96 / 233
95:ドラゴンスレイヤー
しおりを挟む
『ドラゴンスレイヤー』
古から伝えられていた剣(つるぎ)ではあったが、もはやおとぎ話の類だと思われていた代物であった。その名の示す通り、竜殺しの剣であり『竜の祖』の固い竜の鱗を断ち切ることができる唯一の剣だと言われている。だが、その剣は使い手と共に封印されたというのが、伝承で残っているのみで、その後見たものはいないと言われていたのだ。
「こ、これが、ドラゴンスレイヤー・・・」
ディアナも話に聞いていただけで、実物を見たのは初めてであった。いや、この実物を見たのは恐らく今世では、この瞬間に立ち会ったこの場の者だけであったのだ。
「さ、どーぞ。ではライモンドを返してくれるね?」
「わ、わかったわよ!」
ディアナはアレだけ、のらりくらりと躱していたユージィンが、急に素直にお目当てであったドラゴンスレイヤーをすんなり渡してくることに違和感を感じない訳ではなかったが、素直に応じることにした。(一体何を企んでいるの?)
「だ、団長~~~」
「無事みたいで良かったよ。」
戻ってきたライモンドは、ユージィンに肩を叩かれていた。
「ライモンド良かったわ。」
「イ、イシュタル様まで、ありがとうございます!」
「ライモンド副官、ご無事でよかったです!」
『ギャウギャウ』(訳:しょうがねーメガネだな。)
「セレスティアもカイエル君にもすまないね、副官だというのに、不甲斐ないところをお見せしてしまったようだ。だけどありがとう、助かったよ。」
ライモンドは恥ずかしそうに照れ笑いをしセレスティアにとカイエルにお礼を言った。
「団長・・・ですが、良かったですか?掌から剣をだすとは思いませんでしたが・・・あれはとても大事な物だったのでは・・・」
ライモンドはユージィンに心底申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいんだよ。」
そう言うと、ユージィンはディアナとダンフィールへ視線を移していた。
ディアナは警戒をしてはいたが、喜んでいた。お目当てのドラゴンスレイヤーが手に入ったのだから。
「ディアナ、悪いことはいわない。それは手放した方がいい。嫌な予感がする。」
「何言ってるのよ?!やっと手に入ったのよ!」
キッとディアナは忠告をしてくれたダンフィールを睨みつけていた。
「はは~ん、わかったわ。貴方これが怖いんでしょ?唯一、竜を断ち切れる、この剣が?」
「い、いやそう言うことじゃなくて・・・」
ダンフィールは胸騒ぎがしていた。この剣を見たのは、ダンフィールも久しぶりであったのだが、久しぶりすぎて、封印されていたそれなりの理由があったはずなのだが、思い出せなかったのだ。ディアナは、お目当ての剣が手に入ったことで、悦に入っていた。その顔はうっとりとし、
「そうね、これが手に入ったのだから、よく考えればもう『竜の祖』にビクビクする必要もなくなったのだわ。」
ディアナは手にしたドラゴンスレイヤーを持って構えた。
「うふふ、今のうちに憂いは断っておかないとね。」
そう言うと、ディアナは突然イシュタルに襲い掛かった。
「『あの方』の為にも、!邪魔な竜は少しでも減らさないとね!!!」
ディアナは豹の獣人特有の俊足と跳躍力を活かし、まっしぐらにイシュタルに向かった。
「イシュタルさ・・・!!」
セレスティアは慌てて駆け寄ろうとしたが、ユージィンに制された。セレスティアは驚いたが、ユージィンがこういうことをするのは必ず理由があると、セレスティアも瞬時に理解した。ディアナはイシュタルに覆いかぶさるように剣を振り上げ、
「あははは、死ねっ!!!」
剣を振り下げようとした瞬間、
「バカな子・・・・」
だが、イシュタルは避けずにそのまま体制であった。そして、
「きゃあああああああ!!!」
ディアナは突然苦しみ、跳躍していた姿勢から崩れ落ち地面に落下した。カランと、ディアナの手からドラゴンスレイヤーはすり抜け地面に落ちた。
(な、なにこれ?一体何が・・?)ディアナは訳が分からなかった。突然雷に打たれたような衝撃が己の身に起こったのだ。
「ディアナ!!!」
ダンフィールは慌てて駆け寄りディアナを介抱していた。ディアナは雷に打たれたような衝撃から、身体が痺れていて、思うように体を動かすことができなかった。
「『あの方』とやらから聞いていないのかい?注意事項を?」
そういうと、ユージィンは地面に落ちたドラゴンスレイヤーを拾い、ディアナを見下ろした。
「くっ、うぅうう。」
ディアナは悔しさと苦しさから目から涙が滲み出ていた。
「これはね、所有者を選ぶんだよ。持ってるだけなら、問題はないけど、君のように所有者以外が使おうとするとね、拒否反応を示すんだよ。」
「ば・・・馬鹿な・・・剣が選ぶ・・・とでも?」
「実際、今しがた体験しただろ?」
「っつ!」
「君の性格から、使うだろうと思ってはいたんだけど、思った通りだったよ。おかげで直ぐにコレも返ってきたしね。」
「あんたが・・・あんたがその剣のマスターだとでも?」
「勿論、と言いたい所だけど・・・僕以外にもいるけどね。ま、早い者勝ちってところで、今は僕かな?だから・・・」
言いながらユージィンはドラゴンスレイヤーの切っ先を掌に当てると、剣は吸い込まれるように沈んでいき、剣は掌から身体の中に納まってしまった。
「このように、所有者が『鞘』となる、という訳だよ。」
ユージィンはそう言うと、にっと笑った。
古から伝えられていた剣(つるぎ)ではあったが、もはやおとぎ話の類だと思われていた代物であった。その名の示す通り、竜殺しの剣であり『竜の祖』の固い竜の鱗を断ち切ることができる唯一の剣だと言われている。だが、その剣は使い手と共に封印されたというのが、伝承で残っているのみで、その後見たものはいないと言われていたのだ。
「こ、これが、ドラゴンスレイヤー・・・」
ディアナも話に聞いていただけで、実物を見たのは初めてであった。いや、この実物を見たのは恐らく今世では、この瞬間に立ち会ったこの場の者だけであったのだ。
「さ、どーぞ。ではライモンドを返してくれるね?」
「わ、わかったわよ!」
ディアナはアレだけ、のらりくらりと躱していたユージィンが、急に素直にお目当てであったドラゴンスレイヤーをすんなり渡してくることに違和感を感じない訳ではなかったが、素直に応じることにした。(一体何を企んでいるの?)
「だ、団長~~~」
「無事みたいで良かったよ。」
戻ってきたライモンドは、ユージィンに肩を叩かれていた。
「ライモンド良かったわ。」
「イ、イシュタル様まで、ありがとうございます!」
「ライモンド副官、ご無事でよかったです!」
『ギャウギャウ』(訳:しょうがねーメガネだな。)
「セレスティアもカイエル君にもすまないね、副官だというのに、不甲斐ないところをお見せしてしまったようだ。だけどありがとう、助かったよ。」
ライモンドは恥ずかしそうに照れ笑いをしセレスティアにとカイエルにお礼を言った。
「団長・・・ですが、良かったですか?掌から剣をだすとは思いませんでしたが・・・あれはとても大事な物だったのでは・・・」
ライモンドはユージィンに心底申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいんだよ。」
そう言うと、ユージィンはディアナとダンフィールへ視線を移していた。
ディアナは警戒をしてはいたが、喜んでいた。お目当てのドラゴンスレイヤーが手に入ったのだから。
「ディアナ、悪いことはいわない。それは手放した方がいい。嫌な予感がする。」
「何言ってるのよ?!やっと手に入ったのよ!」
キッとディアナは忠告をしてくれたダンフィールを睨みつけていた。
「はは~ん、わかったわ。貴方これが怖いんでしょ?唯一、竜を断ち切れる、この剣が?」
「い、いやそう言うことじゃなくて・・・」
ダンフィールは胸騒ぎがしていた。この剣を見たのは、ダンフィールも久しぶりであったのだが、久しぶりすぎて、封印されていたそれなりの理由があったはずなのだが、思い出せなかったのだ。ディアナは、お目当ての剣が手に入ったことで、悦に入っていた。その顔はうっとりとし、
「そうね、これが手に入ったのだから、よく考えればもう『竜の祖』にビクビクする必要もなくなったのだわ。」
ディアナは手にしたドラゴンスレイヤーを持って構えた。
「うふふ、今のうちに憂いは断っておかないとね。」
そう言うと、ディアナは突然イシュタルに襲い掛かった。
