化確認しました。本当なら皆さんに移乗してもらって見せ場を作りたかったんですが、万が一軍船に遭遇して勝ち目がなさそうなら、火薬に仕掛けた導火線に火を放って船が燃える隙に逃げ出せとか言われていたようです。安全を考えてドレインで無力化した件についてお詫び申し上げます)
いやいやよくやってくれた云々の反応が各船から返って来ます。
(しかし、よほど切羽詰まっていたようですな…普通の海賊なら軍船と判明すれば逃げ出すものなのですが…)
(こちらエルトゥールル、サリー。教皇猊下他と移乗しました。黒ひげ確認、捕縛済みです)
(こちらチェーザレ、聖母様…なんと申しますか、バルバリア海賊以上に蛮族らしい外観ですな…)
(こちらジーナ。ヤクザと一緒で相手をひるませるためにわざとそうしとるのですわ。猊下、この後一度にまとめてナッソーに移しますので一旦エルトゥールル号にお戻り下さい)
(こちらアレーゼ。ジーナ、入港したら全員を下船させれば良いのだな。あと、処遇に怯えている者が多数いるがどうする…いや、あんな一方的な蹂躙をされた上、やる気みなぎる者たちに囲まれているだろう…とりあえず即死刑とかはないから安心しろと言ってはいるんだがな)
(あ、予定では戦闘糧食ですが食事を振る舞うつもりでしたよ。ただ、体調確認をお願いしたいんですわ。衰弱してる人間にいきなり通常の食事は厳禁ですから。あと今から言うの心話中継願います。…えー、捕虜となった海賊諸君。とりあえず食事を与えるが身体が弱っていたり病気やケガを自覚している者は、回って来たうちの人間に声か心で訴えるように。まだしばらくは身体を動かせないからな? あと、死刑にする奴にいい飯与えたり医者にかけるか考えてみてな?)よしよし、まぁそれもそうだなという反応多数。
(我々は聖院から派遣された鎮圧艦隊だが、諸君たちの処遇については食後に発表する。港に着いてから一人ずつ武装解除して行くから、素直に指示に従って行動して欲しい。討伐指揮官の提督閣下は海賊経験者だし君たちの扱いには慣れている方だ。その方がいきなり死刑にせずに救難救命をされているという事が今の時点での我々の答えだ。今後が不安な者ばかりだろうが、君たちが海賊になった経緯もある程度は承知しているから全く無罪という訳には行かないが、死をもって償えとは言わないから飯を食って落ち着いてくれ。ドレイク閣下、ネルソン閣下、こんなもんでよろしいですか)
(ありがとうございます聖母様。それと、贖罪の意思のある者は聖母教会の教皇様が同行しておられるので、懺悔の意思ある者は食後に告げてくれ。これは処遇に影響するから自分の意思で表明したまえ。ただ、罪を軽くしたいがために偽りの反省をするのはやめた方がいいぞ)
(討伐艦隊のネルソンだ。聖母様はじめ聖院の女官様方や、教皇猊下は諸君らの心中を伺える力をお持ちだ。閣下が言われたように嘘偽りは自分のためにならないから、反省する意思がある者は真摯に反省してくれ。自分の信念があって海賊をしていた者は、それはそれで構わない。ただ、取り調べには応じてくれ。猊下からも一つお話を頂く方が良いでしょうか、閣下)
(そうだな、猊下、お願い致します)
(海賊諸君。聖母教会のカエサルだ。諸君達にも言いたい事はあるだろうが、殺す犯す奪うは基本的には悪事だ。だが奪われたものを全て元に戻す事は困難でも、戻そうと悔い改め世界に貢献する事を行動で示すならば良き報いがあるだろう。我らが聖母様と聖院は、口先だけでなく善行には良き報いをもたらす力をお持ちなのは、我らの船を見てもわかるであろう。貴君らがこれ以上の懲罰を望まず、聖母様のお導きに従う事を我ら一同は強く期待する)とまぁ、各人に告げて頂きます。

あとね、従わない奴は出ると思ってました。
ええ。スケアクロウでナッソーまでまとめて転送して下船させるまでは良かったんですよ。海賊の幹部連中には片端から罪環はめて大人しくさせましたし。
問題は飯を食わせる最中に起きました。
「海賊が舐められっぱなしでやって行けるけぇ!提督さんとやら、あんたらに決闘を申し込みたい!」とか黒ひげの野郎が言い出しやがりましてね。それに乗っかるロロノアとエドワード・ロゥにバルバリアのフズールやらブラジリアーノやら。おまけに海賊女王と、女海賊2名まで、どうせ死刑や島流しになるんならと賛同しよりましてな!
