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第五話(レイリアの過去②)
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「どれ、大丈夫か?」
「わ・・わた・・し、たすかったの??」
「可哀想に怖かったな。」
そういうとヴァンは抱えていたレイリアを片手でささえ、自身の持ち物から薬のような瓶を取り出した。
「無理すんな。痛いだろ。これを飲むんだ。すぐ傷口が塞がるからな。」
「お・・くす・・り?」
「あぁ。」
「おーハイポーションじゃねぇか。・・・まぁこの状況なら妥当だな」
「こくこくっ・・・」
そのハイポーションは普通のポーション(治癒薬)の上位互換のため実は冒険者の中でも高価な薬だったのだ。レイリアの身体が少し光が放ったかと思えば、傷口はすぐに塞がった。
「い・・・たくない!」
レイリアは驚いた。あれだけ痛かったのが、嘘のように引いたからだ。
「よかったな、だが無理はすんな。怪我は治ったかもしれねぇが、流れた血が補填されたわけじゃねぇからよ。」
「ほて‥ん?」
「あーそうか、わからねぇよな。まぁようするにだ、身体から出ちまった血は体に戻る訳じゃねぇから、今の嬢ちゃんは貧血。つまり血が足りてねぇってことだ。」
「ちが・・・たりない・・・」
レイリアは難しいことはよくわからなかったが、血が足りないということは理解できた。
「で、なんでこんなことになってるのか、聞いてみてぇが・・・えーと嬢ちゃんはなんて名前だ?」
「エステル・サー・バルミング・・・」
「おい!ヴァン!」
「・・・正真正銘の貴族のお嬢様だな。」
名前に『サー』と付くのが高位貴族と言うのは、庶民であっても周知されていた。この時は事情を知らないヴァンとギードは、金銭目当てで女の子が誘拐されたのだと思ったのは無理もなかった。
『やべぇやべぇやべぇ!!くっそぉ!ガキを殺すだけの楽な仕事だったはずなのに、なんで、なんでこんなことになったんだ?!』
誘拐犯はヴァンに蹴られて寝そべった形にはなっていたが、意識はあった。ただ今闇雲に起き上るのが得策ではないことだけは小物なりにわかっていた。そして先ほど思い付いた策の為に、もう一人の誘拐犯を目で追った。
『距離はたいしたことねぇ!兄貴のとこにいける!』
そう思い、誘拐犯は起き上りすぐさま、先にのされてしまった誘拐犯の元へダッシュした。
「「!!」」
ヴァンとギードはその動きに気が付いたが、レイリアがいたことと、何を足掻くのかと少し興味もあって見過ごしたのだ。
「う・・・」
「兄貴!良かったぜ、生きてた!」
先にのされていた誘拐犯は重症ではあったが、死んではいなかった。背中にはヴァンが投げた短剣が突き刺さっていたのだ。
「こ・・れ・・・を」
「さすが兄貴わかってんな!」
すかさず、誘拐犯は兄貴分である誘拐犯から渡されたモノを受け取った。
「ははっ!てめぇら!これを見ろ!」
誘拐犯が掲げたソレは、スクロール(巻物)だった。魔道具で転移つまり巻物に書かれている場所へ瞬時に移動することができる代物だった。
「スクロールか・・・色がグレーだから、転移できるやつだな。」
「ほぇーバカ高い高価なやつをあんな奴らが持ってるとはね」
ギードの言うように、スクロールは魔法効果が付与されており、それなりに高価な代物だ。中でも転移できるスクロールはかなり高価なものなのだ。
「こんなこともあるかもしれねぇって、そのガキの親から貰ってたんだよ!さすがお貴族様は何でもお見通しだねぇ!」
「・・・聞いてもいないのに、わざわざネタ晴らししてくれるとはなぁ。」
「ギード、どうも俺達が思ってるより、ことはややこしそうだな。」
誘拐犯のセリフに、先ほどまでは金銭目当てのただの誘拐だと思っていたが、『ガキの親から貰った』というフレーズに事態はそんな単純なものではないことに気が付いたのだ。
ヴァンは憐憫の眼差しでレイリアの頭上を見つめていた。そして誘拐犯に向けて、
「・・・・悪いことは言わねぇ、ソイツを使うのはやめとけ。」
「はぁ?何いってんだてねぇ」
「俺の勘がビンビンしてる。そいつはヤバい。言っておくがお前らにとってよくないもんだぞ?」
「あー補足するけど、ヴァンが言ってるなら、信憑性高いぞ?」
ギードも賛同したが、誘拐犯たちは当然聞き入れるわけもなく、
「うるせぇ!!ばぁーか!逃げたもん勝ちなんだよ!」
誘拐犯はスクロールを広げた。そして発動した。
「ギード!」
「任せろ!『堅守』(ガード)!!」
ドゴォォォォォォオオオオオンン!!!
