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修学旅行の英雄譚 Ⅰ
File.5 許せない敵 許されない敵
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「黒幕の名前は……キード・スレイ」
「な、なんだと!?キード……スレイ……?」
「分からないならそんな反応しないでくれる?紛らわしいわよ」
「いやー、ついノリで?」
『キード・スレイ。魔術師としてはかなりの古株で「殺し」を体現した様なやつだ。龍殺しを人間に流し、その他にも悪魔殺し、天使殺し、幽体殺しを発明し、やがては神話殺しや神殺しにまで届くかもしれないと言われ、神話体系を崩しかねないと天使長ミカエルがバベルの塔に幽閉した魔法使い。花の理想郷から一度追放されたと聞いていたが?また戻ったのか?』
うーん、また分からないことが沢山でてきたぞ?バベルの塔だけ聞いたことあるな、アンリ・マンユが幽閉されてたっていう塔だろ?
「そうよ、あの馬鹿魔術士が『キードは俺の部下だ、俺が責任を取るよ』とかわけ分かんないことをヘラヘラとぬかして!ほんっとあの極楽とんぼは!」
またオリヴィエが怒りだしたぞ?今度はなんだ?
オリヴィエのことを宥めながらローランが言う。
「落ち着いてオリヴィエ。でもおかしな話だ、確かに彼はオリヴィエの言う通りただの極楽とんぼかもしれないけど、自分の仕事に関しては決して手を抜かないはずだよ?キードが彼に逆らったとしても彼に勝てる魔術師がこの世界に何人いるのか分からないほど強いんだよ?いくら『殺し』に通じているからといってそもそも『生命』っていうファクターが存在しない彼に刃向かえるのかな?」
「それならそのキードなんたらが本当の真犯人だっていう決めつけは性急過ぎないか?」
さっきまで一言も口を開かずに、ポカーンとしていた拓翔がいきなりそんなことを言い出す。
全員が拓翔に注目する。
「ローランと真希ちゃんが話してる内容はいまいちピンとこないけどよ、その極楽とんぼの魔術師さんに勝てるのはいないんだろ?それキードなんたらが逆らえるってことはどこかに裏ルートが存在したか、それとも初めから別の人物……組織でもいいや、それらと結託して抜け道を作ったかのどっちかだろ?……てかそれしか考えられなくないか?」
…………………………。
「な、なんだよ?急に黙り込むなよ心配になるだろ?」
「あぁいや、ごめん。でもそうか……そういう考えもできるな。もしそうなら……」
なにかに気付いたローランが顔を上げて、俺たちに指示を出す。
「オリヴィエ!」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれて敬礼のポーズをとるオリヴィエ。
「ミカエル様はキードの捜索をしているんだよね?」
「その通りです!」
圧に負けて言葉づかいまで変わってるし。
「今どれほどのことが分かっているのか、そしてさっきの新條君の意見を伝えるんだ!今日中に伝えて明日の朝までには帰ってきてくれ!」
「了解しました!」
再度敬礼のポーズをとり、全力疾走でどこかに行ってしまった。
「悠斗君!新條君!」
「「はい!」」
あ、ついノリで俺達まで敬礼しちゃった。
「急いであの建物に向かう。ここから直線で真っ直ぐ突っ込むよ!僕の考えが正しければあの場に着いた途端に戦闘が始まる!」
久瀬から貰った球体をポケットから取り出して持ち主の所に戻るよう指示する。頼むから俺の言うこと聞いてくれよ……!
そう念じて球体を手放すとそのままどこかに飛んで行った。
そこから意識を戦闘に切替えて、三人揃って深呼吸をする。
「紅煉!」
「轟々の蒼霹靂!」
俺達のパワーアップを確認して三人揃って建物に突っ込む。
飛んでいる最中に二つの影を見た。一つはふくよかな体形をした中年の弾性、そしてもう一人は……!