「聖母様、恐れながら申し上げます。こやつらの言い分は理不尽に聞こえるやも知れませんが、海賊どもの掟では決闘で決着をつけるのも正義なのです。一つお取り計らいを頂けませんでしょうか」と、何やらニヤニヤしながらドレイク閣下が進言されます。
ま、確かにこいつらと決闘して負ける気はしません。あたしですら素手で全員ボコボコにする自信はあります。
(誰と誰を当てるかあたしが決めていいなら乗りますわ。あと、賭け率のオッズはお任せいたします!わはははは!)と、ノリノリで応諾いたします。
「なるほど、海賊の掟とやら、満更知らぬわけでもありません。とりあえず戦って勝てば無罪放免と致しましょう。ただ、組み合わせは私が決めさせて頂きますわよ? それでよろしければお受けします」と、拳にナックルガードをはめてあたしもやる気を見せておきます。
げ?あんたがやるの?という顔しやがったのが海賊陣営のみならずウチサイドにも。
(やかましいっ、聖院のうちが元来仕切るべき話やろが!あたしに色々振りやがって!これくらいはやらせれやと言いたいが…)
「では立ち合いの場は砂浜に致しましょうか。海賊の皆様、異存は」と、連中の実務を仕切っていたらしい黒ひげを見て聞きます。
「いいぜ、こちらも無理を聞いてもらったんだ。ただ、負けても恨みっこなしで頼むぜ」

つー訳でマリ公とかエマ子に頼んで連中もろとも適当な砂浜に移動。
「得物は剣でお願いしますよ」
「本当はピストルを使うのも流儀なんだが、ま、いいだろ。あいつらにもいい見せ物だ」と、黒ひげが顎をしゃくる先には成り行きを見守る町民やら海賊たち。
「んじゃ、まずは決闘の例を黒ひげの兄貴に頼みましょうか。うちは…ボルジア猊下ー。お願いしてよろしいっすかー」ふふふふふ。イケメン教皇、見せ場でっせ。
(お任せを。殺すのはなしを厳守いたします)
愛用のサーベルを受け取って不敵に笑う黒ひげと、ピサ大学時代にこの格好でフランス組と殴り合いしばき回したという黒の上下の毒盛り兄貴。
毒盛りの手には…。

マリ公に頼んで持ってきてもらったゴングを鳴らして試合開始です。ですが。
ただでも剣術や格闘術を習っているわ、実際に軍を率いて幾度も実戦を経験してる上に、十人卒程度に強化された毒盛り兄貴です。いかに黒ひげが強かろうと普通の人間。
振るったサーベルの剣撃を硬化したはりせんで片端から弾かれた上に、ばちんと手元を叩かれて剣を取り落とした黒ひげ、毒盛り兄貴のストレートパンチで砂浜に沈みます。もうイタリア組がやんややんやと喝采をあげるの何の…。

「畜生、ティーチの敵だ!俺とやるのはどいつだ!」酒臭い息を吹きながらロッシュ・ブラジリアーノが息巻いております。ロロノアと似たような髭を生やしたおっさんです、見た目は割とまともっぽいですが、やってきた事は似たり寄ったりの凶悪残虐組です。超人ではありませんが。
「失礼。聖母様、こやつは私が」と、ブラジリアーノの被害に遭った件数甚大なスペインからアナさん出馬。
「てめぇ、まさかイスパニアの女か?容赦はしねぇぞ? 尻尾巻いて逃げ出すなら今の内だぜ?」と二刀流で両手の海賊刀をチンチン鳴らしながら煽る煽る。
「ふふん、煽り向上だけは一流ですね」
で、開戦。アナさんははりせんを棒状に伸ばして硬化させ、フェンシングの要領でブラジリアーノを翻弄します。こちらも痴女化してますので両手で刀を振り回して近寄らせまいとするブラジリアーノの左手を巧みに突いて片手一刀だけに。
