上 下
156 / 233

155:覚醒者

しおりを挟む
 「ユージィンあいつは『覚醒者』だ。」

 セレスティアもライモンド誘拐の時にイリスがユージィンに対して言っていた『覚醒者』という言葉がずっと気になっていた。

 「その、覚醒者って結局何なの?」
 
 セレスティアは以前から疑問に思っていたことをカイエルに聞いた。

 「前に、イリスが誘拐した時に、遺跡に行っただろ?」

 「えぇ、ライモンド副官が誘拐されたときね。」
 
 「あの遺跡には、以前の持ち主が使用していた、『ドラゴンスレイヤー』が納められていた。」

 「・・・それを叔父様が事前に回収してたのよね。」

 詳しくは知らないが、ユージィンが何かしらの方法でイリス達より先にドラゴンスレイヤーを遺跡から、持ち出していたのは聞いていた。

 「あぁ。で、あの遺跡はな、本来は正規の手続き、つまりはあのうさ耳の踊り子が持っていた、『炎舞の腕輪』を使わないと入れない仕組みだったんだけど・・・一つだけ例外があってな。」

 「例外って?」

 「『竜の祖』とその番なら、あの遺跡に入ることは可能なんだよ。どちらかが欠けてもダメだ。必ず二人でな。それなら『炎舞の腕輪』がなくても入れるんだ。」

 「そうだったの?」

 セレスティアは驚いたが、同時に納得もした。叔父ユージィンとイシュタルは自分の幼い頃から既に番同士だったから。

 「でも・・・?」

 「どうした?」

 セレスティアは疑問だった。叔父のユージィンとイシュタルが早くから番同士として一緒にいたとしても、なぜ遺跡のことを知っていたのか、を。

 「だからといって、どうして事前に遺跡からドラゴンスレイヤーを回収したこともだけど、そもそもどうして遺跡の事を知っていたのか気になったのだけど?カイエル達はあの場所を知っていたのよね?」

 今回の事がなければ、そもそも遺跡のことも、ドラゴンスレイヤーのことも普通なら関わらないのでは?とセレスティアは不思議に思ったのだ。 

 「あぁ、知っていた。けど、俺達は、自分からあの遺跡の場所を言うことはないからな。」

 「え?どうして?」

 「考えてもみろよ、竜殺しの剣を何故俺達がわざわざ封印から解除する必要がある?俺達に取ったら天敵みたいな剣だからな。」 

 「あ、そっか。」

 言われてみれば確かにそうだと、セレスティアは納得した。『竜の祖』の鱗でさえ断ち切ることができると言われている物騒な剣を自ら『竜の祖』が持ち出すメリットがないからだ。

 「だから、あいつは知ってたんだよ。あそこにドラゴンスレイヤーがあるってな。」

 「叔父様が?知ってたってどうやって?」

 「だからあいつは『覚醒者』だって言ったんだよ。」

 「?」

 セレスティアはカイエルの次の言葉でやっと理解した。

 「あの男は前世の記憶持ちだ。前世の記憶を持つ者を俺達は『覚醒者』と呼んでいる。だから遺跡の場所を知っていたんだろうな。」

 「叔父様が、前世の記憶を持っている・・・」

 言われてみて、セレスティアはユージィンの今までの言動や行動に合点がいったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...