その人物を見た途端に頭のほとんどを怒りが支配した。
並んで飛んでいる中俺だけ一段と加速してその男目掛けて飛んでいく。
「ステイィィィィィン!」
「おわっと!」
俺の突進をギリギリのところで回避され、勢い余って反対の壁にぶつかる。
「な、なんすかなんすか?なんか飛んできやしたけど?」
瓦礫を吹き飛ばして剣を構えてもう一度突進する。が、ステインの体が二つになることは無かった。
「な!?なんで?」
こっちを見ていないはずなのにどうやって防ぎやがった!?
「はー、だりぃっすねぇ」
そう漏らしながら正面も向かずに俺と拮抗している。何度も何度も斬撃を加えるもその全てを防がれてしまう。
「悠斗君!」
「ハル!」
追いついた二人が即判断で拓翔は中年の男性に、ローランはステイン目掛けて走り出す。だが、拓翔もローランもその初撃を防がれてしまった。
両手で俺とローランの攻撃を止めているステインがようやく俺の方を向いたと思うと、わざとらしく舌を出して笑った。
「おやおやおや?これはこれは氷翠のガキのお友達のクソザコドラゴン君と?先日俺に惨敗したクソザコ剣士君じゃないですかぁ?なんですかぁ?またまた殺されに来たんですかぁ?」
「うる……さい!」
もう片方の手でローランと同時に薙ぐが軽々と躱される。こいつの身体能力どうなってんだよ!
「クッソが!なんで攻撃が通らねぇんだよ」
見ると、拓翔が果敢に攻撃を繰り返すが、男が何もしていないのにその電撃が全て無効化されてしまっている。
俺達を一瞥すると、少し口角を上げて言う。
「何事かと思えばなんだ、教会からの使者か三名も死んでいるというのに諦めの悪い……フハハ、あいつらも馬鹿よのう。こちらには『殺刺器』があるというのにその戦力差も考えずにまた獲物を寄越すとは」
そう言うと、懐から二丁の拳銃を取り出し銃口を俺たちに向ける。それを向けられた途端に背中に悪寒が走った。やばい……これは……!
「拓翔!ローラン!いいか、絶対にあれを食らうんじゃねぇぞ!」
俺の必死さからあの危険性を感じとってくれた二人は向けられた銃口に集中する。
「さて……お前達はデュランダルの在処を知っているか?」
「な、なんだと!?キード……スレイ……?」
「分からないならそんな反応しないでくれる?紛らわしいわよ」
「いやー、ついノリで?」
『キード・スレイ。魔術師としてはかなりの古株で「殺し」を体現した様なやつだ。龍殺しを人間に流し、その他にも悪魔殺し、天使殺し、幽体殺しを発明し、やがては神話殺しや神殺しにまで届くかもしれないと言われ、神話体系を崩しかねないと天使長ミカエルがバベルの塔に幽閉した魔法使い。花の理想郷から一度追放されたと聞いていたが?また戻ったのか?』
うーん、また分からないことが沢山でてきたぞ?バベルの塔だけ聞いたことあるな、アンリ・マンユが幽閉されてたっていう塔だろ?
「そうよ、あの馬鹿魔術士が『キードは俺の部下だ、俺が責任を取るよ』とかわけ分かんないことをヘラヘラとぬかして!ほんっとあの極楽とんぼは!」
またオリヴィエが怒りだしたぞ?今度はなんだ?
