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さがしみち
さがしみち⑤
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日本の伝承や都市伝説について研究している怪しげな友人の巽くらげと、彼から紹介されたスヴィンと名乗る女性が最寄りの駅に降りつのを貴方は待っていた。
不思議な白昼夢に襲われるタイミングは今まで、帰宅の途中であった。
そういえば、それ以外の時間に囚われたことは一度もなかった。
改札から出てきたのは、小柄で華奢な女性であった。
スヴィンという名前から、勝手に西洋の方だと思い込んでいた印象が間違いであったことに気づく。
「はじめて、スヴィン村上と申します」
と流暢な日本語で話す。
顔立ちから同じアジア系の人種であることは想像できた。
巽の方が頭一つ分背が高く、父娘に見えなくもないがスヴィンの顔は幼さの中に芯の強さが感じられる目をしていた。
「久しぶり……といっても一ヶ月ぶりくらいか。彼女が探しものが得意な霊能力者だよ」
と紹介をする。
「巽、ノー。霊能力者ではありません。でも、探しものは本当に得意です。今日も迷わずこの駅までこれましたね」
と巽に笑いかける。
本当に親しい間柄なのだろう。
「大体の事情は話してあるけれど昨日はこの駅で白昼夢を見たんだね」
と言われ貴方はうなずく。
「ふむ、特に気になるものはありませんね」
とスヴィンは辺りを見渡しながら言った。
「もう少し詳しい話を聞かせて欲しい。あそこの喫茶店で話そう」
近所に住んではいるものの、入りにくい地元の喫茶店を巽は指定した。
中は意外と広く、カウンター以外にテーブル席が3つあり一番奥の席に案内された。
週末だというのに、他には客はいない。
「場所じゃなく、場面なのかもしれませんね。帰宅途中というシチュエーションが大事なのかもしれない」
とスヴィンが言う。
巽は何かメモをとっていた。
「そして、そこは実在していない。貴方の想像の中にしかない集落だと思います」
「いろいろ調べても見つからなかった訳だ」
「人間が懐かしいと感じる時には、それは実際の過去の出来事と必ずしも結びついている訳ではないのです。テレビや本などから得た日本人的、文化的な郷里のイメージがたんに共有されてきただけなのです」
スヴィンの日本語のは淀みが一切ない。
「今回の白昼夢は、いわば人間の帰りたいという深い根元が見せた幻想、理想郷を反映しているに過ぎません」
「帰りたいねぇ。私はあまり感じたことはないが」
巽がそう話す。
貴方も、帰るべき家はこの街にあると感じていたし田舎に両親や家族が住んでいる訳ではなかった。
「そう。それぞれが考える望郷の思念の集合体を貴方は見せられているのだと思います」
いったいなぜ、誰が何のためにそんなものを見せているのだろうか。
不思議な白昼夢に襲われるタイミングは今まで、帰宅の途中であった。
そういえば、それ以外の時間に囚われたことは一度もなかった。
改札から出てきたのは、小柄で華奢な女性であった。
スヴィンという名前から、勝手に西洋の方だと思い込んでいた印象が間違いであったことに気づく。
「はじめて、スヴィン村上と申します」
と流暢な日本語で話す。
顔立ちから同じアジア系の人種であることは想像できた。
巽の方が頭一つ分背が高く、父娘に見えなくもないがスヴィンの顔は幼さの中に芯の強さが感じられる目をしていた。
「久しぶり……といっても一ヶ月ぶりくらいか。彼女が探しものが得意な霊能力者だよ」
と紹介をする。
「巽、ノー。霊能力者ではありません。でも、探しものは本当に得意です。今日も迷わずこの駅までこれましたね」
と巽に笑いかける。
本当に親しい間柄なのだろう。
「大体の事情は話してあるけれど昨日はこの駅で白昼夢を見たんだね」
と言われ貴方はうなずく。
「ふむ、特に気になるものはありませんね」
とスヴィンは辺りを見渡しながら言った。
「もう少し詳しい話を聞かせて欲しい。あそこの喫茶店で話そう」
近所に住んではいるものの、入りにくい地元の喫茶店を巽は指定した。
中は意外と広く、カウンター以外にテーブル席が3つあり一番奥の席に案内された。
週末だというのに、他には客はいない。
「場所じゃなく、場面なのかもしれませんね。帰宅途中というシチュエーションが大事なのかもしれない」
とスヴィンが言う。
巽は何かメモをとっていた。
「そして、そこは実在していない。貴方の想像の中にしかない集落だと思います」
「いろいろ調べても見つからなかった訳だ」
「人間が懐かしいと感じる時には、それは実際の過去の出来事と必ずしも結びついている訳ではないのです。テレビや本などから得た日本人的、文化的な郷里のイメージがたんに共有されてきただけなのです」
スヴィンの日本語のは淀みが一切ない。
「今回の白昼夢は、いわば人間の帰りたいという深い根元が見せた幻想、理想郷を反映しているに過ぎません」
「帰りたいねぇ。私はあまり感じたことはないが」
巽がそう話す。
貴方も、帰るべき家はこの街にあると感じていたし田舎に両親や家族が住んでいる訳ではなかった。
「そう。それぞれが考える望郷の思念の集合体を貴方は見せられているのだと思います」
いったいなぜ、誰が何のためにそんなものを見せているのだろうか。
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