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音楽の庭に住むリラルの日記③

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大声で「うるさーい!」と言うのが微かに聞こえ、

そう言った彼女がボクの肩を揺する。

観客とル・ラーブがうねりを上げる。

ボクは、ただただ愕然とする。

キャパシティではさっき見たアルルダードの新人バンドの方が上だか、この空間の異様なうねりは、それを凌駕する。

1曲目が終わっても観客の歓声は鳴り止まない。

ボクは横にいるまりあに目を遣ると、この状況に怯えている。

ボクは彼女の手を引いて、ホール片隅の折り畳まれて束になったパイプ椅子が置かれた方へ移動したとき2曲目「アルウィッシュ」が始まり、熱狂まじりの歓声が更に大きくなった。

ライブはPM19:53で終了。

ステージを去るル・ラーブ...ライブスタッフと揉みくちゃになるファンが奇声を上げている...。

それを隅っこで見ていたボクとまりあは放心していた。

群がるファン達が少しずつ減っていき、ステージ前の空いた隅から一人の女性がこっちへ向かってくる。

それはまりあの友達かずみだった。

かずみの顔は疲れ引き攣っていて、その表情からファンの興奮に巻き込まれたんだと察しがついた。

ボクらは、しばらくその場に立ち竦んだ。

少し間が空き、ボクがまりあとかずみに「出ようか」と口を開くとまりあとかずみは、黙ったまま出入り口の方へ向かった。

小ホールの外に出た後、10分ほどその場で休憩し、

1階にある異世界レストラン

ラ・ムー?恋する?」で食事をする。

3人はテーブルの椅子についても緊張の糸というようなものが付いて会話がなかった。

しばらくしてボクが「どうだった」と聞くと、まりあが間をおいて疲れた笑みで

「もう..うるさいだけ...あーもう二度と行かない...」

それを聞いたかずみは

「マジでムカついた!後ろのヤツは狂ったみたいに押して来るし、横のヤツは暴れ狂ってるし、最悪...」

「だけどル・ラーブのファンなんでしょ?」

とボクが、かずみに聞くと

「知らねえよ、そんなバンド、ただちょっと前に別れた彼氏がむちゃくちゃ貴重だって言うからさ、ケンカした腹いせに盗んできたんだよチケット2枚...で2枚あるし、1人じゃ寂しいから...でいたから?」

と言いまりあの方に目を向ける。

「...で付いて来た。じゃ..うるさいだけだった。..楽しみにしてたのに」

と言ってまりあが笑い、テーブルのおかずに手をつける。

──

「会ったことあんの? 主に...」

とかずみの声に

「そう言えば..ここのオーディション受けたことがあるって言ってたよね?」

とまりあが言う。

かずみがそれに...

「えっ! 何それ...ってじゃあ会ったことあるんだ?」

「会ったって訳じゃないんだけど、まぁ居たかなって感じで...奥の方から..笑い声が聞こえて」

「何で笑ったの?」

「いやボクの演奏を見て...勢いだけの..」

「おー才能無しって感じだ」(このとき、まりあが言い過ぎだよ!とちゃちゃをいれる)

「で何て言ったの?」

「直ぐ終わって外に出てしばらくしたら関係者が来て、"主"が雑用係か家に帰るかどっちがいい?って聞いてるからボクは雑用って答えたんだ」

「何それ? ハハハ...じゃあオーディション受けて才能無いヤツは雑用だ」

「いや! そうでもないボクは、たまたま雑用係がいなかったらしくて声がかかっただけで、他の人はそうじゃないみたい」

「へぇー? じゃあ雑用としては見込んだんだ」

とかずみが言ったとき

「ちょっと! いい加減にしなよ、言い過ぎだよ」

とまりあが突っ込んだ。

「ハハ...でも良かったけどね。

ここにいれるし、制限はあるけど、ただでご飯は食べれるし」

ボクが更に言葉を乗っけると、かずみは..

「マジで? 恵まれてんなー」

「後、ポイントももらえるし」

「何それ?」

「ここだけで使えるお金みたいなもの、まぁ普通のお金にも換えれるけど、大してならないんだ、だからここで買い物した方がいいんだ」

「それで何買うの?」

と"久しぶり"にまりあが質問してくる。

「好きな異世界アーティストのフォノグラフィア・ディスクと...あとは、うーん...普通のお金に換えて、貯まったらいつか何処かに行こうかなって」

「要はおたくでしょ?」とかずみ

「フーン...そうなんだ」とまりあは妙に納得する。

そんな他愛ない話しをして食事を終えると

手を振るボクにまりあは、

「また逢えるよね?」

と笑顔で手を振りながらかずみと音楽の庭の外へと消えていった...

─────

8月28日 AM8:00

チャイムが鳴る。

ボクは頭痛がする為に(昨日の爆音の所為だ)。

もう少し寝ようとするが珍しく目が冴える。

仕方なく起きてだらだらと1時間以上を過ごす。

部屋の外で賑やかな声がする。ちなみにボクの部屋は西館3階の隅にある。

ボクは気になりドアを開ける。

少し離れた場所でスーツを着た数十人のここの関係者と思われる人がいた。

下界の欧米人、少しのアジア人?、女性が6、7人くらいが下界の言葉「英語」で話しをしている。

何を言っているのか分からないボクは

「ここの"主"は異世界のロックスターだからね」と呟きドアを閉める。

AM11:03

ボクは西館2階のFD売り場に行く。手もとに4000ギルドとポイントカードがある。あれこれと見て回ると"ここの主"のセカンドアルバムが今月いっぱい1000ギルド、ポイントカードなら200ポイントと書かれている。ボクはこの"音楽の庭"にいながらも、実はル・ラーブ庭の主の音楽をまともに聴いた事がない。

ボクは折角だと思いこのセカンドアルバムをポイントで購入する。

PM12:10 東館の食堂(2階の余り人が来ない隅っこにある)

ここでいつも食事をする(雑用係の為、ただで食べれるのだが嫌な顔をされる事が多くついつい遠慮してしまう...でもここなら安心♪)

PM12:46 東館5階の休憩所 

そこには、誰もいなく静かだった。回りからの籠った音が聞こえボクは軽いため息をついて窓際にあるベンチに腰をおろし外を眺めた。

そこは木々が並びに小さい川が流れ、その横を歩く人々が楽しそうに話しをしている。

"下界の音楽...あの彼女たちは..."

という思いがして、目の前がぼやけると外からの空の光りが

"ここをこの場所を"照らし、あたたかくしてくれた。
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