30 / 52
第二章 魔女の森編
第30話 ギルドだ、ギルド。何かしら情報があるだろ
しおりを挟む
あまりのたばこ臭さにライラは教会から出たあと身体をパタパタ払っていたけれど、俺には洗浄魔法があるので一瞬で匂いが消えた。
便利な魔法!
「あ! ずるい! アタシにもかけてください!」
「一回銀貨一枚だ」
「ぼったくり!」
バシバシ肩を叩くので「冗談だ」と言って洗浄してやる。
「隣でタバコ臭いのも嫌だしな」
「臭いって言わないでください! アタシのせいじゃありません! あの年増のせいです!」
タバコの匂いをつけられて辛辣になったライラだった。
若作りから連想して出た言葉かもしれないけど。
キシリアは教会から出る瞬間になってまたキツいのに戻って、
「キシリアたんがフレフレしてあげるんだお! 無事戻ってきたらぁ、特別にほっぺにチューをプレゼント!」
タバコ臭えからごめんだった。
タバコ臭くなくてもごめんだけど。
顔を近づけないでほしい。
ライラは自分の身体の匂いを嗅いでタバコ臭さが消えたのを確認すると、
「それで、どうするんです? 危険なんでしょう?」
「【荒れ地】より危険じゃなけりゃ問題ない。それよりもだ。名のある冒険者が戻ってきてねえってことは、金目の物がたくさんあるってことだろ。回収しねえ手はねえ。魔女なんか知らねえ」
うへへ。
うへへ。
ライラは少しだけ溜息をついて、
「あのですね、シオンさん。ごうつくばりが痛い目を見る童話や寓話ってたくさんあるんですよ。自分だけは大丈夫とか、平気だからとか、そうやって欲望に従って行動して、決まってヒドい目に遭うんです」
「そういう奴らはどういう目に遭うか解らない状態で行動するからいけないんだ。俺はちゃんと調べてから行く」
「でも探索者は帰ってこなかったんでしょう? どうやって調べるんです?」
「ギルドだ、ギルド。何かしら情報があるだろ」
言って俺は立ち止まる。
この街の冒険者ギルドはまだ他の店や通りよりも活気がある。
もしかしたら最後の砦みたいな考えを持ってるのかもしれない。
中に入って受付に向かい、そこにいた兄ちゃんに、
「『魔女の森』について教えてほしい」
そう言うと彼は固まって、眉根をよせた。
彼だけではない。
俺の隣で魔石の鑑定をしていたCランクらしいパーティもこちらをみて固まり、それからひそひそと話をして、クスクス笑っている。
俺は無視して受付の兄ちゃんを見る。
彼は咳払いをすると、
「失礼ですけれどランクは」
「ん」
俺は冒険者証を見せた。
隣で爆笑が聞こえてくる。
ライラが少し恥ずかしがってパーティから隠れるように俺の影に入る。
兄ちゃんは唖然として、
「Dランク、ですか? あの、まさか『魔女の森』に向かうって言うんじゃありませんよね?」
「行く。その前に情報を集めてる」
「ダメです!」
兄ちゃんは大声を出してしまったことに自分で驚いて口を塞ぎ、小声で、
「やめておいた方が良いですよ! あそこには魔女がいます。Aランク冒険者でさえ帰ってこなかったんですから」
「へえ」
ニヤニヤしてしまう。
装備品が高く売れるぞお。
ライラが俺の肩を小突く。
「情報だけ欲しい。それだけだ」
「そう言われましても……」
受付の兄ちゃんは言い渋っている。
そこに隣で大笑いしていたCランクの男が近づいてきて肩を叩き、
「なあ、Dランクの兄ちゃん。俺が教えてやるよ。その無謀に免じてな。くっくく」
そこで彼は一笑いすると、
「いや悪い。くくく。あのなあ、『魔女の森』に執着してるおっさんがいるんだ。そいつに話を聞くといい。色々教えてくれるさ」
「ちょっと、それは……」
受付の兄ちゃんが言うのも気にせず、Cランクの男は続けて、
「良いだろ、このDランクの兄ちゃんは挑戦したいっていうんだから。おっさんも久しぶりに仲間ができて嬉しいだろうよ。無謀な仲間がさ」
Cランク冒険者はぎゃははと笑う。
無謀な仲間ね。
それから『魔女の森』に執着、か。
「そのおっさんとやらはどこにいる?」
「夜になれば酒場の隅にいる。酒も飲まずつまみだけ食ってるさ。金がねえんだよ。酒をおごればよろこんで情報をくれるだろうさ。くっくっく。仮面をかぶってるからすぐ解るはずだ」
「いい情報だな」
俺はクスクスと後ろで笑っているCランクパーティをみて、目の前の冒険者の男をみて、それから、ポーチから大銅貨を二枚出して突き出した。
「あ?」
「情報料だ」
「ぶっあーっははは!」
Cランクの男は大笑いして、俺の肩をバンバン叩くと、大銅貨を受け取って、
「せいぜい頑張るこったな、Dランクの兄ちゃん。この二枚の大銅貨はお前が戻ってくる方に賭けてやるよ」
「好きにすりゃいい」
俺はライラを連れてギルドを出た。
便利な魔法!