「『あの方』の為にも、!邪魔な竜は少しでも減らさないとね!!!」
ディアナは豹の獣人特有の俊足と跳躍力を活かし、まっしぐらにイシュタルに向かった。
「イシュタルさ・・・!!」
セレスティアは慌てて駆け寄ろうとしたが、ユージィンに制された。セレスティアは驚いたが、ユージィンがこういうことをするのは必ず理由があると、セレスティアも瞬時に理解した。ディアナはイシュタルに覆いかぶさるように剣を振り上げ、
「あははは、死ねっ!!!」
剣を振り下げようとした瞬間、
「バカな子・・・・」
だが、イシュタルは避けずにそのまま体制であった。そして、
「きゃあああああああ!!!」
ディアナは突然苦しみ、跳躍していた姿勢から崩れ落ち地面に落下した。カランと、ディアナの手からドラゴンスレイヤーはすり抜け地面に落ちた。
(な、なにこれ?一体何が・・?)ディアナは訳が分からなかった。突然雷に打たれたような衝撃が己の身に起こったのだ。
「ディアナ!!!」
ダンフィールは慌てて駆け寄りディアナを介抱していた。ディアナは雷に打たれたような衝撃から、身体が痺れていて、思うように体を動かすことができなかった。
「『あの方』とやらから聞いていないのかい?注意事項を?」
そういうと、ユージィンは地面に落ちたドラゴンスレイヤーを拾い、ディアナを見下ろした。
「くっ、うぅうう。」
ディアナは悔しさと苦しさから目から涙が滲み出ていた。
「これはね、所有者を選ぶんだよ。持ってるだけなら、問題はないけど、君のように所有者以外が使おうとするとね、拒否反応を示すんだよ。」
「ば・・・馬鹿な・・・剣が選ぶ・・・とでも?」
「実際、今しがた体験しただろ?」
「っつ!」
「君の性格から、使うだろうと思ってはいたんだけど、思った通りだったよ。おかげで直ぐにコレも返ってきたしね。」
「あんたが・・・あんたがその剣のマスターだとでも?」
「勿論、と言いたい所だけど・・・僕以外にもいるけどね。ま、早い者勝ちってところで、今は僕かな?だから・・・」
言いながらユージィンはドラゴンスレイヤーの切っ先を掌に当てると、剣は吸い込まれるように沈んでいき、剣は掌から身体の中に納まってしまった。
「このように、所有者が『鞘』となる、という訳だよ。」
ユージィンはそう言うと、にっと笑った。
10
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
婚約解消された私はお飾り王妃になりました。でも推しに癒されているので大丈夫です!
初瀬 叶
恋愛
王宮に呼ばれ、案内された部屋に入ると錚々たる顔ぶれに怯みそうになる。
そこには、国王陛下、側妃であるライラ妃、王太子殿下、私の父であるオーヴェル侯爵、そして、私の婚約者…いや、元婚約者であるジュネ公爵令息のセドリック・ジュネ様が私を待ち構えていた。
私の名前はクロエ。オーヴェル侯爵の長女としてこの世に生を受けた。現在20歳。
ちなみに私には前世の記憶がある。所謂、異世界転生というやつだ。
そんな私が婚約解消されました。で、なんでお飾りの王妃に?
でも、側で推しが私を癒してくれるそうです。なら大丈夫?!
※ 私の頭の中の異世界のお話です。史実に基づいたものではありません。
※設定もふんわり、ゆるゆるです。
※R15にしています。詳しい性描写はありませんが、匂わせる描写や直接的な単語を使用する予定です。
※2022.10.25 14話と16話と24話のクロエの名前、オーヴェルがオーウェンとなっておりましたので、訂正させて頂きました。読者の皆様に混乱を招いてしまったかと思います。申し訳ありません。
※2022.10.26 HOTランキング1位を獲得する事が出来ました。たくさんの方に読んでいただける事が、とても励みになっています。ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
※2022.11.13 ジーク・ロイドの婚約者の名前をマイラからアリシエに変更させて頂きました。同じ名前が重複していた為です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる