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ドラゴンボーイ
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アドレス交換して連絡先の一覧に女子の名前が入っているのを見てちょっと嬉しい中家に帰ろうとした瞬間、俺はなにかゾクリとするものを覚えた。
何かと思い自分の周りを見渡すと先程までと周りの風景が変わっていることに気づく。
携帯から目を離した時にさっきまで草が生えていた地面はアスファルト状のものに変わっており、さっきまでなかった公園が出現していた。
その真ん中には大きな噴水があり、その近くをよくよく見ると血痕があり、それを見た瞬間に俺の頭の中でここで起こったことがフラッシュバックする。
自分の腹に槍が刺さったことを────
俺がここで死にかけたことを────
死ぬ間際に見たあの黄金を────
やっぱりあれは夢じゃなかった。俺が殺されたのは現実で、ここに公園があったのも現実、しかもこの公園が現れたってことは!
とっさに危機を感じて、さっきまで氷翠と立っていた場所に振り向く。するとそこにいたのはあの時俺を殺した魔法使いじゃなく、別の人だった。
「お前が……あのドラゴンか?」
声色から判断するに男か……てゆうかなんだよこの人、ドラゴン?何言ってんだ?
「ドラゴン?何言ってんだ?俺は人間だぞ?」
そう言っても男は一人納得したかのようにこちらに手を向ける。
やばいやばいやばいやばい!あれってあれだろ!?つまりあれだろ!?逃げなきゃ……逃げなきゃまた殺される!
そうは思っても足が震えて動くことができない。
「ふっ、恐怖のあまり動けんか。まぁいい、そちらの方が仕事が早く済む」
そう言いながら、自分の手のひらに魔法陣を展開するとそこから一丁の銃を出現させる。
それを俺に向かって撃ってきた!
ズドンッ!
俺は動かない足に鞭を打ち必死にそこから飛び退く。
すると自分が思っていたよりもはるかに後退する。
「な……なんだ!?今ちょっとだけ後ろに飛んだつもりだったのに!?」
「チッ、なんだ動けるのか、それならこれ───」
「今だ!」
俺は相手に背を向けて全力でここから逃げ出す。
やっぱり夢なんかじゃなかった!ふざけんなよ!こんなの冗談じゃないぞ!?逃げなきゃ、逃げなきゃ!
駆け出した瞬間に自分のありえない速さに驚く。
あれ?俺ってこんなに早く走れたっけ?いや、今はそんなことはどうでもいい!早くあいつから逃げないと!殺されるのだけはゴメンだ!
「フフフ、逃げ足だけは早いものだな」
俺が全力で逃げている上から男の声が聞こえる。
な!?飛ぶなんてズルすぎるだろ!クソォォォォオオ!!
俺はおよそ助からないとわかりながらもただがむしゃらに逃げ続けた。しかしそれも虚しく、
「おとなしく死ぬがいい」
ズドンッ!ズドンッ!
「ウッ……ガァァアアアア!?」
痛え……痛え……あの時くらった槍より痛え……
俺は全身に回る激痛に耐えきれず、その場で蹲ってしまう。
敵がこっちに来る、俺は最後まで諦めまいと、目だけは決して離すまいと蹲りながらも相手を睨む。
しかし相手はそんな俺のちっちゃな抵抗を鼻で笑う。
「フン、そんなに睨んだところで何もできんだろう?そしてお前が感じている痛みは龍殺しによるものだ、まだ試作段階だったが……そのうちお前の身体中を蝕んで死に至る。そのまま苦しんで、チッ、もう嗅ぎ付けたのか。お前ら何度も邪魔をしよって!」
なんだ……誰か来たのか?
「私は──治すか──よろしく──」
「分かりました──君どうか無事で──」
あぁ、いってえな……
── The life restart ───
ジリリリリリリリリリ!
目覚ましが鳴り、その音に鬱陶しさを覚えながらも頑張って体を起き上がらせる。ベットから出て朝の支度をするためにキッチンへ向かおうとする。
「あ、起きた?まだ傷が治りきってないから寝てた方がいいわよ?」
そんな声がキッチンから聞こえてきたので、
「分かりました」
俺はその声に従って、ベットで安静にすることにした。
ん…………?ええっと……?
なんかこのパターン知ってるぞ?なんだろうか、このデジャブ感?
てゆうかその前に……
ドドドドドドドドッ!
「誰だあんた!?」
俺がキッチンまで走るとそこには見知らぬ人がいた。その人はウチの制服を着ていて綺麗な金髪美人だった。
「ちょっと、まだ安静にしてなきゃダメって言ったでしょ?」
「そんなこと今はどうでもいいでしょうよ!?あんた誰よ!?そもそもどうブハァ!」
なんで血?俺今血を吐いたの?
「ああもう、だから言ったじゃない。まだ傷が治りきってないって。ほら、ここは私が片付けておくから、ベットに戻りなさい」
俺は自分の体力もあまりないことに気づきこれ以上立ってられなかったのでその人の言うことを聞いてベットに戻った。
しばらくするとキッチンの方からいい匂いがする。ちょうどお腹が空いていたので俺の食欲をそのいい匂いが加速させる。
「おまたせ、まだ熱いから気をつけて食べてね?」
「ありがとうございます」
お粥や味噌汁などが目の前に並ぶ。それを順番に口に運んでいく。
うまい、体力のない俺のことを考えてお腹に優しいものばかりだがどれもお金が取れるレベルのクオリティだった。
「ごちそうさまでした。その、美味しかったです」
俺がそういうと軽く笑って、
「おそまつさま、そう言って貰えて嬉しいわ」
「皿はシンクに置いといてください、俺が後で片付けときますんで」
「いいわよ、あなたは寝てなさい」
そう言うと、俺が食べ終わったお皿を全部持って行ってしまった。
部屋の中には台所で水が流れる音とお皿がぶつかる音が聞こえる。なんとなく話しかけづらい雰囲気だったが、意を決して口を開く。
「あの、ありがとうございます。何から何まで。もしかして先輩ですか?」
遠くのキッチンから声が聞こえる。
「そうよ、私は3年生。名前はリーナ・グランシェール。知らない私のこと?」
「はい、すみません」
「ふふふ、別に謝らなくてもいいのに」
エプロンで手を吹きながらリーナ先輩が俺が寝ているベットの横に腰を下ろす。
「エプロンはベッドの後の棚に入れて置いてください」
「ありがと」
着ているエプロンを脱いで棚にしまうと、こちらを向いて話し始める。
「改めて、はじめまして、私はリーナ・グランシェール。よろしく際神悠斗君」
「俺の名前知ってたんすね、こちらこそよろしくお願いします。さっきあんた誰とかいってすみませんした」
そこで俺は一番気になっていることを聞く。
「それで先輩はなんでここにいるんですか?」
リーナ先輩は当たり前のように返してくれる。
「あなたの治療のためよ。お腹、もう大丈夫?」
「はい、まだちょっと痛みますけど……ありがとうございます。怪我の治療からご飯まで。」
「いいわよ礼なんて。そういえば、あなたって一人暮らしなのね。親御さん達はどこに住んでいるの?」
部屋を見渡しながら俺にそう問てくるが……。
……………………。
「ココからだいたい車で三十分位の場所ですよ。さすがにあの距離は遠かったので無理言って部屋を借りたんです。」
「確かにこの場所は便利よね。学校近いし、コンビにもあるし、私もここらへんに住もうかしら」
「リーナ先輩のお宅は?」
「私は正反対の場所よ」
ん?それならどうしてここにいるんだ?
「それならなんでこんな場所に来たんですか?」
リーナ先輩は少し考えたあとに俺にこう言ってきた。
「うーんそうね、それなら今日の放課後に私の教室に来なさい。そこで全部話すわ。場所に関しては案内役を出すから安心してね」
全く状況が掴めない俺だが、放課後になったら全部わかるとの事だったので素直に返事をする。
「分かりました」
それを聞くと先輩は立ち上がり、カバンを持って玄関に向かう。
靴を履き終えた後に、
「あなたの遅刻届けは出しといたからもう少し休んでてもいいわよ?」
それを聞いて時計をみると針は既にしぎょうあの時間を過ぎていた。
「待って、ちょっと待ってください。俺も行きます俺も行きます」
それを聞いた先輩が玄関で待ってくれていたので急いで準備を済ます。
「おまたせしました」
「忘れ物ないわね?行きましょうか」
「はい」
それから学校について、それぞれの下駄箱へと移動する。上履きに履き替えるとリーナ先輩に「絶対に先に帰っちゃダメよ?」と言われたので「大丈夫です」と返事をして別れる。
教室に着くと授業の最中で先生に事情を説明してから自分の席に着く。
─◇◇◇─
午前の授業が終わり昼休みになる。俺は昨日あったことを氷翠に話していた。
「───だから昨日別れたあとに現れたんだって」
俺は氷翠に昨日別れたあとにあの場所が公園に変化したこと、おかしな魔法使いに殺されたことを包み隠さず話した。
「ほら昨日写真だって撮ってきたんだから……あ、あれ?ちょ、ごめん、あれぇ?」
昨日携帯で撮ったはずの公園の写真が携帯のフォルダに無い。
「ほらぁ、本当は撮ってないんでしょ?君の言ってる公園は無かったの!分かった?」
「はい……」
物証も失ってしまっているので、これ以上言えることも無く、俺はそうだと認めるしか無かった。
「ほら、今から今度の休日の予定立てよ?確か土曜日でよかったよね?」
急に話を切り出されたが、俺も気分を変えるためにその話を進めることにした。
「おう、じゃぁどこに集合する?」
「そうだね、君の家って確か駅に近かったよね?君ん家でいい?」
「それでいいよ」
「それなら────」
「じゃぁ土曜の朝十時に俺の家の前に集合で、そこからは適当にいろんなお店回る感じでいいか?」
色々話し合っても特に何も決めることが出来なったので結局その日の気分で決めることになった。
「うん、私もそれでいいよ。でも一軒だけ行きたいお店あるからそこには寄らせて」
「分かった」
「今日って何曜日だったっけ?」
ここらでだいぶ事件があって他のことに頭が回らなかったので今日がいつだか覚えていない。
「今日は木曜だよ。だから行くのは明後日だね」
「結構時間ないな……色々準備したかったけどさすがにきついかな?」
「準備ってなんの準備?」
「いや、なんでもない。気にしないで」
「?」
そんなやり取りをしているうちに昼休みが終わり、午後の授業も無事に経て、リーナ先輩と約束した放課後の時間が来た。
「悠斗君、一緒に帰ろ?」
「わりぃ、今日約束してる人がいるんだよ。多分遅くなるから先に帰っててくれ」
それを聞いた氷翠が驚嘆する。
「んな!?これまで一人でぼっちだった悠斗君が約束を!?」
失礼な、しかもお前「一人」と「ぼっち」て意味被ってるからな。
「ああそうだよ、ぼっちで一人でしたよ」
「なはは、そんなに怒んないでよ。ごめんて」
そう言いながら俺の背中を叩いてくる。
「いったいなぁ、人の背中バンバン叩くんじゃないよ」
そんなやり取りをしていると、教室の入口付近から声があがる。
何かとそちらを見ると、青髪のイケメンが教室内をキョロキョロしていた。
そこで朝にリーナ先輩が俺に案内を出してくれるのを思い出して椅子から立ち上がりここだと手を振る。
それを見つけたイケメンの彼はこちらまで寄ってきて、
「こんにちは、君が際神君でいいよね?」
「そうだけど」
「僕はリーナ・グランシェール先輩から使いに出された者です」
「分かった。それじゃあな氷翠」
「またね」
「それじゃぁ案内するよ、僕についてきて」
「よろしく」
そうして案内されたのは俺がいつもいる校舎とは違う校舎。三年生の特別連棟だった。
特別連棟とは、三年生のSランクだけが使える校舎でそれ以外の生徒はSランクの三年生、そこの管理人、先生の許可がないと入ることが出来ない(一、二年生のSランクはある程度そこら辺を省略して入れるらしいが)。
そこに勝手に入ると生徒指導の先生に捕まってしまうので、勝手に入っていく姿を見て声をかける。
「お、おい、勝手に入ってってもいいのかよ?」
俺にそう言われて、首をかしげたがすぐに思い出したかのようにポンッと手を叩く。
「そうか、君に言ってなかったね。ここの入館に関してはリーナ先輩が全部手続きしてくれているから大丈夫だよ?」
「なんだ、そうなのか」
「靴はここの下駄箱に置いておいて」
それに従い靴をしまって、渡されたスリッパを履いて着いていく。
へえ、この校舎の中ってこんな感じになってたんだ。なんかほんとに『特別』て感じがあるな……俺がもしSランクに上がれたらここに入れるのかな?
内装は普通の校舎とはかなり異なっており、どこもどこかの中世外国の屋敷の内装のような雰囲気がある。
案内されるままについて行くと扉の前にたどり着く。
案内の人がドアをノックして中にいる先輩に到着したことを伝える。
「リーナ先輩、際神くんを連れてきました」
「ありがとう、入ってちょうだい」
「失礼します」
「し、失礼します」
扉を開けて部屋に入ると、奥の机にリーナ先輩が座っていた。
「よく来てくれたわね、そこの席に着いてもらえる?」
俺達が席に着いてそれを確認したリーナ先輩はその対に座る。案内役からお茶を受け取るとそれを口にしてから話し始める。
「あなたが昨日、そして一昨日殺された事件だけど」
その言葉を受けて俺の心臓が一際強く脈打つ、殺された時の記憶が頭のなかにザーっと流れてくる。
「やっぱりあれば夢じゃないんですね?」
そう言うとリーナ先輩は一つ頷き俺の顔を見据えてはっきりと言う。
「そうよ、あれは夢なんかじゃない。あなたは殺されたわ」
───ッ!
「じゃぁなんで俺は今生きてるんでしょうか?」
「今朝も言ったけど私があなたを治療したからよ。私は貴方のことをずっと見ていた。いえ、見る義務があったのよ。でもこの二件に関しては私も完全に予想外だった、ごめんなさい。まさかあんなにも早く動くなんて思わなくて……」
先輩のその顔は本当に俺のことを思って反省してくれているようで、俺は何も言うことが出来なかった。
「いいですって、頭を上げてください。命があるならそれに越したことはないんですから、それに命の恩人のあなたが俺に頭下げるなんておかしいですって」
「そうだよ姉さん、際神君だって気にしていないって言ってるんだから」
それを聞くと俺の方へと目線を送る。俺はそれに頷くと姿勢を正してお礼を言った。
「ありがとう」
先輩がひとつ咳払いをして話を俺を殺した魔法使いへと戻す。
「それで、あなたのことを殺した魔法使いの事なんだけど……その前にあなたのことについて説明した方がいいわね」
「やっぱり何かあるんですか?それとあの男が言っていた何とかスレイヤーってなんですか?」
「それも順を追って説明するわ。まずあなたにはある一体のドラゴンが宿っている」
ドラゴン───アニメとかゲームとかでしか聞いたことないし、言われてもパッとしないけど……。
「そしてあなたに宿っているドラゴンはいわゆる『魔龍』と言われるドラゴンね」
そこでリーナ先輩が自分の右腕を露わにしてそこに何かを念じる。すると腕の部分が黄金に輝き出してこの部屋を包みこむ、その光がやんだ後に先輩の腕を見ると一体のドラゴンの紋様が見えた。
「私にもドラゴンが宿っている。私がこの力に気づいたのはだいたい小学校六年生の頃ね。あなたにもこれと同じものが宿っている。そして魔龍と呼ばれるものは多かれ少なかれ魔を統べている存在よ。」
「そのドラゴンと俺が殺されたのにどういう繋がりがあるんです?」
リーナ先輩は腕を裾にしまうと俺に、
「あなたに宿っている魔龍のオーラが異質なものだからよ、それを危険視した、もしくは欲しがっている魔法使いがあなたのことを狙ったんでしょうね」
「俺に宿っているドラゴンが異質?」
「君自身は気づいていないのかもしれないけど君から感じる魔力は一般のドラゴンとは違うんだよ」
いつの間にか俺の隣にいた案内人の男が俺にそう言う。
ええっと誰だっけ?多分クラスは違うんだろうけど制服の色からして同学年だよな?
俺がそんな視線を送っているとそれに気づいたのか口につけていたカップを置いて自己紹介をくれる。
「そうか、僕の自己紹介がまだだったね。僕はローラン、ローラン・マゼスト。よろしく際神君」
「よろしく、えっとローランでいいのか?あの時リーナ先輩といたよな?」
「そうだよ、よくあの死に際のこと覚えてるね」
「死に際のだからこそだろ?あれを忘れるやつなんていないだろ?」
俺とローランのやり取りを見ていた先輩が手を叩いて「話を戻すわね」と言ったので俺の中のドラゴンに話を戻す。
「ここであなたの言っていたことに繋がるのだけれど、あなたが言っていたのは龍殺しね」
「龍殺しっていうとゲームとかでよくある?」
その一言に先輩は首をかしげて笑う。わ……笑われた……
「そうね、ほとんどそれに近いものね、イメージしやすいものがあればそれでいいわ」
「俺に宿っているドラゴンの影響で俺にそれが効いてしまうということでいいですか?」
「その通りよ。だから私にも効いてしまう」
「そしてこれは僕が手に入れた情報なんだけど、君を襲ったいわゆる『はぐれ魔法使い』と呼ばれる連中に教会騎士が手を貸しているらしいんだ」
「本来、互いに相容れない存在だったはずの教会騎士と魔法使いが手を組む……それはなにか裏があるわね……あれだけ悪魔とそれに関わる魔法使いを嫌っていた教会が手を貸すなんて」
「教会騎士ってなんですか?」
「教会騎士っていうのは大昔にできた集団で基本的に悪魔祓いや魔女狩りを営んでいた者達よ。今はヨーロッパ方面に本部を置いているらしいわ。ここ最近日本支部ができたって噂があるけどもしかしたら嘘なのかもしれないわね」
リーナ先輩とローランが二人で何やら話をしている中、俺の頭の中はグチャグチャになっていた。突然自分の中に宿っているものがいると言われ、それが裏で危険視されていて言うなれば指名手配されていたりと。
話を聞いてもわからないことだらけだが、とりあえず厄介事に首を突っ込んだこととその中心に俺がいることだけは分かる。
部屋にかけてある時計を確認すると既に時刻は七時をまわっていた。買い物に行きたかったのでリーナ先輩に先に失礼すると伝える。
「すみません。俺そろそろ用事あるんで先帰らせてもらっていいですか?」
それを聞いたリーナ先輩は時計を確認して「そうね、そろそろ帰りましょうか」と解散を促す。
「それじゃあ、お先に失礼します」
俺が先に帰ろうとするとリーナ先輩が何かを思い出したかのようにストップをかける。
「ああ、ちょっと待って。最後に言いたいことがあるの」
扉の前にたっていた俺の顔をしっかりと見て先輩は言う。
「突然こんな世界に入り込んでしまって、無理やり連れ込んでしまって混乱していると思う。でもこれだけは忘れないで。あなたに宿っている力はあなたのことを決して裏切らない。そして強く願うの、そうすれば『超常の者』はそれに応えてくれる」
「は、はぁ……?分かりました」
この時は何を言っているのかさっぱりだったがおれはこのあとすぐにその意味を知ることになる。
何かと思い自分の周りを見渡すと先程までと周りの風景が変わっていることに気づく。
携帯から目を離した時にさっきまで草が生えていた地面はアスファルト状のものに変わっており、さっきまでなかった公園が出現していた。
その真ん中には大きな噴水があり、その近くをよくよく見ると血痕があり、それを見た瞬間に俺の頭の中でここで起こったことがフラッシュバックする。
自分の腹に槍が刺さったことを────
俺がここで死にかけたことを────
死ぬ間際に見たあの黄金を────
やっぱりあれは夢じゃなかった。俺が殺されたのは現実で、ここに公園があったのも現実、しかもこの公園が現れたってことは!
とっさに危機を感じて、さっきまで氷翠と立っていた場所に振り向く。するとそこにいたのはあの時俺を殺した魔法使いじゃなく、別の人だった。
「お前が……あのドラゴンか?」
声色から判断するに男か……てゆうかなんだよこの人、ドラゴン?何言ってんだ?
「ドラゴン?何言ってんだ?俺は人間だぞ?」
そう言っても男は一人納得したかのようにこちらに手を向ける。
やばいやばいやばいやばい!あれってあれだろ!?つまりあれだろ!?逃げなきゃ……逃げなきゃまた殺される!
そうは思っても足が震えて動くことができない。
「ふっ、恐怖のあまり動けんか。まぁいい、そちらの方が仕事が早く済む」
そう言いながら、自分の手のひらに魔法陣を展開するとそこから一丁の銃を出現させる。
それを俺に向かって撃ってきた!
ズドンッ!
俺は動かない足に鞭を打ち必死にそこから飛び退く。
すると自分が思っていたよりもはるかに後退する。
「な……なんだ!?今ちょっとだけ後ろに飛んだつもりだったのに!?」
「チッ、なんだ動けるのか、それならこれ───」
「今だ!」
俺は相手に背を向けて全力でここから逃げ出す。
やっぱり夢なんかじゃなかった!ふざけんなよ!こんなの冗談じゃないぞ!?逃げなきゃ、逃げなきゃ!
駆け出した瞬間に自分のありえない速さに驚く。
あれ?俺ってこんなに早く走れたっけ?いや、今はそんなことはどうでもいい!早くあいつから逃げないと!殺されるのだけはゴメンだ!
「フフフ、逃げ足だけは早いものだな」
俺が全力で逃げている上から男の声が聞こえる。
な!?飛ぶなんてズルすぎるだろ!クソォォォォオオ!!
俺はおよそ助からないとわかりながらもただがむしゃらに逃げ続けた。しかしそれも虚しく、
「おとなしく死ぬがいい」
ズドンッ!ズドンッ!
「ウッ……ガァァアアアア!?」
痛え……痛え……あの時くらった槍より痛え……
俺は全身に回る激痛に耐えきれず、その場で蹲ってしまう。
敵がこっちに来る、俺は最後まで諦めまいと、目だけは決して離すまいと蹲りながらも相手を睨む。
しかし相手はそんな俺のちっちゃな抵抗を鼻で笑う。
「フン、そんなに睨んだところで何もできんだろう?そしてお前が感じている痛みは龍殺しによるものだ、まだ試作段階だったが……そのうちお前の身体中を蝕んで死に至る。そのまま苦しんで、チッ、もう嗅ぎ付けたのか。お前ら何度も邪魔をしよって!」
なんだ……誰か来たのか?
「私は──治すか──よろしく──」
「分かりました──君どうか無事で──」
あぁ、いってえな……
── The life restart ───
ジリリリリリリリリリ!
目覚ましが鳴り、その音に鬱陶しさを覚えながらも頑張って体を起き上がらせる。ベットから出て朝の支度をするためにキッチンへ向かおうとする。
「あ、起きた?まだ傷が治りきってないから寝てた方がいいわよ?」
そんな声がキッチンから聞こえてきたので、
「分かりました」
俺はその声に従って、ベットで安静にすることにした。
ん…………?ええっと……?
なんかこのパターン知ってるぞ?なんだろうか、このデジャブ感?
てゆうかその前に……
ドドドドドドドドッ!
「誰だあんた!?」
俺がキッチンまで走るとそこには見知らぬ人がいた。その人はウチの制服を着ていて綺麗な金髪美人だった。
「ちょっと、まだ安静にしてなきゃダメって言ったでしょ?」
「そんなこと今はどうでもいいでしょうよ!?あんた誰よ!?そもそもどうブハァ!」
なんで血?俺今血を吐いたの?
