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49:白金のアンティエル~中編~

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 「ローエングリン団長・・・」

 フェルディナント王子は、あまりに訳がわからなかったので、ユージィンに助けを求めていた。

 「うーん、王族には関りたくなかったけど、そうも言ってる場合ではなくなったかな。」

ユージィンは面倒くさそうに髪をかき上げたが、美丈夫なだけに様になっていた。だが放った言葉ははかなり不敬である。

 「フェルディナント王子、あなたは『番』なようなので、事情を説明しなければならないようです。ですがここでは話せません。そして他言無用に願います。」

 「な!・・・わ、わかった。」

 ユージィンは先ほどまでとは違う雰囲気を醸し出していた。何というか、威圧的なのだ。フェルディナント王子も言いたいことはあったが、ユージィンの妙な圧に何かを察したようでユージィンの提案に素直に了承した。

 「団ちょ・・・叔父様?」

 セレスティアもユージィンの様子がいつもと違うことに気付いた。

 「そなたは、イシュタルの『番』か。」

 アンティエルはユージィンを見るなり嫌そうな顔をした。

 「寄りにもよって、こんな男とはな。運がいいのか、悪いのか・・・」

 「ふふ、お褒めの言葉として受け取っておきましょう。」

 「てめぇ!話はまだ終わってねぇぞ!!」

 そこにカイエルが割って入った!

 「なんじゃ、まだごちゃごちゃと過ぎたことをぬかしておるのか。」

 「っるっせぇ!勝手に終わらせてんじゃねぇぞ!」

 カイエルはアンティエルとの間をさらに詰めようとしたが、その間をセレスティアが割った入った。

 「カイエル!いい加減にしなさい!」

 カイエルはセレスティアに一喝された。

 「だ、だって俺の番・・・・つまりはお前に・・・」

 セレスティアに怒鳴られたことでカイエルは先ほどとは打って変って、見る見るうちに意気消沈してしまった。その様子を見て、セレスティアは優しくカイエルに言葉を続けた。

 「いい?カイエル、貴方が私を心配してくれたのはわかっているわ。その気持ちは凄く嬉しい。」

 「ほ、ほんとか?!」

 一瞬で気持ちが浮上し顔がぱあぁと明るい表情になった。単純な男だった。

 「えぇ、本当よ。だけどね、なんでもかんでも喧嘩を売りに行くような態度はダメよ。まして相手はちゃんと謝ってくれたのよ。私、そういう根に持つ男は嫌いよ。」

 せっかく浮上したと思ったのに、セレスティアから放った言葉の『嫌いよ』の一部分がカイエルの中でエコーしてしまった。落ち込みのあまり、跪いて地面に手をついていた。

 「嫌い・・・きらい・・・キライ・・・」

カイエルが顔面蒼白になっていることに気付いたセレスティアは慌ててフォローした。

 「ちょっと!なんでそこだけ伝わっているのよ!そうじゃなくて、許すことも大事だって言ってるの!ましてや私は何もなかったんだから、ね?」 

 セレスティアは、カイエルは記憶がないからこういうことも一から教えていかないとダメなのだろうと、改めて考えていた。 

 「許す・・・か。」

 「そうよ。カイエルならできるわ。だから、ね?」
 
 「わ、わかった!」

 「ふふ、ならよし!」

 セレスティアはカイエルにヨシヨシと頭を撫でていた。カイエルはまんざらでもなさそうだ。

 その様子を見ていたフェルディナント王子は思うところがあったのだが、(もしや、彼女は・・・)だが、今は言うまいとした。

 「殿下、先ほどはカイエルが申し訳ありませんでした。」

 セレスティアはフェルディナント王子に対してのカイエルの口の利き方にお詫びをした。

 「あ、あぁいいよ、というかよくはないが・・・かなり訳アリなんだろう?」

 「はい・・・後ほど、団長、いえ叔父から説明がありますが。」

 「・・・わかった。心して聞くよ。」

 フェルディナント王子も、内容が何なのかは現時点ではわかってはいないが、只事ではないのは十二分に理解していた。

 フェルディナント王子もは幸いこの日は、竜騎士団の視察ということもあったので、都合はある意味調度よかった。話は団長室ですることになり、当事者以外は人払いをする必要があった。当然フェルディナント王子の護衛には席を外してもらった。しかし王子の護衛ということで、少し一悶着はあった。
 
 「ばかな!我々が離席するなど」

 「すまないが、応接室で待っていてくれ。」

 「殿下、しかし!」

 「命令だ。拒否は許さん。」

 「・・・わかりました。」

 護衛の近衛騎士達は不満そうであったが、中でも特にブルーノ・ヘルモントが不服を露わにしていた。去り際にセレスティアを思い切り睨んでいた。

 
 「さて、人払いはできたけれども、聞き耳を立てられる可能性も0ではないので、防音魔法も念のため掛けておきますね。」

 「わかった。ローエングリン団長にお任せしよう。」

 フェルディナント王子は、これから一体何を知らされることになるのか、想像することすらできなかった。
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