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アルトリーネの海賊退治・檸檬の作者は…編

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「ええか。梶井基次郎 池◯戸◯文◯治で絶対に検索すんなよ。ええな。せめて梶井基次郎 文豪アニメーションとかで画像を見るんやぞ」
「誰に言ってんのよかーさん…ちなみに梶井基次郎と石川啄木についてはあまり逸話を調べない方が幸福な人生を送れるわよ」
「なお、デステロイヤー菅野くんに石川啄木の逸話を検索して見せたら絶句していた。奴にかなりの文才があるのは軍ヲタ界隈では割と知られた話だが、石川啄木にかなり影響受けてるんや、あの兄ちゃんは…」
「まあともかくとして、何よこの大量のレモンは…教皇猊下のご実家が調達してくれたシチリアレモンを差し入れるから、海賊征伐頑張ってくれという豪傑おばちゃんの書状はまだいいとしてね!」
「申し訳ない。我が父…ロドリーゴがやらかしまして…あの父はピサの大学在学中にも家が傾くのかと思うほどの砂糖を買い付けて賄賂工作を私に押し付けて参りまして…」
「これだけでもスループ船の積載量の半分くらいはあるわよ…あと猊下。なぜに甲冑なんか着込んでおられるのでしょうか…」
「いや、これが為に執務をミケロットやジョバンニに振りに振って参ったのですが…」ええそうです、相変わらず本作品群の中でも美男子ベストスリーに入りそうな美男教皇のカエサル一世猊下こと、チェーザレ・ボルジアお兄さんです。ちなみにドン・ミケロット枢機卿やジョバンニ・デ・メディチ枢機卿はバチカン所属になっていますが、この本当は怖い毒盛り兄貴の大学時代からの友人兼手下だそうです。
「いや…猊下が来るなら船を手配した方がええよな…なんぼなんでもスケアクロウの荷室に押し込む訳にいかんやろ…」
「今からイタリア海軍に連絡してポーラ回してもらう? テンプレスはまだスケアクロウ搭載改装工事中よね…」
「2世を痴女皇国から調達するか…あかん!あれを引っ張り出したら痴女皇国の連中に感づかれる!」
(しゃーねーなー。ちょっと眼帯に頼んで船を都合してもらうよ。…あ、眼帯もカディスに来てるんじゃねぇか。なら都合いいや。とりあえず痴女皇国仕様艦か改装艦はねぇか聞いてみよう)
(頼むわ。教皇猊下の御座船に使う可能性がある言うてな…)
「しかし猊下、こちらまで来られた船を使われても良いのでは…」近習が助言していますね。
「いやフランチェスコ、あれはまずいそうだ。我が方が乗って来たイタリア籍のベネツィア海軍艦なのだが、あのガレアス船は大洋を越える能力が低い上に…正直、鈍足だろう。おまけに大量の漕ぎ手を要するのだ。ジブラルタルを越えてカディスまで来れただけでも良しとすべきだろう」そうです。無敵艦隊にも混ざっていましたが、大型の手漕ぎ併用帆船を何隻か保有してたんですよ、ベネチア。
聖院世界ではレパント海戦は回避されていますが、無敵艦隊に参加したベネツィア海軍艦で、目の前にあるガレアス船と同じ型の艦が足を引っ張りまくってスペインから文句を言われたと。
で、半ば退役というか練習艦扱いになっていたのを引っ張り出して、ピサにいた船をシチリアに回航してレモン積んできたと…。
(サン・サルバドル号というガレオン船が空いてるらしい。連邦歴史じゃ会計艦としてアルマダ海戦に参加して沈んでるが、こちらじゃ現役。金庫艦という事で痴女皇国推奨仕様に優先改装されてるから、居住性は多少はマシなはずだよ。スケアクロウ使って、他の艦と一緒にカリブまで引っ張って行きゃいいだろ…いや、待ってくれかーさん。もしかしたらアレ出せるかも知れないってよ。予算承認はしてやる必要あるけどな)
(あー…あれか…御座船設備もあるしな…ま、今回は鬼退治作戦同様に海賊から吸い上げて捕獲するし、大兵力はいらん、せいぜい二隻か三隻あれば良いとあらかじめ言うたんやろ?)