「ああもう、だから言ったじゃない。まだ傷が治りきってないって。ほら、ここは私が片付けておくから、ベットに戻りなさい」
俺は自分の体力もあまりないことに気づきこれ以上立ってられなかったのでその人の言うことを聞いてベットに戻った。
しばらくするとキッチンの方からいい匂いがする。ちょうどお腹が空いていたので俺の食欲をそのいい匂いが加速させる。
「おまたせ、まだ熱いから気をつけて食べてね?」
「ありがとうございます」
お粥や味噌汁などが目の前に並ぶ。それを順番に口に運んでいく。
うまい、体力のない俺のことを考えてお腹に優しいものばかりだがどれもお金が取れるレベルのクオリティだった。
「ごちそうさまでした。その、美味しかったです」
俺がそういうと軽く笑って、
「おそまつさま、そう言って貰えて嬉しいわ」
「皿はシンクに置いといてください、俺が後で片付けときますんで」
「いいわよ、あなたは寝てなさい」
そう言うと、俺が食べ終わったお皿を全部持って行ってしまった。
部屋の中には台所で水が流れる音とお皿がぶつかる音が聞こえる。なんとなく話しかけづらい雰囲気だったが、意を決して口を開く。
「あの、ありがとうございます。何から何まで。もしかして先輩ですか?」
遠くのキッチンから声が聞こえる。
「そうよ、私は3年生。名前はリーナ・グランシェール。知らない私のこと?」
「はい、すみません」
「ふふふ、別に謝らなくてもいいのに」
エプロンで手を吹きながらリーナ先輩が俺が寝ているベットの横に腰を下ろす。
「エプロンはベッドの後の棚に入れて置いてください」
「ありがと」
着ているエプロンを脱いで棚にしまうと、こちらを向いて話し始める。
「改めて、はじめまして、私はリーナ・グランシェール。よろしく際神悠斗君」
「俺の名前知ってたんすね、こちらこそよろしくお願いします。さっきあんた誰とかいってすみませんした」
そこで俺は一番気になっていることを聞く。
「それで先輩はなんでここにいるんですか?」
リーナ先輩は当たり前のように返してくれる。
「あなたの治療のためよ。お腹、もう大丈夫?」
「はい、まだちょっと痛みますけど……ありがとうございます。怪我の治療からご飯まで。」
「いいわよ礼なんて。そういえば、あなたって一人暮らしなのね。親御さん達はどこに住んでいるの?」
部屋を見渡しながら俺にそう問てくるが……。
……………………。
「ココからだいたい車で三十分位の場所ですよ。さすがにあの距離は遠かったので無理言って部屋を借りたんです。」
「確かにこの場所は便利よね。学校近いし、コンビにもあるし、私もここらへんに住もうかしら」
「リーナ先輩のお宅は?」
「私は正反対の場所よ」
ん?それならどうしてここにいるんだ?
「それならなんでこんな場所に来たんですか?」
リーナ先輩は少し考えたあとに俺にこう言ってきた。
「うーんそうね、それなら今日の放課後に私の教室に来なさい。そこで全部話すわ。場所に関しては案内役を出すから安心してね」
全く状況が掴めない俺だが、放課後になったら全部わかるとの事だったので素直に返事をする。
「分かりました」
それを聞くと先輩は立ち上がり、カバンを持って玄関に向かう。
靴を履き終えた後に、
「あなたの遅刻届けは出しといたからもう少し休んでてもいいわよ?」
それを聞いて時計をみると針は既にしぎょうあの時間を過ぎていた。
「待って、ちょっと待ってください。俺も行きます俺も行きます」
それを聞いた先輩が玄関で待ってくれていたので急いで準備を済ます。
「おまたせしました」
「忘れ物ないわね?行きましょうか」
「はい」
それから学校について、それぞれの下駄箱へと移動する。上履きに履き替えるとリーナ先輩に「絶対に先に帰っちゃダメよ?」と言われたので「大丈夫です」と返事をして別れる。
教室に着くと授業の最中で先生に事情を説明してから自分の席に着く。
─◇◇◇─
午前の授業が終わり昼休みになる。俺は昨日あったことを氷翠に話していた。
「───だから昨日別れたあとに現れたんだって」
俺は氷翠に昨日別れたあとにあの場所が公園に変化したこと、おかしな魔法使いに殺されたことを包み隠さず話した。
「ほら昨日写真だって撮ってきたんだから……あ、あれ?ちょ、ごめん、あれぇ?」
昨日携帯で撮ったはずの公園の写真が携帯のフォルダに無い。
「ほらぁ、本当は撮ってないんでしょ?君の言ってる公園は無かったの!分かった?」