ギードは魔法を展開させて、結界を張った。
誘拐犯の広げたスクロールは『転移』は発動しなかった。代わりに発動したのは、爆発だった。
目の前の爆風から身を護るためにギードが結界を。そしてヴァンは人が爆発に巻き込まれる様をレイリアに見せないように、抱えるように抱きしめて視界をさえぎった。
「そ・・んな、困った時につ・・・かえば・・・いいと・・・」
「俺達・・・ごと消す・・・つもり・・・とは・・・・」
まともに至近距離から爆発をくらった誘拐犯は、そのまま帰らぬ人となった。
「だからやめろって言ったのに。」
ヴァンとギードは爆発の惨状を見て険しい顔をしていた。
「お貴族様は、なかなか狡猾だな。」
「・・・そういうことか、あのスクロール、フェイクされてたんだな・・・」
ヴァンは気が付いていた。本来であれば、グレーの巻物は『転移』するものであったが、スクロールから放たれているわずかな魔力で、偽装されているとわかっていたのだ。
「あ・・・・」
爆発跡を見て、幼いながらもレイリアにはわかった。
もし、今の爆発に巻き込まれていたら、レイリアは生きてはいなかった。そう屋敷から連れ出された時から、万が一誘拐犯がしくじったとしても、あの継母はレイリアを何が何でも殺すつもりでいたのだと。
「そ・・んな・・・」
レイリアの目からはポロポロと涙が零れていた。
※レイリアの名前が違うのは意図的です。
「わ・・わた・・し、たすかったの??」
「可哀想に怖かったな。」
そういうとヴァンは抱えていたレイリアを片手でささえ、自身の持ち物から薬のような瓶を取り出した。
「無理すんな。痛いだろ。これを飲むんだ。すぐ傷口が塞がるからな。」
「お・・くす・・り?」
「あぁ。」
「おーハイポーションじゃねぇか。・・・まぁこの状況なら妥当だな」
「こくこくっ・・・」
そのハイポーションは普通のポーション(治癒薬)の上位互換のため実は冒険者の中でも高価な薬だったのだ。レイリアの身体が少し光が放ったかと思えば、傷口はすぐに塞がった。
「い・・・たくない!」
レイリアは驚いた。あれだけ痛かったのが、嘘のように引いたからだ。
「よかったな、だが無理はすんな。怪我は治ったかもしれねぇが、流れた血が補填されたわけじゃねぇからよ。」
「ほて‥ん?」
「あーそうか、わからねぇよな。まぁようするにだ、身体から出ちまった血は体に戻る訳じゃねぇから、今の嬢ちゃんは貧血。つまり血が足りてねぇってことだ。」
「ちが・・・たりない・・・」
レイリアは難しいことはよくわからなかったが、血が足りないということは理解できた。
「で、なんでこんなことになってるのか、聞いてみてぇが・・・えーと嬢ちゃんはなんて名前だ?」
「エステル・サー・バルミング・・・」
「おい!ヴァン!」
「・・・正真正銘の貴族のお嬢様だな。」
名前に『サー』と付くのが高位貴族と言うのは、庶民であっても周知されていた。この時は事情を知らないヴァンとギードは、金銭目当てで女の子が誘拐されたのだと思ったのは無理もなかった。
『やべぇやべぇやべぇ!!くっそぉ!ガキを殺すだけの楽な仕事だったはずなのに、なんで、なんでこんなことになったんだ?!』
誘拐犯はヴァンに蹴られて寝そべった形にはなっていたが、意識はあった。ただ今闇雲に起き上るのが得策ではないことだけは小物なりにわかっていた。そして先ほど思い付いた策の為に、もう一人の誘拐犯を目で追った。
『距離はたいしたことねぇ!兄貴のとこにいける!』
そう思い、誘拐犯は起き上りすぐさま、先にのされてしまった誘拐犯の元へダッシュした。
「「!!」」