(んだんだ。あと、エルトゥールル号あるじゃん。鯖挟国のキャラック船で貿易艦隊所属艦。こないだ助けてもらったお礼がしたいから何かあればって言うからさ、聖院艦隊として一時編入して行ってもらったらいいんじゃね? うちの水先案内も乗ってるし、転移はあたしとエマ子でできるから、コンスタンチノープルに飛ばして積荷下ろしたら即、聖院世界のカディスの近くに転送するよう段取りつけるわ)
(ああ!あのキャラック船なら交易仕様やしな。もしも穴、いやアナおばはんがアレ引っ張り出せんかっても、鯖挟国のアレやったらレモン積むにはちょうどええやろ)
(海賊の健康を心配するのも変な話だがよ、絶対に壊血病やら脚気かっけを発症してる奴らがいるだろうからな…)
(ルイのおっさんは今回船を出さん気か…革命起こさしたろか)
(イギリスは初代アークロイヤルを回してくれるらしい。痴女皇国仕様ガレオン船で、サン・サルバドル号とだいたい同型艦)
(おーい。ドレイクのおっさん乗せてへんやろな…あれスペイン関係者からは蛇蝎のごとく嫌われてるぞ…)
(だが、あいつくらいしか今回の任務に向いたのがいないから、何とか頼むと平和王に泣かれたらしいのよ…)
(まぁ、スペインは金で黙らせるか…)
あ、実は痴女皇国、中南米でちょっとばかりやらかしています。今は痴女宮に戻ってますが、ミカエルがアレーゼさんに付いていた際、ついでにある事を依頼。
黒マリやエマ子と連携して「ほぼ一瞬で」終わらせた仕事ですがね、ボリビアのポトシとそれからメキシコのグアナファトとサカテカスで。
で、あらかじめ初代様に頼んで痴女宮の地下第二金庫を拡張して頂いていた中に、いつの間にか元素記号Agのインゴット1万トンばかりと、金塊数百トンが置かれていまして。
あ、こないだ南洋王国一万ルピー銀貨という貨幣が新造されまして、18銀でして。はっはっはっ。
ついでに聖院時間軸でも同じ事を白エマ&白マリと組んでやらせていますので、あの辺をいくら掘ろうが、もはや石以外何も出ないようです。
(ポトシだけで累計産出量4,500トンくらいかな。これだけの量の銀を撒き散らしたら、そりゃ極端なデフレかインフレどちらかになりますって!ついでにアラスカとコリマの金もいずれ回収しといてくださいね)と、たのちゃんが釘を刺しに刺していますね。
なんせこの時代、こうした大鉱山開発による奴隷酷使だの軍事力整備だのに明け暮れておったのが連邦歴史。しかも地中海はオスマン帝国と手を組んだバルバロイ海賊が跳梁跋扈している始末でした。
しかし聖院世界ではこの辺は早期に鎮圧が進んでおり、あまり他国に派手に進出すると、どこからともなく現れた剣士や拳士ただ一人にボコボコにされていたようです。
ほらほら、アルトに聖院行きを勧めた初代アルトリーネさん。あの人も地中海沿岸で暴れた口だそうですよ。
むろん痴女皇国世界でも似たようなものですが、やはり例のトリエステ港壊滅事件はかなり強く効いた模様。なんせボルジア家とデステ家がメディチとベネツィアに伝えた結果、偵察に行った船が帰り着くまでに沈んだとか、ダ・ビンチおじさんが惨状を見に行って書いた(事にした)スケッチ付きレポートがあちこちに送られてまして。
更に、痴女皇国の飼う黒い怪鳥から噴く毒で海を汚されたらこうなるぞという噂が欧州中に広まるとか、何故かポーツマスだのブレストだのでも似た赤潮が発生するとか、痴女皇国世界だと地中海沿岸のアフリカ北部に若干いた海賊の根城の港で船が根こそぎ沈んだとか、不思議な事がありましてねぇ。