「はい……」
物証も失ってしまっているので、これ以上言えることも無く、俺はそうだと認めるしか無かった。
「ほら、今から今度の休日の予定立てよ?確か土曜日でよかったよね?」
急に話を切り出されたが、俺も気分を変えるためにその話を進めることにした。
「おう、じゃぁどこに集合する?」
「そうだね、君の家って確か駅に近かったよね?君ん家でいい?」
「それでいいよ」
「それなら────」
「じゃぁ土曜の朝十時に俺の家の前に集合で、そこからは適当にいろんなお店回る感じでいいか?」
色々話し合っても特に何も決めることが出来なったので結局その日の気分で決めることになった。
「うん、私もそれでいいよ。でも一軒だけ行きたいお店あるからそこには寄らせて」
「分かった」
「今日って何曜日だったっけ?」
ここらでだいぶ事件があって他のことに頭が回らなかったので今日がいつだか覚えていない。
「今日は木曜だよ。だから行くのは明後日だね」
「結構時間ないな……色々準備したかったけどさすがにきついかな?」
「準備ってなんの準備?」
「いや、なんでもない。気にしないで」
「?」
そんなやり取りをしているうちに昼休みが終わり、午後の授業も無事に経て、リーナ先輩と約束した放課後の時間が来た。
「悠斗君、一緒に帰ろ?」
「わりぃ、今日約束してる人がいるんだよ。多分遅くなるから先に帰っててくれ」
それを聞いた氷翠が驚嘆する。
「んな!?これまで一人でぼっちだった悠斗君が約束を!?」
失礼な、しかもお前「一人」と「ぼっち」て意味被ってるからな。
「ああそうだよ、ぼっちで一人でしたよ」
「なはは、そんなに怒んないでよ。ごめんて」
そう言いながら俺の背中を叩いてくる。
「いったいなぁ、人の背中バンバン叩くんじゃないよ」
そんなやり取りをしていると、教室の入口付近から声があがる。
何かとそちらを見ると、青髪のイケメンが教室内をキョロキョロしていた。
そこで朝にリーナ先輩が俺に案内を出してくれるのを思い出して椅子から立ち上がりここだと手を振る。
それを見つけたイケメンの彼はこちらまで寄ってきて、
「こんにちは、君が際神君でいいよね?」
「そうだけど」
「僕はリーナ・グランシェール先輩から使いに出された者です」
「分かった。それじゃあな氷翠」
「またね」
「それじゃぁ案内するよ、僕についてきて」
「よろしく」
そうして案内されたのは俺がいつもいる校舎とは違う校舎。三年生の特別連棟だった。
特別連棟とは、三年生のSランクだけが使える校舎でそれ以外の生徒はSランクの三年生、そこの管理人、先生の許可がないと入ることが出来ない(一、二年生のSランクはある程度そこら辺を省略して入れるらしいが)。
そこに勝手に入ると生徒指導の先生に捕まってしまうので、勝手に入っていく姿を見て声をかける。
「お、おい、勝手に入ってってもいいのかよ?」
俺にそう言われて、首をかしげたがすぐに思い出したかのようにポンッと手を叩く。
「そうか、君に言ってなかったね。ここの入館に関してはリーナ先輩が全部手続きしてくれているから大丈夫だよ?」
「なんだ、そうなのか」
「靴はここの下駄箱に置いておいて」
それに従い靴をしまって、渡されたスリッパを履いて着いていく。
へえ、この校舎の中ってこんな感じになってたんだ。なんかほんとに『特別』て感じがあるな……俺がもしSランクに上がれたらここに入れるのかな?
内装は普通の校舎とはかなり異なっており、どこもどこかの中世外国の屋敷の内装のような雰囲気がある。
案内されるままについて行くと扉の前にたどり着く。
案内の人がドアをノックして中にいる先輩に到着したことを伝える。
「リーナ先輩、際神くんを連れてきました」
「ありがとう、入ってちょうだい」
「失礼します」
「し、失礼します」
扉を開けて部屋に入ると、奥の机にリーナ先輩が座っていた。
「よく来てくれたわね、そこの席に着いてもらえる?」
俺達が席に着いてそれを確認したリーナ先輩はその対に座る。案内役からお茶を受け取るとそれを口にしてから話し始める。
「あなたが昨日、そして一昨日殺された事件だけど」
その言葉を受けて俺の心臓が一際強く脈打つ、殺された時の記憶が頭のなかにザーっと流れてくる。
「やっぱりあれば夢じゃないんですね?」
そう言うとリーナ先輩は一つ頷き俺の顔を見据えてはっきりと言う。
「そうよ、あれは夢なんかじゃない。あなたは殺されたわ」
───ッ!
