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氷の姫と悪魔の中間試験

戦いの狼煙─中央公園にて

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リーナ先輩に指示され、そのまま中央公園まで走る俺と結斗さん。その間は驚くほど静かで怖いくらいにすんなりと到着した。
公園には茂みがあるのでそこに姿を隠す。
「なんか、ここまで音沙汰なしだと逆に気持ち悪いですね。相手チームは何考えてるんでしょうか?」
「こっちの手は全て把握しているとでも言いたいのか……それとも敵全員が他の場所にあたっているのかだと思うけど、うーん……俺もここで蹴散らすつもりだったんだけどなぁ」
「俺、先輩に聞いてみます…………先輩、今中央公園に到着して茂みから覗いているんですけど、敵が一人もいません。どうしたらいいですかね?」
『敵が一人もいない?そんなはずないでしょ?よく探してみなさい』
わけが分からないといった口調で返される。もう一度よく確認してみるが、やはり敵なんかいない。
「やっぱりいないですって、とりあえず敵が出てくるまで待機ってことでいいですか?」
『分かったわ、状況分からない場面で動いても消耗するだけだし、そこに隠れてなさい』
「了解です」
「リーナはなんて?」
「何もわからない状況で動いても消耗するだけだから待機しとけだそうです」
『ザスター様のチーム一名リタイヤ、残り八名です』
リタイヤのアナウンス……先輩達がまだ出てないのを考えるとローランか?
「ローランがやってくれたようだね、どうする悠斗君?ここから動こうか?」
「え?いいんですか?リーナ先輩に待っとけって言われてるのに」
「ずっとここに居るだけじゃ何も進まないよ。俺達も動こ───コフッ」
結斗さんの口から血が出ている───血ッ!?
後ろを見るとザスターのチームの二人が俺達の後ろに立っていた!
「結斗さん!」
「ここから離れろ馬鹿ッ……!君もやられるぞ!」
体を突き飛ばされ、公園内に転がっていく。
『リーナ様のチーム一名リタイヤ、残り四人です』
結斗さんがリタイヤ!?チックショォォォォォオオオ!
「ザスター様の言った通りでした、私達が姿を現さなければその場に留まり続ける……簡単な仕事でしたね?」
背の高い人がそう言う。
「でもこんなのつまんないよー、もっと思いっきり戦いたいー」
背の低い方が口を尖らせ、文句を言っていた。
それを聞いた背の高い方は、呆れながら俺の方を指さしてもう片方に俺との戦いを促す。
「ならばあなたがあの男と戦えばいいでしょう?」
それを聞いて両者構える。
「絶対に邪魔しないでよ?あなたさっき一人やっつけたんだからね?私も出番欲しい!」
頷いて一歩下がる。
「あなたが邪龍君だよね?私はミリィ、よろしくね?そしてさようなら!」
勝手に自己紹介されて勝手にバイバイされた!?
突進してくる相手を躱して、腕に紋様を出現させる。その紋様は三分の二が凍っている。
「勝手にさよならすんなよな!」
正直これをここで使いたくなかったけど仕方ない!
「来い!深蝕蠢アルビッサル・イクリプス!」
俺の隣で闇が蠢き、それが八つの翼を持つ一つ目のドラゴンになる。
「うぐ……」
体に激痛が走る。腕の紋様の氷が広がっている。
だけどこんなの気にしてられない!
闇の剣を形成して、ドラゴンと共に敵に突貫していく。
この技は『紅煉クリムゾン』をコントロールできないと判断した俺が氷翠に協力してもらってギリギリ完成させたものだ。その効果は!
「行け!喰らい尽くせ!」
俺の指示を受けて俺より先に相手に攻撃を仕掛ける。体当たりを既のところで躱すが、装備していた服に闇が触れてしまう。すると触れた部分からどんどん闇が広がっていく。危険を感じた相手は服を脱ぎ捨て、そのまま後退する。
「服が……闇に食われていく?」
