怪奇ファイル～禍福倚伏編～

みなげかがみ

みなげかがみ

その鏡は覗きこんだ人の本当の姿を映す。
秘めごとも謀も、そして欲望そのものも。

貴方たちは、古い洋風の建物の前に呼び出された。
古い友人のひとりである巽くらげに頼まれてある調査のためにやってきたのだ。
その調査とは、この厳かでクラシカルな屋敷の主人である真壁ゆきひさが謎の死をとげた怪奇事件の調査である。
「すいません、こんな所まで呼び出してしまって」
という巽の言葉には一切の申し訳なさも感じられない。
以前も、巽の依頼で妙な事件に巻き込まれたことがあったがその時もこのような態度であった。
「ちゃんとお礼はさせて頂きますので、どうか今回もよろしくお願いしますよ」
と言われても貴方は何をよろしくされているのか分からない。
道中のタクシーの中で、少しは事件の概要を説明してくれるものと思っていたが、巽の話はそれとは全く関係のない世間話ばかりだった。
オリンピックの話や昨今の水不足の話題などが、なにか今回の事件に関連するのかとも思ったが、どうやら本当にただの雑談だったらしい。
「さて、今回の事件について話をする前に少しだけ関係のない話をしようと思います」
と巽がいう。
さんざん関係ない話をしておいてまだ前置きを挟むというのかと貴方は思う。
そのような空気を感じとってか
「いやいや、まぁ直接は関係のない話なのですが、全く関係がないという訳ではないのです」
と訂正をいれる。
「というのも、今回の事件は鏡にまつわる話だからです」
ともったいぶって話を進める。
毎度のことだが、この手のうんちくというか、特定の分野に片寄った博学の知識の披露にはうんざりしている。
だが、たまにはそのような知識が事件の解明のヒントになる場合もある。
貴方は仕方がなく話を聞くだろう。