上段から斬りかかるブラジリアーノの剣を見事はりせんで受け切り、足払いかまして決着。ついでに、おっさんの頭を思い切りはりせん本来の形にしてぶっ叩いて失神させてしまいました。

「うぬぬぬぬ!ライム野郎出てこい!俺が切り刻んでやらぁ!」と叫ぶロロノア。
「よし、私が相手をしてやろう。さあ来い」
え。
ネルソンさん…出るのはいいけどあなた素手ですやんと言いかけて、彼の左手に装着されたものに目が行きました。
微妙なカーブのついた結構でかい透明の板が二の腕に取り付けられています。あー、エマ子が渡したな…。
(そーでーす。対刃硬化積層アクリルシールドでーす。50口径マグナム弾でも弾くの余裕、日本刀でも通りまへんで。殴れば凶器ですしね)
「へっ、抜かりやがったな。やっちまえ!」そこに待機していた筈のエドワード・ロゥとアラブ人のフズールがネルソン閣下に斬りかかります。ちょっと待てやこら。
やべぇ、と身体が動きかけた瞬間。
ぼこ、と嫌な音がしてロゥの脳天に一撃を入れたお方が。
「不意打ちに加え三対一とは卑怯千万、加勢致す!」日本刀の鞘でロゥをどついて一撃で昏倒させたのはアルトくん妹、静香ナディアさん。何やらアラビア語らしきで半月刀を構えたフズールを挑発している模様。
観客も卑怯な騙し討ちが不発に終わるどころか、見事な介入にやんややんやと喝采の嵐。さすがにこれは海賊仲間からもあれはないわとなったようでブーイングが飛びまくってます。
海賊刀カットラス片手で得物だけなら有利なはずのロロノアも焦っている模様。
フランス語ともつかぬ意味不明で麻雀点数計算機な叫び声を上げながらネルソン提督に斬りつけますが。ますが。
がきんと音がして見事に海賊刀の一撃を受け、あまつさえ跳ね返してロロノアの顔面にフック一撃。
とどめにシールドで頭ぶん殴って昏倒。
…で、フズール…。
半月刀振り回して暴れ回る…前に千人卒超えのナディアさんが一瞬にして背後に回って膝裏に強烈な蹴りをぶちこまれてます。んでよろめいたところを、右肩に鞘で突きを入れられて刀を取り落とす間もなく、これまた後頭部をどつかれて倒れ伏しております。
(殴ると見せかけて吸いましたから、傷はないはずですよ)にゃるほど。

さて、残るは海賊女王と女海賊2名、アンとメアリー。戦意も折れて降参と思いきや、やる気満々みたいです。
「海賊女王グレース・オマリー!聖院イスパニア支部のイザベルが相手をしよう!いざ尋常に勝負!」え?イザベルさん、剣握れますの?なんか構えが素人なんですが…。
(お任せください。にわか特訓ですが普通の人間には遅れは取りませんよ。ほら、あたくし千人卒化してございますから)と、自信満々のイザベルさん。それに…。
「そこの女海賊二人、あたくしたちが相手をいたしましょう」
「聖院騎士アルトリーネ、痴女皇国騎士アルトリーネでございます。お見知り置きを」えー、アルトくん達が出るのー?
(なにをいうのですかジーナ様、この話はわたくしのおはなしですよ)
(わたくしたちが出なくてどうするのですか。しかもアルトリーネとわざわざ名乗っておりますのに!)
(あーわかったわかった、とりあえずアルトリーゼでもサレルフィールでも何でもよいから、しばいて差し上げなさい。ただ…犯すなよ…)
(マリーじゃないんですからそんな事はいたしません!)
(さすがにそれは痴女皇国じゃございませんからダメなのはわかっております!)やかましい痴女皇国でもするな!最近ようやくイメージアップ効果が出てるのに、ここでやらかしたらベラ子が泣くわ!

