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氷の姫と悪魔の中間試験

Period.3 合宿開始! in グランシェール領

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「ぜぇ……ぜぇ……皆……ちょっと待って。もう少しゆっくり……お願いします……」
早朝、俺たち五人はグランシェール家の持っている山にある別荘に向かっていた。山の麓までは車で行けるが中は車で通ることは出来ないらしく、歩くか転移して行くしかないらしい。しかし、そこは熱血のリーナ先輩。転移せずに歩いて行くと言い出したのです。
一週間分の荷物を持って山を登るのだからかなり疲れる。今俺はちょうど中腹辺りを登っており、その背中には大量の荷物がある。
「結斗さん!リーナ先輩!自分の荷物もってくださいよ!まだ食材とかみんなで使うものを持っていくのはわかりますけど私物は勘弁してくださいよ!」
結斗さんとリーナ先輩は俺とは正反対に手ぶらで軽やかに山を登る。足取りはとても軽く、二人だけ遊びに行くようだった。
「いい天気ね。これならしごきも捗りそうだわ」
「そうだね、こんなに空気が美味いんだ。否が応でも身体が動いてしまうよ」
先輩方は俺の訴えを無視して、爽やかな雰囲気を醸し出している。
「ちょっとごめんね悠斗君、お先に失礼するよ」
俺と同じくらいの荷物を持ってスルスルとこの坂を登るローラン。なんであいつあんなにスルスル行けるんだよ!
「ねぇ、リーナちゃん先輩、私悠斗君手伝ってきていい?」
氷翠ぃぃぃぃぃぃ!お前だけだよ!俺に優しいのは!ほかの三人も俺に少しでもいいから優しさを分けてくれ!
「ダメよ、これは悠斗のためなのよ。これくらいこなさなきゃダメよ。……それに私は信じているわ、悠斗ならやってくれるって」
すっごい爽やかな笑顔でそう言う先輩。しかも今ちょっと考えましたよね?そうですよね!?
なんとか山を登りきり、山頂の別荘に到着した。
「「でか!」」
最初に見た時の反応はそれだった。見てるだけじゃ山の中に屋敷があると言われても納得してしまうほどの広さだった。
「それじゃぁ、全員ジャージか体操服に着替えてまたここに集合ね。男子用の更衣室はあっち、私達はこっちね」
言われた通りに各々更衣室で着替えを済ませ、先程の場所に再び集まる。
「それじゃぁ午前中は私が舞璃菜の勉強見るからローランと結斗は悠斗の相手をしてあげて」
「うぇえ!?今から勉強するの!?こんな山に来てまで!?」
素っ頓狂な声を出してほんとに動揺している氷翠。さすがにここに来て勉強免除は先輩的にありえないだろう。
「はぁ、当たり前でしょう?今がどれだけ緊急事態だからと言っても本来の目的までスルーしてられないわ。悠斗はそれが今度のゲームに繋がってくるからそのままの予定で進めるけど、あなたは別よ。ほら行くわよ」
「いーやーだー!私も訓練するー!」
必死に抵抗するが襟を掴まれた氷翠はそのままリーナ先輩に連れ去られてしまった。
途中で先輩が「午後からはあなたも参加するから」と言ったのが聞こえると、氷翠は大人しく引きずられて行った。
この場に残された男三人……。
「よし、それじゃぁ俺達も始めようか。とりあえずローラン、悠斗君と戦ってみてくれ」
結斗さんがそう話を切り出し、俺たちに指示をくれる。
「武器はどうしますか?僕はこれがありますけど悠斗君何も無いですよ?」
「それなら問題ないぞ、ここに木刀が二本ある。これでやってくれ。本気で戦うと言うよりは悠斗君に指導する形で頼むよ」
「分かりました。よろしく悠斗君」
昨日のこともありすごく緊張する。でもこいつから盗めるとこは盗みたいね。
「よっしゃこい!」

