上 下
171 / 233

170:第三の封印解除~後編~

しおりを挟む
 「セレスティア・・・」

 「!!」

 セレスティアはカイエルに名前を呼ばれ両肩に手を置かれたが、自身の大胆な発言の恥ずかしさのあまり、顔は俯いたままだった。

 「・・・そう言ってくれるのは嬉しいけど、今はだめだ。やっぱり姉貴を呼ぼう。」

 「!!」
 
 セレスティアはまさか断られるとは微塵も思っていなかっただけに、カイエルの言葉に驚いた。

 「?え・・・ど、どうして?」

 「・・・嫌なんだ・・・」

 「?!!」

 カイエルの『嫌』という言葉に、セレスティアは目を見開いてショックを受けていた。

 「そ、そうよね。ご、ごめんなさい。女から言うモノじゃないものね。」

 断られただけでもショックだったところへ、「嫌」という言葉を聞いてダメ押しされたのだと、セレスティアは動揺を隠せないでいた。カイエルはてっきり自分と繋がりたいと思っていただけに、自分が自惚れていたのだと、恥ずかしい気持ちになったのだ。セレスティアは謝りつつも、泣きそうになっていた。否、既に目に涙は溜まっていたため、こぼさない様に悟られまいとセレスティアは視線を逸らした。

 (うぅ、ここで泣いたらダメよ!余計にみじめになっちゃう!!)

 明らかに落ち込んでしまったセレスティアを見てカイエルは驚き、慌てて釈明しだした。

 「ち、違う!!そういう意味じゃなくて!!」

 「違うって?」

 「お、俺は!!」

 いったん言葉を切り、カイエルはすぐに次の言葉を紡ぎだした。

 「前にも言ったけど、俺もそろそろだとは思ってた。だけど、こんな形はいやなんだ。」

 「?」

 セレスティアはカイエルの言わんとすることがわからなかったが、次の言葉で彼の真意が伝わった。

 「ちゃんとした形で、それに俺から誘うつもりだったんだ!!なのに、こんな・・・こんな結界の為に『竜の祖』でないと対応できないからといって、そのためにお前を抱くようなことが俺はいやなんだよ!!」

 セレスティアは、その言葉に目を見開いた。

 「ごめんな。俺が不甲斐ないばかりにセレスティアから、そんなこと言わせる羽目になったんだよな。・・・ホント、ごめん!!」

 そういうとカイエルはセレスティアに頭を下げた。

 「・・・カイエル」

 そういうとセレスティアは自分からカイエルに抱き着いた。

 「セ、セレスティア?」

 「ありがとう。てっきり、自分から誘った私のことが嫌なのかと思っちゃった。むしろちゃんと考えてくれていたのね・・・」

 「あ、当たり前だろ!そういうことはシチュエーションもムード大事だからちゃんと考えないとなって・・・」 

 「ふふ、多分だけど、イシュタルさんに言われた?」

 「!!なんでわかったんだ?!」

 カイエルは驚いていたが、ムードとかシチュエーションなどの単語が、カイエルの口から出たことに、裏でイシュタルから言われたのだろうと、思い至ったのだ。

 「で、でも俺から誘うつもりなのは、初めから思ってたし・・・」

 「カイエル・・・ありがとう。でも私は・・・今がいいな?」

 「え!!」

 「ででで、でも、ここ草むらだし、ベベベベッドも何もないぞ?」

 カイエルはイシュタルから、女性の初めての時は、旅行先もいいとか、花をプレゼントするのもいいとか、いろいろと女子に受けそうなことを事前に教わっていたのだ。だが今の状況が思い描いていたことと全然違うことからかなりテンパってしまい、カイエルはかなりどもっていた!

 「私、今カイエルと繋がりたい・・・ダメ?」

 抱き着かれたまま顔を赤らめ濡れた目のセレスティアに、上目遣いで見つめられたカイエルには、もう抵抗できる術はなかった。

 「も、無理だ・・・」

言うと同時に、カイエルはセレスティアを強く強く抱きしめた。

 「あ・・・」

 「で、できるだけ優しくするつもりだけど、その俺も、ずっとセレスティアに触れたいと思っていたから、加減というか、抑えがきかないというか、・・・」

 カイエルは熱のこもった眼差しを、セレスティアに向けており、セレスティアもまたカイエルの放つ色気に当てられていた。

 「カイエル・・・カイエルの好きにしていいのよ。」

 「セレスティア!!」

 セレスティアのその言葉に、カイエルはついに陥落した。


 そして二人は深い深いキスをして、そのまま草原に沈んでいったのだ。


 ※次回更新は3/7(月)になります!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...