仕方ないのでとりあえずゴング鳴らします。
イザベルさん大丈夫やろな…と思いましたが。
パッと身体が光ると、聖院騎士服にチェンジ。
両手のダブルはりせんで斬りかかる海賊女王の剣撃を見事受け止めて弾き返します。更にはりせん猛打。
闘牛のごときはりせん連撃を受け切れない海賊女王をばちこーんと打ち倒して見事に勝利いたしました。

んでアルト2名。

お前ら、せめて剣抜いたれよ。

(だってわたくしたちの剣…)
(ほらジーナ様、リトルクロウって両刀ですからみねうちが難しいのですよ…)
しかも何ちゅう倒し方しとるんじゃ。
はい、後ろに回って乳揉み倒すわ、右手がやばいところに入り込んでるわ…。
「あとでおふろに入って頂きます!」
「うるせぇっ!この島は木が少ねぇから湖辺りに水浴びに行くしかねぇんだよ!」
「おんなのひとが身だしなみに気をつかわずにどうするのですか!」
「やかましい!海賊船はもともと女禁だ!乗り込む時点で女捨てなきゃやってらんねぇんだ!てめぇらに海賊の何がわかる!」
「そんなに大変ならやめればよいではありませんか」喚き散らすボニー・アンから手を離してうちのアルトがあっさり言っちゃいます。うわぁ、アルトくん言う言う。
「て、てめ、このクソアマ何を」
「そもそも普通のおふねに乗るとあつかいがひどいから海賊になったのでしょう? それが普通のくらしよりひどい生活なら海賊をしている意味がないではないですか」たたみかける白アルト。
「あなたがたが海賊になったいきさつはともかく、盗まれた者はいつまでも盗まれたままではおりませんよ。商売上がったりになれば別の仕事をしなければ生きていけません。しかし海賊しかできないとか他の仕事につけないという人がいるから、わたくしたちが来たのです。わたくしたちは何万という人々に仕事を教えたり仕事をさせてきました。ですから申し上げます。海賊しかできないというのはあまえです。そして女性であることを捨ててまですることですか。ナディア、いらっしゃい」と、ナディアさんを呼びつけます。
「このナディアは故あってはるか東洋の島国に移り住みましたが、水軍をなりわいとする武家に嫁いで敵勢を海賊よろしく攻めておりました。つまり、女性にょしょうのままでも海ばたらきはできるのです。わたくしたちも故郷では海女さんをして海に潜っておりましたし。で、みなさんの掟とやらは本当にただしいのですか?」
「ジーナ様もちょっとちょっと」と、うちのアルトが呼びます。
「この聖母様も実は船長ですよ。それも、このおふねの」と。
(かーさん、ちょうどいいタイミングで改装終わったわよ。上見て上)と、白マリが申しますが…。音聞きゃわかるよ音。
スケアクロウ搭載改装を終えたテンプレスがそこにいます。あれを知ってるうちらの陣営の面子は、やっと来たのかよという顔ですが、海賊連中や町の皆様は唖然茫然。
そりゃま、アメリカの原子力空母サイズの代物が宙に浮いてるわけですから。しかもいきなり空中に現れたし。
「とりあえず海賊行為はこれ以上続けさせません。ですが、今まで海賊の獲物を買い取っていたり、海賊の飲み食い他で商売をされていた方々も含めて、じゃあ俺たちは明日から何をすればいいという話になると思いますよね?」と、白マリが出てきて申します。横にアルゼンチンチン風なマントに帽子のアレーゼさん。
「先程アルトリーネが海賊しかできないのは甘えだと言っていただろう。確かに身体を壊したり酷い目に遭って世を恨み人を恨むような考えに至った者も少なくはないようだが」と、はりせんムチの応用の拘束具で縛られてる野郎幹部どもをちらり。
ただ、さっきあれだけボロ負けした上に、筋肉ムキムキで世紀末救世主なアレーゼさんに勝てるとまで思い上がる様子はなく、恨みがましい目で見るだけですが。
「北の方の海賊には面子を重んじるあまりに恨みを晴らす事や復讐が掟だった連中もいるようだが…アルト、お前の故郷では復讐は認められていたのだったかな」
「はい、アレーゼさま。ただ…勝手に復讐するとそれはそれで罰を受けますので、必ず領官領主に願い出てからとなります」
「ふむ。お前たちが私を恨むのは勝手だが、その前にまずお前たちが決闘を申し込み、私たちもそれを了承したことを思い出してくれ。しかも我々は殺す意思がないことを示すために、わざわざ剣ではない得物を取って戦っているのだ。お前たちの決闘の理屈で言うなら正々堂々戦って負けたのだから、お前たちが私たちの言うことを聞いてもらうべきじゃないのか?もし不満があるなら私一人がお相手しよう。アルト、ちょっとこれを持っていてくれ」で、マントを脱ぐアレーゼさん。

