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189:エメリーネの支援効果
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『竜の祖』達の詠唱が始まると、六人の頭上に光り輝く魔法陣が現れていた。その魔法陣を完成すべく『竜の祖』達の詠唱は続いていた。
ヒルダに纏っている黒いオーラはまるで触手のように動き、『竜の祖』達の前に立ちはだかるユージィン、ハインツ、セレスティアに襲い掛かった。三人は、三方向に飛んで躱した。
「「これは・・・」」
セレスティアとハインツは驚いていた。そして自分達の身体がうっすらと光を纏っているのがわかった。
「凄いわね・・・」
「あぁ、まさかここまで強化されるなんてね。」
黒い触手の攻撃をジャンプして躱したのだが、体が思った以上に軽いことを実感したのだ。元々、竜精を受け入れたことで身体能力は上がっていたが、後方で舞を踊る『女神の踊り手』の称号を持つエメリーネの支援効果は更に三人の身体能力を向上させていた。そしてそれは三人だけでなく、エメリーネが味方だと認識した者達全てにその効果をもたらすものだった。その支援効果が目に見えてうっすらと光を放っていたのだ。
(お願い・・・ヴェリエルさんの番を元に戻してあげて・・・・・・)
エメリーネは、事の経緯を聞いていた。ヴェリエルの番ヒルダに何が起こったのかはわからない。だが余程のことがないと、魔王化しないと聞いていたことから、余程辛い事があったのだろうということは理解していた。そして同じ番であるエメリーネは、自身がダンフィールと出会ったことによって幸せだった。なのに同じ番であるヒルダがこんなことになってしまったことを、心優しいエメリーネは心痛ましく悲しい気持ちになっていた。
(女神様、アクネシア様お願いです。どうかどうか皆が幸せになれますように・・・)
都合がいい願いだと言うことは重々承知していたが、それでもそんな願いを込めながら、エメリーネは舞を舞っていた。
「セレスティア、ハインツ。暴走している今、元に戻すのには詠唱が長くなる。邪魔させないようできるだけ、間合いを離すんだ!」
「「了解!」」
暴走しかけているヒルダは本能的なものか、『竜の祖』の祖の詠唱を邪魔しようと彼らの元に向かっていった。そして何本の触手が放たれたが、
「行かせん!!」
その間にユージィンが入り、ドラゴンスレイヤーで触手をぶった切っていた。
だが、ヒルダの黒のオーラの触手は数あるうちの数個が切られただけで、大したダメージはない。ただ立ちはだかる、ユージィンたちが邪魔であることははっきりと自覚したようで、標的を『竜の祖』からユージィンらに切り替えた。
「お・・・前・・ら、邪魔・・・をすルなぁぁあアアあああ!!!」
ヒルダはさらに黒いオーラを増幅させ、それに応じて触手が増えていた。
(よし、こちらに食いついた!)
思惑通り、ヒルダの矛先をユージィンに引き付けることに成功した。
実はユージィンらにとって、ヒルダはとてもやりにくい相手であった。暴走しているとはいえ、元は普通の女性であることから、殺さないことは当然の前提であり、触手は切ることができるが本体であるヒルダの身体に傷をつけることは極力避けなければいけなかったからだ。ヒルダを自分達に惹き付け、攻撃を躱していく、といったことしかできないのだ。
とにかく『竜の祖』達の詠唱が終わるまで、間を持たせるしか方法がなかった。
「まぁ鬼ごっこは嫌いじゃないからね。」
ユージィンは軽口を叩き、触手を捌いていた。
※次回は4/4の更新になります。
ヒルダに纏っている黒いオーラはまるで触手のように動き、『竜の祖』達の前に立ちはだかるユージィン、ハインツ、セレスティアに襲い掛かった。三人は、三方向に飛んで躱した。
「「これは・・・」」
セレスティアとハインツは驚いていた。そして自分達の身体がうっすらと光を纏っているのがわかった。
「凄いわね・・・」
「あぁ、まさかここまで強化されるなんてね。」
黒い触手の攻撃をジャンプして躱したのだが、体が思った以上に軽いことを実感したのだ。元々、竜精を受け入れたことで身体能力は上がっていたが、後方で舞を踊る『女神の踊り手』の称号を持つエメリーネの支援効果は更に三人の身体能力を向上させていた。そしてそれは三人だけでなく、エメリーネが味方だと認識した者達全てにその効果をもたらすものだった。その支援効果が目に見えてうっすらと光を放っていたのだ。
(お願い・・・ヴェリエルさんの番を元に戻してあげて・・・・・・)
エメリーネは、事の経緯を聞いていた。ヴェリエルの番ヒルダに何が起こったのかはわからない。だが余程のことがないと、魔王化しないと聞いていたことから、余程辛い事があったのだろうということは理解していた。そして同じ番であるエメリーネは、自身がダンフィールと出会ったことによって幸せだった。なのに同じ番であるヒルダがこんなことになってしまったことを、心優しいエメリーネは心痛ましく悲しい気持ちになっていた。
(女神様、アクネシア様お願いです。どうかどうか皆が幸せになれますように・・・)
都合がいい願いだと言うことは重々承知していたが、それでもそんな願いを込めながら、エメリーネは舞を舞っていた。
「セレスティア、ハインツ。暴走している今、元に戻すのには詠唱が長くなる。邪魔させないようできるだけ、間合いを離すんだ!」
「「了解!」」
暴走しかけているヒルダは本能的なものか、『竜の祖』の祖の詠唱を邪魔しようと彼らの元に向かっていった。そして何本の触手が放たれたが、
「行かせん!!」
その間にユージィンが入り、ドラゴンスレイヤーで触手をぶった切っていた。
だが、ヒルダの黒のオーラの触手は数あるうちの数個が切られただけで、大したダメージはない。ただ立ちはだかる、ユージィンたちが邪魔であることははっきりと自覚したようで、標的を『竜の祖』からユージィンらに切り替えた。
「お・・・前・・ら、邪魔・・・をすルなぁぁあアアあああ!!!」
ヒルダはさらに黒いオーラを増幅させ、それに応じて触手が増えていた。
(よし、こちらに食いついた!)
思惑通り、ヒルダの矛先をユージィンに引き付けることに成功した。
実はユージィンらにとって、ヒルダはとてもやりにくい相手であった。暴走しているとはいえ、元は普通の女性であることから、殺さないことは当然の前提であり、触手は切ることができるが本体であるヒルダの身体に傷をつけることは極力避けなければいけなかったからだ。ヒルダを自分達に惹き付け、攻撃を躱していく、といったことしかできないのだ。
とにかく『竜の祖』達の詠唱が終わるまで、間を持たせるしか方法がなかった。
「まぁ鬼ごっこは嫌いじゃないからね。」
ユージィンは軽口を叩き、触手を捌いていた。
※次回は4/4の更新になります。
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