オリヴィエのことを宥めながらローランが言う。
「落ち着いてオリヴィエ。でもおかしな話だ、確かに彼はオリヴィエの言う通りただの極楽とんぼかもしれないけど、自分の仕事に関しては決して手を抜かないはずだよ?キードが彼に逆らったとしても彼に勝てる魔術師がこの世界に何人いるのか分からないほど強いんだよ?いくら『殺し』に通じているからといってそもそも『生命』っていうファクターが存在しない彼に刃向かえるのかな?」
「それならそのキードなんたらが本当の真犯人だっていう決めつけは性急過ぎないか?」
さっきまで一言も口を開かずに、ポカーンとしていた拓翔がいきなりそんなことを言い出す。
全員が拓翔に注目する。
「ローランと真希ちゃんが話してる内容はいまいちピンとこないけどよ、その極楽とんぼの魔術師さんに勝てるのはいないんだろ?それキードなんたらが逆らえるってことはどこかに裏ルートが存在したか、それとも初めから別の人物……組織でもいいや、それらと結託して抜け道を作ったかのどっちかだろ?……てかそれしか考えられなくないか?」
…………………………。
「な、なんだよ?急に黙り込むなよ心配になるだろ?」
「あぁいや、ごめん。でもそうか……そういう考えもできるな。もしそうなら……」
なにかに気付いたローランが顔を上げて、俺たちに指示を出す。
「オリヴィエ!」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれて敬礼のポーズをとるオリヴィエ。
「ミカエル様はキードの捜索をしているんだよね?」
「その通りです!」
圧に負けて言葉づかいまで変わってるし。
「今どれほどのことが分かっているのか、そしてさっきの新條君の意見を伝えるんだ!今日中に伝えて明日の朝までには帰ってきてくれ!」
「了解しました!」
再度敬礼のポーズをとり、全力疾走でどこかに行ってしまった。
「悠斗君!新條君!」
「「はい!」」
あ、ついノリで俺達まで敬礼しちゃった。
「急いであの建物に向かう。ここから直線で真っ直ぐ突っ込むよ!僕の考えが正しければあの場に着いた途端に戦闘が始まる!」
久瀬から貰った球体をポケットから取り出して持ち主の所に戻るよう指示する。頼むから俺の言うこと聞いてくれよ……!
そう念じて球体を手放すとそのままどこかに飛んで行った。
そこから意識を戦闘に切替えて、三人揃って深呼吸をする。
「紅煉!」
「轟々の蒼霹靂!」
俺達のパワーアップを確認して三人揃って建物に突っ込む。
飛んでいる最中に二つの影を見た。一つはふくよかな体形をした中年の弾性、そしてもう一人は……!
その人物を見た途端に頭のほとんどを怒りが支配した。
並んで飛んでいる中俺だけ一段と加速してその男目掛けて飛んでいく。
「ステイィィィィィン!」
「おわっと!」
俺の突進をギリギリのところで回避され、勢い余って反対の壁にぶつかる。
「な、なんすかなんすか?なんか飛んできやしたけど?」
瓦礫を吹き飛ばして剣を構えてもう一度突進する。が、ステインの体が二つになることは無かった。
「な!?なんで?」
こっちを見ていないはずなのにどうやって防ぎやがった!?
「はー、だりぃっすねぇ」
そう漏らしながら正面も向かずに俺と拮抗している。何度も何度も斬撃を加えるもその全てを防がれてしまう。
「悠斗君!」
「ハル!」
追いついた二人が即判断で拓翔は中年の男性に、ローランはステイン目掛けて走り出す。だが、拓翔もローランもその初撃を防がれてしまった。
両手で俺とローランの攻撃を止めているステインがようやく俺の方を向いたと思うと、わざとらしく舌を出して笑った。
「おやおやおや?これはこれは氷翠のガキのお友達のクソザコドラゴン君と?先日俺に惨敗したクソザコ剣士君じゃないですかぁ?なんですかぁ?またまた殺されに来たんですかぁ?」
「うる……さい!」
もう片方の手でローランと同時に薙ぐが軽々と躱される。こいつの身体能力どうなってんだよ!
「クッソが!なんで攻撃が通らねぇんだよ」
見ると、拓翔が果敢に攻撃を繰り返すが、男が何もしていないのにその電撃が全て無効化されてしまっている。
俺達を一瞥すると、少し口角を上げて言う。
「何事かと思えばなんだ、教会からの使者か三名も死んでいるというのに諦めの悪い……フハハ、あいつらも馬鹿よのう。こちらには『殺刺器』があるというのにその戦力差も考えずにまた獲物を寄越すとは」
そう言うと、懐から二丁の拳銃を取り出し銃口を俺たちに向ける。それを向けられた途端に背中に悪寒が走った。やばい……これは……!
「拓翔!ローラン!いいか、絶対にあれを食らうんじゃねぇぞ!」
俺の必死さからあの危険性を感じとってくれた二人は向けられた銃口に集中する。
「さて……お前達はデュランダルの在処を知っているか?」
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