そうだ、それが俺が完成させた技、敵をどこまでも蝕む闇、『深蝕蠢アルビッサル・イクリプス』だ。このドラゴンのようなモノで消費するのは俺の魔力じゃない、俺の中に貯蔵されている『闇』そのもの。だから魔力を消費することは無いが、体力をごっそり持ってかれる。
『ザスター様のチーム四名リタイヤ、残り四人です』
ローランが四人も倒したのか!これは俺も負けてられないなァおい!
良い知らせを聞いてテンションが上がった俺は、ドラゴンと共に敵に攻撃を仕掛けていく、こいつはこれの意思で好きなように動かせるからいくらでも相手の意表を突くことが出来る。
「鬱陶しいよ!コイツ!」
攻撃するのはドラゴンだけじゃなく俺もいる、実質二対一の状況で遂に闇が敵の右腕を捕らえた。
「キャァァァァァアアアアアアアア!」
自分の腕が徐々に食われていくのを見て、悲鳴を上げる。自分で作っておいてあれだけど結構残酷な技なのかもしれない……。
その光景に心が耐えられなくなったのかついに気絶してしまった。トドメを刺そうとしたが、光の粒子となって消えていった。
一人……倒したぞ……あとはあいつと、アンリ・マンユだけ……だぞ。
体力をだいぶ使ってしまい、足が動かず、手に力が入らない。しかしそんな体にむち打ち、気合を入れて立ち直す。
「その技、触れたものをなんでも消し去ってしまうその力……非常に恐ろしいものですが、そろそろ限界のようですね?なぜ魔法、もしくは魔術を用いないのですか?」
敵がこちらに歩み寄り、俺にそう聞いてくる。
「そうか……あんたらは知らないんだったな、あんたらの所には恐ろしい神様がいるってことをよ」
首をかしげていたが、なんのことが気がついた相手は学校のグラウンドを指差しながら、
「もしかして、あの人のことですか?たしかに何者かわからないですが持っている力は本物です。しかしそれが神だとはどういうことでしょうか?」
指差す方を見ると、リーナ先輩と氷翠が、ザスターとアンリ・マンユと対峙していた。
「リーナ先輩!」
目の前の敵に構わず、学校に向けて走り出す。しかし、それを許してくれるはずもなくこの公園全体が怪しい霧に包まれてしまった。
「クッソ!邪魔だ!俺はあの人のもとに行かなくちゃならないんだよ!」
敵は両手に魔法陣を展開させて、俺に立ち塞がる。
「それをさせないのが私の仕事です。悪いですけど、あなたにはここでリタイヤして頂きます」
正面から氷の槍や、火の玉、頭上から雷が俺目がけてやってくる。無理に戦うわけにもいかないので、自分の周りに闇をドーム状にして、敵の攻撃を防ぐ。それでも相手の猛攻は止まらず、防戦一方の戦闘を強いられてしまう。
俺はリーナ先輩のところに向かわなきゃ行けないのに!アンリ・マンユを倒してザスターと先輩を救わなきゃいけないのに……!俺一人じゃどうにもならない……!どうしたら……!誰か……誰か来てくれ!
俺の心を呼んだかのような完璧なタイミングで、聞き慣れた爽やかなイケメンボイスが聞こえてくる。
「それなら、僕と一緒に戦うかい?ねぇ、悠斗君?」
そのものの登場に俺は心底喜んだ。
「ローラン!来てくれたのか!」
「姉さんのところに向かおうとした途中で変な霧を見つけたからね、何かあるだろうと思ったら案の定君がいたのさ。敵は目の前の彼女でいいのかな?」
「そうだ、これで二対一、俺とローランでチャチャッと倒してやろうぜ!」
「いや、君は姉さんとアンリ・マンユの所に行くべきだ、彼女は僕が一人でなんとかしてみせるよ」
相手からしたら悪魔である自分相手に人間如きがといった感じだろうけれども、それを感じさせないのはローランがそれほど強く、俺がローランのその強さを信頼しているからだろう。
「分かった……俺は先輩のところに向かう。絶対勝てよ」
拳を突き出して、激励する。
「僕そんなに熱いタイプじゃないんだけどな……でも君の期待に応えられるように努力するよ」
ローランが俺の突き出した拳に拳を合わせる。
こいつなら大丈夫だと確信してもその場から走り出す。霧を抜けて、道路に出る。そのまま全力で学校まで向かう。

