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目指すは大団円 3

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 卒業まであと一ヶ月。ゲームではギリアン卿の攻略が終わると好感度の上下するイベントは発生しない。卒業の日まで穏やかに日常を過ごして、夜の卒業生と家族を集めたパーティーでプロポーズされてエンディングを迎えるはずだ。

 ギリアン卿は早速ベッケル侯爵に結婚したい人がいることを伝えて了解を取ったらしい。ご実家に紐づいた爵位とはいえ自立した大人だ。相手も貴族だと言えば特に反対はされなかったみたい。
 ハリスン嬢がまだ諦めていないらしいから、さっさと婚約者を作ってくれた方が楽なんだろう。
 近いうちに紹介しろって言われただけだって。

 殿下はヴィンセント様と連盟で国王陛下に婚約解消を願い出て、今審議中。お互い結婚したい相手がいることと、相手の名前を出すと物凄く渋い顔をして悩んでいたらしい。
 実は陛下としてはこの話、結構悪くない話なんだよね。僕のシークレットデータを陛下は知ってる。だから『悪役令息ヴィンセント』みたいにヴィンセント様に瑕疵がなくても陛下は僕と殿下の結婚を認めてくれるはずなんだ。
 ヴィンセント様は殿下の伴侶にならなくても今後側近として働く意思はあるし、だったら子供たちの望み通りにする方がメリットは大きいと判断するだろう。

 ちなみにこれは全てノリッジ侯爵には内緒で進められている。バレたら絶対反対して話が拗れるから決定だけを伝えてほしいとお願いしたらしい。それを許容してくれる陛下って意外と我が子に甘いのかもしれないね。

 こんな感じで『ざまぁ』のないハッピーエンドに向けて全ては順調。順風満帆、計画通り!
 意気揚々としていた僕たち四人だったのだけれど、ここにきておかしなことが起き始めた。
 何故か急にヴィンセント様の悪い噂があることないこと囁かれ始めたのだ。

「レッドメイン様がエイマーズ伯爵子息に暴行を加えているという噂は本当だったらしいな」
「ああ、指導の名のもとに行き過ぎた行為があったとか。俺は口頭で指導してる姿しか見たことないけど、確かにあの方のエイマーズ伯爵子息への当たりはきつかったもんな。そこまで言う?って思ったもんだよ」
「怪我を負うような行為もなさっていたとか。確かに体に絆創膏を貼っていたり、破れた制服で歩いているのを見たことがあるわ」

 嫌味を言われたことはあるけど怪我をさせられたことはないよ!制服は僕の不注意で破けたやつだし、絆創膏は多分野良猫を構って引っ掻かれた時のやつ!むしろ凄く怒りながら手当てしてくれたのに!

「それでも殿下のお心が戻らないからか、当て付けのように何人かの殿方と二人きりで遊び歩いていらっしゃったとか。街中で抱き合っている姿を見た方もいるそうよ」
「なにそれ!浮気じゃないの!」
「しかも何人も?嘘、ショックだわ……」

 別に当て付けじゃないし、遊び歩いていたわけでもない。婚活はしたけど適切な距離を保って友人の距離感で会ってたはず。それに、抱き合ってたのは転びそうなところを支えただけだって聞いたけど。

「隣国の公爵様とも親密なご関係だとか。しかもかなり歳上の方」
「それってまさか……」

 ちょっと待って、それは絶対あり得ない!迫ってくるのを逃げてるんだよ?

 あっという間に噂は広まって、少しずつ周りのヴィンセント様を見る目が蔑みを帯びてくる。
 逆に僕に対してはみんな何故か同情的で、腫れ物に触るように接してくるようになった。

 僕と彼が殿下を巡って不仲なのは周知の事実。ゲームの進行のためにひどい扱いをされているとあえて思わせていた節はある。でも、ヴィンセント様が当て付けに遊び歩いてるとか、ゼラム公爵に色目を使っているとか真実とは程遠い話まで本当のことのように囁かれている。

 なんなんだこれ、もしかしてゲームの強制力?せっかく穏便なラストに向かっていたのに、ヴィンセント様は悪役にされる運命なの?

 いや、こんなのはおかしい。誰かが扇動して噂を流している人物がいるはずだ。

 絶対見つけてギャフンと言わせてやるんだからね!
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