更に南ドイツを中心に城壁がボロボロになるとか、配備された大砲が腐食するとか不思議な事件が立て続けに起きておる矢先に、ポーツマスに巨大な鉄の軍艦が空から現れて豪傑おばはんが国王への親書という名の警告書を渡しまして、痴女皇国という国が遥か東南の海上にあるが、その国の機嫌を損ねて兵力を無闇に蓄えたが最後、港の船や城は腐り銃砲や剣は錆びて朽ちるであろうと忠告に及んでくれましてね。
我がイタリアは真っ先に、トリエステやナポリで警告に従わぬ場合に何が起きるかを経験したので衷心から申し上げるが、彼女らのこの船一隻で本当に大英帝国を地上から消し去る事も出来るのは、スエズ運河開闢でわかっただろうから悪い事は言わん、従え。私は従ったからイタリアを統一させてもらえた。
なお、ミラノの私か、ローマの聖母教会本部に書状を送れば取り次ぐが、何なら貴国に痴女皇国の外交事務所を設けてもらいゴマをすれば貴国にとって利益になる話をしてくれるかも知れないだろう。実際に私は痴女皇国のこの船で送ってもらってる訳だし。
なんて事を…ポーツマスにいる兵士からあらかた吸い取って行動不能にさせた上で吹き込んで来た模様。

ええ、それがあるからあの飯のまずい国、全力で協力的です。
その代わりにポーツマスの造船所にも木材配達したり、比丘尼国…厳密に言えば尾張他訳国と三河監獄国産の鉄材鋼材の供給から、自国製鉄所の近代化ノウハウ伝授まで色々やって差し上げておりますが。
(まぁ、これでも逆らうようなら山一つとか城一つ街一つ吹き飛ばすか、乳上もしくはメーテヒルデ行かせて街一つから吸い上げるとかやらなきゃならんかったからなー)
「とりあえず猊下。仮に場を用意させて頂くならば、海賊とは船上での戦いとなるでしょう。普段着に戻って頂いても大丈夫ですよ」あたしは自分の嘉手納基地時代のスタイルまんまな、宙兵隊二号迷彩作業服姿を指差します。
実は毒盛り兄貴とは若干の関係がありまして、例の時々の慰安。あの面子に混ざらざるを得なかった際に相手をした事がありますねん。
その時や、前からの印象、1ミリたりとて変わっていません。関西弁で言うと、ほんま落ち着かんな自分…つまり、ちょっとは野心を引っ込めて大人しく聖職者しときなさいよとなります。
ただ、毒盛りの教育役は目下、奴を気に入ってる黒マリです。
そう、ディプロ◯シー仲間として引き込みやがりました。
これは第一次から第二次世界大戦までの間の欧州事情を教える事で「いらん事したら子孫がどうなるか」教える意味合いが強かったそうですが、毒盛りにはかえって戦略脳を刺激する結果になり、最近では無職だったおじさんまで引っ張り込んでる模様。
「しかし何ですな。こうして考えると、イタリアに海外進出をさせるのは果たして得策かという上皇陛下のご意見、満更理解できなくはありませんな」
「統治にご自信がないと?」
「イスパニアが新大陸で最終的に失敗したと知りましたからね。我が国…としておきますが、エチオピア統治についても良くない結果を残すわ、挙句難民問題で中東に悩まされると知った日には、上皇陛下の言う経済戦、この方が合理的なが出来るというのは私も同意見ですよ」
「それならば我が国が手にした筈の銀を返還頂きたいですわと啖呵を切りたいところですが…教皇猊下、聖母様、お久しう」眼帯をしたおばはんが現れました。
本編に本人初登場、眼帯公女のアナ・デ・メンドーサおばはん、本日は貴族めいた格好ではなく、何故か男装に近い開襟シャツにベストにタイツ…おいっ、あんたそれ海賊ルックやろ!
