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47:竜騎士団視察~後編~

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 「ブルーノ・ヘルモント!いい加減にしないか!」

 フェルディナント王子は怒りを露わに、セレスティアを背にかばい、ブルーノ・ヘルモント近衛騎士に叱責した。

  「も、申し訳ありません!過ぎたことを申しました。」

 ブルーノは慌てて、地面に跪いて頭を垂れた。
 
 「セレスティア嬢は、状況を見て判断してくれているのだ。我々は飛竜については素人だ。本職の人間が中止というならば、従うのが道理であろう。くだらないやっかみはやめたまえ。見苦しい!」

 フェルディナント王子は、珍しく声を荒げた。セレスティアは、ヘルモント?と聞いて、どこかで聞いたな…と思ったがすぐに思い出した。ルーカス・ヘルモントだ。どうりで顔に見覚えがあると納得した。関係性はよくは知らないが、身内であることに間違いはないだろうと思った。それよりもしなければならないことがでてきたセレスティアは、王子たちに向けて言い放った。

 「目玉である竜厩舎をご紹介できなかったのは心苦しいですが、どうか安全第一にお願いいたします。あと申し訳ありませんが、私は竜厩舎の異常事態を上官に報告に行かねばなりませんので、施設のご案内はここまでとなります。」

 「うむ、そうだな。では戻るか。」

 「えっと、付いて来られるので?」

 「あぁ、僕も気になるからね。どうせ、この時間はまだここにいる予定だったから問題はないよ。」

 「畏まりました。」

 セレスティアは本当はカイエルとイールに話を聞きたかったのだが、王子たちがいる手前、動けずにいた。(仕方ない、あとで聞いてみよう。)
 






 「ふーむ、飛竜がねぇ。」

 「はい、変に唸るというか恐縮しているというか、明らかにいつもとは様子が違ったのです。」

 「・・・・・なるほどね。」

 セレスティアはユージィンの団長室に行き、竜厩舎の飛竜たちの様子がおかしい事を報告した。

 「ローエングリン団長は、何か心当たりでも?」

 ユージィンの様子にフェルディナント王子は何かに気付いた。

 「・・・いえ、何故そう思われました?」

 「あまり動揺されているようには見えなかったもので、何か知っておられるのかと思ったのですよ。」

 「そうですか、団長足るモノこれぐらいで動揺しては竜騎士団を纏められませんからね。少し考え事はしていましたが。」

 ユージィンはニッコリと笑ったが、目は笑っていない。(多分、これ以上触れてほしくないのね。)セレスティアは何となくユージィンの考えてることがわかった。

 「フェルディナント殿下、セレスティアの言う通り、申し訳ありませんが、視察はここまでです。緊急性はないとはいえ、少しでも不安材料があるところに殿下を長居をさせることは致しかねますからね。お送りいたしましょう。」

 「そうか・・・残念だけど仕方ないね。だけどその前にセレスティア嬢と話をさせてくれないか?」

 セレスティアはそれを言われてギョッとしたが、当然断れる立場ではない。

 「わかりました。すみませんが手短にお願いしますね。」

 ユージィンは許可を出した。


 

 「すまないね、業務中の不測の事態の時に。」

 「いえ・・・」

 「だけど、この機を逃すときっと会う機会がもう中々ないと思ってね。」

 「そうでしたか。」

 「・・・聞いたよ。竜騎士のこと。」

 「え?」

 「ふふ、竜騎士というのは、いろいろ制約があるものだね?」

 セレスティアはフェルディナント王子が何を言わんとするのか理解した。竜騎士のルールにある5年縛りは有名だが、それに纏わるルールがある。5年後、確かに恋人や婚約者に関しては制約はなくなるのだが、竜騎士の相棒たる飛竜に認めてもらえないと結婚することは適わないのだ。つまり、竜騎士本人も『竜の御目通り』にて認めてもらわないと竜騎士にはなれないが、なったらなったで、伴侶も飛竜に認めてもらえないと結婚することは適わないのだ。フェルディナント王子はこのことを言ってるのだろうとわかったのだ。

 「・・・そうですね。」

 「だけど、僕は諦めたわけではないからね。」

 「うちのカイエル相手では殿下といえど、難しいですよ?」

 「はは、手厳しい事を言うね。だけどまだわからないよ。僕は待つって言っただろ?」

 「時間が勿体ないですよ。」

 諦めてください、とセレスティアなりに含みを持たせていた。

 「塩対応だね。だけど僕はそんな君に惹かれて『ドオォォォン!!』」

 「「?!!」」

 セレスティア達のすぐ傍で衝撃音とともに周りには砂埃が舞った。明らかに何かが上から降ってきたというか、着地したのだ。

 「何者?!」

 セレスティアは咄嗟に、フェルディナント王子の前に立ち、剣を抜いて臨戦態勢をとった。フェルディナント王子は自分がセレスティアの前に出ようとしたが、「ダメです!」と、セレスティアに制されてしまった。

 舞い上がった砂埃は少し引いてきたが、その人影は思ってもいないものであった。どう見ても大人のソレではなかったからだ。  

 「ふむ、重い腰を上げてわざわざ来てやってみれば・・・まさか妾の番の浮気現場に遭遇するとは思わなかったのぉ。」  
 
 砂埃が晴れたそこいたのは、白く長い髪に紫の目の神秘的な雰囲気を纏う幼女がそこにいたのだ。
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