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230:ユージィンとイシュタル
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セレスティアとカイエルの結婚式から、数日後のある夜のことだった。
ユージィン邸の寝室にて__
ユージィンとイシュタルは一糸まとわぬまま、ベッドで横たわっていた。ユージィンは喉が渇いたらしく、ベッドのサイドテーブルに置いてある水を飲んでいると、その様を横たわったままジッと見つめていたイシュタルが上目遣いに話を切り出した。
「・・・ユージィン、私ね、お願いがあるの。」
「ん?イシュタルが珍しいね、一体何かな?」
ユージィンは飲み干したグラスをサイドテーブルに置いて、イシュタルを抱き寄せた。
「・・・貴方なら、寿命をどうにかできるんじゃない?」
「え?」
「貴方の力を持ってすれば、ユージィン貴方自身の寿命を伸ばせるんじゃないかって言ってるのよ?」
「イシュタル、何を言って?「私、わかってるのよ!」」
イシュタルは言うが同時に、上半身を起こし、ユージィンに詰め寄った。
「!」
「だって、貴方はマ、んんっ!」
ユージィンも自身の上半身を起こし、その先を言わせまいと、イシュタルの口を自らの口で塞いだ。そしてゆっくりと離し、
「イシュタル、その先は言ってはいけないよ?」
イシュタルは、ハッと気づいて俯いた。
「・・・そうだね、もしかしたら僕ならそれができるかもしれない。だけど、僕は今は人間という種族なんだよ。」
ユージィンは諭すように、優しくイシュタルに言い聞かせた。しかしイシュタルの目にはみるみると涙が溢れていた。
「だって・・・だってこのままじゃ、貴方は人間の寿命が来れば死んでしまう!そしたらまた私は探さなくちゃいけないのよ!嫌なのよ!私はユージィン、貴方を愛しているのよ!!私を置いて逝かないでほしいの!!」
イシュタルは泣きながら、ユージィンに抱きついた。
「イシュタル・・・」
「わかってるわ。魂は同じでも、だけどまた出会う貴方は違うのよ。だから、だから私・・・!」
「イシュタル、君がそれだけ僕のことを愛してくれていることは、本当に嬉しいよ。それに、本当に君たち『竜の祖』は損な役回りだとも思ってる。」
「ユージィン・・・」
イシュタルは泣きはらした顔を上げ、ユージィンを見つめた。
「本来生き物は寿命があるものだ。なのに君たち『竜の祖』はそんな理を無視した条件付きではあるけれど、永遠の時の流れに身を置く存在だ。そんな中で唯一の救いは君たちは一人ぼっちではなく、姉弟がいることだね。だから、僕も安心して逝けるんだよ。」
「・・・わかってるわ。だけど、私は番であるユージィン貴方と共にずっと一緒にいたいのよ。」
イシュタルは縋る思いだった。ユージィンもできることならそうしたかった。
「うん、そうだね。できれば僕もイシュタルとずっと一緒にいたい。だけどそれをするには、・・・わかるだろ?本末転倒だって。」
そう、ユージィンは恐らく可能なのだ。だけどそれをしてしまえば、ユージィンは討伐対象になり、そしてイシュタルは必ず自分につくことになるだろう。そうなれば姉や弟と戦うことになってしまうことを、ユージィンは恐れていたのだ。そして自分がこのまま自我を保てるのか、という保証もない。ユージィンはイシュタルに苦しい思いをしてほしくないのだ。
「それにね。僕は存外、今回の人という生を与えらえたことに、楽しみを見出しているんだよ。」
「え?」
「だってさ、僕の姪っ子であるセレスティアも『番』であることは僕も途中まで気が付かなかったし、魔王化する者が現れたりとかね。これからもまだ僕の予想だにしなかったことが起きると思っているんだ。それに、これからセレスティアから『竜の祖』の子も生まれるしね。なかなか退屈しそうにないだろ?」
「ユージィン・・・」
「イシュタル、だから寿命までめいいっぱい僕の傍にいてくれ。」
「ユージィン!!」
「ごめんね。こんな選択しかできない僕を・・・嫌いになったかい?」
イシュタルは何度も首を横に振り、
「ううん、ううん!そんなわけない!愛してるわ。そんな貴方が誇らしい気持ちもある。だけど・・・割り切れなくて・・・」
「イシュタル・・・・」
「わかってるわ。私の我儘だって。ごめんなさい。ユージィン困らせてしまったわね・・・。」
イシュタルは泣きはらした顔を上げ、少し落ち着いてきたようだった。そんなイシュタルの頭をユージィンは撫でて、ギュッと抱きしめた。
「もし・・・来世でも覚えていたら。その時は僕から会いに行くよ。」
「えぇ、約束よ。私も勿論貴方に会いに行くわ。」
「あぁ、だけど今のこの時は・・・・」
「うん、たくさん私を愛して・・・」
「あぁ、勿論だ。それにイシュタルが寂しくならないように、思い出をたくさん作ろう・・・」
ユージィンはイシュタルのこめかみにキスをした。
ユージィンもイシュタルも今この時間を大切に、ユージィンの天寿を全うするまで、添い遂げようと、決意を新たにしたのだ。
※あと2話です。
ユージィン邸の寝室にて__
ユージィンとイシュタルは一糸まとわぬまま、ベッドで横たわっていた。ユージィンは喉が渇いたらしく、ベッドのサイドテーブルに置いてある水を飲んでいると、その様を横たわったままジッと見つめていたイシュタルが上目遣いに話を切り出した。
「・・・ユージィン、私ね、お願いがあるの。」
「ん?イシュタルが珍しいね、一体何かな?」
ユージィンは飲み干したグラスをサイドテーブルに置いて、イシュタルを抱き寄せた。
「・・・貴方なら、寿命をどうにかできるんじゃない?」
「え?」
「貴方の力を持ってすれば、ユージィン貴方自身の寿命を伸ばせるんじゃないかって言ってるのよ?」
「イシュタル、何を言って?「私、わかってるのよ!」」
イシュタルは言うが同時に、上半身を起こし、ユージィンに詰め寄った。
「!」
「だって、貴方はマ、んんっ!」
ユージィンも自身の上半身を起こし、その先を言わせまいと、イシュタルの口を自らの口で塞いだ。そしてゆっくりと離し、
「イシュタル、その先は言ってはいけないよ?」
イシュタルは、ハッと気づいて俯いた。
「・・・そうだね、もしかしたら僕ならそれができるかもしれない。だけど、僕は今は人間という種族なんだよ。」
ユージィンは諭すように、優しくイシュタルに言い聞かせた。しかしイシュタルの目にはみるみると涙が溢れていた。
「だって・・・だってこのままじゃ、貴方は人間の寿命が来れば死んでしまう!そしたらまた私は探さなくちゃいけないのよ!嫌なのよ!私はユージィン、貴方を愛しているのよ!!私を置いて逝かないでほしいの!!」
イシュタルは泣きながら、ユージィンに抱きついた。
「イシュタル・・・」
「わかってるわ。魂は同じでも、だけどまた出会う貴方は違うのよ。だから、だから私・・・!」
「イシュタル、君がそれだけ僕のことを愛してくれていることは、本当に嬉しいよ。それに、本当に君たち『竜の祖』は損な役回りだとも思ってる。」
「ユージィン・・・」
イシュタルは泣きはらした顔を上げ、ユージィンを見つめた。
「本来生き物は寿命があるものだ。なのに君たち『竜の祖』はそんな理を無視した条件付きではあるけれど、永遠の時の流れに身を置く存在だ。そんな中で唯一の救いは君たちは一人ぼっちではなく、姉弟がいることだね。だから、僕も安心して逝けるんだよ。」
「・・・わかってるわ。だけど、私は番であるユージィン貴方と共にずっと一緒にいたいのよ。」
イシュタルは縋る思いだった。ユージィンもできることならそうしたかった。
「うん、そうだね。できれば僕もイシュタルとずっと一緒にいたい。だけどそれをするには、・・・わかるだろ?本末転倒だって。」
そう、ユージィンは恐らく可能なのだ。だけどそれをしてしまえば、ユージィンは討伐対象になり、そしてイシュタルは必ず自分につくことになるだろう。そうなれば姉や弟と戦うことになってしまうことを、ユージィンは恐れていたのだ。そして自分がこのまま自我を保てるのか、という保証もない。ユージィンはイシュタルに苦しい思いをしてほしくないのだ。
「それにね。僕は存外、今回の人という生を与えらえたことに、楽しみを見出しているんだよ。」
「え?」
「だってさ、僕の姪っ子であるセレスティアも『番』であることは僕も途中まで気が付かなかったし、魔王化する者が現れたりとかね。これからもまだ僕の予想だにしなかったことが起きると思っているんだ。それに、これからセレスティアから『竜の祖』の子も生まれるしね。なかなか退屈しそうにないだろ?」
「ユージィン・・・」
「イシュタル、だから寿命までめいいっぱい僕の傍にいてくれ。」
「ユージィン!!」
「ごめんね。こんな選択しかできない僕を・・・嫌いになったかい?」
イシュタルは何度も首を横に振り、
「ううん、ううん!そんなわけない!愛してるわ。そんな貴方が誇らしい気持ちもある。だけど・・・割り切れなくて・・・」
「イシュタル・・・・」
「わかってるわ。私の我儘だって。ごめんなさい。ユージィン困らせてしまったわね・・・。」
イシュタルは泣きはらした顔を上げ、少し落ち着いてきたようだった。そんなイシュタルの頭をユージィンは撫でて、ギュッと抱きしめた。
「もし・・・来世でも覚えていたら。その時は僕から会いに行くよ。」
「えぇ、約束よ。私も勿論貴方に会いに行くわ。」
「あぁ、だけど今のこの時は・・・・」
「うん、たくさん私を愛して・・・」
「あぁ、勿論だ。それにイシュタルが寂しくならないように、思い出をたくさん作ろう・・・」
ユージィンはイシュタルのこめかみにキスをした。
ユージィンもイシュタルも今この時間を大切に、ユージィンの天寿を全うするまで、添い遂げようと、決意を新たにしたのだ。
※あと2話です。
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