「おや、これは摂政大公閣下。よもや出陣のおつもりで?」ニヤニヤと冷やかす鎧姿の兄ちゃん。
「いえ。我が国出身の阿呆も多数含まれておるとかで、捕縛後の輸送船拠出を依頼されまして…」
「なんや、海賊の本陣を逆に海賊しに行くのかと」あたしもニヤニヤしながら、自分の右目を手で塞ぎます。
「いえいえ、この目を治して頂いたご恩はご恩として考えておりますので。ただその…大人になっても財布を預かられている子供のような扱い、そろそろ考え直して頂けますと非常に有難いのですわ」ええ。幽閉状態だったこのおばはん、救出してスペイン摂政に据えたの、痴女皇国ですから。
その際に実はおめめも治してるんですが、眼帯がトレードマークになってるからと普段は眼帯してますねん、おばちゃん。
あと正直、幽閉された理由を聞くにつけ、謙虚な態度は維持して欲しい事しきりなんです。

エボリ大公妃アナ・デ・メンドゥーサ。

この眼帯おばちゃんの最初の旦那、るっきーの今の「イタリア連合公国における戸籍上の旦那」がデステのおばちゃんの家臣で大臣だったようなポジションの偉いさんで、スペイン王フェリペ2世の重臣でして。
それが旦那が早逝してから人生の歯車が狂い、故郷パストラーナの修道院に引きこもって禁欲生活…しませんでした。ええ、あたしらがスペインを訪問して、このおばはんが最終的に幽閉された屋敷を下見していましたでしょ。
史実では愛人アントニオとの仲を知られた亡夫の部下を暗殺したのがフェリペ2世にバレて幽閉されていますが、こっちではもっとキツい事やらかしてますねん。
フェリペ2世死去のゴタゴタに乗じて、ツバメのアントニオを王位または王家内に押し込もうと工作しよりましてね…。つまり政権狙い。
ですから、フェリペ2世夫人、つまりイザベル王妃の口利きがなかったら、幽閉どころか死刑すらあり得た訳ですわ。ちなイザベル王妃のおかんはフランス王妃のカトリーヌ・ド・メディシス…ええ、メディチ一族の出身です。ほら、皆さん方の歴史と違う以前に、なーんか裏にありそうに感じません?
ちなみにメディチ家、痴女皇国世界や聖院世界では統一イタリアにいい顔してません。ハプスブルク家やフランス王家に食い込んでる事でわかるように、国際的政商としてうはうはがっぽがっぽしてたのです。
それを事実上ぶっ潰して、イタリア連合公国並びにバチカン市国指定政商序列一位に任じた事で「許可なく国外でイタリアの利益よりも他所を儲けさせる話して来たのバレたら取り潰す。お前ら実質イタリア国内商人な」と、位打ちぶちかましたおばちゃんとお兄ちゃんの背後に、どこぞの痴女の国のやさぐれた娘がいたかも知れません。
つまり痴女皇国、メディチ家からはかなり恨まれていますが、今や「代わり」つまり教皇猊下のご実家が政商序列二位の位置から手ぐすね引いて待ち構えているのがわかっていますので、傭兵でも雇って暗殺団を組織したくとも出来ずに、泣く泣く黙ってデステのおばちゃんに従っている状態なんですよ。

ま、それはともかく。
「それが出来たら私も苦労しとらんのですよ。ほら、うち、あの飛ぶ船持ってますやろ。あれの改装工事もありますが、新しい経理役が厳しい人物でして、乱用するとうるさくなりましてね」うん、たのちゃんの事です。

で、スペインの財政破綻は痴女皇国が引き受けるからと周辺諸国に通達して、いわば痴女皇国がIMF役をやってる形で絶賛財政介入中な訳です。