「あ! ずるい! アタシにもかけてください!」
「一回銀貨一枚だ」
「ぼったくり!」
バシバシ肩を叩くので「冗談だ」と言って洗浄してやる。
「隣でタバコ臭いのも嫌だしな」
「臭いって言わないでください! アタシのせいじゃありません! あの年増のせいです!」
タバコの匂いをつけられて辛辣になったライラだった。
若作りから連想して出た言葉かもしれないけど。
キシリアは教会から出る瞬間になってまたキツいのに戻って、
「キシリアたんがフレフレしてあげるんだお! 無事戻ってきたらぁ、特別にほっぺにチューをプレゼント!」
タバコ臭えからごめんだった。
タバコ臭くなくてもごめんだけど。
顔を近づけないでほしい。
ライラは自分の身体の匂いを嗅いでタバコ臭さが消えたのを確認すると、
「それで、どうするんです? 危険なんでしょう?」
「【荒れ地】より危険じゃなけりゃ問題ない。それよりもだ。名のある冒険者が戻ってきてねえってことは、金目の物がたくさんあるってことだろ。回収しねえ手はねえ。魔女なんか知らねえ」
うへへ。
うへへ。
ライラは少しだけ溜息をついて、
「あのですね、シオンさん。ごうつくばりが痛い目を見る童話や寓話ってたくさんあるんですよ。自分だけは大丈夫とか、平気だからとか、そうやって欲望に従って行動して、決まってヒドい目に遭うんです」
「そういう奴らはどういう目に遭うか解らない状態で行動するからいけないんだ。俺はちゃんと調べてから行く」
「でも探索者は帰ってこなかったんでしょう? どうやって調べるんです?」
「ギルドだ、ギルド。何かしら情報があるだろ」
言って俺は立ち止まる。
この街の冒険者ギルドはまだ他の店や通りよりも活気がある。
もしかしたら最後の砦みたいな考えを持ってるのかもしれない。
中に入って受付に向かい、そこにいた兄ちゃんに、
「『魔女の森』について教えてほしい」
そう言うと彼は固まって、眉根をよせた。
彼だけではない。
俺の隣で魔石の鑑定をしていたCランクらしいパーティもこちらをみて固まり、それからひそひそと話をして、クスクス笑っている。
俺は無視して受付の兄ちゃんを見る。
彼は咳払いをすると、
「失礼ですけれどランクは」
「ん」
俺は冒険者証を見せた。
隣で爆笑が聞こえてくる。
ライラが少し恥ずかしがってパーティから隠れるように俺の影に入る。
兄ちゃんは唖然として、
「Dランク、ですか? あの、まさか『魔女の森』に向かうって言うんじゃありませんよね?」
「行く。その前に情報を集めてる」
「ダメです!」
兄ちゃんは大声を出してしまったことに自分で驚いて口を塞ぎ、小声で、
「やめておいた方が良いですよ! あそこには魔女がいます。Aランク冒険者でさえ帰ってこなかったんですから」
「へえ」
ニヤニヤしてしまう。
装備品が高く売れるぞお。
ライラが俺の肩を小突く。
「情報だけ欲しい。それだけだ」
「そう言われましても……」
受付の兄ちゃんは言い渋っている。
そこに隣で大笑いしていたCランクの男が近づいてきて肩を叩き、
「なあ、Dランクの兄ちゃん。俺が教えてやるよ。その無謀に免じてな。くっくく」
そこで彼は一笑いすると、
「いや悪い。くくく。あのなあ、『魔女の森』に執着してるおっさんがいるんだ。そいつに話を聞くといい。色々教えてくれるさ」
「ちょっと、それは……」
受付の兄ちゃんが言うのも気にせず、Cランクの男は続けて、
「良いだろ、このDランクの兄ちゃんは挑戦したいっていうんだから。おっさんも久しぶりに仲間ができて嬉しいだろうよ。無謀な仲間がさ」
Cランク冒険者はぎゃははと笑う。
無謀な仲間ね。
それから『魔女の森』に執着、か。
「そのおっさんとやらはどこにいる?」
「夜になれば酒場の隅にいる。酒も飲まずつまみだけ食ってるさ。金がねえんだよ。酒をおごればよろこんで情報をくれるだろうさ。くっくっく。仮面をかぶってるからすぐ解るはずだ」
「いい情報だな」
俺はクスクスと後ろで笑っているCランクパーティをみて、目の前の冒険者の男をみて、それから、ポーチから大銅貨を二枚出して突き出した。
「あ?」
「情報料だ」
「ぶっあーっははは!」
Cランクの男は大笑いして、俺の肩をバンバン叩くと、大銅貨を受け取って、
「せいぜい頑張るこったな、Dランクの兄ちゃん。この二枚の大銅貨はお前が戻ってくる方に賭けてやるよ」
「好きにすりゃいい」
俺はライラを連れてギルドを出た。
1
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。
石八
ファンタジー
主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる