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みなげかがみ
みなげかがみ⑤
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事件の全体像は掴めたが、肝心の鏡の正体については謎が残った。
例の魔鏡は、まだこの屋敷の中に残されているのだろうか。
初老の男に促されて、貴方と巽は応接室のソファに座った。
この部屋も窓が板で打ちつけてあり外の様子は見えない上に、反射して顔が映らないように照明も薄暗い。
テーブルは木製で、出されたティーカップもざらざらとした表面の不透明な陶器である。
ここまで徹底されていることが、本当にこの館で起きたであろう事件の信憑性を高める。
「飲み物まで、顔が映らないようにしてるんですね。さすがにやり過ぎじゃないですかね」
言われてみると、出された飲み物も酷く濁った色をしていて顔を映さない。
「風呂場で死んだものもおりました。彼はそこで、何を見たのでしょうね」
という初老の男の声を聞いて、背筋が寒くなる。
「まぁ、それはいいとして」
巽の表情も先ほどよりこわばっていた。
「例の鏡はまだ、この屋敷にあるんですね」
「はい、皆さんそれを見るためにわざわざお越しくださいます。事件にはなっていないので、あまり世間には知れ渡っていないはずなのですが、人の噂には戸は立られないのですね」
その言葉に一抹の不安がよぎる。
「そういえば、まだ説明してませんでしたね」
と巽が言う。
すでに十分説明が尽くされたといえなくはないが、恐らくまだあるのだろう。
「8人の内訳ですね。最初に亡くなった奥様、世話係、屋敷の主人とその部下数名。そして、事件後に興味本位で鏡を見に来た大学生、記者達ですね」
「はい、把握しているのはその8人です」
「え、どうしたんですか?」
と巽は貴方の方を向く。
「すいません、本当はタクシーの中で先に説明をするつもりでいたんですが、忘れていました。ええ、今から鏡を調べに行くんですよ。言ってませんでしたっけ?」
と言ってのけた男に貴方は殺意を覚えたかもしれない。
例の魔鏡は、まだこの屋敷の中に残されているのだろうか。
初老の男に促されて、貴方と巽は応接室のソファに座った。
この部屋も窓が板で打ちつけてあり外の様子は見えない上に、反射して顔が映らないように照明も薄暗い。
テーブルは木製で、出されたティーカップもざらざらとした表面の不透明な陶器である。
ここまで徹底されていることが、本当にこの館で起きたであろう事件の信憑性を高める。
「飲み物まで、顔が映らないようにしてるんですね。さすがにやり過ぎじゃないですかね」
言われてみると、出された飲み物も酷く濁った色をしていて顔を映さない。
「風呂場で死んだものもおりました。彼はそこで、何を見たのでしょうね」
という初老の男の声を聞いて、背筋が寒くなる。
「まぁ、それはいいとして」
巽の表情も先ほどよりこわばっていた。
「例の鏡はまだ、この屋敷にあるんですね」
「はい、皆さんそれを見るためにわざわざお越しくださいます。事件にはなっていないので、あまり世間には知れ渡っていないはずなのですが、人の噂には戸は立られないのですね」
その言葉に一抹の不安がよぎる。
「そういえば、まだ説明してませんでしたね」
と巽が言う。
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「8人の内訳ですね。最初に亡くなった奥様、世話係、屋敷の主人とその部下数名。そして、事件後に興味本位で鏡を見に来た大学生、記者達ですね」
「はい、把握しているのはその8人です」
「え、どうしたんですか?」
と巽は貴方の方を向く。
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