そして本来はポルトガルを含めてスペインがやる筈だった中南米開発事業。これを一旦全部召し上げて、アレーゼさん監督下で再開させていたりします。
ですから奴隷の代わりに現地採用女官やスペイン国内で募集した女官軍団が中心になり、アルゼンチンやウルグアイの穀倉・牧畜地域を最優先で開発してフランス相手に「お前から小麦買わんでもええようにしたからな」と、まずはジャブ一発。
続いてキューバの造船所も接収して痴女皇国推奨仕様船舶対応に改装。
綿花栽培事業はもとよりタバコやコーヒー栽培を安定化させたキューバに国力を持たせて、ハバナをスペインとの貿易ターミナルにしています。
で、メキシコについてはこの時代から既に砂漠化していましたので、まずは地中海性気候にしていく方向で灌漑事業を立ち上げーのしております。
ほいでもって、この成果をイギリスに見せて「原住民と協調するなら痴女皇国監督下でアメリカとカナダに進出さしたるで」と持ち掛けて、渋々しぶしぶ合意させております。インド開発にも噛ませてやっとんねんから文句言うなよ。
「閣下…フランスを最終的には今の貴国のような、ある意味で破綻した状態にしないと、世界の歴史に禍根を残す事をしでかされるのですよ…貴国が弱体化したからと言って、上から攻め入られぬように手は打たれておりますから安心して財政再建にお努め下さい」と、毒盛り兄貴がこちらに加勢して眼帯を宥めてくれます。うん、イケメンパワー全開。
「左様でございますな。全く、あの国が自国に封じ込まれておらぬと我々にも百害千害。そのためにも周辺の我らで事業を分担して、各々が利益を上げるよう聖母教会からも啓蒙文が参っておりましたでしょう」と、またしても海賊の親玉みたいなのが二人。
「やぁドレイク提督。貴国の陛下におかれましてはご健勝のようで」あー、眼帯の機嫌が目に見えて悪くなるやつが来やがった…。一方、聖母教の英国教会を建ててもらい、喜捨収入が上がるのが確定している毒盛り兄貴はえびす顔。
しかも、一見、海上大回りですが実は一日でイタリア沿岸に来れるようになってますので貴族様方の別荘地にどないだと、英国相手のリゾートビジネス売り出し中のイタリアさんです。
加えてアルプス水源を利用した栽培野菜の輸出取引で、ある意味頭が上がらない関係をイタリアとイギリスには作らせております。
更にこの時代には合成など思いもよらないビタミンC供給に欠かせないシチリアレモンの山を見て、すげぇ羨ましそうな顔をしていますね、ドレイクさん。
「バレンシア産オレンジでも壊血病予防や治療には効きますよ。閣下、商談の仲介でしたら私か教皇猊下が致しますわ。ほほほ」
(仲が激悪なのは分かってます。だからイタリア噛ませて売りつけるんですよ!その代わりに米購入価格を負けてもらうんです!いいですね!)とおばちゃんに心話で商談の指南、もといお説教ぶちかましたり。
(ジャポニカ種の量産の目処もつきましたから、長米分の作付けの相当は価格下落が見込まれております。オレンジ販売仲介をさせて頂きたいのはその辺もございましてね…)と、本音をチラチラさせながら毒盛りが言葉の甘い毒を盛ってきます。
(鴨料理に使っても美味いのは承知しておりますからな。いちいち料理如きでドーバーの向こうに大きな顔をされるのは、大公閣下、貴国に大きな顔をされるより腹立たしいのです。どうかご自慢の巨船の如き広い心でお接し下さいませ)と、ドレイクのおっさんが見る先にあるのがですね。