・Battle with Lorain

「ダァァァァァ!」
ローランに向かって突進していく、しかしそれがいとも容易くローランの持っている剣によっていなされてしまう。
「違う、相手の剣を見るんじゃない。相手の動き全体を見て戦うんだ」
足祓いをくらい、その場に転んでしまうが直ぐに立ち上がり再度突進する。
何度攻撃を仕掛けても、俺が転ばされるか剣を弾いて落とされてしまう。それでもがむしゃらに突貫していく。
「全体を見ろとは言うけどよ!それが死ぬほどムズいんだよ!」
俺の攻撃を防ぎながら応える。
「だから慣れるのさ、この一週間で少しでも得物を持った相手と対峙できればそれだけでかなりの戦力になるんだ」
ローランの姿が目の前から消えた。昨日見せたあの神速だと判断した俺はその場から飛び退き、宙に逃げる。「お、いい判断だね」と結斗さんが言ったのが聞こえたがそれを無視して、ローランを探す。だが地上にローランは見当たらない。
「だから言ったろう?視野は広く持てってね」
背中からローランの声がする!
振り向いて迎撃しようとするも、空中で身動きがほとんど取れず、ローランにマウントを取られてしまう。
「惜しかったね。悠斗君」
背中から飛び退いたローランのはいつの間にか俺の真下に立っており、落ちてくる俺を受け止めてくれた。
俺をだいたままのローランが評価してくれる。
「まだまだな部分も多いけど初めてでこれだけできれば取り敢えずはいいかな?」
「それはどうも。そろそろ下ろして欲しいんですけど?」
ローランの腕から下ろしてもらい、次に結斗さんに指導してもらう。
「じゃぁ次、結斗さんよろしくお願いします」
「うん、よろしく。俺はローランの様に優しくないぞ?」
ん……………………?

・Battle with Yuito

「あ、そうだ。始める前に一つ説明しておかなきゃいけないことがあった」
「話さなきゃいけないこと?」
結斗さんは頷いて話を続ける。
「うん、それは俺の能力についてさ。これは味方で共有しておいた方がいいからね」
あー、そういば教会の入口前でローランとそんなこと話してたな。なんとなく時間なかったから聞く時間無かったしちょうどいいや。
「俺の能力は『朧月夜の讐炎インヴェイテッド・ネメシス・クレッセント』といって、受けた相手の攻撃をこの炎に変えて返す能力だ」
結斗さんは自分の手のひらに黒い炎を出しながら説明してくれる。結斗さんの能力の強さに驚く。
「攻撃をそのまま返すって強過ぎやしませんか!?だってそんなのこっちがダメージを受け続けるだけじゃないっすか!」
そう言うと、ローランが補足の説明をくれる。
「違うよ悠斗君、結斗さんのその能力は相手に返すだけじゃないんだ。その間に纏っている炎は常に所有者を燃やし続ける。そして一番まずいのは失敗した時だ、その炎は発動と同時に攻撃を喰らおうとさまよう。だけどそれが見つからなかったらなぜか所有者を喰らおうとするんだ。だから相手の動きを完全に見切る集中力が必要なんだ。そんなプレッシャーが戦闘中常につきまとうんだよ」
そう言われた結斗さんが恥ずかしそうに頬をかいている。
「まぁたしかにそのせいで何度も死にかけたんだけどね……でも、もうそんな心配は無いよ多分。さて、俺の力が分かったところで始めようか」
てことはほとんどその能力を使いこなしているってことでいいのか?それはまぁしんどいことで……
「よろしくお願いします」
それを合図に戦闘が始まる。結斗さんの体が黒い炎に包まれていく。
「さて、それじゃぁ先手を悠斗君にあげよう。一発、どこからでも打ってきてくれても構わない」
「それじゃぁ遠慮なく!」
背中から闇をジェット噴射させて一気に距離を詰める。結斗さんの話を聞いた感じだと遠距離攻撃は持っていないから間合いはその体で届く場所のみ。それならこれでどうだ!
俺との距離が縮まり間合いギリギリのところで結斗が動く。それを見逃さずにそれより外側から闇を結斗さん向けて放つ。
よし!完全に意表を着いた攻撃!さすがに返すことは出来ないだろ!
そう思っていたが、攻撃が当たる直前に結斗さんが笑った。
「意表を着けば相手のカウンターは失敗して自滅する……うん、誰でもそうするよね……でも」
結斗さんの炎が俺の闇を包む。攻撃が完全に無効化されてしまった。
「んな!?あの瞬間からどうやって!?」
俺がそう聞くと結斗さんは当たり前のように話す。
「そんなの相手の出方を全て知っているからじゃないか。それ以外に何があるって言うんだい?」
結斗さんが俺に向かって真っ直ぐに走ってくる。
速い!ローラン程じゃないけど、この人も人間離れしている!
「いいかい悠斗君、力を扱うということはその力に振り回されてその力に全てを託すことじゃない。自分の力と真正面から向き合い、振り回されるんじゃなくてその力と共に戦うってことなんだよ。君はまだまだアジ・ダハーカに頼りきっている。まだ覚醒してから日が浅いのもあるのかもしれないからこれから慣れていこう」
そう言うと手の平の炎を増幅させて俺に撃ち込む。魔法陣を二人の間に展開させたがそれも容易く砕けてしまい、ほぼゼロ距離から撃たれた俺はその衝撃で吹き飛ぶ。
「自分の攻撃を受けるのは初めてかな?意外と強烈だろう?これを軽く放てる君はやっぱり凄いよ」
立ち上がる俺をそう褒めてくれるが、あまりにも実力差があるため、全く嬉しくない。
「それは……褒め言葉ってことでいいんですかね?」
結斗さんは頷いて肯定する。
「もちろんだよ。だからこそ鍛えがいがある。さて、それじゃぁもう一度やろうか」
それから俺はローランと結斗さんと交代交代で連戦した。たまにローランと結斗さんの手合わせを見ることがあったが、俺とやる時にはセーブしてくれているのが目で見てわかるほど異次元のものだった。
『悔しいか?羨ましいか?それとも届きうるものだと感じているか?』
うーん……まぁ悔しいっちゃ悔しいし、こんだけ強いってのは憧れるよ。だけどさ、なんとなくだけど二人のいるフィールドってのは自分の特技を鍛え上げた末に手に入れたものなんだろ?それなら俺は俺のできることで強くなるよ。それでいいんじゃね?
『ククク、なんとも楽観的な奴だ。あの時の勇ましさはどこへ行ってしまったのやらと思ってしまうな』
そーかよ、一般の男子高校生だからな、まぁそんなもんだろ。
「ふぅ、おつかれローラン。相変わらず強いなぁ。そろそろ負けそうかな?」
「そう言っても、結斗さんだって僕の攻撃全部防いでるじゃないですか。そんな相手に勝てませんよ。悠斗君、次。悠斗君の番だよ」
ローランに呼ばれて、地面から立ち上がり、そちらに向かう。
「ローランの次に悠斗君か……さすがに疲れてきたかな?」
そう笑顔で言う結斗さん。どこが疲れてるんですか?全然余裕そうな表情しておいて。
「次はせめて一発は攻撃当ててみせますよ!」
「その意気だ。さぁこい!」
「よろしくお願いします!」



