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みなげかがみ
みなげかがみ④
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館に入ってすぐに感じた違和感がいくつかあった。
古い館にしては大きな天井を支える為の柱や壁が異様に少ない。
また、全体的に角が少なく曲線的な構造になっている。
言い換えると、身をを隠すような場所がほとんど無いと気付く。
かなり前に建てられたはずだが、監視カメラなどのセキリティが厳重で空き巣なら泣いて逃げ出したくなる空間である。
「屋敷の主人と、直接話されたことは?」
「ええ、生前から付き合いがありました。かなり猜疑心の強い方で、よほど信用のおける人間にしか心の内を明かさない方で、正直私の印象は何を考えているのか分からない人物というのが本音でした」
と初老の男が話す。
「なるほど」
「晩年、財団に相談があったのも奥様の事件があった為でして最初は鏡を、それからしばらくしてこの建物そのものを手放したいとおっしゃっていました」
「鏡については、何か聞いていましたか?」
「はい、手に入れられた経緯は不明ですがインドで購入されたいわくつきの鏡だとおっしゃっていました。物事の本質や真実を映し出す鏡らしいと」
「奥様が亡くなった時の状況は?」
「はい、それがよく分かっていないのです。鏡をご覧になった奥様は顔を真っ赤にされ、慌てて屋敷を出られた。その夜に近くの川で溺死されているのが見つかった」
「真っ青ではなく、真っ赤?」
「はい、奥様の世話係をしていた者の話では見知らぬ男と情事に耽っている自分の姿が映った。世話係が見ても普通の鏡だったが慌てて隠そうとされたと」
「見知らぬ男?」
「はい、奥様が密かに好意をよせていた男性かもしれませんし、単に象徴としてのパートナーの姿なのかもしれませんが」
「他の被害者も?」
対象者が自殺したと聞いたばかりだったが、巽は被害者という言葉を使った。
「また、別の者が見た際には自分が誰かに暴力をふるっている姿が映ったという者、多くは語りませんでしたが過去に犯した重大な罪が暴露されそうになったとの証言もありました」
「実際には、他の者には見えないが本人達にはそう感じられた」
「ええ、そして鏡だけにとどまらず窓や液晶などの映りこむものに伝播していく」
「集団幻覚ですかね。それなら鏡を布かなにかで覆い被せてしまえばいいんじゃないですか?」
「そうなんです。普通なら元凶の鏡を隠すことで事態は収拾するはずでした。ですが、屋敷の主人である真壁は周囲の人間に積極的に鏡を見せることで本性を明らかにしようとしたのです」
「奥様がなくなった原因かもしれないのにですか?」
「一方で、そのような鏡の存在を信じていなかったのもあります。奥様は、たんに浮気相手に会うために屋敷を出て事故にあったのだろうと」
「最初に証言した世話係がウソをついていると思った訳ですね」
「ええ。それならお前が鏡を覗きこんでみろと」
「それから謎の怪死が続きます。鏡を見た人間が次々に発狂していく姿を見ながら、自身もその鏡の魔力に飲み込まれていく」
「本人はなんと言っていたんですか?」
「自分の姿とそっくりの悪魔が鏡に映ったと言っていたようです」
鏡に自分の姿が映るのは当たり前だろうと思う。
「鏡の中の男の表情はまるで、この惨事を楽しむようにニタニタと不気味な笑みをうかべていたとおっしゃっていました」
死因も動機もバラバラだったが、共通するのはいわくつきの鏡と相対してしまった事だと初老の男は話した。
古い館にしては大きな天井を支える為の柱や壁が異様に少ない。
また、全体的に角が少なく曲線的な構造になっている。
言い換えると、身をを隠すような場所がほとんど無いと気付く。
かなり前に建てられたはずだが、監視カメラなどのセキリティが厳重で空き巣なら泣いて逃げ出したくなる空間である。
「屋敷の主人と、直接話されたことは?」
「ええ、生前から付き合いがありました。かなり猜疑心の強い方で、よほど信用のおける人間にしか心の内を明かさない方で、正直私の印象は何を考えているのか分からない人物というのが本音でした」
と初老の男が話す。
「なるほど」
「晩年、財団に相談があったのも奥様の事件があった為でして最初は鏡を、それからしばらくしてこの建物そのものを手放したいとおっしゃっていました」
「鏡については、何か聞いていましたか?」
「はい、手に入れられた経緯は不明ですがインドで購入されたいわくつきの鏡だとおっしゃっていました。物事の本質や真実を映し出す鏡らしいと」
「奥様が亡くなった時の状況は?」
「はい、それがよく分かっていないのです。鏡をご覧になった奥様は顔を真っ赤にされ、慌てて屋敷を出られた。その夜に近くの川で溺死されているのが見つかった」
「真っ青ではなく、真っ赤?」
「はい、奥様の世話係をしていた者の話では見知らぬ男と情事に耽っている自分の姿が映った。世話係が見ても普通の鏡だったが慌てて隠そうとされたと」
「見知らぬ男?」
「はい、奥様が密かに好意をよせていた男性かもしれませんし、単に象徴としてのパートナーの姿なのかもしれませんが」
「他の被害者も?」
対象者が自殺したと聞いたばかりだったが、巽は被害者という言葉を使った。
「また、別の者が見た際には自分が誰かに暴力をふるっている姿が映ったという者、多くは語りませんでしたが過去に犯した重大な罪が暴露されそうになったとの証言もありました」
「実際には、他の者には見えないが本人達にはそう感じられた」
「ええ、そして鏡だけにとどまらず窓や液晶などの映りこむものに伝播していく」
「集団幻覚ですかね。それなら鏡を布かなにかで覆い被せてしまえばいいんじゃないですか?」
「そうなんです。普通なら元凶の鏡を隠すことで事態は収拾するはずでした。ですが、屋敷の主人である真壁は周囲の人間に積極的に鏡を見せることで本性を明らかにしようとしたのです」
「奥様がなくなった原因かもしれないのにですか?」
「一方で、そのような鏡の存在を信じていなかったのもあります。奥様は、たんに浮気相手に会うために屋敷を出て事故にあったのだろうと」
「最初に証言した世話係がウソをついていると思った訳ですね」
「ええ。それならお前が鏡を覗きこんでみろと」
「それから謎の怪死が続きます。鏡を見た人間が次々に発狂していく姿を見ながら、自身もその鏡の魔力に飲み込まれていく」
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「自分の姿とそっくりの悪魔が鏡に映ったと言っていたようです」
鏡に自分の姿が映るのは当たり前だろうと思う。
「鏡の中の男の表情はまるで、この惨事を楽しむようにニタニタと不気味な笑みをうかべていたとおっしゃっていました」
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