ヴァンとギードはその動きに気が付いたが、レイリアがいたことと、何を足掻くのかと少し興味もあって見過ごしたのだ。
「う・・・」
「兄貴!良かったぜ、生きてた!」
先にのされていた誘拐犯は重症ではあったが、死んではいなかった。背中にはヴァンが投げた短剣が突き刺さっていたのだ。
「こ・・れ・・・を」
「さすが兄貴わかってんな!」
すかさず、誘拐犯は兄貴分である誘拐犯から渡されたモノを受け取った。
「ははっ!てめぇら!これを見ろ!」
誘拐犯が掲げたソレは、スクロール(巻物)だった。魔道具で転移つまり巻物に書かれている場所へ瞬時に移動することができる代物だった。
「スクロールか・・・色がグレーだから、転移できるやつだな。」
「ほぇーバカ高い高価なやつをあんな奴らが持ってるとはね」
ギードの言うように、スクロールは魔法効果が付与されており、それなりに高価な代物だ。中でも転移できるスクロールはかなり高価なものなのだ。
「こんなこともあるかもしれねぇって、そのガキの親から貰ってたんだよ!さすがお貴族様は何でもお見通しだねぇ!」
「・・・聞いてもいないのに、わざわざネタ晴らししてくれるとはなぁ。」
「ギード、どうも俺達が思ってるより、ことはややこしそうだな。」
誘拐犯のセリフに、先ほどまでは金銭目当てのただの誘拐だと思っていたが、『ガキの親から貰った』というフレーズに事態はそんな単純なものではないことに気が付いたのだ。
ヴァンは憐憫の眼差しでレイリアの頭上を見つめていた。そして誘拐犯に向けて、
「・・・・悪いことは言わねぇ、ソイツを使うのはやめとけ。」
「はぁ?何いってんだてねぇ」
「俺の勘がビンビンしてる。そいつはヤバい。言っておくがお前らにとってよくないもんだぞ?」
「あー補足するけど、ヴァンが言ってるなら、信憑性高いぞ?」
ギードも賛同したが、誘拐犯たちは当然聞き入れるわけもなく、
「うるせぇ!!ばぁーか!逃げたもん勝ちなんだよ!」
誘拐犯はスクロールを広げた。そして発動した。
「ギード!」
「任せろ!『堅守』(ガード)!!」
ドゴォォォォォォオオオオオンン!!!
ギードは魔法を展開させて、結界を張った。
誘拐犯の広げたスクロールは『転移』は発動しなかった。代わりに発動したのは、爆発だった。
目の前の爆風から身を護るためにギードが結界を。そしてヴァンは人が爆発に巻き込まれる様をレイリアに見せないように、抱えるように抱きしめて視界をさえぎった。
「そ・・んな、困った時につ・・・かえば・・・いいと・・・」
「俺達・・・ごと消す・・・つもり・・・とは・・・・」
まともに至近距離から爆発をくらった誘拐犯は、そのまま帰らぬ人となった。
「だからやめろって言ったのに。」
ヴァンとギードは爆発の惨状を見て険しい顔をしていた。
「お貴族様は、なかなか狡猾だな。」
「・・・そういうことか、あのスクロール、フェイクされてたんだな・・・」
ヴァンは気が付いていた。本来であれば、グレーの巻物は『転移』するものであったが、スクロールから放たれているわずかな魔力で、偽装されているとわかっていたのだ。
「あ・・・・」
爆発跡を見て、幼いながらもレイリアにはわかった。
もし、今の爆発に巻き込まれていたら、レイリアは生きてはいなかった。そう屋敷から連れ出された時から、万が一誘拐犯がしくじったとしても、あの継母はレイリアを何が何でも殺すつもりでいたのだと。
「そ・・んな・・・」
レイリアの目からはポロポロと涙が零れていた。
※レイリアの名前が違うのは意図的です。
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