「じゃぁなんで俺は今生きてるんでしょうか?」
「今朝も言ったけど私があなたを治療したからよ。私は貴方のことをずっと見ていた。いえ、見る義務があったのよ。でもこの二件に関しては私も完全に予想外だった、ごめんなさい。まさかあんなにも早く動くなんて思わなくて……」
先輩のその顔は本当に俺のことを思って反省してくれているようで、俺は何も言うことが出来なかった。
「いいですって、頭を上げてください。命があるならそれに越したことはないんですから、それに命の恩人のあなたが俺に頭下げるなんておかしいですって」
「そうだよ姉さん、際神君だって気にしていないって言ってるんだから」
それを聞くと俺の方へと目線を送る。俺はそれに頷くと姿勢を正してお礼を言った。
「ありがとう」
先輩がひとつ咳払いをして話を俺を殺した魔法使いへと戻す。
「それで、あなたのことを殺した魔法使いの事なんだけど……その前にあなたのことについて説明した方がいいわね」
「やっぱり何かあるんですか?それとあの男が言っていた何とかスレイヤーってなんですか?」
「それも順を追って説明するわ。まずあなたにはある一体のドラゴンが宿っている」
ドラゴン───アニメとかゲームとかでしか聞いたことないし、言われてもパッとしないけど……。
「そしてあなたに宿っているドラゴンはいわゆる『魔龍』と言われるドラゴンね」
そこでリーナ先輩が自分の右腕を露わにしてそこに何かを念じる。すると腕の部分が黄金に輝き出してこの部屋を包みこむ、その光がやんだ後に先輩の腕を見ると一体のドラゴンの紋様が見えた。
「私にもドラゴンが宿っている。私がこの力に気づいたのはだいたい小学校六年生の頃ね。あなたにもこれと同じものが宿っている。そして魔龍と呼ばれるものは多かれ少なかれ魔を統べている存在よ。」
「そのドラゴンと俺が殺されたのにどういう繋がりがあるんです?」
リーナ先輩は腕を裾にしまうと俺に、
「あなたに宿っている魔龍のオーラが異質なものだからよ、それを危険視した、もしくは欲しがっている魔法使いがあなたのことを狙ったんでしょうね」
「俺に宿っているドラゴンが異質?」
「君自身は気づいていないのかもしれないけど君から感じる魔力は一般のドラゴンとは違うんだよ」
いつの間にか俺の隣にいた案内人の男が俺にそう言う。
ええっと誰だっけ?多分クラスは違うんだろうけど制服の色からして同学年だよな?
俺がそんな視線を送っているとそれに気づいたのか口につけていたカップを置いて自己紹介をくれる。
「そうか、僕の自己紹介がまだだったね。僕はローラン、ローラン・マゼスト。よろしく際神君」
「よろしく、えっとローランでいいのか?あの時リーナ先輩といたよな?」
「そうだよ、よくあの死に際のこと覚えてるね」
「死に際のだからこそだろ?あれを忘れるやつなんていないだろ?」
俺とローランのやり取りを見ていた先輩が手を叩いて「話を戻すわね」と言ったので俺の中のドラゴンに話を戻す。
「ここであなたの言っていたことに繋がるのだけれど、あなたが言っていたのは龍殺しね」
「龍殺しっていうとゲームとかでよくある?」
その一言に先輩は首をかしげて笑う。わ……笑われた……
「そうね、ほとんどそれに近いものね、イメージしやすいものがあればそれでいいわ」
「俺に宿っているドラゴンの影響で俺にそれが効いてしまうということでいいですか?」
「その通りよ。だから私にも効いてしまう」
「そしてこれは僕が手に入れた情報なんだけど、君を襲ったいわゆる『はぐれ魔法使い』と呼ばれる連中に教会騎士が手を貸しているらしいんだ」
「本来、互いに相容れない存在だったはずの教会騎士と魔法使いが手を組む……それはなにか裏があるわね……あれだけ悪魔とそれに関わる魔法使いを嫌っていた教会が手を貸すなんて」
「教会騎士ってなんですか?」
「教会騎士っていうのは大昔にできた集団で基本的に悪魔祓いや魔女狩りを営んでいた者達よ。今はヨーロッパ方面に本部を置いているらしいわ。ここ最近日本支部ができたって噂があるけどもしかしたら嘘なのかもしれないわね」
リーナ先輩とローランが二人で何やら話をしている中、俺の頭の中はグチャグチャになっていた。突然自分の中に宿っているものがいると言われ、それが裏で危険視されていて言うなれば指名手配されていたりと。
話を聞いてもわからないことだらけだが、とりあえず厄介事に首を突っ込んだこととその中心に俺がいることだけは分かる。
部屋にかけてある時計を確認すると既に時刻は七時をまわっていた。買い物に行きたかったのでリーナ先輩に先に失礼すると伝える。
「すみません。俺そろそろ用事あるんで先帰らせてもらっていいですか?」
それを聞いたリーナ先輩は時計を確認して「そうね、そろそろ帰りましょうか」と解散を促す。
「それじゃあ、お先に失礼します」
俺が先に帰ろうとするとリーナ先輩が何かを思い出したかのようにストップをかける。
「ああ、ちょっと待って。最後に言いたいことがあるの」
扉の前にたっていた俺の顔をしっかりと見て先輩は言う。
「突然こんな世界に入り込んでしまって、無理やり連れ込んでしまって混乱していると思う。でもこれだけは忘れないで。あなたに宿っている力はあなたのことを決して裏切らない。そして強く願うの、そうすれば『超常の者』はそれに応えてくれる」
「は、はぁ……?分かりました」
この時は何を言っているのかさっぱりだったがおれはこのあとすぐにその意味を知ることになる。
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