───リーナ&氷翠 ザスター&悪神アンリ・マンユ

あの時は感じなかったが、実際に悪神が自分の目の前に立ち、それを意識してみるととても恐ろしい。肌に感じられる強さが既に人知を超えている……本当に悠斗はこの者に勝てるのだろうか?そんな考えがずっと頭から離れない。
自分の後ろに立つ舞璃菜も悪神を見て恐れている。
「大丈夫よ舞璃菜、あなたは私が絶対に守りきるわ」
自分もこうやって見栄を張るが、完全に目の前にいるものの強大さに恐怖してしまっている。それが形となって、自分に襲いかかってくるほどに。
「大丈夫!私だって戦えるよ!リーナちゃん先輩に沢山いろいろ教えて貰ったし!」
……ダメだ、口では強がっているが、完全に萎縮してしまっている。
「なぁリーナ、この勝負……実に不毛だとは思はないか?」
不毛……だと?
「どういうことかしら?あなたから仕掛けておいてその言い方はいかがなものかと?」
嫌味も含めてそう突っ返すがまるで意に介していない。
「なぜなら俺の勝利は絶対に歪まないからだ……人間である君には人間であるが故の限界がある。それを超えることは不可能なんだよ」
正しい……人間は悪魔や他の異形のモノに比べれば非常に弱く、脆い。だから普通は人間がそれらを超えるなんてことはありえないんだ。
「それでも、私は諦めない。私達には希望がある。私達の中で最弱の希望が」
山を登る最中に「私は悠斗が何とかしてくれるって信じてる」などとふざけて言ったが、あれは半分本気だった。
彼ならこのしがらみから自分を救ってくれる。目の前にいる人を呪縛から解放してくれると信じている。彼はそれだけの努力をした……この一週間、何度も倒れ、何度も立ち上がった彼はもうのヒーローだ。
『ザスター様のチーム一名リタイヤ、残り二名です。リーナ様のチーム一名リタイヤ、残り三名です』
立て続けにアナウンスが入る。
「あの邪龍のことか?それならそんな希望は捨ててしまった方がいい。あいつはあの場でリタイヤしたんだろう……さぁ、共に目の前のものを倒してしまおう、お前の力で敵を葬るのだ」
アンリ・マンユが口を開く、その言葉は恐ろしい程に……何も感じさせなかった。
「私は──アンリ・マンユ──罪、悪意を一身に受けた神──廻る──廻る神──あなたは、どうなってしまうの──?」
いつの間にか自分の目の前まで来た悪意の象徴は、頭に手をかざして、何やら呪文を唱えだす。近づいてきたことに気が付かなかった。それと同時に、リーナの脳裏に死がちらつく。
逃げなきゃ……逃げなきゃ……そう頭では分かっているが、体が言うことを聞いてくれない。
嫌だ……嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……失いたくない……失いたくない!
絶望を感じ目から涙が溢れたその時、目の前で感情無く笑っていた神が、紅い炎を身に纏った少年に殴り飛ばされていた。



急げ、急げ!早くしないと先輩達が殺されてしまうぞ!
自分にそう言い聞かせて、道路を走り続ける。もう体力も限界で、体に目立った傷はないものの、さっき無理したせいでまた氷の侵食が進んでしまった。ファーブニルによればタイムリミットはもうすぐ……それまでにアンリ・マンユを倒さないといけない。
体中が痛い、体感では侵食は七割ほど進んでいると思う。この侵食が完了してしまえば本当に死ぬ───
頭の片隅に自分の死を描きながら、学校へと向かっていく。
待っててくれ二人共!絶対に助けるから!



悠斗君が姉さんたちの方へ向かい、残された僕達二人は戦っている最中だった。相手が魔術を放てばそれを僕が無効化して突進していく。そして相手が僕の剣を躱すか、魔法陣で防ぐ。先程からほとんどその繰り返しだった。
相手から僕を倒しきるという意思を感じられず、足止め程度で力を余らせて戦っているようだ。
僕も本気を出しているかと言われればそうではないのだが……この先にはもっと凶悪な相手がいるわけだからなるべく消耗したくはない。
両者の動きがピタリと止まる。
「どうしたのですか?急に止まって、まさか怖気付いたのですか?」
「まさか、どうやったら一番楽に君を倒せるのか考えているところさ」
試しに挑発してみる、これで相手が挑発に乗って全力で攻撃してくれればそれを無効化して切り捨てるところだが……どうだ?
一瞬体から溢れる魔力が増大したが、直ぐに落ち着いた状態に戻った。
「その挑発には乗りませんよ?私が全力で攻撃したところであなたにはそれを封じる術がある。あまりにも戦い方が低俗、いや、まるでゲリラや奇襲のそれですね」
これはまずいな……ここで崩せなかったら悠斗君の負担はかなりきついものになってしまう。あの様子じゃもうすでに限界が近い、一秒でも早くむこうの戦闘に参加しなければならないというのに。
「いやぁ、まさかバレていたとはね……これは一杯食わされたよ」
「…………その貼り付いた作り笑い、非常に不愉快です」
「それじゃぁ、もう見れないようにしてあげるよ」
ゆっくりと歩きながら敵に近づく。普段歩くように無防備に、当然相手は僕に攻撃を放つ。だがそれは全て僕に当たる寸前で霧散してしまう。相手がその場から駆け出し、僕に体術で勝負を仕掛けようとしてきた。もともと人間よりも基礎能力が高いので勝てると踏んだのだろう。僕のことを殴る、蹴る、なかなかに洗練された動きだ、でも───。
相手の視界から消え、肩口から切り抜く。
これで勝負が着いた、相手はもうリタイヤするだろう。
そう思った時、背中に衝撃を感じた。
吹き飛び、地面を転がる。見ると、相手がこちらに魔法陣を向けていた。
背中の肉が爆ぜ、大量に出血している。さすがにこの状態で戦うのは無理だ。
「あなたの敗因はその慢心だ…………」
それだけを言い残して、光の粒子となって消えていった。
『ザスター様のチーム一名リタイヤ、残り二名です』
僕ももう無理かな……動けないや。ごめん悠斗君……でもこれを君に受け取って欲しい……。
『リーナ様のチーム一名リタイヤ、残り三名です』

───Haruto to school

リタイヤのアナウンスの聞こえ、ローランがあの敵と共にやられてしまったのだと分かる。
ありがとうローラン、お前のおかげで俺は無事に先輩達のところにたどり着けそうだ。
学校までおよそ五百メートルのところで、目の前に変な空間が出現する。それを覗くと、体の中に何かが入ってきた。
一度感じたことのある感覚、すぐにこれがローランの『魔力無効領域ウィーク・ポイント』であることを理解する。
一体何のために?体に変化がないか探してみると腕の氷が少し治まっている。ローランは俺の延命の為にこれを飛ばしてくれたのか……。
次に起こったのはその空間への入口が人が入れるサイズにまで大きくなる現象だ。
入れってことか?少し心配だけど、ローランのことを信じて足を踏み入れる。空間全体が輝きだし、目の前が見えなくなった。光が止み、目を開けると校門前まで転移していた。
転移していた事に驚くがそれ以上に先輩があの悪神に襲われているのを見て、そこに向かって一直線には走りだす。こうなったら制御がどうとかはもう関係ない!一か八かだ!
走りながら言葉を紡ぐ!
「沸き上がれぇぇぇええ!紅煉クリムゾン!」
紅い炎に身を包み、背中の六枚の翼を羽ばたかせて高速で移動し、この事件の黒幕であるアンリ・マンユを殴り飛ばす!
「そこをッ!どけぇぇぇぇぇええええ!」
先輩と氷翠が驚きと安心が混ざった顔をしている。なんだその顔は?
「悠斗!」
「悠斗君!」
俺の登場に安心したのか先輩がその場にペタンと座り込む。
「先輩!遅れてすみません!際神悠斗、ただ今到着しました!」
殴られた悪神は殴られた頬に手を当てて、首を傾げる。
「これ──は──熾天使の炎?──この魔力──私に──似ている?──ドラゴン──アジ・ダハーカ──なぜお前がここに──いる?滅ぼした──はず?」
なんだこいつ、こいつの言葉から何も感じられない。感情が無いとかそんな次元じゃない、完全な『無』それを体現したようなやつだ。これが『輪廻の偽神』アンリ・マンユか。
「そうだ、俺はアジ・ダハーカだ」
一度『紅煉クリムゾン』を解き、先輩達に寄る。
「悠斗、大丈夫なの?腕が───」
「今はそんなこと気にしてられないです、先輩はザスターと戦ってください。ザスターをリタイヤさせないでかつ、負けないでください。氷翠、先輩をフォローしてやってくれ」
他人の事情ガン無視の指示に二人は目を丸くしている。
が、先に我に戻った先輩が笑う。
「ふふふ、そんな誰のことも考えない理不尽な指示を受けるのは初めてよ?」
「仕方ありません、今はそうするしかないんです」
先輩の顔からはさっきまでの様な恐怖の色は一切見えず、凛々しいものだった。
「分かったわ、私はザスターを何とかするから、絶対に負けちゃダメよ?」
頷き、立ち上がって、倒すべき敵へと歩みを進める。恐怖で腕が震える、足が止まりそうになる。一歩一歩がとても重く感じる。
「待たせたな、アンリ・マンユ」
「私は───神───罪、悪意を一身に受けた神───あなたは───どうなってしまうの?」
「そんなこと知らねぇよ」
「そう───それじゃぁ───廻すだけ───戻して───戻して───あなたを貰う」
アンリ・マンユが両手を広げて構える。
「煌々と燃え盛れ!紅煉クリムゾン!」
俺の体がもう一度紅い炎に包まれる。
地面にクレーターを作りながら、突進していく!
「一分で片をつけてやる!」
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