はい、時代ちゃうやんけ物件がまたしても出てまいりました。
ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・サンティシマ号。連邦世界ならヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダー号ですが、スペインが聖母教会傘下に入りましたよという意味で、単に聖なる聖母号の名でこの世界では建造されております。
更に、キューバのハバナ造船所初の大型建造艦にして世界最大級大型帆船です。
…ただ、この世界では本来の戦列艦としてではなく、輸送艦として建造されています。
目下は中南米航路、特にアルゼンチン方面からの生産食糧輸送担当艦として、大型輸送船の実験艦的役割を持たされておりましてね。
更に建造にはイタリアやイギリスの船大工も呼ばれており、今後の海上輸送艦としてこのクラスの積載能力が痴女皇国世界に必要かの見極めも含めて、三国の期待のもとで運用中。

「そうそう、今回の討伐には、我が軍で最近先進気鋭と評判を上げている者を連れておりましてね。ネルソン君、初代聖母様は言うまでもないが、イスパニア王国摂政大公、アナ・メンドゥーサ閣下と、聖母教会教皇、カエサル一世猊下だ。皆様、我が海軍の新人提督のホレイショ・ネルソンです」

…だから時代違うやろ!

失礼。そろそろ蒸気船が出てくるかどうかというご時世に生きてる筈の御仁ですよ。あと、気になる事が一つ二つ。
「ドレイク閣下。失礼ながらネルソン閣下にお尋ねしたい事がございまして…ネルソン閣下、いきなりで申し訳ございませんが、右手と右目に差し障りはございませんこと?」はっはーんという顔をするドレイクおじさん、訝るネルソンお兄さんに説明されます。
「ネルソン君。聖母様はね、もしかすると君が辿るかも知れない未来をご存知なんだよ。恐らく、彼は右手と右目に障害を負うと見ましたが、聖母様…彼は五体満足ですよ」
「それと、見た目はまだ二十歳代のようにも伺えますが、軍功をお伺いしたいところですわね…まぁ、アナ閣下辺りご主催の晩餐会の時にでもその辺はお伺いさせて頂きましょう。アナ閣下、良い話が皆様から色々お聞き出来るかも知れませんし、楽しみですわね」
(費用については心配無用。あれの大西洋往復分なら何とかします。水兵は最低限運航可能な人数さえ確保してもらえてますかね)
(ご配慮申し訳ありません、聖母様…イザベル陛下からも、よしなにお願いしたいと言質は頂いております)
(あと…アナ閣下…いらん事お聞きしますけど、あの若い提督さん、タイプですやろか。正直、なんか、あたしに向ける目線がアレでしょ? あたしが軍の教官時代に散々向けられていた内容よりは純粋で生真面目な分、困りますねん。ほら、うちに夫がおるのご存知ですやろ? あの真面目くさった目線が重荷なんですよ!)
(ええ。見ていて分かります。聖母様が敢えてかように地味を極めた装いなのも…ドレイク閣下も嫌な事をなさいますよね…寝る分にはいくらでも寝ますが、あの方、遊び上手ではないかも知れませんわ…)
(ええ…うちらの歴史ですと、イタリアに派遣されていた外交官夫人と出来てしまいましてね…庶子こさえとるんです)あ、アナさん、あかん!ガン見はダメ! ええええこの純朴そうな兄ちゃんが人妻孕ますような大胆不敵な事やらかしたのって顔で見ちゃダメ!