ひゅん。

ロロノアのすぐ目の前で砂浜が爆発したように吹き上がります。我々聖院や痴女皇国関係者にはおなじみ、マイレーネパンチのアレーゼさんバージョンです。え?という顔で5mは離れている筈のアレーゼさんと爆発した場所を見比べる、アレーゼさんを知らない皆様。
「言い忘れていたな。聖院騎士のアレーゼというのだが、米大陸統括支部長の職についている。このアルトリーネは私の部下で、かつて私がやっていた聖院騎士団長の地位にある人物だ。君たち海賊全員…回りで見ている者たちを含めて、もし再戦を望むなら私一人でお相手をしよう。もちろん、私は素手で構わんよ。どうだ、君たちの言う名誉や誇りを守ろうと戦う殊勝な考えの人間はいるか。いなくとも私は卑怯者とは言わないが、この私に挑む勇敢な者は勇者として讃えてやる」
「あのー、海賊のみなさま。アレーゼさまと戦う気がある人はいないと思いますが、なっそーの町にいた人から話を聞いてからした方がいいですよ」
「こ、こらアルト!せっかく私と戦ってみる勇敢な奴がいないか楽しみにしていたのにバラすんじゃない!」
「だってアレーゼ様一人で片付けちゃって、あたくしほとんどやる事なかったのですよ!これはうらみに思いますよ!」笑いながらアルトが言います。
「まぁ、いくらうらんだとしても、わたくしはアレーゼ様に勝てませんけどね」
「聖院でこの方に勝てる人は私、マリアリーゼくらいです。引き分けに近いですけど。更に言うと…そこにイスパニアの女王様やブリテン海軍の提督様がいらっしゃいますけど、仮にあの人たちが軍を率いていたとしましょう。私かアレーゼおばさまが一人で来たらどうされるか。はい、イザベル陛下」
「講和の使者を出します。というか実際に出しました」
「ありがとうございます。ドレイク閣下」
「全艦に白旗を揚げさせるか、反転して逃げ帰れと命じますな。全艦撃沈はごめんこうむります…いや、海賊諸君。これは冗談で言っているのではないのだ。さっきの拳の一撃を見たろう?あれは多分、手加減しておられるぞ…」
「おそらく全力なら拳の一撃で船、壊れますよ」とマリ公が追い討ち。
「で、ロロノアとやら。勝負の結果にはまだ不満があるのか?」と、アレーゼさん、縛られてるロロノアの前にしゃがみ込んでにこやかに問いかけますがね。首を横にぶんぶん振ってます。
「いや、何なら銃や大砲を持ち出しても構わんのだぞ?」だから無理強いしなさんなって。もう脂汗だらだらで必死に許してくれっつってるじゃないですか。猿轡かまされてますけどアレーゼさんなら心中読んでるでしょうに…。
「ちょいと待った、一つ聞きてぇ事があるんだが。今後は俺たちをどうするか、それを教えちゃぁくれねぇか?」頼み込んで猿轡を外して貰ったのでしょう。黒ひげがアレーゼさんに大声で聞いてます。
「そうだな、お前達の多くは国元に帰っても死罪か流刑だろう。つまり、お前たちが一番恐れている死刑か、それに類する刑罰が待っているのは間違いないな。だから私…というより、聖院聖女マリアリーゼの名でお前達を、聖院に於ける罪人として引き取る事にする」
これ実は事前の取り決めで決まってました。
海賊討伐の報酬というか費用を出して貰う代わりの補償の一環として、海賊は一旦、聖院預かりとして罪人の処遇を与えると。
「で、聖院での罪人の扱いを知っている者はいるか…多くは知らなさそうだな。簡単に説明すると、犯した罪の重さに応じて自動的に刑期が決まり、その間は我々が与える労働に従事してもらう。といっても過剰な重労働はないし、三食や睡眠時間はきっちり与えるから安心してくれ。病気や怪我についても同様だ。既に病気にかかっていたり、あるいは障害を負っている者は後で治療して健康な身体に戻す。そして、君たちに取ってあまり多い金額ではないだろうが、我々が雇用している罪人には、労働期間や内容に応じた賃金を支払っているのだ。つまり給料がある」
と。
そこへ。
「この者はさる戦で痴女皇国の捕虜となり、罪人扱いで働いていたのだ。だが…おい、ティーチとやら、お前の首にかかっている罪環という輪の色を自分で見てみろ。ほれ。そしてこの者…前・罪人頭のラドゥ3世の罪環と見比べてみろ。何が違う」ええ、美男公が呼ばれて来ました。ですが、アロハ姿にブーメランパンツって何やねん。誰の趣味や!