結斗さんとローランとの手合わせを終えて最高に疲れた俺に待っていたのは机に伏した氷翠とリーナ先輩だった。
扉の前でこの妙な光景を眺めていたが先輩「こっちよ」と呼ばれ、机に伏した氷翠の隣に座る。
いつもは特に何もしていない髪をまとめて、スーツに眼鏡といった出で立ちをしていた。
「さて、午後の訓練は魔法の訓練よ。とは言っても悠斗が使えるのは魔法じゃなくて魔術だからだいぶ違うのだけれど、だから悠斗には専属講師として、アジ・ダハーカとファーブニルに頼んであるわ」
『まかせな坊主!オレらがみっちり教えてやるからよ』
『宿主にものを教えるなんてはじめてだな』
氷翠が挙手してリーナ先輩に質問する。
「はいはーい!リーナちゃん先輩。特訓って言てっも何やるんですか?」
「そうね、それじゃぁまずはこんな感じに自分の魔力を出してちょうだい?」
リーナ先輩の手に黄金色の玉が出てくる。
「とりあえず二人にはこれをやってもらうわ。魔法の特訓はそれからね」
「すみません、なんで今更こんなことするんですか?もう俺達……氷翠は魔法撃てるわけですし必要無いんじゃ?」
『おいおい、坊主がそれ言うのかよ』
その答えを出したのは意外にもファーブニルだった。
リーナ先輩がそれを止めるかと思っていたが「説明お願い」とファーブニルに任せた。
「いいんすか?」
「ええ、こういうのは私たちよりも遥かに前からいる彼らに説明してもらった方が私が説明するより何倍もいいわ」
『わかってんねぇ嬢ちゃん。それじゃぁ、説明するぜ?それじゃぁ、そこの氷の嬢ちゃん!まず魔法がどう生まれたか知ってるかい?』
「はーい!昔の偉い人が悪魔に魂売って教えて貰ったって聞きました」
すごいざっくり……
ほぼ正解とも言えないざっくりとした答えだったがファーブニルは機嫌良く続ける。
『正解!その通りだ。坊主の方はそのくそ陰気ドラゴンに聞いたかもしれねぇが、魔法は魔力がなくても撃てるんだ』
それはアジ・ダハーカから聞いた。それでも魔力ありのほうが威力が高いんだったかな?
『でも、術者の魔力を込めた魔法のほうが断然威力が高い。魔力を込めるということはに近づけるということ。魔力を込めれば込めるだけその存在は魔術に近づく。完全とはいかないがな』
「魔法を魔術に近づけると何がいいの?」
『そこの嬢ちゃんはいい質問してくれるねぇ。魔法は悪魔が使う力を人間が使えるレベルまでに下げたものだ。だから人間相手にゃ有効かも知らねえが、他は違う。俺達とお前達人間じゃ基準が違いすぎるんだよ。俺からの説明はここまで。あとは頼むぜ嬢ちゃん』
「ありがとうファーブニル。さっき言ってくれた通りだわ。だからあなた達には自分の魔力を自在に操ってもらいたいの。だからまずはこうやって球状にしてこんな感じで操ってみて?」
球体を手の平に………………………………ってあれ?何も出ないじゃん。出ろ……出ろ球体ぃぃぃぃぃ。
どれだけ念じても全く出る気配がしない。
「出たぁ!悠斗君見て見て!青いよ!リーナちゃん先輩、これでいいの?」
「ええ、次にそれを動かせるかしら?」
氷翠が指を振るとそれに従うように青い球体が部屋の中を飛び回る。
「上出来ね、それに慣れたら魔方陣に魔力を込めて魔法を撃ってみてちょうだい。悠斗はできるまでそれを続けてて」
「分かりました……」