「いやいや、しかしネルソン君。君は兵法だけではなく、女性を見る目も養う方がよいぞ。君が熱い視線を向けた方は人妻だ。しかも…痴女と呼ばれる方の中でも最上位と聞く。我々、普通の男が迂闊にお相手するとだな、命にすら関わる危険があるのだよ…」あたしの心を読めるんですかドレイクさん。
(ネルソン君を見ていれば判りますよ…港では普通に遊んでいるのですが…どうも聖母様が軍人、それも教導はおろか提督や将軍の地位におられる方だと事前に教えたのが不味かったようでして…いやはや面目ない。ワーズワース大公様ですか、御子息で男爵様が伴侶にいると申し上げておけば良かったですな…)
(まあ、ああいう生真面目そうな教え子についた事は何度もありますのでね、何とかあしらってみましょ。ただ、私の流儀でやりますがよろしいでしょうか? )
(正直、前途ある若者の夢を無惨に打ち砕く事がないようにとだけお願いしたく存じます。私からも何とかして諦めろとは伝えます。断じて仕組んだ訳ではないのですよ…)
(ま、出港後の晩餐会の後の出し物で一工夫してみましょ。貴国の方々には破廉恥極まりないかも知れませんがね)
(今更でございましょう。この件がなくば、私も噂に聞く痴女皇国の方々のお姿を純粋な眼福にさせて頂きたかったので。はぁ…まさか、よりによって聖母様がネルソン君の琴線に触れるとは…)

あ。
確か、件の人妻さん…エマ・ハミルトンさん、独身のエマ・ライオンさんの時期に踊り子をやってたんだっけ…。しかも、うちら…るっきーやベラ子やエマ子との生活のような爛れライフをですね、実母や夫の大使も含めて繰り広げていたくさいのですよ…連邦世界の歴史じゃ…。

いや、今回の討伐、なんか海賊退治より若者の恋慕感情退治になりそうなんですが!

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ジーナ「おいこら待てちょっと待て真剣に待てやと」
あなこ「聖母様…いっそ恋仲になれば良いのではないでしょうか。あと私の名前!」
ジーナ「いやいやアナさん、うちはあんたほど自由奔放に出来へんねんて!だいたい、ただでも痴女皇国で子供こしらえて往生こいてますねんで私」
るっきー「それにしても男女の仲の醜聞の多さには目を覆わんばかりですわね」
ジーナ(無言ではりせんを振り下ろす)
るっきー「痛いではございませんか!」
ですこ「ルクレツィア。貴女が一番ややこしい事をなさっている自覚はありますか? 我が亭主と恋仲に陥っていた泥棒猫はどこの誰と?あと名前!私、死神の鎌は持っておりませんし、語尾にデースとか付ける癖はございませんわよ?」
るっきー「ですから痛いと。しかしデステ叔母様もあれこれなさっていたでしょうに…」
ですこ「これまた、貴女がよっく事情をご承知でしょう!浮いた話の一つもないと、当時のイタリア社交界ではもじょ扱いされ蔑まれたのです!」
ジーナ「浮気やプリン話が出ないって、錠前師のお兄ちゃん…あのラ・セーヌでギロチンの露な人くらいじゃなかったっけ…」
あなこ「欧州事情は複雑怪奇だから仕方ないのです。さぁ、聖母様もこの泥沼へ」
ジーナ「アナ子さんが愛欲の底なし沼に誘引する」
ベラ子「実際問題、あの夜の喧嘩祭りの実態を知るにつけ、文明開花よりまず倫理観の整備をするか、避妊知識を持てと申したい気も致します」
るっきー「連邦世界では避妊を禁じるしゅうきょうの観念が人々の考えを支配しておりましたしねぇ」
ジーナ「ちなみにアナ子さんもデス子さんもイタリア夜の喧嘩祭り参加経験者。しかも若返って参加しとりますからね。スペイン女王まで呼んだ時あったし…」
ベラ子「なお、その時はかー様の24サンチ・ぴーたーのーす砲で股間…いや、個艦撃沈して陸地なのにローマ市内海戦に勝利を収めた模様」
ジーナ「いやマジに甲作戦級難易度やったんやぞ…るっきーやベラ子まで敵に回るし!(泣)」
黒マリ「次はアルトとダリアを混ぜよう」
ジーナ「…関ヶ原レベルで裏切られる未来しか見えんわ!」
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