「色だな。俺のは黒。そいつは金色だろ」アレーゼさんが聖環で黒ひげ自身の今の姿を見れるようにしていますね。
「そうだ。この色はお前達の働きぶりに応じて黒から銀、金へと変わっていく。そして、刑期満了となると…」美男公の首からさっ、と罪環を外すアレーゼさん。「このように、いつでも外せる状態になるのだ。だが外れるまでは勝手に外そうとするなよ。うかつに外そうとするとお前達の精気を吸い取って動けなくする上に、犯罪の意思ありとして我々に警報を出すようになっている。外そうとするだけでなく、今後は盗む殺す犯す騙すなど、罪を犯そうとすると同じように作動するのだ。更に言うと、お前達がどこに逃げようが場所が我々には筒抜けになる寸法だ。誰と会って何を話したかなど、全て私たちにわかると思ってくれ」
「…なるほど、あんたらが見張らなくても、この輪っかが勝手に俺達を見張るって寸法か」
「言っておくが聖院の女官でもこの罪環を外せる者は限られている。それに、私でも本来はそう簡単に外せないんだ。このラドゥ3世殿下は痴女皇国と戦って捕虜になったんだが、我々に捕らえられた経緯が経緯なので、罪環の色も銀色から始まっている。後ろの連中の中にも、罪環が黒色ではなく鉄色や他の色になっている者がいるだろう。この色が金色に変わり、継ぎ目が出来るまで早い者なら一年かからん。だが、いつまでも反省の色を見せずに働く事すら拒否するならば黒いままだ。そして、我々は殺しはしないが…」
「反省しない罪人には矯正処置を取りますよ。はっきり言うと、まず本人の意志と裏腹に、身体が勝手に動いて勝手に働くようにします。それでも悔い改めない場合、頭の中を作り替えられます」ときっぱり断言なさる美男公。
「まぁ、そこまで行く罪人はそうそういません。多くは我々の提供する待遇に大いに満足して真面目に働いいてくれますよ。私が罪人頭だった時も、そういう処置を取られた者はいませんでしたから。それとね、海賊の皆さんの大半は男性ですね。ま、女性でも男性でも、真面目に働いていると、とてもありがたいご褒美があります。痴女宮も聖院宮も、女官の皆様が取り仕切っておられます」
「これ、実例示した方がええやろ。んー、アナさーん、ちょっと黒ひげに実体験してもらって欲しいからアレやったってくれへん?あたしらがやるとやり過ぎてまうから!」と、今の面子の中では百人卒なアナさんにお願いします。
「な、何だよ…」狼狽する黒ひげティーチの前に近づくアナさん。
「心配するな、これを経験すると、むしろ毎日やって欲しくなるぞ?」と微笑んで手を黒ひげにかざします。めっちゃ気持ち良さそうな顔をして倒れる黒ひげ。
「ほれ、ロロノアにエドワード・ロゥだったか。お前達も体験した方がいいだろう。それ」と、拒否る間を与えずにアナさんがドレイン。こいつらも同様な顔でへたり込みます。
「どうだ。我々は人間、特に男性を触れずに気持ち良くさせる事が出来るのだ。その代わりに体力を少しばかり頂くがな」と、黒ひげを助け起こしながらアレーゼさんが教えてます。
「…なるほど…女が獄卒なのには理由があんのか…」
「そう言う事だ。ま、働けばわかるが、これ以上の褒美も用意している。あとはお前達が仕事に励むだけだ」
「その仕事ってのによるだろ…あんたらの話ぶりからすると、俺たちを奴隷のようにこき使う気がないのはわかるんだが、こいつら全員が物わかりのいい奴ばかりじゃねぇんだ…その辺をはっきりさせといてやっちゃくれねぇか?」
「なるほど、お前の言う事にも一理があるな。そして罪環の色を見てみろ」で、もっかい自撮りモードにして黒ひげに首筋を確認させてます。
「およ?さっきと違う色になってんな?これは…」
「どうもお前は単に脅したり暴力を振るうだけでなく、部下や仲間を上手く使っていたようだな。今のお前の振る舞いを判断して罪状を少し緩めたようだ。よかったな」
「そりゃあ同じ船に乗るんだ、働きが良くなきゃ仕事もはかどらねぇよ。それにこいつらの殆どは人扱いの悪さに嫌気が差してたんだからよ、嵐を乗り切るとかどうしても頑張らなきゃならねぇ時以外は無理無茶を言える訳ぁねぇよ。言うような馬鹿もいたが、そういうのは大抵反乱起こされて鮫の餌か縛り首さ。で、仕事ってのだが…」
「ちょっとこれを飲んでみろ。茶のようなものだ」と、アレーゼさんがステンレス水筒を差し出します。ちょっと待てそれあたしのコーヒーだぞ。
「ふむ、苦いが香りは独特だな。向こうの偉いさんに飲ませりゃ流行るかも知れねぇが…はっはーん。これ、もしかしてこの辺りで穫れねぇか?」
「正解だ。これはコーヒー豆という豆を煎って粉にして湯を通すと茶の代わりになる。そして…そこにアラブの方の出身の奴がいるだろう。鯖挟国の領土で大流行し、イタリアやイスパニア、フランスに持ち込まれて流行るのだよ。ブリテンでは天竺や中原龍皇国産の茶が流行るがな」
「なるほど、その豆畑に人手がいるって寸法だな。それなら話は分かる」
「あと、ここではないが南の方や北の方で麦を育てたり、牛や馬を飼うのに適した場所も多くあるのだ。そこで働く者を我々は大量に欲している。現地の住民にも頼んでいるが、如何せん土地が広くてな」
「まぁ、飯や寝床さえ与えて縛り首にされねぇってんなら、それなりに頷いて働く奴も多いだろ。…それと、罪人頭ってのに閃くもんがあるんだが。もしかして罪人を仕切るのに罪人を使ってねぇか?」
「よく気付いたな。美男公、説明して頂けるだろうか」
「はい。黒ひげとやら、我々罪人は罪環の色で賃金や処遇が変わるのだが、その処遇というのは他の罪人を指揮して職場の仕事を回して行くことも含まれているのだ。ちなみに罪環の色が変わると賃金が上がるだけでなく外出もある程度は自由になるし、酒や女を買う事も出来るぞ」
「…それ、本当に監獄なのかよ。まぁお前さんの顔からすると嘘は言っちゃいねぇようだが…」
「とりあえず体験してからでもいいんじゃないか?我々の待遇に不満があるなら、こと今回の海賊稼業に関わった者は解放することもやぶさかではない。ただ、出身国に引き渡す事になるが…」
「わかったわかった。食わせて貰った飯の分は働けってこったろ。とりあえず罪人扱いなのは間違いねぇんだ。んー…女王陛下!あんたはどうだい!俺はとりあえずこのお方の言い分に乗ってみることにするが!」と、海賊女王に声をかけます。
「黒ひげ、お前が言うなら信用しても良い気はするのだが…」
「あとな、多分、このお方がたは…儲け話を知ってるぜ」そこでニヤリと不敵に笑う黒ひげ。「だって考えてみろよ。さっきの茶にしても、ここからイスパニアに持って行く手間を考えりゃ、割に合う品物じゃなきゃてんで儲からねぇだろ。いくら教会様でも慈善だけで飲ませ抱かせ食わせで働かせてくれるたぁ、俺にゃあ思えねぇ。だが上手くすりゃ儲け話に乗っかれるって考えも出来るんじゃねぇか?罪人が罪人を仕切るって事は、才覚がありゃあ取り立てて下さる話も湧いて出るだろうよ」うまいこと言うなぁこいつ。要は聖院でやる事業にいっちょ噛みさせろって、微妙に話をすり替えて言ってんですよ。
(アレーゼさん、なかなか抜け目がおまへんな、この黒ひげ)
(お前も似たようなものだろう…まぁそれはいい。実際問題として、こいつはそれなりに人望があるようだし、今後の更生次第では色々と任せてやってもいいだろう。海賊被害の補償問題もあるしな)
(りょーかい。とりあえず聖院側で処理して貰って構わんっすよ、こいつらの処遇。なんせ南北アメリカ大陸の開発や。アホほどマンパワーを食うのは見えてますからな)
(うむ。ではすまんが、こやつらの配属については私やマリアリーゼが決める。あと、押収した財宝類に関しては欧州組に説明は…)
(してますよ。どこの誰から盗んだとかわからないモノも多いんで、一旦は聖母記念銀行預かりにします。被害補償代わりに、希望する国には無利子融資の相談に乗る方向で行きますので)
(まぁ、あれは私のだいや私のだとなっても困るからな、妥当なところだろう。担当は初代様だったか)
(ですね。後で引き渡しの際に話をしときますよ)
(あ、その件なんだが…ジーナ…お前、今回…マリアリーゼやアルト以外の痴女皇国の連中に黙って話を進めてただろ…)
(え)あたしの肩をがっしと掴む誰か。
振り向くと。
とぉおおおおおおおおってもいい笑顔でベラ子がいます。
「かーさま。色々とお聞きしたいのですがね。親子の信頼関係とか諸々の事もありますので。出来れば口や心話でなく身体の会話で」ズズッっとあたしの身体を引きずろうとしますが、エマ子ボディのあたしを引っ張って行こうなどとは片腹痛…え?
(あー、ジーナかー様。済みませんがベラ子母様に脅されまして。パワーリミッターかけてます。具体的には崩御前のお身体の力です。つまりベラ子母様より弱い状態です。今回の件に関する親同士の会話にあたしは加わりたくありません。ぶっちゃけ逃げます!)
(待てやエマ子てめぇあたしの身体の制限解除してからにしろ!こら!)
「あー、ジーナ、あとは聖院のジーナ含めて我々で処理をしておくから、心おきなく母娘の対話とやらに勤しんでくれ」にこやかに送り出しやがってアレーゼさんの薄情もの!
(お前が薄情と言うな!聖院の時の話を蒸し返す気はないが、この場合はマリアヴェッラの心境を重視してやるべきだろ!)
(ぐぐぐぐぐ)
「そーよかーさん、この場合は聖院が助けても話がこじれるだけだからさ、痴女皇国の聖母同士で心おきなく対話して母娘の断絶を埋めるべきよっ!」
「まぁ、この場合、バレた時点でうちの口封じが上手く行ってなかったと言う事で、頑張れうち。骨はもう一回拾ったるからな」
「あんたあたしやろ!助けてくれよ!」
「なーに大丈夫ですわよかーさま。ちょおおおおおっと監獄国で吸ってた分の精気精製と還元にお母様の身体を使わせて頂くだけですから。ほーっほっほっほっ!さぁ、テンプレスの提督室をお借りしましたから、遠慮なくこのマリアヴェッラとお話をさせて頂きましょう!」誰よ…ベラ子の聖環の転送機能リミッター外したの…。
(あー、ごめんかーさん。ベラ子ぶんむくれてるから仕方なく外した。と言う訳で頑張ってくれ。エマ子ボディだし間違っても崩御はしないから。では健闘を祈る)
…どいつもこいつもあたしを生贄にしやがって!
(大丈夫ですわよかー様、いつもの通りに愛を語らうだけですわよ愛を!)
その愛と書いてちんぽと読む行為さえなけりゃあ、な。

まぁ、痴女皇国って…こんなもんですよね…。
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