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第二章 選択する、選択させる

地下牢

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 地下牢の中はひどい匂いで、かつ、明かりが乏しい。俺はスマホの懐中電灯をつけて先へ進んでいく。セレナは俺の服を掴んでついてくる。

「なあ、衛兵に見つかったらどうするんだ?」
「殺すに決まってるだろ」

 俺は当たり前のようにそう言って先へと進んだ。徐々に匂いがひどくなっていく。おそらくひどい環境なのだろう。便の処理もろ国行っていないと見た。そして獣臭い。

「新しい王は獣人嫌いと言っていたな。なにか理由があるのか?」
「幼い頃に飼っていたペットを食われたとか言っていたな」
「ふうん」

 俺は聞いておいて興味なさげにそう言うと階段をおりた。
 匂いが増す、空気に重さがあって前へ進むのを押し留めているような抵抗感がある。服の襟を掴んで口元に当て、進んでいく。

 ついに俺たちは地下牢にたどり着いた。

 うめき声が聞こえる。オレたちの存在に気付いた獣人たちが悲鳴をあげる。誰かが来るたびに一人ずつ殺されていったのだろうか、それともただ拷問を受けていたのだろうか。衛兵は居ない。多分この臭気に耐えられなかったのだろう。

 俺は地下牢の一つに近づいた。そこにはボロをまとった獣人の女性が入っていた。スマホから発せられる明かりから逃げるように、彼女は牢の隅の方へと逃げていく。体を引きずるようにしているのは、足がないからだ。両足が切り落とされている。まるで逃げるのを封じるように。中級ポーションを使ったのだろう、傷口は見えず、肉が丸く形成されている。

「お前たちをここから出してやる。その後の生活も保証しよう。どうするここに残るか、俺ともに外の世界に出るか選択しろ」

 獣人の表情は見えないが大きく肯くのだけは見えた。

「出ていきたいにゃ」

 その声を聞いた瞬間マーラの顔が脳裏をよぎった。一瞬感情が暴れそうになる、抑える。

「まっていろ。全員に確認してからここを開ける。騒ぐなよ。衛兵に殺されたくなかったらな」

 俺は全員に同じ質問をした。ここにいるのは獣人だけではない。おそらく王の側近だったであろう人間も同じような境遇で収監されていた。
 すべての者に確認をすると皆一様に出ていきたいという。俺は鍵を使って牢を開けた。
 皆が足を切り落とされていていちいち運ぶのも面倒だ。特級ポーション飲ませていくがどうしても足らない。

「足があるものは足のないものを運べ」

 数が足らないと思っていたが獣人の一人が相当な力持ちで二人を抱え、一人を腰に抱きつかせた状態であるき出した。おそらく騎士団の上層部にいた獣人だろう。
 セレナは知りあいだったようで、歩いていくその獣人に声をかけた。

「流石ですね、テリー様。……仲間を殺してしまって申し訳ありませんでした」

 セレナは跪いて頭を垂れた。

「いや、セレナが洗脳を受けているのはわかっていた。仕方のないことだ。だが、それを解くなんてすごいじゃないか」
「あの方が主人を殺したのだ。惨殺したと言ってもいい」
「頼もしい方だな。助けていただき感謝します」

 テリーは俺にそういった。俺はああ、とだけ言ってクローゼットを出現させた。 

「行くぞ」

 全員に指示した。
 俺は一番はじめに声をかけた獣人の女を腕に抱えた。背中には武器があるのでどうしても背負えなかった。セレナは人間の貴族であろうか、女性を背負っている。俺はクローゼットに入ろうとした。

 衛兵の声が響いてくる。魔法結界でも張ってあったのだろうか、アラーム音は聞こえなかったが、どこかで反応してしまったらしい。

「ヒッ」

 腕に抱えた獣人の女性が悲鳴をあげる。目の前に鎧をまとった男が二人現れる。

「何者――」

 奴らが叫ぶ前にバリスタで喉元を切り裂いた。威力はやはり凄まじく、もののけ姫のアシタカが放ったかのように、首が飛んでいく。
 腕の中にいる獣人やセレナが驚きの顔で俺を見る。

「ほら行くぞ、俺に続いて中にはいれ」

 らくらくと俺は王の側近たちを救出した。
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