夕食。みんなで集まってテーブルを囲いながらご飯を食べる。
結局あれから一度も自分の魔力を出すことが出来なかった。氷翠が騒いでいる隣でずっと念じていたが何の成果もなかった。
「悠斗、舞璃菜、今日一日過ごしてみてどうだった?」
「勉強のし過ぎで疲れたよぉ。多分私三日分くらい勉強した気がする……でもでも、魔法の特訓は面白かったかな?私の知らない世界が広がってて面白かった!」
氷翠の自由すぎる感想をみんな笑って聞いていた。
「悠斗はどうだった?」
俺……。俺……か……ローラン達と手合わせして俺が弱いことを実感した。魔術の特訓で俺には魔法の才も魔術の才もない事が分かった。この一日でわかったこと……それは……
「…………今日過ごしてみて、この中で俺が一番弱いことが分かりました。ローランみたいな動きができるわけじゃない、結斗さんみたいに自分の力を自在に操ることも出来ない。氷翠みたいな癒しの力も持ってないし、魔術だって上手く使えない……」
「そうね、たしかにあなたは今ここで一番弱いわね」
そうやって真っ直ぐに肯定されるとさすがに傷つく……でもそれが現状だしな。
「でもそれは今日のあなたでしょ?明日は?明後日は?ザスターとの試合当日は?あなたはどれだけ強くなってるの?」
「それは……今は分かりません。だけど最低でもあいつを一発殴り飛ばせるくらいには強くなります」
俺のその答えにリーナ先輩は満足気に頷く。
「それでいいのよ。あなたが今弱いのなんて当たり前なんだから」
「はい!」

夕食を終えて、風呂に入って自室に戻り寝る準備をしていると突然アジ・ダハーカが話し始めた。
『相棒、一週間後の試合についてだが』
「なんだよいきなり、やっぱりあいつか?アンリ・マンユか?」
ベットに腰を下ろして自分の腕に話しかける。
『あぁ、相棒も分かってると思うがおそらくあいつは俺の事を狙っている。だが、真っ先に俺たちを狙うような真似はしないだろう』
「なんでだ?」
『あのザスターという男はおそらくアンリ・マンユの力である「回帰」に侵されている。その力は戻し、自分のものにするものだ。これがどれだけ恐ろしいものなのかお前に分かるか?』
「戻すってことはもしかしたら相手に得かもしれないのに何が恐ろしいんだ?」
『たしかに戻された相手はもしかしたら得をするのかもしれない。だが、あいつは戻した相手の能力をそのまま自分のものにしてしまうのだ。あいつが能力を使うということはもう一人の自分が生まれるということ。それが輪廻の偽神としてのあいつの力だ』
「そんなのズルもいいところだな……そんな相手にどう戦えってんだよ」
『だからお前には一つ、俺が得意としていた魔術の一つを教える。だがこれは強力過ぎる。今のお前では使えて一分だろう』
「一分!?たったそんだけかよ」
『そうだ、だから絶対にあいつに対してだけ使うんだ。それと明日、全員を集めて欲しい。このことを全員に伝える』
「分かったよ。それでそれは今から教えてくれるのか?」
『急に勇ましくなりおって……いいだろう、それじゃぁ外に出ようか。これを修得するのはなかなか骨が折れるぞ相棒?』
「だろうな…………なぁ、もしかしたらだけど、あくまで可能性の話な?リーナ先輩にもあいつの力が影響してたりしないのか?」
『それは分からん。だが、その可能性も考えていいだろう』
「そうか……よし、じゃぁ外行くか」
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